東京都の宅建業免許に必要な専任宅建士|常勤性・副業・人数要件を解説

宅建士の資格を持つ人が社内にいれば、その人をそのまま専任宅建士として届け出られるとは限りません。前職の勤務先が資格登録簿に残っていたり、別会社の勤務時間と重なっていたりすると、書類がそろっていても審査は進まないためです。

専任宅建士は、事務所ごとに、宅建業に従事する人5名につき1名以上を置く必要があります。有効な宅建士証を持ち、事務所の通常の勤務時間に常勤していることが前提です。代表取締役や取締役であっても、勤務実態があれば専任宅建士を兼ねることができます。

この記事では、東京都知事免許の新規申請を前提に、専任宅建士の人数要件や常勤性、副業・兼業、前職の勤務先登録など、申請前に押さえておきたい点を解説します。

目次

専任宅建士とは

専任宅建士とは、宅建業を営む事務所に常勤し、その事務所の宅建業務に専ら従事する宅地建物取引士をいいます。

宅建試験の合格だけでは足りません。都道府県知事の資格登録を受け、有効期間内の宅地建物取引士証(宅建士証)が交付されている人だけが対象です。試験合格から時間が経っている場合や、宅建士証の更新をしていない場合は、登録や交付の手続が必要になることがあります。

専任宅建士になるには、次の3つの要件を満たす必要があります。

有効な宅建士証を持っている

宅建士証の有効期間は5年です。試験合格後に登録だけを済ませ、宅建士証の交付を受けていない人は、この要件を満たしません。有効期限が切れているケースも同様です。

事務所の通常の勤務時間に常勤する

常勤とは、宅建業者が定める通常の勤務時間を通して、継続して勤務していることをいいます。一部の時間帯しか勤務しない場合や、日中は別会社で働いている場合は、専任宅建士として届け出ることはできません。

宅建業務に専ら従事する

事務所に常勤しているだけでは足りず、その事務所の宅建業務に継続して携われることも必要です。別部門の業務を中心に担当している場合や、勤務時間中に個人事業の対応をしている場合は、専任宅建士として認められないことがあります。

専任宅建士に当たるかどうかは、常勤しているか、宅建業務に専従できるかの両面から判断されます。

5人に1人の人数要件

各事務所には、宅建業に従事する人5名につき、1名以上の専任宅建士を置く必要があります。従事者が6名になれば2名、11名になれば3名が必要です。人数に端数が出る場合は切り上げて数えます。

事務所で従事する人数専任宅建士の必要数
1〜5名1名以上
6〜10名2名以上
11〜15名3名以上
16〜20名4名以上

専任宅建士本人も、宅建業に従事する人の数に含まれます。対象となるのは営業担当者だけではありません。宅建業を専業とする会社では、代表者や常勤役員、営業担当者のほか、受付や事務を担当する従業員も原則として含まれます。役職や担当名だけで、人数から外せるわけではありません。

建設業などを兼営している会社では、宅建業を担当する役員や従業員を中心に数えます。ただし、宅建業が会社の主な事業である場合は、総務や経理などの管理部門も含まれることがあります。

採用によって従事者が5名から6名になると、必要な専任宅建士も1名から2名に増えます。増員を予定している場合は、採用前に2人目の専任宅建士を確保しておく必要があります。

代表者や役員との兼任

代表取締役が兼ねる場合

代表取締役本人が宅建士であれば、専任宅建士を兼ねることができます。

代表者1人だけの会社で、本人が宅建業務を行う場合は、別に宅建士を雇う必要はありません。ただし、事務所の通常の勤務時間に常勤し、宅建業務に従事できることが条件です。日中は別会社の経営に携わり、事務所にほとんどいないような場合は、宅建士の資格を持っていても、専任宅建士として認められないことがあります。

取締役が兼ねる場合

取締役などの役員も、実際に常勤していれば専任宅建士を兼ねることができます。

役員は雇用保険に加入していないことが多いため、法人税申告書の役員報酬明細や社会保険関係の書類などを提出し、常勤していることを示します。東京都の手引でも、法人税申告書の表紙や役員報酬明細が、勤務状況を裏づける資料として挙げられています。

