硬質ウレタンフォームの吹付け断熱や、配管・ダクトの保温保冷工事を1件税込500万円以上で請け負う場合、原則として熱絶縁工事業の建設業許可が必要です。
同じ「吹付け工事」でも、ウレタンによる断熱、塗料による塗装、モルタルによる仕上げでは、必要な許可業種が変わってきます。
さらに、配管そのものを設置する工事と、設置後の配管へ保温材を施工する工事も別業種の扱いです。
この記事では、熱絶縁工事業に含まれる工事、税込500万円基準、他業種との違い、営業所技術者等に使える資格・実務経験について解説していきます。
熱絶縁工事業に含まれる工事
熱絶縁工事とは、建物や設備を熱的に絶縁し、保温・保冷・断熱するための工事です。
代表的な工事には、次のものが挙げられます。
・冷暖房設備の熱絶縁工事
・冷凍冷蔵設備の熱絶縁工事
・動力設備の熱絶縁工事
・工場設備などの熱絶縁工事
・配管やダクトの保温
・保冷工事
・硬質ウレタンフォームの吹付け断熱工事
現場では「保温保冷工事」と呼ばれることも少なくありません。
グラスウールやロックウールなどを配管・ダクトへ施工する工事や、壁・天井・屋根の内側へ硬質ウレタンフォームを吹き付ける工事が代表例といえるでしょう。
税込500万円以上では熱絶縁工事業の許可が必要
熱絶縁工事は建築一式工事に該当しないため、1件の請負代金が税込500万円以上になる場合、原則として熱絶縁工事業の許可が求められます。
税込500万円未満の熱絶縁工事だけを請け負うのであれば、軽微な建設工事に当たり、原則として許可は不要です。
金額を判定する際には、次の点にも注意しましょう。
・消費税を含める
・注文者が支給する断熱材や保温材の市場価格と運送費を加える
・正当な理由なく契約を分割した場合は合計額で判断する
たとえば、施工代金が税込450万円でも、注文者から支給される断熱材などを加えて500万円以上になるケースでは、熱絶縁工事業の許可が必要となります。
吹付け工事は材料と目的で業種が変わる
「吹付け」という施工方法だけでは、建設業許可の業種は判断できません。
使用する材料と工事の目的によって、次のように区分されます。
| 工事内容 | 主な許可業種 |
|---|---|
| 硬質ウレタンフォームなどを吹き付けて断熱する | 熱絶縁工事業 |
| 塗料を吹き付けて塗膜をつくる | 塗装工事業 |
| 建築物へモルタルなどを吹き付けて仕上げる | 左官工事業 |
| 法面へモルタルや種子を吹き付ける | とび・土工・コンクリート工事業 |
硬質ウレタンフォームを壁や天井などへ吹き付け、建物の断熱性能を確保する工事は熱絶縁工事に該当します。
一方で、外壁へ塗料を吹き付ける工事は塗装工事、モルタルによる建築物の仕上げは左官工事という扱いです。材料と目的の確認は欠かせません。
配管・ダクト工事との違い
配管やダクトに関する工事では、管工事業との区分にも気を配る必要があります。
配管やダクトそのものを設置する工事は管工事の扱いです。
これに対して、設置された配管やダクトへ保温材・保冷材を取り付け、熱の損失や外部からの熱の侵入を防ぐ工事は熱絶縁工事へと区分されます。
たとえば、空調配管を設置し、その配管へ保温材を施工する場合には、管工事と熱絶縁工事が同じ現場に混在するケースも出てくるでしょう。
複数業種をまとめて請け負う場合
断熱工事では、管工事、塗装工事、内装工事などが一つの契約に含まれるケースもあります。
複数業種が混在する場合は、契約の中心となる工事を判断したうえで、それに伴って必要となる別業種の工事が附帯工事に当たるかを見極めていきます。
単純に金額が一番大きい工事が主たる工事になるわけではありません。
別業種の工事が独立した目的を持っていたり、単独の見積り・契約として請け負ったりする場合は、附帯工事とは限らないため注意が必要です。
附帯工事として請け負えるケースでも、自社で施工するには、その工事の技術上の管理を行える資格者などが求められることもあります。
対応できないときは、必要な許可を持つ事業者へ下請けに出すのが基本ルールです。
熱絶縁工事業の許可要件
熱絶縁工事業でも、次のような建設業許可の共通要件を満たす必要があります。
・経営業務を適正に管理できる体制
・営業所技術者等
・財産的基礎
・社会保険への適切な加入
・請負契約に関する誠実性
・欠格要件に該当しないこと
このうち、申請する業種によって資格や実務経験の内容が変わってくるのが、営業所技術者等の要件です。
営業所技術者等に使える主な資格
一般建設業の熱絶縁工事業に対応する主な資格は、次のとおりです。
