宅建業免許の新規申請では、申請書に加えて、役員の証明書、専任の宅地建物取引士に関する書類、決算・納税書類、事務所の写真など、多くの書類をそろえる必要があります。
役員が複数いれば身分証明書や略歴書も対象者ごとに増え、官公庁発行の証明書には「申請受付日現在で発行から3か月以内」の期限があるため、順番を誤ると取り直しになりかねません。
この記事では、東京都知事免許の新規申請を前提に、法人・個人それぞれの必要書類と取得先、そして書類を集める順番まで解説します。
東京都の宅建業免許申請の手引は、2026年7月1日に更新されました。申請にあたっては、現在公開されている手引と様式をご利用ください。
東京都の宅建業免許で必要になる書類一覧
まず、新規申請で必要になる書類を確認しておきましょう。
| 書類 | 法人 | 個人 |
|---|---|---|
| 免許申請書 | ○ | ○ |
| 相談役・顧問、5%以上の株主・出資者等の名簿 | ○ | ― |
| 身分証明書 | ○ | ○ |
| 登記されていないことの証明書 | ○ | ○ |
| 代表者の住民票 | ― | ○ |
| 代表者等の連絡先に関する調書 | ○ | ○ |
| 略歴書 | ○ | ○ |
| 専任の宅地建物取引士設置証明書 | ○ | ○ |
| 宅地建物取引業に従事する者の名簿 | ○ | ○ |
| 専任の宅地建物取引士の顔写真貼付用紙 | ○ | ○ |
| 履歴事項全部証明書 | ○ | ― |
| 宅地建物取引業経歴書 | ○ | ○ |
| 決算書の写し | ○ | ― |
| 資産の状況を示す書面 | ― | ○ |
| 納税証明書等 | ○ | ○ |
| 誓約書 | ○ | ○ |
| 事務所を使用する権原に関する書面 | ○ | ○ |
| 事務所付近の案内図 | ○ | ○ |
| 事務所の写真・間取図・平面図等 | ○ | ○ |
手引では、上記19種類を基本としつつ、申請内容によって追加資料を求められることがあります。
以下、それぞれの書類について詳しく見ていきます。
法人申請で必要になる書類
免許申請書と法定様式
申請の中心になるのが、免許申請書(様式第1号)です。
これに、
- 宅地建物取引業経歴書
- 誓約書
- 略歴書
- 専任の宅地建物取引士設置証明書
- 宅地建物取引業に従事する者の名簿
- 代表者等の連絡先に関する調書
などの法定様式を組み合わせます。
履歴事項全部証明書
法人は、法務局が発行する「履歴事項全部証明書」を提出します。現在事項全部証明書では受理されません。
取得の前に確認したいのが、会社の目的欄です。目的欄に「宅地建物取引業」「不動産の売買、媒介」など、宅建業を営むことが分かる記載が求められています。
「不動産業」のような曖昧な表現は認められていないため、記載がなければ申請前に目的変更の登記を済ませておく必要があります。本店所在地についても、登記と実際の事務所所在地に食い違いがないか確認しておきます。
決算書と法人税の納税証明書
決算を終えている法人は、直前1か年分の決算書のうち、表紙、貸借対照表、損益計算書を提出します。納税証明書は、税務署が発行する法人税の「その1」です。決算書と納税証明書は、対象となる事業年度が一致しているか確認してください。
設立したばかりでまだ最初の決算期を迎えていない法人は、決算書に代えて会社設立日現在の「開始貸借対照表」を作成します。この場合、法人税の納税証明書は添付しません。
株主・出資者と相談役・顧問の名簿
発行済株式の5%以上を保有する株主または5%以上の出資者、そして相談役や顧問がいる場合はその氏名などを、所定の名簿に記載します。登記されていない役職だからといって、宅建業免許申請でも記載不要になるわけではありません。
個人申請で必要になる書類
個人で宅建業免許を申請する場合、法人の履歴事項全部証明書や決算書に代わって、
- 住民票
- 資産の状況を示す書面
- 所得税の納税証明書等
が必要になります。住民票は、マイナンバー、本籍、続柄が記載されていないものを用意します。
「資産の状況を示す書面」には、土地、建物、預貯金、備品、借入金などを記載します。確定申告書をそのまま提出する書類ではなく、所定の様式を使って作成するもので、書面の日付は申請日前3か月以内である必要があります。
所得税の納税証明書は、税務署が発行する直前1か年分の「その1」を提出します。給与所得者が個人で免許申請するケースなど、事情によって必要書類が変わる場合は事前相談で確認するのが安全です。
