宅建業免許と会社設立|定款目的・本店所在地・資本金の決め方

会社を作って宅建業を始めるとき、会社設立と宅建業免許は制度上まったく別の手続です。

それでも両者は無関係ではありません。設立登記で決めた事業目的、本店所在地、役員構成、資本金は、そのまま宅建業免許の申請内容へと引き継がれる関係にあります。

会社を先に作ってから免許要件を当てはめようとすると、設立直後に目的変更登記や本店移転登記が必要になる場面が出てきます。

この記事では東京都知事免許を前提に、会社設立前に押さえておきたい要点を順を追って解説します。

目次

免許の申請は会社設立後から

順序は動かせません。会社の設立登記を終え、その法人を申請者として宅建業免許を申請するのが法人申請の原則です。

「設立予定の会社」の名義で先に免許を取っておく、という進め方は認められていません。

登記内容と申請内容は、そのまま突き合わされます。法人申請では履歴事項全部証明書を提出するため、登記された商号、本店所在地、役員、資本金、事業目的が、そのまま免許申請書と一致している必要があります。

設立直後で最初の決算をまだ迎えていない法人でも、申請自体は可能です。新設法人は決算書の代わりに開始貸借対照表を作成して提出します。

営業実績がないこと自体は、新規免許を取得できない理由にはなりません。事務所や専任の宅地建物取引士、役員の欠格事由など、新規免許に必要な要件が整っていれば、設立直後の法人でも申請することができます。

定款の目的は「不動産業」だけでは通らない

宅建業を営む法人では、履歴事項全部証明書の目的欄にも目を向ける必要があります。東京都の手引でも、宅建業を営む旨が目的欄から確認できることが求められています。

たとえば、次のような文言です。

  • 宅地建物取引業
  • 不動産の売買、媒介

「不動産業」のように業務内容が曖昧な記載は、認められていません。

「不動産業」だけでは、自社物件を賃貸する会社なのか、不動産管理会社なのか、売買や仲介を行う会社なのかを登記から読み取れないためです。

目的欄の文言は、免許取得を予定するのであれば慎重に選ぶべき項目です。宅建業を営むことが登記から明確に伝わる書き方であれば、免許申請の入り口で問題は生じません。

新しく設立するなら「宅地建物取引業」が簡潔

これから会社を設立するのであれば、目的欄には

宅地建物取引業

と記載しておくのが最もシンプルです。

自社物件の賃貸や建物管理なども予定しているなら、それらは宅建業とは別に目的へ追加できます。

たとえば、次のような組み合わせです。

  • 宅地建物取引業
  • 不動産の賃貸及び管理
  • 前各号に附帯又は関連する一切の事業

宅建業に該当するのは、自ら宅地・建物を反復継続して売買・交換する場合と、他人の物件の売買・交換・貸借を代理・媒介する場合です。自ら所有する物件を賃貸するだけであれば、宅建業には当たりません。

既存法人は目的欄を先に確認する

すでに設立している会社で新たに宅建業を始める場合も、最初の作業は履歴事項全部証明書の目的欄の確認です。

宅建業を営むことが読み取れる目的が入っていない場合は、原則として免許申請前に目的変更登記を済ませておくのが確実です。

なお、東京都の手引では、目的欄に宅建業を営む旨が記載されていない場合でも、宅建業免許が必要な理由を書面で提出し、速やかに目的欄へ記載する手続を行う扱いも示されています。

