建設業許可を初めて申請するときは、申請書を作成しただけで話が終わりません。
常勤役員等の経営経験、営業所技術者等の資格や実務経験、営業所の実体、財産的基礎、社会保険。ここまで幅広い許可要件を、資料で裏付けなければならないからです。
必要書類の中身は、すべての申請者で同じではありません。法人か個人事業主か、資格を使うか実務経験を使うか、過去の経験をどの会社で積んだか。こうした条件で、準備物が大きく変わってきます。
この記事では、東京都知事許可の一般建設業を中心に、新規申請で必要になる主な書類を法人・個人別に整理しました。あわせて、どの順番で確認すると準備しやすいかも取り上げます。
必要書類は4種類に分けて考える
建設業許可では、全国共通の法定様式に加えて、許可要件を確認するための資料を提出しなければなりません。
必要書類は、大きく次の4種類に分けて捉えると分かりやすくなります。
必要書類が変わる主な要因は、次のとおりです。
- 法人か個人事業主か
- 一般建設業か特定建設業か
- 取得する許可業種
- 営業所技術者等が資格・学歴・実務経験のどのルートを使うか
- 経管や営業所技術者等の過去の勤務先
- 自社所有、賃貸、自宅兼用など営業所の形態
- 社会保険の適用状況
そのうえで、新規申請の書類は次の4種類に分かれます。
- 申請者が作成する申請書類 許可業種、役員、営業所、工事実績、財務内容などを所定の様式に記載します。
- 役所などから取得する公的書類 登記事項証明書、納税証明書、身分証明書などです。発行後の有効期間が定められていることがあります。
- 許可要件を証明する確認資料 経管の経営経験、営業所技術者等の資格や実務経験、財産的基礎などを裏付けます。
- 営業所や社会保険などの実態を示す資料 営業所の写真、賃貸借契約書、社会保険料の納付資料などが該当します。
法定様式がそろっていても、許可要件を確認できる資料が不足していれば申請を進められません。
新規申請で作成する主な申請書類
現在の主な法定様式には、次のものがあります。
- 建設業許可申請書
- 役員等の一覧表
- 営業所一覧表(新規許可等)
- 営業所技術者等一覧表
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 使用人数
- 誓約書
- 健康保険等の加入状況
- 常勤役員等証明書、営業所技術者等証明書、各種調書
- 建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表・調書
- 株主(出資者)調書
- 法人または個人用の財務諸表
このほか、所属建設業者団体や主要取引金融機関名などの書類も加わります。
該当する人や事項がなければ、令第3条の使用人関係など一部の書類は省けます。
なお、2024年12月13日施行の建設業法改正により、従来「営業所専任技術者」と呼ばれていた制度は「営業所技術者等」という名称に変わりました。
法人と個人事業主で書類が変わる
法人では、履歴事項全部証明書や定款を提出し、登記内容と申請書の記載を一致させる作業からスタートします。
財務内容については、税務申告書の決算書をそのまま提出するわけではありません。建設業法の様式に組み替えた財務諸表を作成する必要があります。
個人事業主には法人の定款がなく、代わりに個人用の財務諸表や納税証明書などを提出します。確定申告書や青色申告決算書については、経営経験や常勤性などを確認する資料として使うケースも少なくありません。
商号(屋号)を登記している個人事業主の場合、商号登記に関する登記事項証明書が必要になることもあります。
法人・個人別の必要書類一覧表
※表は横にスクロールできます。
| 書類・資料 | 法人 | 個人事業主 | 何を確認する書類か |
|---|---|---|---|
| 建設業許可申請書 | 必須 | 必須 | 申請者、許可業種、営業所など |
| 履歴事項全部証明書 | 必須 | 原則不要 | 商号、本店、役員、資本金、目的 |
| 定款 | 必須 | 原則不要 | 法人の目的、機関、事業年度 |
