金属製の雨樋、水切り、外壁板金などの工事を1件税込500万円以上で請け負うなら、原則として板金工事業の建設業許可が必要です。
ただし、同じ金属薄板を使う工事でも、金属屋根をふく工事は屋根工事業に区分されます。
金属屋根のふき替えと雨樋交換をまとめて請け負う場合、それぞれが独立した工事なのか、屋根工事に伴う附帯工事なのかによって必要な許可が変わってきます。
この記事では、板金工事業に含まれる工事、税込500万円基準、屋根・建具・鋼構造物工事との違い、営業所技術者等に使える資格・実務経験について解説します。
板金工事業に含まれる工事
板金工事とは、金属薄板などを加工して工作物へ取り付ける工事、あるいは工作物に金属製の付属物を取り付ける工事をいいます。
代表的な工事は次のとおりです。
・金属製雨樋の取付け・交換 ・軒先や開口部の水切り取付け
・破風や庇への板金取付け ・外壁へのカラー鋼板張り
・厨房の壁や天井へのステンレス板張り ・金属薄板の切断・折り曲げ加工と取付け
建設業許可上は、「板金加工取付け工事」と「建築板金工事」が代表例とされています。
なお、自動車のボディ修理も一般に板金と呼ばれますが、建設業許可における板金工事はあくまで建物などの工作物を対象とする工事を指します。
税込500万円以上では板金工事業の許可が必要
板金工事は建築一式工事ではないため、1件の請負代金が税込500万円以上になるなら、原則として板金工事業の許可が必要となります。
税込500万円未満の板金工事だけを請け負う場合は軽微な建設工事に当たり、許可はいりません。
金額を判定するときは、次の点にも注意します。
・消費税を含める
・注文者が支給する金属板などの市場価格と運送費を加える
・正当な理由なく契約を分割した場合は合計額で判断する
たとえば施工代金が税込450万円でも、注文者から支給されるステンレス板の市場価格と運送費を加えて500万円以上になれば、板金工事業の許可が必要です。
板金工事と屋根工事の違い
板金工事業でとくに迷いやすいのが、金属屋根との区分です。
金属薄板を屋根材として使い、建物の屋根をふく工事は、板金工事ではなく屋根工事に区分されます。
一方、屋根ふき以外の金属薄板の加工・取付けは、板金工事に該当します。
| 工事内容 | 主な許可業種 |
|---|---|
| 金属屋根の新設・ふき替え | 屋根工事業 |
| 金属製雨樋の取付け・交換 | 板金工事業 |
| 軒先や開口部の水切り取付け | 板金工事業 |
| 外壁への金属板張り | 板金工事業 |
| 厨房の壁・天井へのステンレス板張り | 板金工事業 |
棟板金や谷板金の扱い
棟板金や谷板金は、屋根の仕上げや防水と一体になって施工されることも多い部位です。
屋根工事の一部として施工するのか、金属製の付属物を単独で取り付ける工事として請け負うのかで判断が分かれます。
工事名だけではなく、契約の目的、見積書の内訳、実際の施工範囲から必要な許可業種を見極めます。
建具・ガラス・鋼構造物工事との違い
金属を扱う工事がすべて板金工事になるわけではありません。
| 工事内容 | 主な許可業種 |
|---|---|
| サッシ・ドア・シャッターの取付け | 建具工事業 |
| ガラスの加工・取付け | ガラス工事業 |
| 金属薄板の加工・取付け | 板金工事業 |
| 形鋼・鋼板を加工して工作物を築造 | 鋼構造物工事業 |
| 加工済みの鉄骨を現場で組み立てる | とび・土工・コンクリート工事業 |
板金工事は、主に金属の薄板を加工して工作物へ取り付ける工事を指します。
サッシやシャッターなどの建具を取り付ける工事、形鋼や鋼板を使って鉄骨や工作物を築造する工事とは、区分が異なります。
屋根工事と板金工事をまとめて請け負う場合
金属屋根のふき替えと雨樋・水切りの交換など、屋根工事と板金工事が一つの契約に含まれることもあります。
複数業種が混在する場合は、まず契約の中心となる工事を判断します。そのうえで、主たる工事を完成させるために必要な別業種の工事は、附帯工事として一体で請け負えることがあります。
たとえば、金属屋根のふき替えが主たる工事で、その施工に伴って雨樋や水切りを交換するケースです。
ただし、次のような工事は附帯工事とは限りません。
・主たる工事とは別の目的がある ・単独の見積りや契約として請け負っている ・主たる工事を行わなくても必要になる ・施工規模や内容から見て主たる工事に従属していない
附帯工事として請け負える場合でも、自社で施工するには、その工事の技術上の管理を行える資格者などが必要となることもあります。