株式会社で定款の目的を変更するには、原則として株主総会の特別決議が必要です。

目的変更登記には登録免許税もかかります。これから会社を設立する段階であれば、最初から宅建業の目的を入れておいた方が、設立後の手間も費用も抑えられます。

自宅を本店、別店舗を営業所にするときの落とし穴

自宅を会社の本店として登記し、宅建業は別の店舗で行う。この形を思い描く方は少なくありません。ただし宅建業では、本店と支店の扱いに独特のルールがあります。

支店で宅建業を行うと本店も事務所扱い

法人の支店や営業所で宅建業を営む場合、本店で直接宅建業を行わなくても、本店は宅建業法上の事務所として扱われます。

たとえば、次のような会社を考えます。

  • 葛飾区の自宅を登記上の本店にする
  • 足立区の店舗で宅建業を行う

足立区の店舗が宅建業法上の従たる事務所に該当すると、本店と店舗の2か所が宅建業法上の事務所になります。

その結果、それぞれの事務所に専任の宅地建物取引士を配置しなければなりません。

必要人数は、各事務所について宅建業に従事する者5人につき1人以上です。

人数の少ない事務所でも最低1人は必要となるため、本店と支店の2事務所であれば、原則としてそれぞれに専任の宅地建物取引士を確保することになります。

営業保証金等も事務所数に応じて膨らみます。

方法本店支店1か所
営業保証金を供託1,000万円500万円
保証協会に加入60万円30万円

保証協会を利用する場合の60万円・30万円は弁済業務保証金分担金です。実際には、このほかに協会の加入金や会費なども発生します。

1店舗から始めるのであれば、登記上の本店と実際に営業する店舗を同じ場所にそろえた方が、免許の構成はシンプルにまとまります。

登記上の支店でも、宅建業をしなければ事務所とは限らない

登記簿上「支店」となっていても、その場所で宅建業を行わなければ、必ず宅建業法上の事務所になるわけではありません。

一方、名称が「支店」でなくても、継続的に業務を行える施設があり、宅建業の契約を締結する権限を持つ人を置いて業務を行う場所であれば、宅建業法上の事務所に該当することがあります。

判断のよりどころは「本店」「支店」「営業所」といった名称ではありません。その場所で何を行っているか、という中身です。

宅建業法上の事務所が複数の都道府県にまたがると大臣免許になる

東京都知事免許になるか国土交通大臣免許になるかは、宅建業法上の事務所を置く場所によって分かれる仕組みです。1つの都道府県内に事務所を収める場合はその都道府県知事の免許となり、2つ以上の都道府県にまたがれば国土交通大臣免許となります。

たとえば、次のような形を考えてみます。

  • 埼玉県に会社の本店を置く
  • 東京都の支店で宅建業を行う

支店で宅建業を営むことによって本店も宅建業法上の事務所になるため、埼玉県と東京都の2都県に事務所を設けている状態です。

このケースでは東京都知事免許ではなく、国土交通大臣免許となります。

なお、「都外に本店を置けば必ず大臣免許」という意味ではありません。

埼玉県内の本店だけで宅建業を営むのであれば、埼玉県知事免許です。

免許区分を左右するのは、本店の所在地と実際に営業する店舗の関係です。東京都知事免許で進めるのであれば、両者の位置関係を設立前に整えておく必要があります。

事務所の契約は、法人が使える形にしておく

設立前の段階では、そもそも法人が存在しません。先に物件を押さえるとなれば、発起人や設立予定の代表者が個人名義で契約する形になります。

一方、宅建業免許を申請するのは、あくまで設立後の法人です。

個人名義の賃貸借契約のままでは、申請法人がその物件を事務所として使用できる権利関係を、追加資料で確認されることがあります。

契約前に貸主や管理会社へ、少なくとも次の点を伝えておきましょう。

  • 会社設立後は法人が使用すること
  • 法人の本店として登記する予定があること
  • 宅建業の事務所として使用すること
  • 来客や契約業務を行うこと
  • 入口などに会社名を表示すること

法人名義へ契約を切り替えられれば手続は明瞭です。ただし、契約書そのものを法人名義に変更しなければならないわけではありません。会社設立前に個人名義で契約している場合には、法人が使用することについて貸主の承諾を得ておきます。申請時には使用権原を確認するため、契約書や承諾関係の資料を求められることがあります。

「事務所利用可」の一言だけで物件を決めない

「事務所利用可」の一文は、宅建業免許の事務所要件を満たすことまでは保証しません。特に自宅兼事務所やマンションの一室を検討している場合には、契約前に踏み込んで確認したい項目が並びます。

  • 賃貸借契約上の用途
  • 管理規約
  • 法人登記の可否
  • 来客の可否
  • 商号表示の可否
  • 居住部分と事務所部分の区分
  • 出入口や通路

東京都では、住宅の一部を事務所として使用する場合などについて、他の居室や他社の専用部分を通らずに出入りできることや、事務所部分が独立していることを確認しています。手引に明示のない特殊な形態については、事前相談で確認する方がよいでしょう。

