宅建業免許と会社設立|定款目的・本店所在地・資本金(東京都)

会社設立と宅建業免許は別々の手続ですが、中身はつながっています。設立登記で決めた事項が、そのまま免許審査の対象になるためです。順番を誤ると、設立したばかりの会社で目的変更登記や本店移転登記をやり直すことになります。登記は終わっているのに、免許申請へ進めない状態です。

設立前に決めておきたいことは4つあります。宅建業を営むと分かる定款の文言、登記上の本店と実際に営業する場所、設立後の法人が事務所を使える契約、そして資本金とは別に見込む開業資金です。

目次

法人の設立登記を終えてから免許を申請する

法人で宅建業を始める場合は、会社の設立登記を済ませ、その法人を申請者として免許を申請します。設立予定の会社名で先に申請し、免許が下りてから登記する、という順番は認められません。

申請時に提出するのは、法人の履歴事項全部証明書です。記載された商号、本店所在地、役員、資本金、事業目的が、免許申請書の内容と一致していなければなりません。現在事項全部証明書では受け付けられないため、取得する証明書の種類にも注意が要ります。

設立直後で、まだ一度も決算を迎えていない会社でも申請は可能です。決算書の代わりに、設立時点の資産と負債をまとめた開始貸借対照表を添付します。法人税の納税証明書は、新設法人なら不要です。

営業実績がゼロでも問題ありません。事務所、専任宅建士、定款目的といった要件がそろえば、設立後すぐに申請へ進めます。

定款目的は「不動産業」だけでは足りない

東京都の手引では、履歴事項全部証明書の目的欄に、宅建業を営む旨を記載するよう求めています。

記載例として挙げられているのは、次のような文言です。

  • 宅地建物取引業
  • 不動産の売買、媒介

一方で、「不動産業」のように業務の範囲が曖昧な記載は認められません。

「不動産業」の一言では、土地や建物を売買する会社なのか、自社物件を貸す会社なのか、建物管理を請け負う会社なのか判別できません。宅建業免許が必要な事業を行うことが、登記簿から読み取れる表現を選びます。

これから設立するなら「宅地建物取引業」が分かりやすい

新たに定款を作るなら、「宅地建物取引業」の一言が簡潔です。

当面は売買仲介だけの予定でも、賃貸仲介や自社物件の販売へ事業を広げる日が来るかもしれません。「不動産の売買及び仲介」と細かく限定するより、宅建業全体を含む文言にしておけば、後から目的を追加する手間が省けます。

自社物件の賃貸や建物管理も行うなら、宅建業とは分けて記載します。

  1. 宅地建物取引業
  2. 不動産の賃貸及び管理
  3. 前各号に附帯又は関連する一切の事業

自ら所有する建物を貸す行為は、宅建業に含まれません。対して、他人の物件の売買や賃貸を仲介する行為や、仕入れた土地・建物を反復継続して販売する行為には免許が要ります。

同じ不動産事業でも、免許の要否は業務ごとに異なります。定款では、実際に行う予定の事業を分けて書くほうが内容を把握しやすくなります。

すでに設立している会社は目的変更が必要になる

既存の会社で宅建業を始める場合も、出発点は履歴事項全部証明書の目的欄です。

宅建業を営むことが分かる文言がなければ、株主総会などで定款を変更し、法務局で目的変更登記を行います。株式会社なら、原則として株主総会の特別決議が必要です。

目的変更には登録免許税がかかるうえ、変更後の履歴事項全部証明書も取り直しになります。これから会社を設立する段階なら、最初から入れておくほうが手続の面でも費用の面でも負担を抑えられます。

