撤去された室外機や電線を買い取るときの手続きは、その品物が本来の用途で使えるかどうかで変わります。使える中古設備や工具は古物商許可の対象で、本来の用途で使えず、主として銅でできた金属くずを買い取る場合は、特定金属くず買受業の届出が必要です。
この届出制度は2026年6月1日に始まりました。古物商許可を持っていても届出をしたことにはならないため、中古設備と特定金属くずの両方を扱う場合は、それぞれの手続きが必要です。
中古品と金属くずの違い
本来の用途で使える中古品は古物として扱い、古物商許可の対象になります。本来の用途で使えず主として銅でできた金属くずは、買い取る営業に特定金属くず買受業の届出が必要です。法律は古物にあたる物を特定金属くずから除いているため、同じ品物が2つの制度の対象になることはありません。
| 買い取る品物 | 必要な手続き |
|---|---|
| 本来の用途で使える中古の設備・工具など | 古物商許可 |
| 本来の用途で使えず、主として銅でできた金属くず | 特定金属くず買受業の届出 |
| 鉄・アルミなど、銅が主ではない金属くず | この届出の対象外(地域の条例を調べる) |
<!– 図解候補:買い取る品物が本来の用途で使えるかどうかで、古物商許可と特定金属くず買受業の届出に分かれる判断フロー –>
「スクラップ」「撤去品」「廃材」という呼び名では、手続きは決まりません。品物の状態、材質、どこでどのように出た物かで判断します。
リサイクル業者へ売る予定でも、判断の基準は仕入れる時点の状態です。「最終的にスクラップとして売るから、仕入れの時点から金属くずとして扱う」という判断は成り立ちません。撤去品や故障品でも、本来の用途で使える状態なら古物です。
中古品として買い取るなら、品物ごとに古物の区分が決まります。
特定金属くずにあたる品物
品物の重量か価格のどちらかで銅が半分以上を占める物は、「主として銅」にあたります。青銅や真鍮のくずも、銅の重量か価格が半分以上なら特定金属くずです。
| 品物の例 | 扱い |
|---|---|
| 切断された銅線ケーブル | 特定金属くず |
| 銅板の屋根材や橋の銘板を切断したくず | 特定金属くず |
| 壊れて使えない室外機 | 特定金属くず(重量で銅が半分に届かなくても、価格では半分以上になるのが通常) |
| まだ使える室外機 | 古物 |
| 新しい物品を作る過程で出た端材 | 特定金属くずから除かれる |
銅が含まれているだけでは足りません。銅の割合と品物の状態の両方で決まります。
現時点で特定金属にあたるのは銅だけですが、犯罪の状況によっては、今後政令で金属が追加される可能性があります。
使えるかどうか迷う品物は、買い取る前に写真と型式を残し、破損の状態も記録しておきましょう。
届出が必要になる取引
届出の対象は、特定金属くずの買い取りを営業として行う人です。買い取りには、現金を払う取引のほか、対価として金銭以外の財産上の利益を渡す取引も含まれます。
| 取引 | 届出 |
|---|---|
| 現金で特定金属くずを買い取る | 必要 |
| 貴金属などの品物を渡して、対価にする | 必要(買い取りに含まれる) |
| 工事代金を値引きして、銅管を引き取る | 管轄の警察署へ事前に相談 |
| 自社が持つ金属くずを売るだけ | 必要なし |
| 取引先から有償で引き取った金属くずを売る | その引き取りが買い取りにあたり、営業として行えば必要 |
工事代金の値引きは、公式の案内に例が書かれていないため、管轄の警察署に事前に聞いておきましょう。
自社が持つ金属くずを売るだけなら、他人から買い取る営業にはあたりません。ただし、工事現場の金属くずが自社の物になるとは限らず、誰の物かは契約と実際の取引で決まります。
買取品の区分と
解体業者や設備工事業者から撤去品を仕入れる時点で、買取品の区分と古物商許可の準備を並行して始めることになります。使える室外機や電線が古物にあたるかどうかも含めて、当事務所へご相談ください。
東京都での届出の流れ
届出の手順は、次のとおりです。
- 買い取る品物が特定金属くずにあたるか判断する
- 届出をする営業所と、保管場所の所在地を書き出す
- 添付書類と、営業所ごとの平面図・略図をそろえる
- 営業を始める日の前日までに、営業所を管轄する警察署へ提出する
- 届出番号の通知を受け、営業所に表示を掲げる
- 買い取りのたびに、本人確認と記録を行う
届出の時期と罰則
