特殊車両通行許可を取得していても、車検証に記載された最大積載量を超えて貨物を積めるわけではありません。
反対に、最大積載量の範囲内で積んでいても、車両の総重量や軸重などが道路法上の制限を超える場合は、特殊車両通行許可が必要になることがあります。
特車申請と過積載は、同じ「重量」を扱いますが判定する基準が異なります。
特車申請と過積載は別の制度
特車申請は道路法に基づく手続きです。
道路の構造を守り、交通の危険を防ぐため、道路を通行する車両の幅・長さ・高さ・総重量・軸重などに制限が設けられています。
過積載は道路交通法上の積載重量の制限に関する問題です。
一般的な貨物自動車では、自動車検査証などに記録された最大積載重量を超えないことが道路交通法施行令第22条で定められています。
| 項目 | 特殊車両通行許可 | 過積載 |
|---|---|---|
| 主な法律 | 道路法・車両制限令 | 道路交通法 |
| 主な基準 | 総重量・軸重・幅・高さ・長さなど | 最大積載量 |
| 見るもの | 積載状態の車両と通行する道路 | 実際に積んだ貨物の重量 |
| 許可 | 制限を超える場合に通行許可等を検討 | 最大積載量を超えて積むための特車許可ではない |
この違いを分けて考えることが大切です。
特車申請では車両制限令の基準を見る
道路法上の一般的制限値は、車両制限令第3条に定められています。
主な数値は次のとおりです。
| 項目 | 一般的制限値 |
|---|---|
| 幅 | 2.5m |
| 長さ | 12m |
| 高さ | 3.8m |
| 総重量 | 20t |
| 軸重 | 10t |
| 輪荷重 | 5t |
| 最小回転半径 | 12m |
隣接軸重については、軸間距離によって基準が変わります。
- 軸距1.8m未満:18t
- 軸距1.3m以上1.8m未満で、各軸重が9.5t以下:19t
- 軸距1.8m以上:20t
ただし、総重量20t・高さ3.8mがすべての道路で一律の上限になるわけではありません。
重さ指定道路では、最遠軸距や車両長に応じて総重量の一般的制限値が最大25tになります。高さ指定道路では4.1mです。また、セミトレーラ連結車などには別の特例があります。
そのため、「総重量20tを超えたら必ず特車申請」だけで判断することはできません。
通行する道路や車両の種類も含めて判定します。
過積載は最大積載量を見る
過積載を判断するときの中心になるのは、車検証に記録された最大積載量です。
たとえば最大積載量が10,000kgの車両に、それを超える貨物を積載して運行すれば、道路交通法上の積載重量制限に抵触します。
ここで、特車許可の重量とは分けて考えます。
たとえば特車許可証に総重量30tと記載されていても、それは、
「この経路を総重量30tまでの車両が一定の条件で通行できる」
という道路法上の許可です。
車検証の最大積載量を超えて貨物を積むことまで認めるものではありません。
最大積載量以内でも特車許可が必要になる
過積載でないことと、特殊車両通行許可が不要であることも同じではありません。
たとえば、
- 車検証の最大積載量以内
- しかし積載状態の総重量が道路法上の制限を超える
という場合があります。
この場合、最大積載量を超えていなければ過積載にはなりませんが、通行する道路によっては特車許可が必要です。
また、総重量だけでなく、
- 軸重
- 隣接軸重
- 幅
- 高さ
- 長さ
のいずれかが道路法上の制限を超える場合にも特車申請の対象になることがあります。
特車許可があっても過積載になる
反対のケースもあります。
特殊車両通行許可を取得していても、実際に積んだ貨物が車検証の最大積載量を超えていれば、過積載の問題が生じます。
判断するときは次の2点を別々に見ます。
| 最大積載量以内 | 最大積載量超過 | |
|---|---|---|
| 道路法上の制限・許可内容を守っている | 両方の基準を満たす | 過積載 |
| 道路法上の制限・許可内容に違反 | 特車関係の違反 | 両方の違反になり得る |
特車許可を取得しているかどうかだけで、過積載の判定は決まりません。
特車許可の重量を超えても必ず過積載とは限らない
ここも混同しやすいところです。
たとえば、
- 特車許可上の総重量:30t
- 実際の総重量:31t
となれば、許可内容との関係で道路法上の問題が生じます。
ただし、この1t超過だけを見て「過積載」とは判断できません。
過積載になるかどうかは、実際に積んだ貨物重量が車検証の最大積載量を超えているかで別に判断します。
逆に、特車許可の重量範囲内でも、最大積載量を超えて貨物を積んでいれば過積載になります。
特車違反と過積載が同時に成立するケース
両方の基準を超えれば、特車関係の違反と過積載が同時に問題になることがあります。
最大積載量を超え、特車許可もないケース
最大積載量を超えて貨物を積み、さらに積載状態の車両が道路法上の制限を超えているにもかかわらず必要な特車許可を受けていない場合です。
道路交通法と道路法をそれぞれ見る必要があります。
最大積載量を超え、特車許可条件にも違反したケース
特車許可を取得していても、
- 最大積載量を超えている
- 特車許可で認められた重量やその他の条件にも違反している