自宅を本店、店舗を営業所にすると2事務所になることがある

会社設立では、自宅や実家を本店所在地として登記し、実際の仕事は別の店舗で行う形がよく使われます。

一般的な事業なら成り立つ組み立てですが、宅建業では事情が違います。

たとえば、葛飾区の自宅を会社の本店として登記し、足立区の店舗で宅建業を始めるとします。その店舗が登記上の支店または宅建業法上の従たる事務所に当たる場合は、接客や契約を店舗だけで行う予定であっても、本店と店舗の2か所が宅建業法上の事務所になります。

支店で宅建業を行うと本店も事務所になる

法人の本店は、支店や営業所で行う事業を管理する場所と位置づけられています。そのため、本店で契約業務を一切行わなくても、支店で宅建業を営めば本店も宅建業の事務所です。

東京都の手引にも、本店で宅建業を行わない場合であっても、支店で宅建業を営むと本店も事務所となり、本店にも専任宅建士と営業保証金が必要になる旨が記載されています。

本店と店舗が事務所になれば、それぞれに少なくとも1人の専任宅建士を置かなければなりません。

保証金も1事務所分では済みません。

方法本店支店1か所
営業保証金を供託する1,000万円500万円
保証協会に加入する60万円30万円

保証協会を選んだ場合は、この分担金に本店と支店それぞれの入会金や会費が上乗せされることもあります。

「営業するのは店舗だけだから、自宅には何も置かなくてよい」とはならないわけです。自宅が事務所要件を満たさなければ、本店移転登記まで話が及びます。

1店舗から始めるなら、登記上の本店と営業する店舗を同じ場所にそろえるのが、免許の構成としては最も分かりやすい形です。

登記された支店でも宅建業をしなければ事務所にはならない

反対に、登記簿に支店として記載されていても、その場所で宅建業を行わなければ、宅建業法上の事務所には当たりません。

一方、名称が「支店」でなくても、継続して業務を行える設備を備え、宅建業の契約を締結する権限を持つ人が常勤していれば事務所に該当します。

営業所、店舗、出張所、事務所。呼び方ではなく、その場所で何を行うかで決まります。

都外に本店を置くと大臣免許になる

東京都知事免許を受けられるのは、宅建業法上の事務所が東京都内だけにある場合です。

たとえば、東京都内の支店で宅建業を営み、埼玉県や千葉県の自宅を会社の本店として登記すると、本店も宅建業法上の事務所になります。事務所が2つの都県にまたがるため、申請するのは東京都知事免許ではなく国土交通大臣免許です。

東京都知事免許で開業する予定なら、営業する店舗だけでなく、登記上の本店も東京都内に置く必要があります。会社設立後に気づくと、本店移転登記や免許区分の見直しが生じるため、定款を作る前に所在地を決めておきます。

設立前に借りた事務所は法人が使える形にする

会社を設立する前は、法人がまだ存在していません。先に事務所を押さえるなら、発起人や設立予定の代表者が個人名義で契約することになります。

契約者が個人のままでも、実際に使うのは設立後の法人です。個人名義の契約書だけでは、申請法人がその物件を使う権利を持っていると示せない場合があります。

契約前に、貸主や管理会社へ次の点を伝えてください。

  • 会社を設立した後は法人が使用すること
  • 法人の本店として登記すること
  • 宅建業の事務所として使用すること
  • 来客や契約業務を行うこと
  • 入口などに会社名を表示すること

設立後に法人名義へ契約を切り替えられるなら、それが最も明快です。名義変更をしないときは、法人による使用を認める貸主の承諾書や、個人と法人の間の使用貸借契約書を求められることがあります。

