古物商の買取には、相手の本人確認、不正品の疑いがあるときの警察官への申告、取引内容の帳簿への記録という3つの義務がついて回ります。一般に「古物商の三大義務」と呼ばれる3つです。
店頭では、身分証の提示を受け、品物の状態や番号を見て、記録が必要な取引はその場で台帳に書きます。宅配買取では、身分証の画像を受け取るだけでは本人確認になりません。
この記事では、3つの義務を実際の買取の流れに沿って解説します。1万円未満の例外や、守れなかったときの処分も取り上げます。
古物商の三大義務とは
三大義務は法律上の名前ではなく、古物営業法に定められた3つの義務をまとめた呼び方です。
| 義務 | 行うとき | 中身 |
|---|---|---|
| 本人確認 | 買い取る、交換する、売却や交換を任される | 相手の住所・氏名・職業・年齢を、法律で認められた方法で確かめる |
| 不正品の申告 | 買取などをしようとして、盗品などの疑いを持った | すぐに警察官へ伝える |
| 帳簿への記録 | 記録が必要な取引をした | 日付、品目と数量、特徴、相手の情報などを取引ごとに書く |
3つの義務は、現場では1件の取引の中で続けて出てきます。「誰から」「何を」「どう確かめて」買ったかを、後から1件ずつたどれるようにするための義務です。
1.買い取るときは相手を本人確認する
古物を買い取るとき、交換するとき、売却や交換を任されるときは、相手の住所・氏名・職業・年齢を本人確認します。確かめ方は、店頭か郵送かといった取引の形ごとに決まっています。
店頭では4つの項目をそろえる
店頭では、運転免許証などの身分証の提示を受け、本人の申告と照らし合わせる方法が一般的です。運転免許証には職業が書かれていないので、買取申込書などに職業を書いてもらう欄を設けてください。身分証のコピーは法律で求められておらず、コピーを取っただけでは本人確認は済みません。
相手が古物商や法人でも、本人確認を省ける規定はありません。法人から仕入れるときは、実際に窓口に立つ担当者本人を確かめます。
宅配買取・フリマ仕入れの本人確認
宅配買取のように顔を合わせない取引(非対面取引)では、身分証の画像やコピーを送ってもらうだけでは足りません。住所あての郵送や本人名義の口座への振込など、決められた手順を組み合わせます。方法ごとの手順は宅配買取の本人確認の記事にまとめています。
フリマアプリの「本人確認済み」の表示は、運営会社が自社のサービスのために行った手続きです。古物商の本人確認の代わりには使えないので、仕入れのときはフリマ・オークション仕入れの本人確認を参考にしてください。
1万円未満の例外
対価の総額が1万円未満の取引は、本人確認と帳簿の記録が免除されます。1万円は税抜で、一度に持ち込まれた品物の合計で判断します。次の品目は、1万円未満でも本人確認と記録が必要です。
- バイク・原付(部品を含む。ねじ、ボルト、ナット、コードなど汎用の部品は除く)
- 家庭用ゲームソフト
- CD・DVDなど
- 書籍
- エアコンの室外機
- 電気温水機器のヒートポンプ
- 電線
- 金属製グレーチング(側溝のふた)
少額で免除される取引でも、18歳未満の人から自由に買い取れるわけではありません。東京都では条例で青少年からの古物の買受けを制限しており、細かなルールは18歳未満からの古物買取の記事で解説しています。
本人確認と
買取の方法を決める時点で、申請書類と本人確認の手順の準備を並行して始めることになります。宅配買取でどの本人確認の方法を使うか、買取申込書にどの項目を入れるかも含めて、当事務所へご相談ください。
2.不正品の疑いがあれば警察官へ申告する
買い取ろうとした品物に盗品などの疑いを持ったら、すぐに警察官へ申告します。盗品だと分かってから連絡するのではなく、疑いを持った時点で伝える義務です。
たとえば、製造番号が削られたブランド品、入手の経緯の説明が何度も変わる売主、売る権限を説明できない他人名義の品物です。判断の材料は品物の状態や番号、売主の説明で、相手の見た目や年齢、国籍だけで決めつけないでください。スタッフが複数いるお店では、誰が警察へ連絡するかを決めておきましょう。
警察から品触れ(警察が盗品の特徴を古物商に知らせること)の書面が届いたら、到着した日付を書き込み、6か月保存します。書かれた品物を持っていたときや、その6か月以内に受け取ったときは、すぐに警察官へ届け出てください。
3.取引のたびに古物台帳へ記録する
買取など記録が必要な取引は、その都度、古物台帳に書きます。主な項目は、取引日、品目と数量、品物の特徴、相手の住所・氏名・職業・年齢、本人確認の方法です。
品物の特徴には、型番や製造番号など、後から1点を特定できる情報を残しましょう。1週間分や1か月分をまとめて入力する方法は認められていません。詳しい記載例は古物台帳の書き方と記載例で解説しています。