| 資格 | 追加の実務経験 |
|---|---|
| 1級建築施工管理技士 | 不要 |
| 2級建築施工管理技士「仕上げ」 | 不要 |
| 1級熱絶縁施工技能士 | 不要 |
| 2級熱絶縁施工技能士 | 原則として合格後3年以上 |
| 登録保温保冷基幹技能者 | 修了証等による |
| 登録ウレタン断熱基幹技能者 | 修了証等による |
2級熱絶縁施工技能士については、原則として合格後に熱絶縁工事について3年以上の実務経験が求められます。
ただし、平成16年4月1日時点ですでに2級技能検定へ合格していた方は、合格後1年以上の実務経験で対応できるケースもあります。
登録基幹技能者を使う場合、修了証に記載された対象業種などを申請時に照合するのが基本の流れです。
指定学科・第一次検定・10年実務経験のルート
対象資格がないケースでも、学歴や実務経験によって営業所技術者等の要件を満たせることがあります。
指定学科卒業後の実務経験
熱絶縁工事業の指定学科は、次の分野に関する学科です。
・土木工学 ・建築学 ・機械工学
| 学歴等 | 必要な熱絶縁工事経験 |
|---|---|
| 大学・短期大学・高等専門学校などの指定学科卒業 | 卒業後3年以上 |
| 高校・中等教育学校などの指定学科卒業 | 卒業後5年以上 |
| 指定学科以外 | 10年以上 |
専修学校については、修業年限や専門士・高度専門士の称号などによって、必要な実務経験が3年または5年に分かれる仕組みです。
第一次検定合格後の実務経験
対応する施工管理技術検定の第一次検定合格者を、指定学科卒業者と同等に扱う制度もあります。
・対応する1級第一次検定合格後:熱絶縁工事の実務経験3年以上
・対応する2級第一次検定合格後:熱絶縁工事の実務経験5年以上
利用できる検定種目や種別については、申請時の資格区分表と照合しましょう。
10年以上の実務経験
資格や指定学科の学歴がない場合でも、熱絶縁工事について10年以上の実務経験を証明できれば、一般建設業の営業所技術者等になれる可能性があります。
単に設備会社や断熱会社へ10年間勤務していたことを示すだけでは足りません。
どの期間に、配管保温、ダクト保温、保冷工事、ウレタン吹付け断熱などへ従事していたのかを、資料で具体的に示すのがポイントです。
建築工事との経験を通算できる特例
熱絶縁工事だけで10年に届かないケースでも、建築工事業との経験を通算できる特例があります。
要件は、次の両方を満たすことです。
・建築工事業と熱絶縁工事業の実務経験が通算12年以上ある
・そのうち熱絶縁工事業の実務経験が8年を超えている
「8年以上」ではなく、「8年を超える」ことが求められる点に注意しましょう。
建築一式工事と断熱工事の両方に長年従事してきた方であれば、この特例を活用できる可能性が出てきます。
実務経験を証明する資料
実務経験ルートを使う場合は、熱絶縁工事を請け負い、施工していた事実と期間を資料で証明していきます。
代表的な資料は次のとおりです。
・工事請負契約書 ・注文書 ・請求書
・入金記録 ・見積書や工事明細書
・工事台帳 ・在籍期間を示す資料
「設備工事一式」「断熱工事一式」とだけ記載された資料では、熱絶縁工事の経験かどうかを判断できないこともあります。
配管保温、ダクト保温、ウレタン吹付け断熱など、具体的な施工内容が分かる見積明細や工程表を組み合わせるのが有効でしょう。
建設業許可を持たない事業者での経験でも、税込500万円未満の軽微な熱絶縁工事など、適法に施工された工事であり、資料で裏付けられれば使える余地があります。
特定建設業が必要になる場合
発注者から直接工事を請け負った元請業者が、1件の工事について締結する下請契約の合計額を税込5,000万円以上とする場合、原則として熱絶縁工事業の特定建設業許可が必要です。
下請として受注する工事金額が大きくても、それだけを理由に特定建設業許可が求められるわけではありません。ただし、税込500万円以上の熱絶縁工事を請け負うには、熱絶縁工事業の建設業許可が欠かせません。
熱絶縁工事業は指定建設業ではありません。
そのため、一般建設業の営業所技術者等の要件を満たしたうえで、発注者から直接請け負った税込4,500万円以上の熱絶縁工事について、2年以上の指導監督的実務経験があれば、特定営業所技術者等の要件を満たせるケースもあります。
この4,500万円は技術者の経験要件であり、特定建設業が必要になる下請契約額5,000万円とは別の基準です。
よくある質問
- ウレタン吹付け断熱は熱絶縁工事ですか?