「事務所可」だけで契約を決めない

募集広告の「事務所利用可」は、宅建業免許の事務所として使える保証ではありません。

居住用マンションでは、不特定の来客、看板の掲示、法人登記を管理規約で禁じている例があります。賃貸借契約書の用途が「居住用」なら、貸主の承諾も欠かせません。

貸主が口頭で了承していても、申請書類には表れません。契約書、使用承諾書、管理規約。書面のうえでも宅建業の事務所として使える状態に整えます。

審査されるのは使用する権利だけではありません。独立した出入口、執務スペース、応接場所、固定電話といった事務所そのものの形態も見られます。

契約後に使えないと判明すれば、物件の借り直しに加えて本店移転登記まで必要になりかねません。会社設立を急ぐ場面ほど、物件の条件を先に詰めるべきです。

資本金1円でも設立できるが、1円では開業できない

宅建業免許に、資本金を何円以上にしなければならないという要件はありません。

会社法上も最低資本金制度は廃止されており、株式会社は資本金1円から設立できます。

では、資本金1円で宅建業を始められるかというと、別途資金を用意しなければ開業費用を賄えません。会社を設立できることと、免許を取得して営業を続けられることは別の話です。

免許通知が届いた後にもまとまった資金が要る

宅建業免許の審査に通っても、すぐに営業を始められるわけではありません。

自社で営業保証金を供託するなら、本店分で1,000万円。保証協会へ加入する場合は、本店60万円の弁済業務保証金分担金に、協会の入会金や会費が加わります。

それ以前の段階でも、支出は続きます。

  • 会社設立の登録免許税や定款認証費用
  • 宅建業免許の申請手数料
  • 事務所の敷金、礼金、仲介手数料
  • 机、椅子、固定電話、パソコンなどの設備費
  • 名刺、看板、ホームページなどの広告費
  • 開業後の家賃と人件費
  • 保証協会の入会費用または営業保証金

資本金を絞りすぎると、設立直後から代表者個人のお金を会社へ貸し付ける展開になりがちです。資本金を大きくすれば安心という単純な話でもありませんが、少なくとも開業までに出ていく金額の計算は欠かせません。

新設法人は開始貸借対照表を提出する

設立後、最初の決算を迎える前に申請する会社は、決算書の代わりに開始貸借対照表を提出します。

記載するのは、設立時点の現金、預金、備品、借入金、資本金など。定款や登記簿の資本金と、貸借対照表の数字が合っているかも確認します。

資本金に最低額はなくても、申請書類には会社の財産状況がそのまま表れます。開業費用を使い切り、営業開始時点で資金がほとんど残らない計画は避けたいところです。

代表者と専任宅建士も設立前に決めておく

代表者本人が有効な宅建士証を持ち、事務所に常勤して宅建業務に従事するなら、代表者と専任宅建士の兼任が可能です。

代表者1人だけの会社でも申請できます。宅建業免許のためだけに、別の取締役や従業員を雇う必要はありません。

ただし、監査役は例外です。東京都の手引でも、申請会社の監査役と専任宅建士の兼務は認められないとされています。

設立登記を終えた後に役員構成を変えると、役員変更登記が積み重なります。次のような形で設立してしまうと、組み直しで二度手間になりがちです。

  • 専任宅建士になる人を監査役にしてしまった
  • 通常の勤務時間に常勤できない人を代表取締役にした
  • 欠格事由に該当する人を取締役に入れた
  • 別会社での勤務により、申請会社の通常の勤務時間に常勤できない宅建士を選んだ