| 納税証明書 | 必須 | 必須 | 申告・納税状況。税目は許可区分で異なる |
| 法人用財務諸表 | 必須 | 原則不要 | 財産状態、経営成績、工事原価 |
| 個人用財務諸表 | 原則不要 | 必須 | 申請時の財産状態と損益 |
| 確定申告書等 | 状況による | 状況による | 営業実態、事業期間、経営経験 |
| 申請者・役員等の調書、公的証明書 | 対象者分 | 本人等 | 欠格要件、住所、生年月日 |
| 株主(出資者)調書 | 原則必要 | 原則不要 | 5%以上の株主・出資者など |
| 経管の経験資料 | 必須 | 必須 | 建設業の経営経験 |
| 営業所技術者等の資格証・実務経験資料 | 状況による | 状況による | 申請業種に対応する資格・経験 |
| 常勤性を示す資料 | 原則必要 | 原則必要 | 現在の勤務、報酬、雇用関係 |
| 営業所の写真・使用権原資料 | 原則必要 | 原則必要 | 営業所の実体と使用権限 |
| 社会保険・雇用保険の資料 | 加入・適用除外 | 加入・適用除外 | 適切な加入状況または適用除外 |
| 預金残高証明書・融資証明書 | 状況による | 状況による | 自己資本で満たさない場合の資金調達能力 |
※法定書類は全国共通ですが、経営経験、常勤性、営業所の実体などを示す確認資料は、申請内容や許可行政庁によって異なります。
※設立・開業後、まだ最初の決算期を迎えていない場合は、通常とは異なる書類を使うことがあります。
常勤役員等は経営経験と常勤性を別々に証明する
建設業許可では、経営業務を適切に管理できる常勤役員等を置く必要があります。実務では「経管」とも呼ばれます。
代表的な要件は、建設業に関して5年以上、法人役員や個人事業主などとして経営業務を管理した経験があることです。申請では、この経営経験と、現在の営業所に常勤していることを別々の資料で証明します。
法人役員としての経験を使う場合、登記事項証明書だけでは、会社が建設業を営んでいた事実まで確認できないことがあります。過去の許可申請書や工事請負契約書、注文書と請書、請求書と入金記録などを組み合わせます。これらによって、必要な期間を裏付けます。
個人事業主としての経験を使う場合は、証明の中心となる資料が変わります。確定申告書や工事請負契約書、注文書、請求書などです。
複数の会社や個人事業での経験を通算する場合は、それぞれの役員期間や事業期間と、建設業の営業実態を証明します。5年分の資料を一社だけでそろえる必要はありません。
このほか、経営業務の管理責任者に準ずる地位での経験を使うルートもあります。6年以上の補佐経験や直接補佐者を置く方法で、要件を満たすことも可能です。これらは確認事項が多いため、利用する場合は申請先へ事前に相談します。
営業所技術者等は資格・学歴・実務経験で確認する
営業所技術者等は、営業所ごとに置く技術面の責任者です。
一般建設業で要件を確認する方法は、主に次の3つです。
国家資格を使う場合
施工管理技士、技術士、技能士など、申請する建設業種に対応した資格が使えます。
資格によっては、免状や合格証を持っているだけでは足りません。資格取得後の実務経験もあわせて求められます。
指定学科卒業後の実務経験を使う場合
申請業種に対応する指定学科を卒業していれば、必要な実務経験年数が短くなるケースもあります。
卒業証明書などで学歴を確認し、あわせて卒業後の実務経験を証明する流れです。
実務経験を使う場合
資格や指定学科を使わない場合でも、申請業種について必要な実務経験を証明できれば、営業所技術者等になれる可能性があります。
重要なのは、単に建設会社へ在籍していた年数ではありません。
- 対象業種の工事を実際に施工していたこと
- その期間に本人が在籍していたこと
の両方を確認できなければなりません。
経験した会社の許可状況などによって、必要な確認資料も変わってきます。
常勤性は申請時点の勤務状況を示す
常勤役員等や営業所技術者等は、原則として申請する営業所に常勤していなければなりません。
東京都では2026年7月1日から、常勤性を確認する資料の取扱いが変更されています。