役員と政令使用人が用意する書類
法人では、代表取締役だけを確認すればよいわけではありません。
身分証明書や略歴書などの対象には、代表取締役、取締役、監査役、代表執行役、執行役、政令使用人、会計参与、相談役、顧問などが含まれます。非常勤役員についても省略できません。
発行元が異なる2種類の証明書
役員などについては、原則として次の2種類の証明書を用意します。
- 本籍地の市区町村が発行する身分証明書
- 法務局が発行する登記されていないことの証明書
ここでいう身分証明書は、運転免許証やマイナンバーカードではありません。宅建業免許の欠格事由を確認するために使用する、市区町村発行の公的証明書です。本籍地が遠方の役員がいる場合は、郵送日数も見込んでおきます。
略歴書には兼務や副業も記載する
略歴書には、現在までの職歴や役員歴を記載します。宅建業に関係する職歴だけを書けばよいわけではなく、他社の役員や従業者との兼務、行政書士などの自由業、勤務時間外の副業についても記載対象です。
会社が把握している経歴だけで作成すると、あとから兼務先などが判明して補正になることがあります。年月を追いながら、現在までの職歴を本人と一緒に整理しておくと安全です。
2025年4月から「代表者等の連絡先に関する調書」が必要
2025年4月1日受付分から、申請様式の変更に伴って「代表者等の連絡先に関する調書」が追加されました。
法人では役員と政令使用人、個人申請では申請者と政令使用人について、住所や電話番号を所定の用紙にまとめて記載します。相談役・顧問は略歴書や身分証明書等の対象になりますが、連絡先調書の対象には含まれません。
専任の宅地建物取引士に関する書類
身分証明書などは2024年5月25日から原則不要
2024年5月25日以降、専任の宅地建物取引士という立場だけで申請に関わる方については、身分証明書と登記されていないことの証明書の提出が不要になりました。
ただし、専任の宅地建物取引士が代表者、役員、政令使用人、相談役、顧問などを兼ねている場合は、その立場について2種類の証明書が必要です。
設置証明書・略歴書・顔写真
専任の宅地建物取引士については、専任の宅地建物取引士設置証明書、略歴書、顔写真貼付用紙などを作成します。
顔写真は、申請前6か月以内に撮影した縦4cm・横3cmのものを使用します。事務所写真の「3か月以内」と期限が異なる点にご注意ください。
前職の勤務先登録が残っていないか確認する
新規免許申請をする前に、専任の宅地建物取引士本人の「宅地建物取引士資格登録簿」を確認しておきます。手引では、新規申請時には資格登録簿に勤務先名が登録されていない状態が求められています。
前職の会社が残っている場合は、まず退職に伴う変更登録が先です。新しく免許を受ける会社への勤務先登録は、免許取得後に改めて手続きします。
副業がある場合
2024年11月1日受付分から、常勤性と専従性が確認できれば、勤務時間外の副業が審査のうえ原則として認められる運用になりました。
ただし、同業他社での勤務や、通常の通勤・宅建業務に支障が生じるケースは対象外で、副業がある場合は勤務時間や雇用関係、専従性を確認できる資料を求められることがあります。
事務所関係で必要になる書類
事務所を使用する権原に関する書面
事務所については、「事務所を使用する権原に関する書面」を提出します。建物の所有者、貸主、契約期間、契約形態、用途などを記載する書類です。
通常の賃貸事務所では賃貸借契約書などを必ず添付するわけではありませんが、代表者個人名義の物件を法人が使用する場合、転貸借になっている場合、契約上の使用目的が分かりにくい場合などは、契約書や使用承諾書などの追加資料を求められます。
レンタルオフィスについては、契約書に加えて、その区画を独占的に使用できることを確認できる資料が必要です。
契約後に「宅建業の事務所として使えない」と分かると負担が大きいため、特殊な契約形態では契約前の事前確認が安全です。
案内図と間取図・平面図
事務所付近の案内図には、最寄り駅からの経路、目印になる建物、方位、建物名や階数などを記載します。間取図・平面図には、事務所の形状、出入口、共用部分や他社の専用部分、居住部分との位置関係を示します。
自宅の一部を事務所にする場合や他社と同じフロアを使用する場合は、独立した事務所として使用できるかが要点です。