対応できない場合は、必要な許可を持つ事業者へ下請けに出しましょう。
板金工事業の許可要件
板金工事業でも、次の共通要件を満たす必要があります。
・経営業務を適正に管理できる体制
・営業所技術者等
・財産的基礎
・社会保険への適切な加入
・請負契約に関する誠実性
・欠格要件に該当しないこと
このうち、申請業種によって対応資格や経験内容が変わるのが、営業所技術者等の要件です。
営業所技術者等に使える主な資格
一般建設業の板金工事業に対応する主な資格は、次のとおりです。
| 資格 | 追加の実務経験 |
|---|---|
| 1級建築施工管理技士 | 不要 |
| 2級建築施工管理技士「仕上げ」 | 不要 |
| 対象となる1級技能士 | 不要 |
| 対象となる2級技能士 | 合格後1年以上 |
板金工事業に対応する技能検定の職種は、次のとおりです。
・板金 ・工場板金 ・建築板金 ・打出し板金 ・板金工
1級技能士なら、資格だけで営業所技術者等の要件を満たせます。
2級技能士の場合は、合格後に板金工事について1年以上の実務経験が求められます。
旧資格や選択作業がある場合は、合格証書に記載された職種・作業名まで確かめておきましょう。
指定学科・第一次検定・10年実務経験のルート
対象資格がない場合でも、学歴や実務経験によって営業所技術者等の要件を満たせる道があります。
指定学科卒業後の実務経験
板金工事業の指定学科は、建築学または機械工学に関する学科です。
| 学歴等 | 必要な板金工事経験 |
|---|---|
| 大学・短期大学・高等専門学校などの指定学科卒業 | 卒業後3年以上 |
| 高校・中等教育学校などの指定学科卒業 | 卒業後5年以上 |
| 指定学科以外 | 10年以上 |
専修学校については、修業年限や専門士・高度専門士の称号などにより、必要な実務経験が3年または5年に分かれます。
第一次検定合格後の実務経験
対応する建築施工管理または管工事施工管理の第一次検定合格者を、指定学科卒業者と同等に扱う制度もあります。
・対応する1級第一次検定合格後:板金工事の実務経験3年以上
・対応する2級第一次検定合格後:板金工事の実務経験5年以上
利用できる検定種目や種別は、申請時の資格区分表と照合しておきましょう。
10年以上の実務経験
資格や指定学科の学歴がなくても、板金工事について10年以上の実務経験を証明できれば、一般建設業の営業所技術者等になれる可能性があります。
ただし、単に板金会社へ10年間勤務していたことを示すだけでは足りません。
どの期間に、雨樋、水切り、外壁板金、ステンレス板張りなどの工事へ従事していたのかを、工事資料と在籍資料で示していきます。
実務経験を証明する資料
実務経験ルートを使うなら、板金工事を施工していた事実と期間を資料で証明します。
代表的な資料は次のとおりです。
・工事請負契約書 ・注文書 ・請求書
・入金記録 ・見積書や工事明細書
・工事台帳 ・在籍期間を示す資料
「外装工事一式」「金属工事一式」とだけ記載された資料では、板金工事の経験かどうかが判断できないことも少なくありません。
雨樋取付け、外壁金属板張り、ステンレス板張りなど、具体的な施工内容が分かる見積明細や工程表と組み合わせて示します。
工場で金属製品を加工して販売・納品しただけの経験は、建設工事の実務経験として認められない可能性があります。
工作物への取付けまで含む板金工事を請け負い、施工していた事実を示す資料が重要になります。
建設業許可を持たない事業者での経験でも、税込500万円未満の軽微な板金工事など、適法に施工された工事で資料の裏付けがあれば、使えることがあります。
特定建設業が必要になる場合
発注者から直接工事を請け負った元請業者が、1件の工事について締結する下請契約の合計額を税込5,000万円以上とするなら、原則として板金工事業の特定建設業許可が必要です。
判断するのは、元請として受注した工事金額ではなく、自社が締結する下請契約額の合計となります。
板金工事業は、指定建設業7業種に含まれていません。
そのため、一般建設業の営業所技術者等の要件を満たしたうえで、発注者から直接請け負った税込4,500万円以上の板金工事について、2年以上の指導監督的実務経験があれば、特定営業所技術者等の要件を満たせることがあります。
下請として受注する金額が大きいというだけで、特定建設業許可が必要になるわけではありません。ただし、税込500万円以上の板金工事を請け負うには、板金工事業の建設業許可が必要となります。
よくある質問
- 金属屋根の葺き替え工事は、板金工事業の許可で請け負えますか?
