鉄骨、橋梁、鉄塔、貯蔵用タンク、屋外広告物、水門などは、代表的な鋼構造物工事です。
ただし、鉄骨や鋼材を扱う工事のすべてが鋼構造物工事になるわけではありません。同じ鉄骨を扱っていても、請け負う施工範囲によっては、とび・土工工事や鉄筋工事にも枝分かれしていく世界です。似た鋼材を扱っていても、必要な建設業許可は業種ごとに違います。
鋼構造物工事1件の請負代金が500万円以上になる場合は、原則として鋼構造物工事業の建設業許可が必要です。金額は消費税や、注文者から支給される材料も含めた判定額で判断する扱いです。
この記事では、鋼構造物工事業の工事範囲と関連業種との違いを押さえたうえで、営業所技術者等の要件や指定建設業の取扱いまでを見ていきます。
500万円以上の鋼構造物工事には許可が必要
鋼構造物工事は、建築一式工事以外の専門工事です。
請負代金が消費税込みで500万円未満であれば「軽微な建設工事」に当たり、原則として建設業許可がなくても請け負えます。裏を返せば、税込500万円ちょうどから鋼構造物工事業の許可が必要です。
この基準は元請だけの話ではありません。下請として受注する鋼構造物工事についても、判断のものさしは変わりません。
消費税・支給材料も含めて判断する
500万円基準は、税抜金額ではなく消費税込みの請負代金で見ます。
たとえば税抜460万円の工事なら、消費税込みでは506万円。この時点で軽微な建設工事の枠を超えます。
注文者から鋼材や部材を支給される場合、その市場価格と運送賃も請負代金に加えて判定する扱いです。
たとえば施工費300万円の工事で、市場価格250万円の鋼材を注文者から支給されれば、判定額は550万円。実際に自社へ支払われる金額が300万円であっても、軽微な建設工事には当たりません。
契約を分けても一つの工事なら合算する
正当な理由がある場合を除き、一つの建設工事を複数の契約に分けても、請負代金は合算して判断します。
たとえば、鉄骨の製作契約と現場組立て契約を別々にしても、実質的に一つの鉄骨造の躯体を完成させる工事であれば合計額で考える扱いです。500万円未満にするためだけに契約を分割しても、許可不要にはなりません。
なお、500万円未満の工事でも、元請会社が建設業許可を取引条件としているケースもあります。今後大きな工事の受注を見込むなら、案件が決まる前から準備を進めておくのも一案です。
鋼構造物工事に含まれるのは鉄骨・橋梁・鉄塔など
鋼構造物工事は、形鋼や鋼板などの鋼材を加工または組み立てることで工作物を築造する工事です。
代表的な工事には、次のようなものがあります。
- 鉄骨工事
- 橋梁工事
- 鉄塔工事
- 石油、ガスなどの貯蔵用タンク設置工事
- 屋外広告工事
- 閘門、水門などの門扉設置工事
工事名に「鉄骨」や「鋼」と付いているだけでは判断できません。鋼材の加工・組立てで何を築造する工事なのかを、契約内容、設計図、見積書などから見ていきます。
鉄骨工事は製作・加工から組立てまでを一貫して請け負う工事
鋼構造物工事のなかで、特に判断が分かれるのが鉄骨工事です。
鋼構造物工事に当たる鉄骨工事は、鉄骨の製作・加工から現場での組立てまでを一貫して請け負う工事。工場での切断、孔あけ、溶接などの加工を含めて、一連の工事として鉄骨造の躯体をつくり上げる工事が対象になります。
一方、他社が加工した鉄骨を現場で組み立てるだけの工事は、鋼構造物工事の範囲外です。
橋梁・鉄塔・タンク・水門なども鋼構造物工事に含まれる
鋼材の加工・組立てによって工作物を築造する工事は、鉄骨工事だけではありません。
道路橋や鉄道橋の橋梁工事、送電鉄塔・無線鉄塔の建設もその一つです。貯蔵用タンクの設置や水門などの門扉設置も鋼構造物工事に入ります。
大型の屋外広告塔や広告板の設置も同様です。鋼材の加工・組立てを伴うものであれば、鋼構造物工事に該当することがあります。
鋼構造物工事と関連業種は施工範囲で分かれる
