オフィスのLAN配線やWi-Fi環境の構築、防犯カメラの設置、携帯電話の基地局工事。こうした工事を消費税込みで500万円以上の規模で請け負うには、建設業許可のうち「電気通信工事業」の許可が必要です。電気工事業の許可を持っていても、電気通信工事まで請け負えるわけではありません。
名前が似ているため取り違えが起きやすく、片方の許可だけで、もう片方を独立した工事として消費税込み500万円以上で請け負えば、原則として無許可営業となってしまいます。
無許可営業の罰則は3年以下の拘禁刑(旧:懲役)または300万円以下の罰金。では、どこまでが電気通信工事で、どこからが電気工事なのか。この境目を取り違えないことが、この業種ではまず大事になります。
電気通信工事業とは
電気通信工事業は、建設業法が定める29業種のうちの一つです。有線・無線の通信設備やデータ通信設備、放送設備などを設置する工事を扱います。電力そのものを送る工事ではなく、情報を伝える設備をつくる工事です。
国土交通省の「業種区分」でも、電気通信に関係する設備の設置工事とされています。代表的な工事は次ようなものです。
- LAN工事(LANケーブルの配線、アクセスポイントの固定・配線を伴うWi-Fi環境の構築)
- インターネット回線・電話回線の引き込みと配線
- 携帯電話の基地局工事(アンテナ・無線設備の設置と、設置工事に伴う調整・伝送試験)
- 放送設備工事(一般業務放送・館内放送・音響設備など)
- テレビ共聴設備、防犯カメラやインターホンなどの機器の取り付けと配線
なお、消防法上の非常警報設備に当たる放送設備は、消防施設工事として扱われる場合があります。
実務ではこうした工事を「弱電工事」と呼ぶことがあります。ただし弱電工事は法律上の業種名ではありません。弱電と呼ばれる設備の中には、消防施設工事など別業種に分類されるものもあるため、呼び方ではなく、設備の目的と実際の施工内容から業種を振り分けます。
新設だけでなく、すでにある電気通信設備の改修・修繕・補修も電気通信工事に含まれます。一方、電気通信工事は法律上、設備を「設置する工事」です。
機器の設定だけ、試験だけといった作業は必ずしも建設工事に当たらず、設置後の保守に関する役務の提供も建設業法上の電気通信工事には含まれません。この線引きは、許可業種を判断するときに迷いやすいところです。
電気工事と電気通信工事の違い
電気工事業と電気通信工事業は、建設業許可では別々の業種で、扱う対象がはっきり違います。
電気工事は、発電所や変電所から送られてくる電気を、建物や施設で安全に使えるようにする工事です。送配電線、構内の電気設備、照明や受変電設備などを扱い、高圧・低圧の電力を扱うため「強電工事」とも呼ばれます。
電気通信工事は、音声・データ・映像といった情報を送り届けるための通信設備をつくる工事です。電力を送るのではなく情報を伝えるインフラを整える工事、と考えると区別しやすくなります。
| 電気工事業 | 電気通信工事業 | |
|---|---|---|
| 扱う対象 | 電力(強電) | 情報・通信(弱電) |
| 代表的な工事 | 送配電線、構内電気設備、照明 | LAN、インターネット回線、放送設備、携帯基地局 |
| 別名 | 強電工事 | 弱電工事(法定の業種名ではない) |
防犯カメラ工事はどちらの業種か
一つの現場に両方の要素が入り込む例として、防犯カメラの設置があります。カメラ本体の取り付けや、LANケーブル・同軸ケーブルの配線は、情報を伝える設備の工事なので電気通信工事です。
一方、カメラやレコーダーの電源を分電盤から新たに引く配線は電気工事に当たります。同じ現場でも、通信の配線と電源の配線とで業種が分かれるわけです。
電気工事と電気通信工事が一つの契約に含まれる場合
電気工事と電気通信工事を、それぞれ独立した工事として500万円以上で請け負う場合は、原則として両方の許可が必要です。
ただし、メインとなる工事に伴って行う別業種の工事は、「附帯工事」として、その業種の許可がなくても施工できる場合があります。たとえば、LAN設備の新設がメインで、それに伴って電源配線も行う場合は、電源配線を附帯工事として扱える可能性があります。
電気工事と電気通信工事を、それぞれ独立した工事として500万円以上で請け負う場合は、原則として両方の許可が必要です。
ただし、メインとなる工事に伴って行う別業種の工事は、「附帯工事」として、その業種の許可がなくても施工できる場合があります。たとえば、LAN設備の新設がメインで、それに伴って電源配線も行う場合は、電源配線を附帯工事として扱える可能性があります。
なぜ別業種に分かれているのか
電気工事業と電気通信工事業が別業種なのは、求められる技術と知識の体系が違うからです。電気工事は電圧・電流の管理や絶縁の確保といった、感電や火災を防ぐ強電の知識が中心で、電気通信工事はネットワークの設計や通信品質の確保といった、情報を正しく速く伝える知識が中心になります。