監査役は兼ねられない

申請会社の監査役は、その会社の専任宅建士を兼ねることができません。

監査役は、取締役の職務執行を監査する立場にあり、会社の業務を執行する立場ではないためです。

正社員でなければならないのか

宅建業法では、正社員であること自体が専任宅建士の要件とされているわけではありません。重視されるのは、事務所の通常の勤務時間を通して働き、宅建業務に専従できるかどうかです。

有期契約の従業員でも、正社員と同程度の日数・時間で勤務し、その実態を資料で示せる場合は、専任宅建士になれる可能性があります。一方、週に数日だけ勤務する人や、午前中だけ出勤する人など、通常の勤務時間の一部しか働かないパート・アルバイトは、常勤と認められにくくなります。

実際の働き方ごとの目安は、次のとおりです。

状況判断の目安
代表者本人が事務所で常勤する申請しやすい
営業時間を通して勤務する従業員申請しやすい
勤務時間外に小規模な副業を行う追加資料で説明できれば可能性あり
別会社の非常勤役員を兼ねる勤務時間と職務内容による
テレワークを利用する勤怠管理と業務環境の資料が求められる
日中は別会社で勤務する専任性が認められにくい
営業時間の一部だけ勤務する常勤性が認められにくい
同業他社でも勤務する原則として認められない

雇用契約書に「正社員」と記載されていても、ほとんど出勤していなければ、専任宅建士としては認められません。判断では、勤務日や勤務時間、賃金の支払い、社会保険、勤怠記録などが総合的に見られます。雇用形態よりも、継続して勤務しているかどうかが重視されます。

常勤性を判断する3つのポイント

常勤性を判断する3つのポイント

正社員かどうかではなく、実際の勤務日・勤務時間・勤務実態から判断されます。

勤務日と勤務時間

事務所の通常の勤務時間に継続して勤務できるかを見ます。

他の仕事との重なり

別会社の勤務や副業が、常勤に支障を与えないかを見ます。

勤務を示す資料

給与、社会保険、勤怠、役員報酬などから実態を示します。

認められやすい例

  • 代表者本人が事務所で常勤する
  • 通常の勤務時間を通して勤務する
  • 給与や勤怠などで勤務実態を示せる

認められにくい例

  • 午前中だけ、週に数日だけ勤務する
  • 日中は別会社で勤務している
  • 書面上は在籍しているが勤務実態がない

雇用契約書に「正社員」と記載されていても、実際に勤務していなければ常勤性は認められません。

副業・兼業がある場合

東京都では、2024年11月1日以降、専任宅建士が通常の勤務時間外に行う副業について、一定の条件を満たせば認める取扱いとなっています。

副業をしているだけで、専任宅建士になれないわけではありません。本業と副業の時間が重ならず、事務所での勤務や宅建業務に支障がないことが条件です。

専任宅建士になれるかを分ける5つのポイント

専任宅建士になれるかを分ける5つのポイント

副業や兼業があるときは、次の順番で専任性を見ます。

  1. 1
    有効な宅建士証があるか
    ない場合は専任宅建士になれません。
  2. 2
    事務所の通常の勤務時間に常勤できるか
    一部勤務や他社勤務との重複は難しくなります。
  3. 3
    本業と副業の勤務時間が重ならないか
    移動時間も含めて見られます。
  4. 4
    同業他社に従業者として勤務していないか
    勤務している場合は認められません。
  5. 5
    宅建業務に専ら従事できるか
    副業の量や移動が本業に影響しないことが必要です。
認められる可能性あり すべて満たし、勤務実態を示せる
追加資料が必要 時間・業務内容・移動の説明が必要
認められにくい 勤務時間の重複や同業他社勤務がある

個人事業を営んでいる場合

法人の専任宅建士が、勤務時間外に行政書士などの個人事業を営むことは、一定の条件を満たせば認められる場合があります。

たとえば、宅建業者で平日の9時から18時まで勤務し、個人事業は夜間や定休日だけに行うケースです。一方、勤務時間中に個人事業の電話や来客に対応している場合は、宅建業務に専従しているとは認められにくくなります。

