包括申請の車両内訳書を作成していると、許可証に記載される総重量が、申請した車両のどれとも一致しない場面に行き当たります。これは入力ミスではなく、「合成車両」という審査上の考え方によるものです。
合成車両とは、包括申請に含まれる複数車両の諸元を組み合わせて作られる、道路構造審査専用の車両像を指します。実在する1台を代表として選ぶ仕組みではなく、幅・長さ・高さ・重量・軸重といった数値を組み合わせて作られる点がポイントです。そのため許可証の数値だけを見ても、保有車両のどれに対応するのか判別できないことがあります。
この記事では、合成値がどのように作られるか、許可証の総重量をどう読み解くか、そして包括申請を分けた方がよいケースまで、実務の視点から見ていきましょう。
合成車両とは
たとえば、次の2台をまとめて申請するケースを考えてみます。車両Aは全長15m・総重量20t、車両Bは全長12m・総重量25tです。
長さと重量だけに絞ると、審査で使われる合成値には、長い側の15mと重い側の25tが反映されるイメージになります。つまり、
全長15m・総重量25t
という、実際には存在しない組み合わせで道路への影響を審査することになります。実際の合成では長さと総重量だけでなく、幅、高さ、車両自重、積載物重量、軸重、軸距など複数の項目が対象です。
包括申請では、複数車両の諸元から、道路への影響が厳しくなる方向の数値を組み合わせて審査します。
総重量:20t
総重量:25t
※ 実在する1台を選ぶ仕組みではありません。実際の合成では、幅・高さ・重量・軸重・軸距など複数の項目が使われます。
合成値は「すべて最大値」ではない
合成車両は「複数車両の最大値を集めたもの」と説明されることがありますが、正確には、すべての項目を単純に最大値へ置き換える仕組みではありません。基準になるのは、道路構造への影響が大きくなる側の数値を採用するという考え方です。
| 項目 | 合成値に反映されやすい方向 |
|---|---|
| 幅・高さ・長さ | 大きい値 |
| 総重量・最大軸重 | 大きい値 |
| 軸距(軸と軸の間隔) | 短い値になる場合がある |
幅・高さ・長さ・総重量・最大軸重などは、大きい値ほど道路への影響が大きくなります。一方、軸と軸の間隔などは、短い方が道路へ重量が集中しやすくなる項目です。そのため項目によっては、小さい値が合成値へ反映されることもあります。特車申請では総重量だけでなく、軸重・輪荷重・隣接軸重も道路構造審査に関わってくるためです。
合成車両は「一番大きな車両を選ぶ」ものではなく、申請車両の中から道路への影響が厳しくなる諸元を組み合わせたものと捉えると理解しやすくなります。
なぜ包括申請では合成車両を使うのか
包括申請は、一定の条件を満たす複数の車両を一つの申請にまとめる方法です。個々の車両ごとに別々の許可証を作るのではなく、まとめた車両が同じ経路を通行することを前提に道路構造上の審査を行います。
申請に含まれるどの車両を使っても道路構造上問題がないかを判断するために、道路への影響が大きくなる合成車両を用いる、という理屈になります。合成車両で通行可能と判断された経路であれば、その包括申請に含まれる実車も、許可された条件の範囲で通行できるという考え方です。
特車申請の包括申請では、まとめられる車両の条件や軸種、申請時の注意点を整理しています。
合成値によって通行条件が厳しくなることがある
合成車両では、実在する1台にはない厳しい諸元の組み合わせができることがあります。たとえば一方の車両は長さが大きく、もう一方は総重量や軸重が大きいというケースです。それぞれ道路への影響が厳しい側の数値が、合成車両へ反映されます。
その結果、各車両を個別に申請した場合には付かなかった通行条件が、包括申請では付くことがあります。橋梁などの重量条件が厳しくなれば、徐行や誘導車の配置、他車との同時通行を避けるといった条件が関わってきます。特車の通行条件A〜Dは、算定された車両諸元と通行する道路の組み合わせによって決まる仕組みです。
合成値が一般的制限値を超えたからといって、それだけで申請が差し戻されるわけではありません。算定結果に応じて条件付きで許可されたり、個別審査に進んだり、経路によっては通行できない結果となったりします。
許可証の総重量は「全車両が積める重量」ではない
合成車両で特に注意したいのが、許可証に記載される総重量です。包括申請では合成値をもとに審査するため、許可証の総重量が、個々の車両の実際の総重量と一致しないことがあります。
たとえば、包括申請の許可証に総重量36tと記載されていても、その申請に含まれるすべての車両が36tまで積載できるとは限りません。実際に運行するときは、特殊車両通行許可で認められた重量の範囲内であることに加え、その車両の車検証上の最大積載量を超えないことも必要になります。特殊車両通行許可は、車検証の最大積載量を超えて貨物を積載できるようにする制度ではないためです。
特殊車両通行許可と車検証の最大積載量は別の基準です。特車申請と過積載の違いもあわせて確認しておきましょう。
包括申請の合成値で迷ったら
包括申請では、実際の車両とは異なる合成値をもとに審査されるため、 許可証の総重量だけでは各車両がどの重量まで運行できるか判断できないことがあります。 当事務所では、車両諸元や既存許可を確認したうえで、包括申請の組み方から特車申請まで対応しています。
特車申請サービス →車両諸元の差が大きいなら包括申請を分ける方法もある
包括申請は、条件上まとめられる車両を、すべて一つの申請に入れればよいとは限りません。たとえば、諸元が近い車両5台と、それらより大幅に重く長い車両1台を同じ包括申請に入れたとします。
その1台の厳しい諸元が合成値に反映されることで、残り5台にも同じ通行条件が適用される可能性があります。このような場合は、諸元が近い車両ごとに包括申請をまとめ、大きく異なる車両だけ別申請にする方が、運行の負担を抑えやすくなります。
当事務所でも、重量や寸法の差が大きい車両については、分けて申請した方が各車両の最大積載量を活かしやすいと判断し、案内することがあります。申請件数を減らすことだけでなく、許可後にどの条件で実際に走ることになるのかまで見きわめたうえで、申請単位を決めることが重要です。