法人では、標準報酬決定通知書、資格取得確認・標準報酬決定通知書、被保険者記録照会回答票、住民税特別徴収税額通知書など、申請者と対象者との関係を確認できる資料が中心です。
個人事業主については、確定申告書などを用いて確認する流れになります。
他社で常勤している場合や、営業所への通勤が現実的でない場所に居住している場合などは、そもそも常勤性が認められません。
申請時点の東京都の最新取扱いを確認したうえで準備しましょう。
営業所は実際に建設業を営める状態が必要
登記上の本店所在地があるだけでは、建設業法上の営業所として認められるとは限りません。
建設工事の見積りや契約などを継続して行える場所として、実体があることを示さなければなりません。
東京都で使う主な確認資料は、次のとおりです。
- 営業所の外観・入口・室内の写真
- 郵便番号や電話番号を確認できる資料
- 必要に応じて建物の登記事項証明書や賃貸借契約書
- 自宅兼用や他社と同居する場合の間取り図・動線が分かる資料
賃貸物件では、契約上の用途として事務所使用が可能かどうかも確認しておきましょう。
自宅の一室であっても、営業所として独立して使用できる状況を示せれば申請可能です。
一方、住所だけを借りるバーチャルオフィスでは、建設業法上の営業所としての実体を認めてもらうことが難しくなります。
財産的基礎は決算書か資金調達能力で示す
一般建設業の新規申請で財産的基礎を確認する方法は、主に次のいずれかです。
- 自己資本が500万円以上ある
- 500万円以上の資金を調達する能力がある
直前決算の自己資本が500万円以上あれば、財務諸表から要件を確認できます。
自己資本が500万円未満の場合は、預金残高証明書や融資証明書などによって、500万円以上の資金調達能力を示す方法もあります。
赤字決算だからといって、直ちに新規申請できないわけではありません。
法人の場合、資金調達能力を示す預金は原則として法人名義で確認します。代表者個人の預金を、そのまま会社の資金として扱えるわけではない点に注意が必要です。
なお、特定建設業では、欠損額、流動比率、資本金、自己資本について一般建設業より厳しい基準が設けられています。
欠格要件と社会保険も審査される
役員等、個人事業主本人、令第3条の使用人などは、欠格要件の審査対象です。
申請では誓約書や調書を作成し、刑罰歴や破産、暴力団との関係などが審査対象になります。
2025年6月1日から刑法上の懲役・禁錮が拘禁刑へ一本化されたため、現在の欠格要件では「拘禁刑」という表現が使われています。
また、成年被後見人や被保佐人であることだけを理由に、一律に建設業許可を受けられないわけではありません。
社会保険についても、加入義務がある事業所は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険について適切に届出を行っている必要があります。
加入義務がない場合は、適用除外に該当することを示せば足ります。
書類は要件資料から集める
建設業許可の書類は、取得できるものから手当たり次第に集めるより、要件を確認してから準備した方が効率的です。
おすすめの順番は次のとおりです。
- 取得する許可業種を決める
- 常勤役員等の候補者と経験期間を確認する
- 営業所技術者等の資格・学歴・実務経験を確認する
- 過去の経験を裏付ける資料が残っているか調べる
- 常勤性を確認する
- 営業所の実体と使用状況を確認する
- 財産的基礎と社会保険を確認する
- 登記・納税・身分関係の公的書類を取得する
- 申請書類を作成する
登記事項証明書、身分証明書などには、申請時に求められる発行時期の基準が定められています。
先に経営経験や技術者要件を確認し、公的書類は申請時期が見えてから取得する流れの方が、取り直しを防ぎやすくなります。
ケースによって必要な資料は変わる
設立直後の法人
まだ最初の決算を迎えていない一般建設業の新設法人では、開始貸借対照表を作成して財産状態を示さなければなりません。