別会社の代表者を兼ねる場合

他の法人の代表者を兼ねている場合は、それぞれの勤務時間や業務内容などをもとに、専任宅建士として勤務できるかが個別に判断されます。

別会社にほかの役員や従業員がおらず、本人が日中の対応も担っている場合は、宅建業者での常勤性を説明するのが難しくなります。別会社の営業時間中に、宅建業者の専任宅建士として勤務する形は、原則として認められません。

副業が認められにくい典型例

次のような場合は、常勤性や専従性を説明するのが難しくなります。

  • 本業と副業の勤務時間が重なっている
  • 副業先への移動が本業の勤務時間にかかる
  • 定休日だけでなく、宅建業者の営業日にも副業を行っている
  • 別の宅建業者に従業者として勤務している
  • 副業の業務量が多く、本業に支障が出るおそれがある
  • 副業先が遠方にあり、移動に多くの時間がかかる

副業がある場合は、略歴書に副業先を記載し、勤務時間を記した誓約書や、本業と副業それぞれの営業時間が分かる資料などを提出します。副業の内容や働き方によっては、追加の資料を求められることもあります。

通勤時間とテレワーク

専任宅建士の住所が事務所から遠い場合は、毎日無理なく通勤できるかどうかも判断されます。

「片道何分まで」といった一律の基準はありません。始業時刻に間に合うか、終業後に無理なく帰宅できるかを、交通手段や通勤経路などから判断します。

テレワークを利用する場合も、常勤性や専従性の要件が緩くなるわけではありません。事務所にいるときと同じように業務を行える環境を整え、勤怠記録やメール、作業記録などから勤務状況を示せるようにしておく必要があります。

「申請後に事務所の近くへ転居する予定」というだけでは、申請時点で常勤できることを示したことにはなりません。実際に通勤できる状態を整えてから申請します。

申請前に済ませておく手続

前職の勤務先登録を外す

新規免許申請では、専任宅建士の資格登録簿に、前職の宅建業者が勤務先として残っていないことが必要です。

会社を退職しても、資格登録簿の勤務先情報は自動では変更されません。宅建士本人が、退職証明書などを添えて、資格を登録している都道府県へ変更登録を申請します。

宅建業免許の申請で会社が届け出る専任宅建士の情報と、宅建士本人が行う資格登録簿の変更登録は、別の手続です。どちらか一方を済ませても、もう一方の情報は変更されません。候補者が決まった段階で、前職の勤務先が残っていないかを確認しておきます。

新たに免許を受ける会社は、申請時点ではまだ宅建業者ではありません。そのため、前職の勤務先登録を外してから免許を申請し、免許証の交付後に新しい勤務先を登録します。東京都の手引でも、新規申請時には勤務先名が登録されていない状態とし、免許証の交付後に変更登録を行う取扱いが示されています。

氏名・住所の変更登録

結婚や転居などで氏名・住所が変わっている場合は、資格登録簿の変更登録を先に済ませておきます。

宅建士証の交付を受けている人は、資格登録簿の変更に加えて、宅建士証の書換えも必要です。申請書類や住民票、資格登録簿、宅建士証の記載に違いがあると手続が止まることがあるため、宅建業免許を申請する前に変更を済ませておきます。

常勤性を裏づける資料をそろえる

申請時には、専任宅建士がその会社に常勤していることを示す資料を提出します。

法人の場合は、マイナ保険証として利用しているマイナンバーカードまたは資格確認書に加え、標準報酬月額決定通知書、住民税特別徴収税額通知書、雇用保険の被保険者台帳、賃金台帳、給与の入金記録などを用意します。役員については、役員報酬明細が記載された法人税申告書も資料になります。