-
はい、硬質ウレタンフォームなどを吹き付けて断熱・保温・保冷を図る工事は、熱絶縁工事にあたります。塗料を吹き付けて塗膜をつくる工事は塗装工事です。同じ吹付け作業でも、使う材料と工事の目的から判断してください。
- 資格がなくても熱絶縁工事業の許可を取れますか?
-
はい。熱絶縁工事について10年以上の実務経験がある人を営業所技術者として置ければ、資格がなくても一般建設業の許可を取得できます。建築一式工事と熱絶縁工事の経験を合計12年以上有し、そのうち熱絶縁工事の経験が8年を超えていれば、この方法でも要件を満たせます。
- 配管の保温工事は熱絶縁工事と管工事のどちらですか?
-
配管そのものを設置する工事は管工事、設置済みの配管に保温材や保冷材を施工する工事は熱絶縁工事です。両方を一つの契約で請け負う場合は、保温工事が管工事の施工に伴って必要となる附帯工事なのか、それぞれが独立した目的・効用を持つ工事なのかを確認します。独立した工事であれば、工事ごとに必要な許可を判断します。
- 特定建設業は1級資格がないと取れませんか?
-
いいえ。熱絶縁工事業は指定建設業ではないため、指導監督的実務経験を使う方法が残されています。一般建設業の営業所技術者の要件を満たしたうえで、元請として4,500万円以上の熱絶縁工事を2年以上指導監督した経験があれば、特定営業所技術者になれます。
- 500万円未満の熱絶縁工事だけなら許可は不要ですか?
-
1件の請負代金が500万円未満(税込)の熱絶縁工事は、軽微な建設工事にあたるため、建設業許可は不要です。ただし、注文者から材料の提供を受ける場合は、その市場価格と運送費を請負代金に加えて判定するので、注意してください。
- 耐火被覆工事には熱絶縁工事業の許可が必要ですか?
-
耐火被覆工事は、施工材料や工法によって判断が分かれやすい工事です。吹付けロックウール、巻付け材、成形板、耐火塗料では、それぞれ施工内容が異なります。国土交通省の業種例示に耐火被覆工事は明記されていないため、仕様書や見積書を示したうえで、許可行政庁へ確認してください。
まとめ
熱絶縁工事業には、配管・ダクトの保温保冷工事、冷暖房・冷凍冷蔵設備の熱絶縁、硬質ウレタンフォームの吹付け断熱などが含まれます。
1件税込500万円以上の熱絶縁工事を請け負う場合、原則として熱絶縁工事業の建設業許可が必要です。
同じ吹付け工事でも、ウレタンによる断熱は熱絶縁工事、塗料による施工は塗装工事、モルタルによる建築物の仕上げは左官工事という区分になります。
営業所技術者等については、建築施工管理技士、熱絶縁施工技能士、登録基幹技能者などの資格ルートに加え、指定学科、第一次検定、10年実務経験、建築工事との通算特例が用意されています。
まずは、施工内容、請負金額、保有資格、過去の工事資料を整理し、熱絶縁工事業だけで足りるのか、管工事業や塗装工事業なども必要になるのかを見極めていきましょう。
お困りの際は当事務所へ
「ウレタン吹付け工事が熱絶縁工事に当たるか分からない」「10年の実務経験を資料で証明できるか判断できない」という段階でも構いません。
工事内容、資格者の状況、過去の実務経験資料を整理したうえで、必要な許可業種と申請書類をご案内いたします。
当事務所では、葛飾区を拠点に、東京都全域および周辺地域の建設業許可申請をサポートしています。取得すべき業種が分からない段階からご相談ください。