という状態なら、両制度の違反が問題になる可能性があります。
土砂など実際の重量が想定より増えたケース
ダンプなどでは、積載する土砂の含水状態によって実際の重量が変わることがあります。
積み込み時の見込みより重くなれば、最大積載量や道路法上の許可重量などを超える可能性があります。
重量が変動しやすい貨物では、積載量をぎりぎりまで設定せず、実際の重量を把握して運行することが重要です。
最大積載量以内でも軸重を超えることがある
総積載量だけを見ていると、軸重の超過を見落とすことがあります。
たとえば貨物が後方へ偏れば、車両全体では最大積載量以内でも、特定の車軸へ重量が集中することがあります。
その結果、
- 軸重10t
- 隣接軸重18t・19t・20tなど
の道路法上の制限に抵触することがあります。
特にバラ積み貨物では注意が必要です。
国土交通省の留意事例でも、バラ積み貨物によって隣接軸重が一般的制限値を超えている場合は、制限値以内になるよう積載物重量を減らすよう案内されています。
貨物の重量を減らすだけでなく、積載位置を調整して各軸への荷重配分を見ることも重要です。
特車違反の主な罰則
道路法では、特殊車両の通行に関する違反について罰則が定められています。
たとえば、
- 一般的制限値を超える車両を許可なく通行させた
- 特車許可の条件に違反した
場合は、100万円以下の罰金の対象となることがあります。
また、一定のトンネル・橋梁等の通行制限に違反した場合や、道路管理者・道路監理員による通行中止などの命令に違反した場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています。
法人や事業主にも罰則が科される両罰規定があります。
特車違反の詳しい内容は、特殊車両通行許可の違反・罰則で解説しています。
過積載の罰則は超過割合によって変わる
過積載は、最大積載量をどれだけ超えたか、車両区分などによって違反点数や反則金の扱いが変わります。
2026年4月現在、大型車等の積載物重量制限超過は、
- 10割以上:6点
- 5割以上10割未満:3点
- 5割未満:2点
とされています。
大型車等で最大積載量を10割以上超過した場合は反則金制度の対象ではなく、6か月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金が定められています。
運送事業者では、道路交通法上の処分だけでなく、事業用自動車に関する行政処分等へつながる場合もあります。
荷主にも過積載を防ぐための規定がある
過積載はドライバーだけの問題とは限りません。
道路交通法では、荷主、荷受人、荷送人などが、運転者に対して過積載となる運行を要求することなどを禁止しています。
警察署長が再発防止命令を出す仕組みもあり、その命令に違反した場合には罰則があります。
したがって、
荷主から言われたから積んだ
という事情だけで過積載の問題がなくなるわけではありません。
運送会社側でも、積載物の重量を把握し、最大積載量や特車許可の内容を超えない運行計画を組む必要があります。
運行前に見る3つの重量
重量物を運ぶときは、少なくとも次の3つを分けて見ておくと整理しやすくなります。
- 車検証の最大積載量
過積載にならないための積載重量の上限を見る。 - 実際の総重量・軸重
道路法上の一般的制限値や指定道路の基準と比較する。 - 特車許可で認められた重量・条件
許可取得済みの場合は、実際の運行が許可内容に収まっているかを見る。
この3つのうち1つだけを見て運行可否を判断しないことが大切です。
よくある質問
- 特車許可があれば最大積載量を超えて積めますか?
-
できません。特車許可は道路法上の通行許可です。車検証の最大積載量を超えることを認める許可ではありません。
- 最大積載量以内なら特車申請は不要ですか?
-
不要とは限りません。最大積載量以内でも、積載状態の総重量・軸重・幅・高さ・長さなどが道路法上の制限を超える場合は、特殊車両通行許可等が必要になることがあります。
- 特車許可の総重量を超えたら必ず過積載ですか?
-
必ずしも過積載とは限りません。特車許可違反かどうかと、最大積載量超過かどうかは別に判定します。両方の基準を超えた場合は、両方の違反が問題になることがあります。
- 最大積載量以内でも軸重違反になることはありますか?
-
あります。貨物の積載位置によって一部の車軸へ荷重が集中し、軸重や隣接軸重の一般的制限値を超えることがあります。
- 荷主から過積載になる量を積むよう求められた場合はどうなりますか?
-
道路交通法には、荷主などが過積載となる運行を要求することを禁止する規定があります。荷主等に対して警察署長が再発防止命令を行う制度もあります。
まとめ
特殊車両通行許可と過積載は、同じ重量を扱っていても判定基準が異なります。
過積載は車検証の最大積載量を基準に判断します。特車申請では、積載状態の車両について総重量・軸重・寸法などを道路法上の制限や通行する道路と照らして判断します。
特車許可を持っていても最大積載量を超えてよいわけではなく、最大積載量以内でも特車許可が必要になることがあります。
重量物輸送の特車申請や、車両重量・軸重の判断でお困りの際は、お気軽にご相談ください。