条件上まとめられる場合でも、車両諸元の差が大きいと合成値が厳しくなることがあります。
寸法・重量・軸配置が近い
1台だけ長い・重いなど差が大きい
申請を分けることも検討
※ 申請件数だけでなく、許可後の通行条件まで踏まえて申請単位を決めます。
トラクタ・トレーラの組み合わせにも注意する
セミトレーラ連結車では、トラクタとトレーラを連結した状態で道路構造上の審査を行います。複数のトラクタと複数のトレーラを包括申請にまとめると、組み合わせによって長さ・総重量・軸距・軸重などが変わってくることになります。
特にトラクタとトレーラで重量や軸配置の差が大きい場合は、合成車両と個々の連結車両との差も広がりやすくなります。許可証の総重量だけを確認するのではなく、実際に使うトラクタ・トレーラの組み合わせごとに、車検証の最大積載量や車両諸元を照らし合わせておいてください。
許可取得後に車両を追加すると合成値が変わることがある
包括申請の許可を取得したあとに、新しいトラックやトレーラを追加することがあります。このときは、追加する車両の諸元と、現在の包括申請の合成値を照らし合わせます。
追加しても現在の審査結果に影響しない範囲であれば変更申請として扱える場合がありますが、追加車両によって合成値が大きく変わるときは手続きの扱いも変わることになります。車両を追加・交換する際は、現在の許可内容と新しい車両を突き合わせ、特車の変更申請で対応できるかを確認します。
中古車から新車へ入れ替える場合も、単に「同じ型式だから合成値は変わらない」と判断せず、実際の車両諸元を確認しておく必要があります。
合成車両と包括申請は同じ意味ではない
包括申請と合成車両は密接に関わっていますが、同じ意味ではありません。包括申請は、条件を満たす複数の車両を一つの申請にまとめる申請方法です。合成車両・合成値は、その包括申請を道路構造上審査するために使われる車両諸元を指します。
包括申請では、対象車両を特定するために車両内訳書も使います。特車申請の必要書類とあわせて、車両情報を正確にそろえておきましょう。
包括申請でも手数料は申請車両台数で計算する
複数台を一つの包括申請にまとめても、手数料の車両台数が「1台」になるわけではありません。国の窓口へ申請し、通行経路が複数の道路管理者にまたがる通常の申請では、原則として次の式で計算します。
申請車両台数 × 申請経路数 × 200円
ここでいう申請車両台数は、トラックまたはトラクタの台数です。たとえばトラクタ10台を包括申請しても、手数料計算上の車両台数が1台になるわけではありません。
詳しい計算方法は、特車申請の手数料で確認できます。
よくある質問
- 合成車両は実在する車両ですか?
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実在する特定の1台ではありません。包括申請に含まれる複数車両の諸元から、道路構造への影響が大きくなるように作られる、審査専用の車両諸元です。
- 合成値はすべて最大値になるのですか?
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すべての項目が最大値になるわけではありません。幅・高さ・長さ・重量などは大きい側が道路への影響を大きくしますが、軸距などでは短い側が厳しい条件になる項目もあります。
- 合成車両が一般的制限値を超えたら差し戻されますか?
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一般的制限値を超えたことだけで差し戻されるわけではありません。道路構造上の算定によって通行条件が付いたり、個別審査になったり、経路によっては通行できなかったりします。
- 包括申請にすると通行条件が厳しくなることはありますか?
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あります。重量・寸法・軸重などの差が大きい車両をまとめると、それぞれの厳しい諸元が合成車両へ反映され、個別申請より厳しい条件になりやすくなります。
- 許可証に記載された総重量まで積載できますか?
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許可証の総重量だけでは判断できません。実際の積載は、特車許可で認められた重量と、その車両の車検証上の最大積載量の両方の範囲内に収める必要があります。
- 型式が違う車両も包括申請できますか?
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型式名だけで可否が決まるわけではありません。車種・軸種・積載貨物・通行経路・通行期間など、包括申請の条件を満たしているかで判断します。諸元差が大きい場合は、条件を満たしていても申請を分けた方がよいことがあります。
まとめ
合成車両は、包括申請に含まれる複数の車両から作られる、道路構造上の審査専用の車両諸元です。幅・長さ・高さ・重量・軸重・軸距などについて、道路への影響が大きくなる方向の数値を組み合わせるため、実在するどの1台とも一致しないことがあります。
車両同士の諸元差が大きい場合は、合成値によって個別申請より通行条件が厳しくなる点に注意が必要です。運行条件を抑えたい場合は、諸元の近い車両ごとに包括申請を分けることも検討しましょう。
また、包括申請の許可証に記載された総重量は、すべての車両がその重量まで積載できることを意味しません。実際の運行では、特殊車両通行許可と車検証の最大積載量の両方を守る必要があります。
特車申請の制度・手続き・車種別対応は、特殊車両通行許可申請ガイドにまとめています。
包括申請の合成車両・合成値でお困りならご相談ください
包括申請では、まとめる車両の組み合わせによって合成値や通行条件が変わります。車両を一つにまとめた方がよいのか、諸元ごとに申請を分けた方がよいのか、判断しにくい場面も出てきます。