鋼材を使っているから鋼構造物工事、看板を建てるから屋外広告工事、といった単純な分け方はできません。ポイントは、どこからどこまでを請け負って、何を完成させる工事なのか。この視点で見ていく必要があります。
特に混同されやすいのが、とび・土工工事、鉄筋工事、消防施設工事、建築一式工事の4業種です。
とび・土工工事との違い
同じ鉄骨や鋼構造物を扱っていても、施工範囲によっては鋼構造物工事に当たりません。
| 施工範囲 | 主な業種 |
|---|---|
| 鉄骨の製作・加工から現場組立てまで一貫して請け負う | 鋼構造物工事 |
| 加工済みの鉄骨を現場で組み立てるだけ | とび・土工工事 |
| 屋外広告物の製作・加工から設置まで一貫して請け負う | 鋼構造物工事 |
| 製作済みの屋外広告物を現場に設置する | とび・土工工事 |
「鉄骨工事を請け負っている」という説明だけでは、どちらの業種になるかは判断できません。工場での製作・加工工程を含むのか、現場での組立てだけなのか。ここを契約書や見積書で押さえていきます。
鉄筋工事との違い
鋼構造物工事と鉄筋工事は、どちらも鋼材を扱うため混同されやすい業種です。
鋼構造物工事では、形鋼や鋼板を加工・組立てして、鉄骨、橋梁、鉄塔などの工作物をつくります。
これに対して鉄筋工事は、棒鋼などの鋼材を加工、接合、組立てする工事。代表的なのは、鉄筋コンクリート造の建物や構造物における鉄筋の配筋・組立て、鉄筋継手工事です。
H形鋼を加工して鉄骨造の躯体をつくる工事と、鉄筋コンクリート造の建物で鉄筋を配筋する工事は、別の許可業種の扱いです。
消防施設工事とは目的が異なる
ビルの外壁などに設置される避難階段は、「消防」という言葉から消防施設工事だと誤解されることがあります。
しかし、建築物の躯体の一部として設置する避難階段は、消防施設工事ではありません。工事内容に応じて、鋼構造物工事または建築一式工事の扱いになります。
消防施設工事に当たるのは、スプリンクラー設備や屋内消火栓設備のように、消防用設備そのものを設置する工事です。設備の名称ではなく、建築物のどの部分を構成する工事なのかで判断します。
建築一式工事との違い
鋼構造物工事は、専門工事の一つです。
これに対して、鉄骨造の建物を元請として一式で請け負い、複数の専門工事を組み合わせて建物全体を完成させる工事は建築一式工事の扱いになります。
鉄骨造の建物を扱う工事だからといって、常に鋼構造物工事になるわけではありません。専門工事として鉄骨部分を請け負う工事と、建物全体を一式で請け負う工事は、別々の建設業許可で切り出していきます。
鋼構造物工事業の許可を取るための要件
鋼構造物工事業の建設業許可を取得するには、主に次の要件を満たすことが必要です。
- 建設業の経営管理を適正に行える体制がある
- 営業所ごとに営業所技術者等を置いている
- 財産的基礎または金銭的信用がある
- 請負契約について不正・不誠実な行為をするおそれがない
- 欠格要件に該当しない
- 社会保険へ適切に加入している
- 建設業を営む営業所としての実体がある
鋼構造物工事業で特に確認が必要になるのは、営業所技術者等の要件と、指定建設業としての特定建設業の技術者要件です。
営業所技術者等は資格または実務経験で満たす
一般建設業の鋼構造物工事業では、対象となる国家資格や技能検定を持つ人を営業所技術者等として置けます。
代表的な資格は次のとおりです。
| 資格 | 一般建設業 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 1級土木施工管理技士 | ○ | 特定建設業にも対応 |
| 2級土木施工管理技士(土木) | ○ | 一般建設業 |
| 1級建築施工管理技士 | ○ | 特定建設業にも対応 |
| 2級建築施工管理技士(躯体) | ○ | 一般建設業。「建築」「仕上げ」は対象外 |
| 1級建築士 | ○ | 特定建設業にも対応 |