売って引き渡したときにも記録が要るのは、美術品類、時計・宝飾品類、自動車、自動二輪車・原付です。自動二輪車・原付の部品は、1万円未満で取引するものを除きます。帳簿の保存期間は3年間で、紙は最後に書いた日から、電子は記録した日から数えます。なくしたときは、すぐに営業所のある地域の警察署へ届け出てください。
義務を守れなかったとき
本人確認をしなかったとき、帳簿に記録しなかったとき、帳簿を保存しなかったときは、罰則の対象になります。刑の重さは、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(古物営業法33条)。帳簿をなくしたのに届け出なかったとき、品触れへの対応を怠ったときにも、同じ罰則が定められています。
不正品の申告は、この罰則の条文には挙がっていません。それでも古物営業法の義務には変わりがなく、申告を怠れば公安委員会の指示や営業停止といった行政処分の理由になります。書き間違い1回で許可が取り消される仕組みではなく、違反の中身やいきさつ、程度によって処分が変わります。
実務では、次の4つをスタッフが迷わず判断できる手順にしておきましょう。
- この取引に本人確認が要るか
- どの方法で本人確認をするか
- 台帳のどの項目に何を書くか
- 不自然な品物が持ち込まれたとき、誰へ報告するか
三大義務のほかに守ること
許可を受けたあとに守る決まりは、三大義務だけではありません。営業所ごとに管理者を1人置き、様式どおりの標識(古物商プレート)を営業所の見やすい場所に掲げます。ホームページで古物を取引するなら、許可の情報の表示とURLの届出も必要です。
営業所の場所や管理者が変わったときは、変更届を出してください。出張買取を始めるなら、行商(営業所の外で古物を取引すること)や訪問購入のルールも関係してきます。
よくある質問
- 以前売った品物を、同じお客様から買い戻すときも本人確認は必要ですか?
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自分のお店で売った品物を、その売った相手から買い受けるときは、本人確認と帳簿の記録が免除されます。ただし、誰に売った品物か販売の記録でたどれなければ、この免除にあたるかどうか判断できません。記録が残っていない品物は、通常の買取と同じ手順で進めてください。
- 買取を断った品物にも、不正品の疑いがあれば申告は必要ですか?
-
必要です。申告の義務は、買い取ろうとした段階で疑いを持ったときにかかります。断って帰ってもらうだけでは、その品物がほかのお店に持ち込まれます。品物の特徴や相手の説明を控えて、すぐに警察官へ伝えましょう。
- 盗品と知らずに買い取った品物は、返さなければなりませんか?
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買い取った品物が盗品や落とし物だったときは、被害者から返すよう求められます。盗まれた時・なくした時から1年以内なら、代金を受け取らずに返すことになります。支払った代金については、品物を売った相手への返還請求を検討することになります。本人確認で住所・氏名を正しく残していれば、その請求先が分かります。
- 従業員が本人確認や記録を怠ったとき、お店も責任を問われますか?
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問われます。従業員がお店の業務で違反したときは、その従業員が罰せられるほか、お店を営む法人や個人にも罰金刑が科されます。行政処分の相手も、許可を受けた古物商です。
- 警察から帳簿を見せるよう求められることはありますか?
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警察官は、営業所や古物の保管場所に立ち入って、帳簿や品物を調べることができます(立入検査)。公安委員会から、盗品などについて報告を求められることもあります。帳簿がすぐに出てこない、電子の記録を開ける人がいないという状態では、その場で答えられません。
まとめ
本人確認、不正品の申告、帳簿への記録の3つが、古物商の三大義務です。本人確認では住所・氏名・職業・年齢の4つをそろえ、宅配買取やフリマ仕入れでは店頭と違う方法が必要です。1万円未満の取引には免除があるものの、書籍やゲームソフトなど、金額にかかわらず本人確認と記録が要る品目もあります。
不正品は、疑いを持った時点で警察官へ申告します。帳簿は記録が必要な取引のたびに書き、3年間保存してください。3つの義務は1件の買取の中でつながっているので、最初の買取から同じ手順で回せる体制を作っておきましょう。
参考資料・公式情報
本記事は、以下の公的機関・法令の情報を参考に作成しています。
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