住居部分や他社の専用部分を通らなければ事務所へ入れない配置では、事務所要件を満たさないと判断されることがあります。
外観・入口・室内の写真
事務所写真は、申請受付日前3か月以内に撮影した鮮明なカラー写真を使用します。建物全景、建物入口、テナント表示、事務所入口、事務所内部など、手引で指定された箇所を撮影します。事務所入口には商号・名称の表示が必要です。
室内については、従事する人数分の机・椅子、執務スペース、対面できる応接場所、開通済みの固定電話など、継続して宅建業を行える設備がそろっているかが確認されます。なお、新規免許申請の段階では、宅地建物取引業者票や報酬額表は、まだ免許番号がないため原則として掲示不要です。
申請前3か月以内に用意する書類
宅建業免許申請では、公的証明書や写真の期限に注意が必要です。
| 書類 | 期限・基準 | 主な取得先 |
|---|---|---|
| 身分証明書 | 発行から3か月以内 | 本籍地の市区町村 |
| 登記されていないことの証明書 | 発行から3か月以内 | 法務局 |
| 履歴事項全部証明書 | 発行から3か月以内 | 法務局 |
| 住民票 | 発行から3か月以内 | 住所地の市区町村 |
| 納税証明書・課税証明書 | 発行から3か月以内 | 税務署・市区町村 |
| 資産の状況を示す書面 | 申請日前3か月以内 | 個人申請者が作成 |
| 事務所写真 | 撮影から3か月以内 | 申請者が撮影 |
| 専任の宅地建物取引士の顔写真 | 撮影から6か月以内 | 申請者が用意 |
紙申請では、正本1部と副本1部を作成します。官公庁が発行した証明書の原本は正本へ綴じ、副本は証明書や写真を含めコピーで構いません。eMLITによる電子申請では、添付書類をデータで提出するため、原本を別途送付する必要はありません。
宅建業免許の必要書類を集める順番
公的証明書から集め始めるのではなく、修正に時間がかかる部分を先に片付けるのがコツです。
- 会社登記と事務所の契約内容を確認する —法人の目的、本店所在地、事務所の契約名義、使用目的、転貸の有無、事務所の独立性。目的変更登記や契約変更が必要になると時間を取られるため、まずここを固めます。
- 役員と専任の宅地建物取引士の構成を決める — 誰を役員・政令使用人にするか、誰を専任の宅地建物取引士にするか、誰が宅建業に従事するか。対象者が変われば、身分証明書や略歴書、連絡先調書の顔ぶれも変わります。
- 決算・納税書類と法定様式を用意する — 法人なら直前期の決算書、個人なら資産の状況を示す書面。あわせて、免許申請書、誓約書、略歴書、名簿、専任の宅地建物取引士設置証明書などを最新の様式で作成します。
- 公的証明書を取得する — 身分証明書、登記されていないことの証明書、履歴事項全部証明書、住民票、納税証明書など。本籍地が遠方の役員がいれば郵送日数も加味し、申請受付日までに3か月を超えない時期に請求します。
- 事務所を整えてから写真を撮る — 商号表示、机・椅子、応接場所、固定電話、事務所の区画などを整えたうえで撮影します。写真を撮ったあとに入口表示やレイアウトを変更すると申請時の状態と食い違うため、申請予定日から逆算して進めるのが確実です。
追加資料が必要になりやすいケース
通常の19種類だけでは足りず、申請内容に応じて追加資料を求められる場面があります。
- 事務所を転借している場合 — 貸主との契約内容によっては、原契約書や、転貸を認める貸主の承諾書が必要です。
- 自宅の一部を事務所にする場合 — 建物全体の間取図や、玄関から事務所までの経路が分かる写真が判断材料になります。住宅の一部を事務所にする場合は、事前相談を経てから申請するのが一般的です。
- レンタルオフィスを利用する場合 — 契約書に加えて、対象区画を独占的に使用できることを確認できる資料が求められます。フリーアドレス型や共用ブース型は原則として対象外です。
- 専任の宅地建物取引士が副業をしている場合 — 勤務時間や副業の内容、常勤性・専従性を裏づける資料の追加提出を求められることがあります。
- 海外在住者などが役員になっている場合 — 国籍や居住地に応じた代替資料が必要になります。在留証明や本国の官憲が発行する書類の日本語訳などをそろえます。
- 休眠していた法人を使って申請する場合 — 決算や税務申告、事業実態の状況に応じて、追加の説明や資料を求められることがあります。
よくある質問
- 定款は提出しますか?