新しく始める人は、営業を始める日の前日までに届け出ます。2026年6月1日の時点ですでに営業していた人の期限は2026年8月31日で、この経過措置はすでに終わっています。
2026年9月1日以降は、届出をしないまま特定金属くず買受業を営めません。 無届で営業すると、6か月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。会社の業務として行った場合は、会社も罰金の対象です。届出をした人が自分の名義で他人に営業させる名義貸しも、同じ罰則の対象となります。相手が届出済みの会社でも変わりません。
本人確認と記録の義務には経過措置がなく、2026年6月1日から適用されています。
営業所と保管場所
届出は営業所ごとに必要です。同じ会社が都内に複数の営業所を持つときは、会社で1通ではなく、営業所の数だけ届出書を作ります。提出はいずれか1つの営業所を管轄する警察署へまとめて行え、東京都公安委員会が届出先になります。
届出が必要な営業所は、特定金属くずを買い取る営業所だけです。本人確認の記録や帳簿を保存するだけの拠点は、届出の対象に入りません。
届出書に載せる保管場所は、営業所で買い取った特定金属くずを置く場所のすべてです。警察の立入検査(警察が営業所などに入って帳簿や品物を調べること)は、保管場所にも及びます。本社で契約し、別のヤードで保管するなら、それぞれの場所が平面図と略図で分かるようにしましょう。
添付書類
添付書類は、届出をする人によって違います。
| 届出をする人 | 添える書類 |
|---|---|
| 法人 | 定款、登記事項証明書、代表者の住民票の写し、営業所と保管場所の平面図、周囲の略図 |
| 個人 | 本人の住民票の写し、営業所と保管場所の平面図、周囲の略図 |
住民票の写しは、本籍(外国籍の人は国籍など)の記載があるものが必要です。平面図と略図は営業所ごとに作り、敷地外の保管場所があれば、その平面図も添えます。古物商許可の申請とは必要な書類が違うため、警視庁ホームページの最新の様式と案内を読んでから準備しましょう。
届出後の本人確認と記録
本人確認
取引の相手については、買い取りのたびに本人確認が必要です。
相手が個人なら、氏名・住居・生年月日が分かる顔写真付きの書類の提示を受けます。運転免許証、マイナンバーカード、在留カードが使えます。有効期限が切れた書類は認められません。
相手が法人なら、名称と本店(主たる事務所)の所在地が対象です。法人の本人確認に加えて、実際に取引にあたる担当者本人の本人確認も必要です。 担当者が法人のために来ていることは、委任状や職員であることを示す書類で裏づけます。法人への電話連絡でも構いません。「いつもの会社だから」「顔なじみの担当者だから」という理由だけでは、省けません。
国家公安委員会規則で定めた一部の取引では、本人確認が不要です。代表例は、過去に取引した相手のその本人名義の預金口座へ、振込みで代金を払う取引で、来た人が過去の記録の相手と同じだと分かる書類か、本人しか知らない事項の申告を受けます。古物営業法の少額取引の考え方は、特定金属くずの本人確認に当てはまりません。
記録の作成と保存
記録は2種類で、内容は次のとおりです。
| 記録 | 主な内容 |
|---|---|
| 本人確認の記録 | 相手の本人特定事項(個人は氏名・住居・生年月日、法人は名称・本店の所在地)、本人確認の方法、本人確認にあたった担当者と記録の作成者の氏名、書類の提示を受けた日時。書類の写しも残す |
| 取引の記録 | 相手の氏名または名称、買い取りの日付と時刻、量(重量)・特徴・価額、代金の支払方法 |
どちらの記録も、買い取りの日から3年間保存します。取引の記録は買い取りのたびに作り、1週間分や1か月分をまとめて書くことは認められません。本人確認の記録も、本人確認の直後に作ります。
保存場所は、買い取りを行った営業所に限らず、本社や本部でも構いません。立入検査や報告の求めに備えて、営業所で印刷や表示ができる状態にしてください。
古物台帳や計量伝票には、買い取りの時刻や代金の支払方法が載っていないことがあります。取引の記録に必要な項目がすべて入るように、書式を作り直しましょう。
古物にあたる室外機、ヒートポンプ、送電用の電線は、1万円未満の買取でも本人確認と台帳への記録が必要です。2025年10月1日から、古物商の三大義務の対象になりました。
表示と申告