この違いは配置する技術者の資格にも表れます。電気工事業には電気工事士や電気主任技術者などの資格が、電気通信工事業には電気通信工事施工管理技士などの資格が対応し、系統が分かれています。片方の許可があるだけでは、もう片方の営業所技術者の要件は満たせません。
電気通信工事業の許可要件
電気通信工事業の許可も、建設業許可の5要件を満たす点はほかの業種と同じです。経営業務の管理責任者等(経管)、営業所技術者(旧:専任技術者・専技)、誠実性、財産的基礎、欠格要件に該当しないこと。この5つがそろって許可されます。業種ごとに中身が変わるのは営業所技術者の要件です。
営業所技術者の要件は3ルート
一般建設業の営業所技術者は、次の3つのルートのいずれかで要件を満たします。
1つ目は国家資格等によるルートです。対応する主な資格は次のとおりです。
- 1級・2級電気通信工事施工管理技士
- 技術士(電気電子部門・総合技術監理部門〔電気電子〕)
- 電気通信主任技術者(資格取得後に5年以上の実務経験)
- 工事担任者(第一級アナログ通信および第一級デジタル通信の両方、または総合通信の資格者証を持つ者で、取得後3年以上の実務経験)
電気通信工事施工管理技術検定は、2017年の法令改正で創設され、2019年度から試験が始まりました。1級は特定建設業の特定営業所技術者や監理技術者にも対応します。
2級が対応するのは一般建設業の営業所技術者と主任技術者までで、2級だけでは監理技術者にはなれません。電気通信主任技術者や工事担任者は電気通信事業法に基づく資格で、これらで申請する場合は上記の実務経験が上乗せで必要です。
2つ目は、指定学科の卒業と実務経験を組み合わせるルートです。電気通信工学などの指定学科を卒業していれば、大学・短期大学・高等専門学校卒で3年以上、高校・中等教育学校・専修学校卒で5年以上の実務経験が必要です。専修学校卒のうち、専門士または高度専門士の称号を持つ場合は3年以上となります。
3つ目は、10年以上の実務経験ルートです。資格や学歴がなくても、電気通信工事の実務経験を10年以上証明できれば営業所技術者になれます。なお、2023年に導入された施工管理技術検定の第1次検定合格者に関する実務経験の緩和は、電気通信工事業には適用されません。
実務経験ルートが使えるのは電気工事業との大きな違い
電気通信工事業は指定建設業ではありません。指定建設業(土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種)では、特定建設業の許可を取るとき1級国家資格者などが必須ですが、電気通信工事業はこの7業種に含まれません。
電気工事業では、電気工事士法との関係から、無資格者として積んだ実務経験は原則として認められません。電気通信工事業は資格がなくても10年の実務経験を証明できれば道があり、人材確保の選択肢はやや広めです。
特定建設業の特定営業所技術者
特定建設業の特定営業所技術者になるには、1級電気通信工事施工管理技士や技術士などの資格を持つか、一般建設業の営業所技術者になれる要件を満たしたうえで、元請として請け負った4,500万円以上の電気通信工事について2年以上の指導監督的実務経験が必要です。
この4,500万円は、2025年2月1日の改正で特定建設業の下請金額基準が5,000万円に上がったあとも据え置きです。下請金額基準とは別の数字なので混同しないようにします。
電気工事業法・電気工事士法との関係
電気工事業法と電気工事士法は、電気工事に関する法律であり、電気通信工事には原則として適用されません。
電気工事業法は、電気工事業を営む事業者の登録や届出を定めた法律です。建設業許可を持っていても、別途「みなし登録電気工事業者」などの届出が必要になる場合があります。電気工事士法は、第一種・第二種電気工事士など、電気工事に従事する人の資格を定めた法律です。
LAN配線や電話設備などの電気通信工事は、これらとは別の制度として考えてください。
許可を取ったあとの手続き
電気通信工事業の許可を取ったあとも、ほかの業種と同じく毎年の手続きが続きます。事業年度終了後4ヶ月以内の決算変更届(事業年度終了届)、変更があったときの各種変更届、5年ごとの更新です。決算変更届を出していないと更新申請が受理されないため、毎年の提出は欠かせません。
国や自治体などが発注する公共工事の入札に参加するには、原則として経営事項審査(経審)と入札参加資格審査が必要です。
携帯基地局や官公庁施設のネットワーク整備など、電気通信工事は公共発注とつながる場面があります。入札参加を視野に入れるなら、許可取得とあわせてこの流れも押さえておきます。
よくある質問
- 電気工事業の許可があれば電気通信工事も請け負えますか?
