古物商許可を取得したあとも、営業中に守り続けなければならない義務が3つあります。本人確認・不正品の申告・帳簿への記録で、これらをまとめて「三大義務」と呼びます。
どれも「知っているかどうか」に関係なく適用されます。違反すると公安委員会から指示・営業停止・許可取消しの行政処分が下ります。許可取消しを受けると、その後5年間は再取得できません(古物営業法第4条)。「違反が発覚してから対応すればいい」というやり方は、この時点で通用しなくなります。
3つの義務の内容と、実務でつまずきやすいポイントを順に見ていきます。
古物商の三大義務とは
古物営業法は、盗品の流通防止と被害品の追跡を目的として、古物商に3つの義務を課しています。
- 本人確認義務(15条1項):古物を買い取るとき、相手の住所・氏名・職業・年齢を確認する
- 不正品申告義務(15条3項):盗品と疑われる品物があれば警察へ申告する
- 帳簿記録義務(16条):取引内容を帳簿に記録し、最終記載日から3年間保存する
①本人確認義務:誰から買ったかを確認する(古物営業法第15条1項)
古物を買い取る際、または交換する際には、相手の住所・氏名・職業・年齢を確認しなければなりません。
確認が必要なタイミング
- 中古品を買い取るとき
- 他の中古品と交換するとき
- 買取・交換の委託を受けるとき
対面取引での確認方法
身分証の提示を受け、その内容を記録(コピー)します。使える書類の例は以下のとおりです。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- 在留カード
- 健康保険証(補助書類と組み合わせる場合)
健康保険証は2024年12月に新規発行が停止され、マイナンバーカードへの移行が進んでいます。顔写真がなく、なりすましのリスクが高いため、運転免許証またはマイナンバーカードの提示を求める買取店が増えています。
非対面取引(宅配買取)での確認方法
免許証のコピーを送付してもらうだけでは法的に不十分です。施行規則で定められた以下のいずれかの方法が必要です。
- 本人限定受取郵便で現金または書類を送り、到達を確認する
- eKYC(オンライン本人確認)で顔写真と身分証を照合する
- 住民票の写しの原本を受け取り、転送不要の書留で到達確認をする
宅配買取の本人確認については法定3つの確認方法で詳しく扱っています。
本人確認が免除されるケース
買取総額が1万円未満の場合は、原則として本人確認義務が免除されます。ただし以下の品目は、1万円未満でも確認が必要です。
- 自動二輪車・原付(部品を含む)
- ゲームソフト
- CD・DVD・BD
- 書籍
これらの品目は青少年の万引き・盗難被害が多いため、金額にかかわらず免除されません。13品目の区分と選び方は古物商の13品目一覧で確認できます。
実務での注意点
買取の現場では、身分証を目視確認するだけでなく、ホログラムや特殊印刷など真偽確認をその場で行います。偽造身分証を見落とすと義務を果たしたことにならないため、確認の手順を一定のルーティンにしておくのが安全です。
未成年者からの買取は別途注意が必要です。保護者の同意確認など、対応の実務は未成年客の買取対応と年齢確認にまとめています。
②不正品申告義務:盗品を警察に申告する(古物営業法第15条3項)
取引中に「これは盗品ではないか」と疑わしい場合は、直ちに警察へ申告しなければなりません。
申告が必要なケース
- 盗品と疑われる品物を買い取った、または買い取りそうになった場合
- 警察から届いた品触れ(手配書)に該当する品物を持っている場合
- 明らかに不審な取引があった場合
現場での判断基準
以下のようなケースは慎重に扱います。
- 未開封の新品を大量に持ち込む個人
- 相場を知らず、安値でもいいから急いで換金しようとする
- 同一人物が短期間に何度も高額品を持ち込む
- 年齢や状況に見合わない高額品を持ち込む
疑わしいと感じたら、その場での買取を断って警察に相談するのが現実的な対応です。盗品を善意で買い取ってしまった場合、被害者から返還請求があれば無償で返さなければならず、買取代金はほぼ戻りません。
品触れとは
品触れとは、警察から届く盗品の手配書です。「この品物を見かけたら連絡してほしい」という通知で、受け取った日付を記録し6か月間保存する義務があります。該当品を持っている場合は直ちに届け出ます。
かつては警察官が紙の手配書を持参していましたが、現在はメールや専用システムで電子的に通知されるケースが増えています。登録アドレスやシステムを毎日確認する習慣が必要です。
申告方法
管轄の警察署へ電話し、品物の特徴と売主の情報を伝えます。申告して協力すれば刑事罰の対象にはなりません。申告せずに放置すると、義務違反として行政処分の対象になります。
③帳簿記録義務:取引内容を記録して保存する(古物営業法第16条)
取引の内容を古物台帳(帳簿)に記録し、最終記載日から3年間保存しなければなりません。万が一盗品が流通した際に、警察が流通ルートを追跡できるようにするためです。
帳簿に記載すべき項目
- 取引の年月日
- 古物の品目と数量(13品目のどれか)
- 古物の特徴(ブランド名・型番・シリアルナンバーなど)
- 相手の住所・氏名・職業・年齢
- 本人確認の方法(「運転免許証にて確認」など)
帳簿の形式
指定の用紙はありません。記載事項が網羅されていれば、紙の帳簿でもExcelでも専用ソフトでも問題ありません。ただし、警察の立入検査の際にすぐ表示・印刷できる状態にしておく必要があります。
