宅建業免許の欠格事由|役員・前科・罰金・破産の基準

宅建業免許の欠格事由で問題になるのは、申請者本人とは限りません。法人申請では、取締役・監査役・政令使用人のうち一人でも欠格事由に該当すると、代表者に問題がなくても免許を受けられません。

一方、過去に罰金刑や自己破産の経験があっても、直ちに免許を受けられなくなるとは限りません。刑の種類や犯罪の内容、刑の執行が終わった時期、復権の有無によって扱いが変わります。

東京都知事免許を申請する前に確かめたいのは二つです。誰が審査の対象になるのか。そして、過去の処分がいまも欠格事由に当たるのか。

目次

欠格事由は役員や政令使用人にも及ぶ

法人申請で審査されるのは、法人そのものだけではありません。役員と政令使用人も対象です。役員には代表取締役のほか、取締役、監査役、会計参与、執行役が含まれます。

政令使用人とは、支店や営業所で契約を締結する権限を持つ責任者を指します。支店長や営業所長が政令使用人に当たる場合は、その人も欠格事由の対象になります。

申請者が営業について成年者と同じ行為能力を持たない未成年者である場合は、親権者や後見人などの法定代理人も欠格事由の対象になります。

肩書が相談役や顧問でも役員に含まれ得る

相談役や顧問という肩書だけで、直ちに役員として扱われるわけではありません。取締役などと同等以上の支配力を持っているかどうかは、実際の権限や経営への関わり方をもとに見られます。

欠格事由のある人が登記上の役員を退任しても、引き続き経営を実質的に動かしている場合は、役員から外れたとは扱われないことがあります。

刑事処分は刑の種類と犯罪の内容で扱いが変わる

刑事処分の経歴がある人を、一律に締め出す制度ではありません。線引きは二段階です。拘禁刑以上なら犯罪の種類を問わず対象。罰金刑なら、対象となる犯罪が限定されています。

拘禁刑以上は犯罪の種類を問わない

拘禁刑以上の刑に処せられると、刑の執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日から5年間は免許を受けられません。

なお、2025年6月1日に懲役と禁錮は拘禁刑へ一本化されました。それ以前に受けた懲役刑・禁錮刑も、欠格事由との関係では拘禁刑と同様に扱われます。

5年を数え始める日にも注意が要ります。満期で釈放された場合は刑の執行を終えた日、仮釈放された場合は残りの刑期が経過した日が起算点です。仮釈放の日から5年を数えるわけではありません。

罰金刑は一定の犯罪だけが対象になる

罰金刑で問われるのは、どの法律に違反したかです。主な対象を挙げます。

  • 宅地建物取引業法違反
  • 暴力団対策法の一定の規定への違反
  • 傷害、暴行、脅迫、背任などの罪
  • 暴力行為等処罰法違反

これらの罪で罰金刑を受けると、刑の執行を終えた日などから5年間は欠格事由に該当します。逆にいえば、上記以外の罰金刑まで一律に免許を妨げる仕組みにはなっていません。たとえば道路交通法違反による罰金は、対象となる犯罪の一覧に含まれていないため、それだけで宅建業免許の欠格事由にはなりません。

なお、略式手続による罰金であっても、刑事処分である点に変わりはありません。正式な裁判を経ていないからといって、欠格事由の判断から外れることにはならないため、対象となる犯罪に当たるかどうかを同じ基準で確かめます。

執行猶予中は原則として申請できない

拘禁刑の全部について執行猶予が付いた場合は、原則として猶予期間中も欠格事由に該当します。

執行猶予が取り消されずに期間を経過すれば、通常はその後さらに5年間待つ必要はありません。ただし、猶予期間中に犯した罪について公訴を提起されている場合などは、期間の経過後も刑の言渡しの効力が続くことがあります。

免許取消しや処分前の廃業にも5年間の制限がある

免許の取消しにも5年のルールがあります。不正な手段による免許取得、情状が特に重い不正行為、業務停止処分への違反。こうした理由で免許を取り消されると、取消しの日から5年間は再取得できません。

法人が取り消された場合、制限は法人にとどまりません。聴聞の公示日前60日以内に役員だった人にも及びます。

処分前に廃業届を出せばリセットできる、とはなりません。聴聞の公示後に出した廃業届にも、原則として届出の日から5年間の制限が付きます。会社を廃業し、別の法人を設立すれば直ちに申請できるという扱いにはなりません。

破産は復権すれば申請できる

破産手続開始の決定を受け、復権を得ていない人は欠格事由に該当します。一方、すでに復権していれば、破産を理由とする欠格事由には該当しません。自己破産の経験だけで、一生免許を受けられなくなるわけではありません。