| 技術士(建設部門「鋼構造及びコンクリート」等) | ○ | 対応する部門・選択科目に限る |
| 1級鉄工技能士 | ○ | 選択科目を確認 |
| 2級鉄工技能士 | ○ | 原則として合格後3年以上の実務経験が必要 |
鋼構造物工事業では、2級建築施工管理技士の種別に注意が要ります。「躯体」であれば対象ですが、「建築」や「仕上げ」だけでは営業所技術者等の資格として使えません。
2級土木施工管理技士も同じで、鋼構造物工事業に使えるのは「土木」の種別だけです。
技能検定の鉄工については、選択科目や合格時期で取扱いが変わることもあります。2級技能検定は、原則として合格後3年以上の実務経験が必要。平成16年4月1日以前に合格していた場合は経過措置により1年以上に短縮されます。
資格名だけで判断せず、等級、種別、選択科目、取得時期まで確認しておきましょう。
資格がなければ実務経験を使える
対象資格がなくても、一般建設業であれば、鋼構造物工事の実務経験によって営業所技術者等になれる可能性があります。
主な必要年数は次のとおりです。
| 学歴など | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 指定学科の卒業歴なし | 10年以上 |
| 大学・短期大学・高等専門学校の指定学科卒業 | 卒業後3年以上 |
| 高等学校・中等教育学校の指定学科卒業 | 卒業後5年以上 |
| 専門学校の指定学科卒業 | 卒業後5年以上 |
| 専門士・高度専門士となる指定学科卒業 | 卒業後3年以上 |
鋼構造物工事業の指定学科は、土木工学、建築学、機械工学に関する学科です。
複数の勤務先で積んだ鋼構造物工事の経験を合算できる場合もあります。ただし、同じ期間を二重に計算することはできません。
個人事業主として鋼構造物工事を行っていた期間や、前職での経験を使えるケースもあります。
実務経験は工事内容と在籍期間の両方を示す
「鉄骨会社で10年間働いていた」というだけでは、営業所技術者等の実務経験としては足りません。
確認するのは主に次の2点です。
- その期間に会社が鋼構造物工事を行っていたこと
- その期間に本人が会社へ在籍していたこと
確認方法は、経験した会社が当時、鋼構造物工事業の建設業許可を持っていたかどうかで変わります。ポイントは許可の有無です。
許可業者での経験であれば、許可を受けていた期間と本人の在籍期間を突き合わせます。無許可期間の経験を使う場合の裏付けは、鋼構造物工事だと分かる工事請負契約書や注文書、請求書と入金資料などです。
鉄骨工事では、請求書に「鉄骨工事一式」と書かれていても、実際には加工済み鉄骨の現場組立てだけを行っていたケースも見受けられます。この場合の経験は、鋼構造物工事ではなく、とび・土工工事の扱いです。
決め手になるのは、製作・加工から組立てまで一貫して請け負っていたことを示せる資料です。契約書、注文書、施工体制、工場での加工実績が分かる資料などから、施工範囲を読み取っていく作業になります。
本人の在籍についても、東京都が認める資料で経験期間の裏付けが必要です。
なお、鋼材の販売・運搬、清掃、日常的な保守点検だけでは、通常、鋼構造物工事の実務経験とは呼べません。鋼材の加工・組立てによって工作物を築造する施工経験が求められます。
鋼構造物工事業は指定建設業に含まれる
鋼構造物工事業は、建設業法上の「指定建設業」7業種の一つです。
指定建設業に当たるのは、次の7業種です。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 鋼構造物工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
指定建設業では、特定建設業の営業所技術者等や監理技術者について、他の業種より厳しい資格要件が定められています。
特定建設業の鋼構造物工事業には1級資格者などが必要