-
原則として不要です。法人は履歴事項全部証明書を提出し、目的欄に宅建業を営むことが分かる記載が必要です。目的欄の書き方は、本文「履歴事項全部証明書」の項をご確認ください。
- 賃貸借契約書は必ず添付しますか?
-
通常は「事務所を使用する権原に関する書面」を提出します。転貸借や代表者個人名義の契約、レンタルオフィスなど、書面だけでは使用権原が確認しにくいケースでは、契約書や承諾書などを求められます。
- 専任宅建士の宅建士証のコピーは必要ですか?
-
東京都の通常の必要書類一覧には含まれていません。申請書や専任宅建士設置証明書には、登録番号などを記載します。
宅建士証の有効期限と、資格登録簿に前職の勤務先が残っていないかは申請前に見ておきます。新たに免許を受ける会社への勤務先登録は、免許証の交付後に行います。
- 設立したばかりで決算書がありません
-
会社設立日現在の開始貸借対照表を作成して提出します。設立後まだ決算期を迎えていない法人は、決算書の代わりにこれを使います。
法人税の納税実績もないため、納税証明書は必要ありません。
- 証明書はコピーでも受け付けられますか?
-
紙申請の正本には原本が必要です。官公庁が発行する証明書は、申請受付日の時点で発行から3か月以内の原本を綴じます。副本はコピーで差し支えありません。
電子申請では、必要書類をファイルでアップロードするため、原本の送付は不要です。
- 役員が多いと必要書類も増えますか?
-
増えます。取締役、監査役、会計参与に加えて、相談役や顧問も、身分証明書、登記されていないことの証明書、略歴書の対象です。非常勤役員も含まれます。
「代表者等の連絡先に関する調書」は、法人の役員と政令使用人について作成します。1人につき1枚ではなく、1枚の用紙に複数人を記載できます。
まとめ
宅建業免許の必要書類は、すべてを同時に集め始めるのではなく、順番を決めて進めることが大切です。
法人の目的や本店所在地、事務所の契約内容と独立性、役員・政令使用人の構成、専任の宅地建物取引士、決算・納税関係を先に固めてから法定様式を作成し、申請日に近い時期に公的証明書を取得します。
最後に事務所の設備と商号表示を整え、申請前3か月以内の写真を撮影する流れで進めると、証明書の期限切れや写真の撮り直しを防ぎやすくなります。
東京都では2025年4月1日受付分から申請様式が変更されており、現在の手引は2026年7月1日に更新されました。申請にあたっては、必ず東京都が公開している最新の手引と様式をご確認ください
東京都の宅建業免許申請をサポートします
当事務所では、東京都知事免許の新規申請について、役員や専任の宅地建物取引士、事務所の状況を確認したうえで、必要書類の整理から申請書類の作成までサポートしています。
「この事務所で免許を取れるのか確認したい」「専任の宅地建物取引士の兼業が問題にならないか知りたい」「何から準備すればよいか分からない」といった段階でもご相談ください。