申請前に、免責許可決定の確定などによって復権しているかを資料で確かめます。

心身の故障があるだけで一律に欠格とはならない

心身の故障により宅建業を適正に営むことができない人は、欠格事由に該当します。ただし、成年被後見人や被保佐人であることだけを理由に、直ちに免許を受けられなくなるわけではありません。

業務を適正に行える状態かどうかが個別に審査され、通常とは異なる書類を求められることがあります。該当する事情がある場合は、申請前に東京都の免許担当へ相談しておきます。

暴力団員等や不誠実な行為も対象になる

暴力団関係の欠格事由は、現役の構成員に限りません。暴力団員でなくなった日から5年を経過していない人も免許を受けられず、暴力団員等が事業活動を支配している法人も同様です。

このほか、申請前5年以内に宅建業に関して不正または著しく不当な行為をした人、不正・不誠実な行為をするおそれが明らかな人も欠格事由に含まれます。無免許営業の経歴や、取引相手に大きな損害を与えた行為があれば、その内容を踏まえて審査されます。

欠格事由は公的な証明書でも調べられる

東京都知事免許の申請では、対象者ごとに誓約書を提出するほか、本籍地の市区町村が発行する身分証明書と、法務局が発行する登記されていないことの証明書を添付します。身分証明書は運転免許証などの本人確認書類ではなく、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しないことなどを証明する書類です。

いずれも申請受付日現在で発行後3か月以内のものが必要です。代表者、役員、政令使用人のほか、相談役や顧問を置いている場合は、その人の分も用意します。対象者が多い法人では、申請書の作成と並行して取り寄せると準備を進めやすくなります。

虚偽記載や記載漏れでも免許を受けられない

欠格事由に一つも当たらなくても、まだ安心はできません。免許申請書や添付書類の重要な事項に虚偽の記載があるとき、必要な記載が欠けているときは、それだけで免許を受けられなくなります。

「この処分は欠格事由に当たらないはずだから書かない」という自己判断が、いちばん危険です。処分の内容、刑の確定日、執行終了日を資料どおりに記載したうえで、現在の申請に影響するかどうかは切り分けて検討します。

よくある質問

前科があると宅建業免許を受けられませんか?

前科があるだけで、一律に欠格事由となるわけではありません。拘禁刑以上の刑か、一定の犯罪による罰金刑か、刑の執行終了などから5年が経過しているかによって扱いが変わります。

罰金刑を受けた役員がいる場合は申請できませんか?

原因となった犯罪しだいです。宅建業法違反、傷害、暴行、脅迫など一定の犯罪であれば、刑の執行終了などから5年間は申請できません。それ以外の犯罪による罰金刑は、原則として、その罰金刑を理由とする5年間の欠格事由には該当しません。ただし、宅建業に関する不正行為など、別の欠格事由に当たらないかは分けて検討します。

執行猶予が終わった後も5年間待つ必要がありますか?

原則として、さらに5年間待つ必要はありません。刑の全部の執行猶予が取り消されずに期間を経過すれば、通常は刑を理由とする欠格事由には該当しなくなります。ただし、猶予期間中に犯した罪について公訴を提起されている場合などは、刑の効力が続くことがあります。

自己破産した役員がいても申請できますか?

復権を得ていれば申請できます。基準は破産歴の有無ではなく、申請時点で復権しているかどうかです。

役員を退任すれば申請できますか?

退任し、経営への関与も断っていれば、申請できる場合があります。ただし相談役や顧問として実質的に会社を支配しているなら、引き続き役員として扱われる余地が残ります。

免許を受けた後に役員が欠格事由に該当した場合はどうなりますか?

免許の取得後でも、役員や政令使用人が欠格事由に該当すると、免許取消しの対象になります。取得時だけの問題ではないため、役員の就任時には申請時と同じ視点で経歴を確かめる必要があります。

まとめ

欠格事由の確認は、代表者一人を見て終わりではありません。取締役、監査役、政令使用人まで対象を広げます。刑事処分があるなら、刑の名称だけでなく、犯罪の内容と執行が終わった日まで押さえておかなければなりません。

5年の制限がまだ生きているのか。執行猶予の満了で消えているのか。破産後に復権しているのか。申請前に一つずつ確かめてください。身分証明書や登記されていないことの証明書は取り寄せに日数がかかるため、対象者の洗い出しと書類の手配は早いほど申請がスムーズです。事実と異なる記載や重要な経歴の省略は、それ自体が免許拒否の理由になります。

当事務所では、東京都知事の宅建業免許申請に加えて、役員や政令使用人の経歴が欠格事由に当たるかの事前確認、申請前に必要となる資料のご案内まで対応しています。宅建業免許のご相談・お見積もりは無料です。

目次