-
いいえ、金属屋根をふく工事は屋根工事に分かれます。瓦・スレート・金属薄板は屋根をふく材料の違いにすぎず、これらをまとめて屋根ふき工事として扱うのが国の整理です。500万円以上の金属屋根の葺き替えなら、必要なのは屋根工事業の許可です。
- 雨樋や水切りの取付けは何工事になりますか?
-
金属製の雨樋・軒先の水切り・破風板金など、屋根をふく工事に当たらない金属の付属物の取付けは板金工事です。屋根を「ふく」のか、付属物を「取り付ける」のかが分かれ目です。
- 屋根の葺き替えと雨樋交換を一緒に受けたら、どちらの許可が要りますか?
-
まず、工事全体の主たる目的が屋根の葺き替えなのか、雨樋などの板金工事なのかを確かめてください。屋根の葺き替えが主たる工事で、雨樋交換がそれに附帯して行われる工事なら、屋根工事業の許可でまとめて請け負える場合があります。
- 板金工事の特定建設業許可は、1級資格者がいないと取れませんか?
-
いいえ。板金工事業は指定建設業ではないため、1級資格者のほかに、指導監督的実務経験(一般の営業所技術者要件+元請4,500万円以上の板金工事を2年以上指導監督した経験)でも特定の要件を満たせます。1級資格が必須なのは指定建設業7業種に限られます。
- 資格がなくても板金工事業の許可は取れますか?
-
はい、取れます。板金工事について10年以上の実務経験があれば、資格がなくても営業所技術者になれます。実務経験は工事の契約書・注文書・請求書と、その期間の在籍を示す資料で証明します。書類が残っているかを早めに確かめてください。
まとめ
板金工事業には、金属薄板の加工・取付け、金属製雨樋や水切りの取付け、外壁や厨房への金属板張りなどが含まれます。
1件税込500万円以上の板金工事を請け負うなら、原則として板金工事業の建設業許可が必要です。
金属屋根をふく工事は屋根工事、金属製付属物の取付けや外壁への金属板張りは板金工事として区分します。
営業所技術者等については、建築施工管理技士や板金関係の技能士に加え、指定学科、第一次検定、10年実務経験のルートがあります。
まずは、工事内容、請負金額、保有資格、過去の工事資料を整理し、板金工事業だけで足りるのか、屋根工事業や建具工事業なども必要になるのかを見極めましょう。
お困りの際は当事務所へ
「金属屋根と板金工事のどちらに当たるか分からない」「10年の実務経験を資料で証明できるか判断できない」という段階でも構いません。
工事内容、資格者の状況、過去の実務経験資料を整理したうえで、必要な許可業種と申請書類をご案内いたします。
当事務所では、葛飾区を拠点に東京都全域(および周辺地域)の建設業許可申請を専門的にサポートしております。どの業種で取るべきか分からない段階からご相談ください。