個人事業主本人が専任宅建士を務める場合は、マイナンバーカードまたは資格確認書と、直近の確定申告書を提出します。

申請を通すためだけに給与額や勤務時間を設定するのではなく、免許取得後も続けられる勤務条件にしておくことが大切です。

申請中や免許後に退職した場合

申請中に退職した場合

審査中に専任宅建士が退職すると、その時点で免許の要件を満たさなくなります。

後任者を決めたうえで、申請書や略歴書、常勤性を示す資料などを差し替えます。後任者が決まらなければ審査を続けられないため、退職予定のある人を専任宅建士として申請するのは避けた方がよいでしょう。

保証協会への加入手続でも、専任宅建士の情報が使われます。申請の途中で担当者が変わると、書類の差替えが必要になり、営業開始までの日程が延びることがあります。

免許取得後に人数が不足した場合

退職や従業者の増加によって専任宅建士が不足した場合は、2週間以内に後任者の設置や配置転換などを行い、必要な人数を確保しなければなりません。

また、専任宅建士の氏名など、宅建業者名簿の登載事項に変更があった場合は、変更日から30日以内に変更届を提出します。2週間は専任宅建士の不足を解消する期限、30日は変更届を提出する期限であり、それぞれ別に数えます。

退職後に採用活動を始めても、2週間以内に後任者を確保するのは簡単ではありません。退職の予定が分かった時点で、社内の宅建士への交代や新たな採用に向けて動いておく必要があります。

よくある質問

代表者1人だけの会社でも申請できますか?

申請できます。代表者本人が有効な宅建士証を持ち、事務所に常勤して宅建業務に従事する場合は、代表取締役と専任宅建士を兼ねることができます。別に従業員や宅建士を雇う必要はありません。

ただし、他社の経営や副業に多くの時間を使っている場合は、その会社に常勤できることを資料で示す必要があります。

家族を専任宅建士にできますか?

家族でも専任宅建士にすることはできます。ただし、事務所の通常の勤務時間を通して実際に働き、給与の支払いや社会保険、勤怠記録などから勤務状況を示せることが必要です。

勤務していない家族の名前だけを借りて届け出ることは認められません。

パート勤務でも専任宅建士になれますか?

短時間勤務のパートでは、常勤性の要件を満たすことが難しくなります。雇用形態ではなく、勤務日数や勤務時間、実際の働き方から判断されます。

事務所の通常の勤務時間を通して、継続して勤務できるかどうかがポイントです。

現職を続けたまま自分の会社を開業できますか?

現職の勤務時間と、新しく開業する会社の勤務時間が重なる場合は、本人が専任宅建士を務めることは困難です。

現職を勤務時間外の副業として続ける場合は、それぞれの勤務時間や業務内容、本業への影響などをもとに個別に判断されます。

宅建士証の有効期限が近くても申請できますか?

申請時点で宅建士証が有効であれば、それだけを理由に申請できないわけではありません。

ただし、審査中や免許取得後に有効期限が切れると、専任宅建士の要件を満たさなくなります。有効期限が近い場合は、申請前に更新の時期を確かめておきましょう。

専任宅建士が突然退職したら営業を続けられますか?

専任宅建士が不足した状態を、そのまま放置することはできません。2週間以内に後任者を置くなどして必要な人数を確保し、変更日から30日以内に変更届を提出します。

後任者を確保できなければ、宅建業を続けられなくなる可能性があります。退職の予定が分かった段階で、社内の宅建士への交代や新たな採用に向けて動いておくことが大切です。

まとめ

専任宅建士は、宅建士証を持っているだけでは要件を満たしません。候補者が決まったら、資格登録簿に前職の勤務先が残っていないか、副業との勤務時間が重ならないかを確かめます。あわせて、給与や社会保険、勤怠記録など、常勤していることを示す資料もそろえておきます。

代表者や役員が専任宅建士を兼ねることもできます。ただし、別会社の役員を兼ねている場合や、個人事業を営んでいる場合、事務所までの通勤距離が長い場合は、追加資料を求められることがあります。

申請直前に問題が分かると、変更登録や勤務条件の見直しが終わるまで手続を進められません。候補者が決まった段階で、必要な手続を済ませておくことが大切です。

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