誰を代表者、役員、専任宅建士にするか。定款を作る段階で固めておけば、設立後の変更を減らせます。

商号に「不動産」を入れる必要はない

会社名に「不動産」「住宅」「リアルエステート」といった言葉を入れる決まりはありません。

飲食店やIT企業のような名称でも、履歴事項全部証明書の目的欄に宅建業の記載があり、ほかの免許要件を満たしていれば申請できます。

注意したいのは、公的機関や指定流通機構と紛らわしい名称です。変更を求められることがあり、東京都の手引では次のような例が挙げられています。

  • ○○公社
  • ○○協会
  • ○○流通機構
  • ○○流通センター
  • ○○不動産センター
  • ○○住宅センター
  • ○○情報センター

法務局で登記できた商号でも、宅建業免許でそのまま使えるとは限りません。公的な団体と誤解されそうな名称は、会社設立の段階から避けておくほうが進めやすくなります。

会社設立から免許申請までの順番

会社だけを先に設立し、後から免許の要件を当てはめようとすると、目的変更や本店移転が生じやすくなります。

次の順番なら、設立登記と宅建業免許の内容を合わせやすいはずです。

  1. 売買、仲介、賃貸、管理など、行う事業を決める
  2. 宅建業に使える事務所を選ぶ
  3. 登記上の本店をどこに置くか決める
  4. 代表者、役員、専任宅建士を決める
  5. 定款に「宅地建物取引業」などの目的を入れる
  6. 株式会社または合同会社を設立する
  7. 事務所の契約名義や使用承諾を法人に合わせる
  8. 開始貸借対照表などの必要書類を作成する
  9. 東京都へ宅建業免許を申請する
  10. 免許通知後に、営業保証金の供託または保証協会への加入を行う

物件と会社設立のどちらを先にするかは、状況次第です。ただ、設立前に「本店をどこに置くか」「その場所で宅建業免許を申請できるか」までは決めてください。

会社、事務所、専任宅建士の内容をそろえてから設立登記を行えば、登記後の変更を減らし、そのまま免許申請へ進めます。

よくある質問

株式会社と合同会社のどちらでも申請できますか?

どちらでも申請できます。法人格があり、定款目的、事務所、専任宅建士などの要件を満たせば、合同会社でも東京都知事免許の取得が可能です。

設立費用、対外的な信用、役員構成、将来の資金調達などを踏まえて会社形態を選ぶことになります。

会社設立と宅建業免許の申請は同時にできますか?

同時にはできません。法人で申請するには、先に会社の設立登記を終え、履歴事項全部証明書を取得できる状態になっている必要があります。

もっとも、定款作成、物件選び、専任宅建士の準備は並行して進められます。

定款に「不動産業」と書いてあれば足りますか?

足りません。東京都では曖昧な記載として扱われます。

「宅地建物取引業」や「不動産の売買、媒介」など、宅建業を営むことが分かる文言を登記してください。

自宅を会社の本店にしても申請できますか?

自宅が宅建業の事務所要件を満たしていれば可能です。居住部分と事務所が分けられ、来客がほかの居室を通らずに出入りできることなどが求められます。

別の店舗で宅建業を行う場合は、本店である自宅も宅建業法上の事務所となり、2事務所分の専任宅建士や保証金が必要になる点には注意が要ります。

会社設立前に事務所を契約してもよいですか?

契約自体は問題ありません。ただし、設立前は法人名義で契約できないため、代表者個人などが契約者になります。

設立後に法人へ名義を変更するか、法人による使用を貸主が承諾している事実を書面で示せるようにしておきます。

個人の宅建業免許を設立した法人へ移せますか?

そのまま移すことはできません。個人と法人は別の申請者であり、免許も別物です。

個人事業を法人化する場合は、法人として新規免許を申請し、法人の営業開始に合わせて個人免許の廃業手続を行います。

まとめ

法人で宅建業を始めるなら、会社設立の後に免許の要件を考えるのではなく、設立前に定款目的と本店所在地を固めます。

目的欄には「宅地建物取引業」など、宅建業を営むことが分かる文言を入れます。自宅を本店、別の店舗を営業所にする場合は、本店と店舗の両方が宅建業法上の事務所となるため、2事務所分の専任宅建士と保証金を見込まなければなりません。

資本金に法律上の最低額はないものの、設立後には事務所費用、免許申請、保証協会への加入または営業保証金の供託が控えています。設立できる金額ではなく、営業開始後も事業を続けられる金額から考えてください。

当事務所では、宅建業免許の申請に加えて、会社設立前の定款目的、本店所在地、事務所の契約内容、専任宅建士の配置についてもご案内しています。宅建業免許のご相談・お見積もりは無料です。

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