物件を契約したあとに事務所要件を満たせないと判明すれば、物件の借り直しに加えて、本店所在地を登記済みであれば本店移転登記まで発生する可能性があります。

会社設立を急いでいる場面ほど、物件の見極めから先に着手すべきです。順序を逆にすると、あとから取り返すために大きな時間と費用が必要になります。

資本金1円で設立できても、1円では開業できない

資本金の下限はありません。宅建業免許にも会社法にも、「○円以上」の縛りはなく、株式会社は1円からでも設立できます。

ただし、

会社を設立できる金額と、宅建業を開業できる金額は別の話です。

宅建業を始めるまでには、会社設立以外にも次のような支出が続きます。

  • 会社設立の登録免許税や定款認証費用
  • 宅建業免許の申請手数料
  • 事務所の敷金・礼金・仲介手数料
  • 机・椅子・電話・パソコンなどの設備費
  • 看板、名刺、ホームページなどの費用
  • 開業後の家賃や人件費
  • 営業保証金または保証協会への加入費用

資本金を極端に少なくすると、設立直後から代表者個人のお金を会社へ貸し付けなければ回らないこともあります。

判断の軸は、資本金の額そのものではありません。開業から数か月先までを見据えた資金計画をもとに、投入する金額を検討していきます。

免許通知の後にも、まとまった資金が動く

東京都の審査を通過して免許の通知を受けても、その時点ではまだ営業を始められません。営業を開始する前に、次のいずれかの手続を完了する必要があります。

  • 営業保証金を供託する
  • 保証協会へ加入して弁済業務保証金分担金を納付する

営業保証金を自ら供託する場合の金額は、

  • 本店 1,000万円
  • 支店等 1か所につき500万円

です。

保証協会へ加入する場合の弁済業務保証金分担金は、

  • 本店 60万円
  • 支店等 1か所につき30万円

となります。

保証協会を選ぶ場合は、「免許通知が届いてから加入申込みを始めればよい」という考え方は避けた方がよいでしょう。

東京都の手引では、保証協会への加入手続には約2か月かかるとして、早めの申込みを案内しています。

また、免許日から3か月以内に営業保証金等に関する一連の手続を完了しない場合には、免許を取り消されることもあります。

保証協会を利用する予定であれば、免許申請と並行して加入方法や必要書類を押さえておくことで、免許通知後の対応が円滑に進みます。

新設法人は決算書の代わりに開始貸借対照表

最初の決算を迎える前の法人には、そもそも決算書がありません。代わりに提出するのが、会社設立日現在の開始貸借対照表です。

開始貸借対照表に書き入れるのは、設立時点の現金・預金などの資産、借入金などの負債、そして資本金です。

定款や履歴事項全部証明書に記載された資本金と、開始貸借対照表の数字が合っているかも忘れずに確認しておきましょう。

新設法人の場合、法人税の納税実績がまだないため、法人税の納税証明書は不要です。

代表者と専任宅建士の顔ぶれも設立前に固める

決めるのは代表者と役員だけではありません。誰を専任の宅地建物取引士に据えるか、この人選も設立段階で固めておくべきポイントです。

代表者本人が宅地建物取引士で、事務所の通常の勤務時間に常勤し、専らその事務所の宅建業務に従事できるのであれば、代表者と専任の宅地建物取引士を兼ねることもできます。

要件が満たされていれば、代表者1人体制の会社でも宅建業免許の申請が可能です。

一方、東京都では監査役とその会社の専任の宅地建物取引士との兼務は認められていません。専任の宅地建物取引士については、常勤性と専従性も審査の対象になります。

会社を設立してから、

  • 専任宅建士にする予定の人を監査役にしていた
  • 通常の勤務時間に常勤できない人を配置していた
  • 欠格事由に該当する役員を入れていた
  • 本店と支店の両方で専任宅建士が必要になった

と判明すれば、役員変更や人員の確保が別途必要になります。

役員構成と専任宅建士の配置は、設立登記の前に一体で組み立てておくことが欠かせません。ここを分けて考えると、後日の役員変更や人員の再配置につながることになります。

商号に「不動産」を入れる決まりはない

商号に「不動産」を入れる義務はありません。会社名がどうであれ、履歴事項全部証明書の目的欄から宅建業を営むことが読み取れれば、免許申請の入り口には立てます。

一方で、公的機関や公的な団体と誤認されるおそれのある名称については注意が必要です。

商号登記が通るかは、法務局で判断される法律面の論点です。宅建業者として名乗る名称に無理がないかは、実務上の論点として別に押さえておく必要があります。会社設立の段階で、両面を並行して検討していきます。

設立から免許申請までの手順

会社設立だけを先に終わらせて、後から宅建業免許の要件を当てはめようとすると、目的変更や本店移転が高い確率で発生します。これから法人を立ち上げる場合には、次の順序で進めることで手戻りを大きく減らせます。