常勤役員等の経営経験について、設立前の別会社や個人事業での経験を使う場合、過去の登記や工事資料などが確認対象です。
なお、特定建設業では設立直後の財務資料の取扱いが異なる点にも注意が必要です。
前職での実務経験を使う場合
営業所技術者等について前職での実務経験を使用する場合は、対象業種の工事を行っていた事実と、その期間に本人が在籍していた事実の両面でチェックが入ります。
勤務先が当時その業種の建設業許可を持っていたかどうかなどによって、必要になる資料は変わってきます。
前職会社が作成した実務経験証明書だけで、すべての確認が終わるとは限りません。
書類がそろっていても要件不足なら申請できない
建設業許可は、必要な様式の枚数をそろえれば取得できる制度ではありません。
たとえば、次のような場合は申請前に対応が必要となります。
- 常勤役員等の経験年数が不足している
- 経験を裏付ける資料が残っていない
- 営業所技術者等の資格や経験が申請業種に対応していない
- 候補者が他社で常勤している
- 営業所としての実体を確認できない
- 財産的基礎を満たしていない
- 加入義務がある社会保険へ加入していない
- 欠格要件に該当する人がいる
また、法人の定款目的から申請する建設業を読み取れない場合は、東京都から目的変更に関する念書などを求められることもあります。
新規申請で重要なのは、書類の量ではなく、許可要件を事実と資料の両方で説明できるかどうかです。
よくある質問
- 法人と個人事業主では必要書類が違いますか?
-
違います。法人は、履歴事項全部証明書、定款、法人用財務諸表などを用意します。個人事業主は、確定申告書、青色申告決算書または収支内訳書、個人用財務諸表などを使います。
- 経管の経験は登記事項証明書だけで証明できますか?
-
登記事項証明書で分かるのは、主に役員であった期間です。その会社が建設業を営み、本人が経営に携わっていたことまでは分かりません。過去の許可書類や契約書、請求書などを組み合わせて、経験期間と営業実態を裏付けます。
- 資格がなくても実務経験で申請できますか?
-
申請業種について必要な実務経験を証明できれば、資格がなくても営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
ただし、建設会社に在籍していた期間だけでは足りません。対象業種の工事に携わったことが分かる資料と、その期間の在籍を示す資料をそれぞれ用意します。
- 預金残高証明書は必ず必要ですか?
-
必ず必要とは限りません。一般建設業では、直前決算の自己資本が500万円以上あれば、財務諸表によって財産的基礎を示せます。
自己資本が500万円未満の場合は、預金残高証明書や融資証明書などにより、500万円以上の資金調達能力を示す方法を検討します。
- 自宅を営業所にする場合は何が必要ですか
-
自宅を営業所にする場合は、居住部分と業務スペースの使用状況を示します。建物の登記事項証明書、賃貸借契約書、使用承諾書、外観や室内の写真などが主な資料です。
賃貸住宅やマンションでは、契約上の用途や管理規約も確認します。
まとめ
建設業許可の新規申請では、申請書だけでなく、常勤役員等の経営経験、営業所技術者等の資格・実務経験、営業所の実体、財産的基礎などを示す資料が必要です。
用意する書類は、法人か個人事業主か、資格と実務経験のどちらを使うかによって変わります。最初に確認したいのは、常勤役員等と営業所技術者等の要件を満たせるか、その経験を資料で裏付けられるかという点です。
履歴事項全部証明書や身分証明書などを先に集めるのではなく、工事資料や在籍資料が残っているかを確認してから進めると、取り直しや準備のやり直しを減らせます。
お困りの際は当事務所へ
建設業許可の新規申請では、許可業種や候補者の経歴によって必要な資料が変わります。
「役員経験はあるが資料が残っていない」「前職の実務経験を使いたいが工事資料がそろわない」といった場合もご相談ください。
当事務所では、葛飾区を拠点に東京都の建設業許可申請をサポートしています。常勤役員等や営業所技術者等の要件を整理し、申請までの進め方をご案内します。