特定建設業の許可が要るのは、発注者から直接工事を請け負った元請業者が、その工事について下請へ発注する代金の合計を税込5,000万円以上とする場合です。
元請として受注した工事金額そのものが5,000万円以上かどうかで判断する制度ではありません。この5,000万円基準は令和7年2月1日の改正で、従来の4,500万円から引き上げられました。
鋼構造物工事業は指定建設業に含まれるため、特定建設業の営業所技術者等になれるのは、原則として次のような資格者です。
- 1級土木施工管理技士
- 1級建築施工管理技士
- 1級建築士
- 鋼構造物工事に対応する所定の部門・選択科目の技術士
- 国土交通大臣の認定を受けた人
2級施工管理技士や10年以上の実務経験だけでは、特定建設業の鋼構造物工事業における営業所技術者等の要件を満たせません。指導監督的実務経験を加える方法も、指定建設業では使えない扱いです。
よくある質問
- 鉄骨工事なら鋼構造物工事業の許可が必要ですか?
-
必ずしもそうではありません。
鉄骨の製作・加工から現場での組立てまで一貫して請け負う工事は、鋼構造物工事に区分されます。
一方、すでに加工された鉄骨を現場で組み立てるだけの工事は、とび・土工工事に区分されます。
- 鉄筋工事業と鋼構造物工事業は同じ許可ですか?
-
別の建設業許可です。
形鋼や鋼板などを加工・組み立てて、鉄骨、橋梁、鉄塔などをつくる工事は鋼構造物工事です。
一方、鉄筋コンクリート構造物などで鉄筋を加工・配筋・接合する工事は、鉄筋工事に区分されます。
- 2級建築施工管理技士で申請できますか?
-
種別が「躯体」であれば、一般建設業の鋼構造物工事業における営業所技術者等の資格として使用できます。
2級建築施工管理技士は種別によって対象となる許可業種が異なるため、合格証明書の種別を確認する必要があります。
- 1級建築士は使えますか?
-
1級建築士は、鋼構造物工事業の営業所技術者等の資格として使用できます。
一般建設業だけでなく、特定建設業の技術者要件にも対応する資格です。
- 資格がなくても実務経験で申請できますか?
-
一般建設業であれば、原則として10年以上の鋼構造物工事の実務経験によって、営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
土木工学、建築学または機械工学に関する指定学科を卒業している場合は、学歴に応じて必要な実務経験が3年または5年に短縮されます。
- 特定建設業も10年の実務経験で取得できますか?
-
特定建設業も10年の実務経験で取得できますか?
鋼構造物工事業では、10年の実務経験だけで特定建設業の技術者要件を満たすことはできません。
鋼構造物工事業は指定建設業に含まれるため、特定建設業では、1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士、1級建築士、対象となる技術士などの資格が必要です。
まとめ
鋼構造物工事業には、鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、水門などの門扉設置工事が含まれます。
これらの工事を1件税込500万円以上で請け負う場合は、原則として鋼構造物工事業の建設業許可が必要です。
ただし、加工済みの鉄骨を現場で組み立てるだけの工事は、とび・土工工事に区分されます。鉄筋の配筋・組立ても鉄筋工事となるため、実際の施工内容から許可業種を判断する必要があります。
営業所技術者等は、対象となる資格のほか、指定学科卒業後の実務経験や、原則10年以上の実務経験によって要件を満たせる場合があります。
お困りの際は当事務所へ
鋼構造物工事業では、鉄骨工事の施工範囲によって、とび・土工工事業などとの区分が問題になることがあります。
当事務所は葛飾区亀有を拠点に、東京都内の建設業許可申請に対応しています。
工事内容、保有資格、実務経験を確認し、必要な許可業種と申請方法を整理したうえで手続きを進めます。