  1. 売買、仲介、賃貸、管理など、行う事業を決める
  2. 宅建業の事務所として使用できる物件を選ぶ
  3. 登記上の本店所在地を決める
  4. 代表者、役員、専任の宅地建物取引士を決める
  5. 定款に「宅地建物取引業」などの目的を入れる
  6. 株式会社または合同会社を設立する
  7. 事務所の契約名義や使用権原を法人に合わせる
  8. 開始貸借対照表などの申請書類を準備する
  9. 東京都へ宅建業免許を申請する
  10. 保証協会を利用する場合は早めに加入手続を進める
  11. 免許通知後、営業保証金の供託または保証協会の手続を完了する
  12. 必要な届出を行い、免許証の交付を受けて営業を開始する

保証協会への加入には時間がかかるため、申込みの準備は免許通知を待たずに進めるのがポイントです。東京都も早めの申込みを案内しています。

物件を借りる時期と会社を設立する時期は、案件ごとに前後します。

少なくとも次の2点は、設立前に答えを持っておく必要があります。

「本店をどこに置くか」「その場所または営業予定の店舗で宅建業免許を取得できるか」

この2つが固まらないまま設立を進めると、目的変更登記や本店移転登記を後日行う場面が発生します。

よくある質問

株式会社と合同会社のどちらでも申請できますか?

どちらでも申請できます。法人格があり、定款目的、事務所、専任宅建士などの要件を満たせば、合同会社でも東京都知事免許の取得が可能です。

設立費用、対外的な信用、役員構成、将来の資金調達などを踏まえて会社形態を選ぶことになります。

会社設立と宅建業免許の申請は同時にできますか?

同時にはできません。法人で申請するには、先に会社の設立登記を終え、履歴事項全部証明書を取得できる状態になっている必要があります。

もっとも、定款作成、物件選び、専任宅建士の準備は並行して進められます。

定款に「不動産業」と書いてあれば足りますか?

足りません。東京都では曖昧な記載として扱われます。

「宅地建物取引業」や「不動産の売買、媒介」など、宅建業を営むことが分かる文言を登記してください。

自宅を会社の本店にしても申請できますか?

自宅が宅建業の事務所要件を満たしていれば可能です。居住部分と事務所が分けられ、来客がほかの居室を通らずに出入りできることなどが求められます。

別の店舗で宅建業を行う場合は、本店である自宅も宅建業法上の事務所となり、2事務所分の専任宅建士や保証金が必要になる点には注意が要ります。

会社設立前に事務所を契約してもよいですか?

契約自体は問題ありません。ただし、設立前は法人名義で契約できないため、代表者個人などが契約者になります。

設立後に法人へ名義を変更するか、法人による使用を貸主が承諾している事実を書面で示せるようにしておきます。

個人の宅建業免許を設立した法人へ移せますか?

そのまま移すことはできません。個人と法人は別の申請者であり、免許も別物です。

個人事業を法人化する場合は、法人として新規免許を申請し、法人の営業開始に合わせて個人免許の廃業手続を行います。

まとめ

法人で宅建業を始める場合は、会社を設立してから免許要件を確認するのではなく、設立前に定款目的、本店所在地、事務所、役員・専任の宅地建物取引士、開業資金まで含めて検討しておくことが重要です。

特に、本店と実際に営業する店舗を別にする場合や、自宅・マンションを事務所として使用する場合は、宅建業法上の事務所の扱いや専任宅建士の配置に影響することがあります。

設立前に免許取得までの流れを確認しておけば、設立後の目的変更登記や本店移転などの手戻りを減らせます。

宅建業免許の申請をお考えの方へ

当事務所では、東京都知事免許の新規申請について、必要書類の作成だけでなく、会社設立前の定款目的、本店所在地、事務所の使用状況、専任の宅地建物取引士の配置についても確認しています。

「これから会社を設立する」「借りる予定の物件で申請できるか確認したい」といった段階からご相談いただけます。

宅建業免許の申請をお考えの方へ

当事務所では、東京都知事免許の新規申請について、必要書類の作成だけでなく、会社設立前の定款目的、本店所在地、事務所の使用状況、専任の宅地建物取引士の配置についてもあわせてご案内いたします。

「これから会社を設立する」「借りる予定の物件で申請できるか確認したい」といった段階からのご相談も承ります。

ご相談・お見積もりは無料です。お気軽にお問い合わせください。

年中無休 9:00〜19:00

目次