届出をしたら、営業所の出入口など、道を通る人から見やすい場所に表示を掲げます。表示する内容は、氏名または名称、届出をした公安委員会の名称、届出番号です。ウェブサイトにも、原則として同じ内容を載せます。
盗品の疑いがあるときは、直ちに警察官へ申告します。申告先は管轄の警察署のほか、110番でも構いません。解釈運用基準が挙げる、疑いが認められる例は次のとおりです。
- 警察から提供された被害情報と、品物や量が一致するとき
- 取引実績のない個人が、一度に大量の特定金属くずを持ち込んだとき
- 期限切れの在留カードを出すなど、本人確認の書類に不自然な点があるとき
受付担当者が迷ったときの報告先と、警察への連絡の手順は、社内で先に用意しておきましょう。
条例と廃棄物は別の制度
地域の金属くず条例は、国の届出制度が始まった後も残っています。一部の道府県には、金属くずの買い取りについて独自の規制があり、法律はそうした規制を妨げていません。千葉県の特定金属類取扱業の許可が一例です。千葉県の許可を受けていても、特定金属くず買受業にあたる営業をするなら、別に営業所ごとの届出が必要です。
東京都に本社がある会社でも、他県に営業所を置く場合や他県で取引する場合は、その地域の条例を調べましょう。
廃棄物にあたるかどうかは、買い取った物の状態や取引の実態、運搬・保管の方法で判断が分かれます。古物商許可と特定金属くず買受業の届出は、どちらも廃棄物処理業の許可ではありません。代金を払って買い取る取引でも、廃棄物にあたることがあります。廃棄物にあたる物の収集運搬や処分には、廃棄物処理法の許可が別に必要です。
買い取りを始める前に、品物ごとに次の4点を調べましょう。
- 古物にあたるか
- 特定金属くずにあたるか
- 廃棄物にあたるか
- 地域の条例があるか
よくある質問
- 同じ取引先から月に何度も持ち込みがあるとき、そのつど本人確認が必要ですか?
-
月末締めで翌月に支払う取引なら、持ち込みのたびの本人確認は不要です。全体を1つの取引として、代金を払う時点までに本人確認を行えば足ります。持ち込みの場でそのつど現金を払う取引は、毎回の本人確認が必要です。
- 本人確認と取引の記録は、本社でまとめて保存してもよいですか?
-
はい、できます。買い取りを行った営業所に置く必要はなく、本社や本部で保存できます。立入検査や報告の求めに備えて、営業所で印刷や表示ができる状態にしてください。
- 営業所を移転したときは、変更の届出で足りますか?
-
いいえ、足りません。営業所の所在地が変わるときは、営業廃止の届出書を出したうえで、新しい所在地の開始の届出書を出します。区画整理などで住居表示だけが変わり、場所が同じなら、新しい届出は不要です。代表者が変わったときは、すべての営業所について変更の届出が必要です。
- 届出をした名義を、取引先の会社に使わせてもよいですか?
-
使わせることはできません。届出をした人が自分の名義で他人に特定金属くず買受業を営ませることは禁じられており、相手が届出済みの会社でも同じです。違反すると、無届営業と同じ罰則の対象です。
- ウェブサイトへの表示は、どの会社でも必要ですか?
-
いいえ、免除される場合があります。常時使用する従業者が5人以下の会社と、自社で管理するウェブサイトを持たない会社は、ウェブサイトへの表示が不要です。会社役員と個人事業主は、この従業者の数に入りません。
まとめ
金属くずの買取を始めるときは、まず品物が本来の用途で使えるかどうかで分けます。使える中古の設備や工具は古物商許可の対象で、使えず主として銅でできた金属くずは特定金属くず買受業の届出の対象です。銅の割合は、重量か価格のどちらかで半分以上かが基準になります。
東京都での届出は営業所ごとで、新しく始める人は営業を始める日の前日までに出します。届出後も、買い取りのたびの本人確認と記録が続きます。営業所への表示や、盗品の疑いがあるときの申告も欠かせません。古物商許可の取り方は、古物商許可を自分で申請する手順にまとめています。
参考資料・公式情報
本記事は、以下の公的機関・法令の情報を参考に作成しています。
古物商許可が必要か迷っている方はご相談ください
「この品物は古物商許可の対象なのか、届出だけでよいのか」と迷った段階で、ご相談ください。判断だけのご相談でも受け付けています。
古物商許可が必要な場合は、申請書類の作成から提出まで、リユース業界で10年以上、買取の実務に携わってきた行政書士がサポートします。