記載例や具体的な書き方は古物台帳の書き方に手順をまとめています。
インボイス制度との関係
帳簿記録は防犯・警察対応だけでなく、消費税の申告にも関わります。古物商には「古物商特例」があり、インボイス未登録の一般個人から仕入れた場合でも、古物台帳を保存していれば仕入税額控除が認められます。帳簿の記載が不十分だとこの特例が使えなくなり、消費税を余分に納めることになります。制度の詳細は古物商とインボイス制度・古物商特例で確認できます。
保存期間について
保存義務は最終記載日から3年間です。税務調査への備えとして7年程度保存しておくのが無難です。
義務に違反した場合の罰則
行政処分(許可業者向け)
三大義務に違反した場合、公安委員会から以下の行政処分が下ります(古物営業法第23条・第24条)。
- 指示
- 営業停止
- 許可取消し
一度の軽微な違反で即取消しにはなりませんが、繰り返し違反した場合や悪質な場合は許可取消しになります。取消しを受けると、その後5年間は許可を再取得できません。
刑事罰
本人確認義務・帳簿記録義務の違反には刑事罰も規定されています。
- 本人確認義務違反:6か月以下の拘禁刑(旧:懲役)または30万円以下の罰金、もしくはその両方
- 帳簿記録義務・虚偽記載:6か月以下の拘禁刑(旧:懲役)または30万円以下の罰金、もしくはその両方
不正品申告義務の違反には直接の刑事罰は規定されていませんが、行政処分の対象になります。
2025年6月施行:「懲役」から「拘禁刑」への変更
2022年6月17日に公布された改正刑法が、2025年6月1日に施行されました。これにより従来の「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されています。古物営業法の罰則条文もこの読み替えが適用されるため、現在の正式な表記は「拘禁刑」です。「懲役」という単語で検索してこの記事に来た方も、現在は「拘禁刑」として扱われます。
まとめ
三大義務のポイントをまとめます。
- 本人確認義務:買取時は身分証を確認して記録する。宅配買取は方法に注意
- 不正品申告義務:疑わしい取引は断り、該当品があれば警察へ申告する
- 帳簿記録義務:取引のたびに記録し、最終記載日から3年間保存する
義務を守ることで、盗品を買い取るリスクを下げ、警察の照会があったときにもスムーズに対応できます。古物台帳が整っていれば、照会が来てもその場で確認が終わります。記載が不十分だと、何度も問い合わせを受けることになります。
お困りの際は当事務所へ
古物商許可の取得は、必要書類の準備から警察署への申請まで、手続きが複雑です。
当事務所では、古物買取の現場で10年以上の経験を持つ行政書士が、書類作成から許可取得までサポートいたします。
申請代行 11,000円〜(税込)/まずはお気軽にご相談ください
- LINE相談(24時間受付・返信最速)
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- 電話:03-6821-4578(年中無休 9:00〜19:00)
よくある質問
- 1万円未満の買取でも本人確認は必要ですか?
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原則として免除されますが、ゲームソフト・CD・DVD・書籍・バイク関連は金額にかかわらず本人確認が必要です。また、複数回に分けて買い取る場合、合計額が1万円を超えれば確認が必要になります。
- 宅配買取で免許証のコピーを送ってもらうだけでは足りませんか?
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足りません。非対面取引では、本人限定受取郵便・eKYC・住民票の原本と転送不要書留のいずれかが必要です。免許証コピーの受け取りだけで済ませると義務違反になります。
- 帳簿の記録を忘れた場合、どうすればよいですか?
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気づいた時点でできるだけ早く記載してください。記載漏れが立入検査で発覚すると行政処分の対象になります。取引のたびにその場で記録する習慣をつけておくと、まとめて書こうとして後回しになることを防げます。
- 盗品を善意で買い取ってしまった場合、罰則を受けますか?
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知らずに買い取った場合、刑事罰は免れます。ただし、被害者から返還請求があれば無償で返さなければなりません。買取代金は戻りません。警察への申告と協力を優先してください。
- 義務違反で一度処分を受けると、すぐに許可が取り消されますか?
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一度の軽微な違反で即取消しにはなりません。ただし、悪質な違反や繰り返しの違反は許可取消しになります。取消しから5年間は再取得できないため、早い段階で対応方法を確認しておくことをお勧めします。
執筆者プロフィール
手島宏典 行政書士・現役質屋店長
業界歴10年以上。大手買取店FC3年経営。
行政書士手島宏典事務所
東京都葛飾区亀有3丁目27-30 Tビル1階
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