-
いいえ、原則として請け負えません。電気工事業と電気通信工事業は別の業種です。電気通信工事を独立した工事として500万円以上の規模で請け負うには、電気通信工事業の許可を別に取る必要があります。主たる電気工事に附帯して行う電気通信工事であれば、附帯工事として施工できる場合があります。
- LAN配線の工事はどちらの業種になりますか?
-
電気通信工事業です。LANケーブルの配線やネットワーク機器の取り付けと配線、アクセスポイントの固定・配線を伴うWi-Fi環境の構築などは、情報を伝える通信設備の工事なので電気通信工事に分類されます。
- 資格がなくても電気通信工事業の許可は取れますか?
-
はい、取れる場合があります。電気通信工事業は指定建設業ではないため、一般建設業であれば10年以上の実務経験を証明して営業所技術者の要件を満たすこともできます。無資格者としての実務経験が原則として認められない電気工事業とは、この点が違います。
- 電気通信設備の保守だけを請け負う場合も許可は必要ですか?
-
設置後の保守に関する役務の提供は、建設業法上の電気通信工事には含まれません。設置・改修・修繕といった工事を請け負う場合に許可の対象になります。ただし、契約名が「保守」であっても、設備の交換や配線の更新、新たな機器の取り付けを行うなら、実際の作業内容によって電気通信工事に当たることがあります。判断に迷うときは許可行政庁に確認してください。
- 携帯電話の基地局工事はどの業種ですか?
-
電気通信工事業です。アンテナや無線設備の設置と、設置工事に伴う調整・伝送試験は、通信設備をつくる工事なので電気通信工事に分類されます。基地局の鉄塔そのものの築造は別の業種にまたがることがあるため、工事の中身ごとに区分を確認します。
- LAN設備と電源工事をまとめて請け負う場合、両方の許可が必要ですか?
-
それぞれを独立した工事として500万円以上で請け負うなら、原則として電気通信工事業と電気工事業の両方の許可が必要です。
ただし、LAN設備の新設が主たる工事で、それに伴って電源配線やコンセントの増設を行う場合は、電源工事を附帯工事として扱えることがあります。電源工事自体が独立した目的を持つ場合は附帯工事とはいえないため、契約内容と工事の内訳で判断します。
まとめ
電気通信工事業は、LANやインターネット回線、放送設備、携帯電話基地局など、情報を伝える設備を設置・整備する工事です。電気工事業とは別業種なので、それぞれを独立した工事として500万円以上で請け負う場合は、原則として両方の許可が必要です。
営業所技術者の要件は、国家資格、指定学科卒業後の実務経験、10年以上の実務経験のいずれかで満たせます。実務経験だけで要件を満たせる可能性がある点は、電気工事業との大きな違いです。
電気工事と電気通信工事は区分を迷いやすく、実務経験の証明にも手間がかかります。両方を扱う事業者は、施工内容を工事ごとに分けて早めに準備を進めましょう。
電気通信工事業の許可でお困りならご相談ください
電気通信工事業の許可では、電気工事業との区分や、営業所技術者の資格・実務経験を証明する書類がポイントになります。電気工事業と同時に申請する場合は、それぞれの工事実績を分けて示さなければなりません。
当事務所では、葛飾区を拠点に、東京都全域および周辺地域の建設業許可申請をサポートしています。
新規申請 9万9,000円〜(税込)
まずはお気軽にご相談ください。

