スマホを持った手と郵便封筒が並ぶ構図。eKYCとアナログ手段の両方があることを示す宅配買取で「身分証のコピーを送ってもらえば本人確認になる」と考えていませんか?
実は、これだけでは法律上の本人確認として不十分です。違反が発覚した場合、営業停止や許可取り消しのリスクがあります。
この記事では、非対面取引(宅配買取)での正しい本人確認方法を、買取店での経験をもとに解説します。
非対面取引とは?
対面せずに古物を買い取る取引のことです。宅配買取・郵送買取・オンライン査定などが該当します。インターネットの普及で急速に広まりましたが、その分、なりすましや偽造身分証のリスクも高まっています。
古物営業法では、対面取引と非対面取引で本人確認の方法が異なります。非対面取引には、法律で定められた方法のいずれかを必ず採用しなければなりません(古物営業法施行規則 第15条第3項)
なお、本人確認は古物商に課された三大義務の一つです。他の義務(不正品申告・取引記録)については、こちらの記事も参考にしてください。
身分証コピーだけでは不十分な理由

対面取引では、身分証の現物を確認し、顔写真と本人を照合することができます。しかし非対面取引では、現物の確認も顔の照合もできません。
そのため「送られてきたコピーが本物かどうか」を古物商側で判断することが、原則として不可能です。
「身分証のコピーを送ってもらった」だけでは、古物営業法上の本人確認を満たしていません。コピーの送付は、後述する「②転送不要の簡易書留」などと組み合わせて初めて有効になります。
法律で認められた3つの方法
①本人限定受取郵便(第2号)

手順:
- 古物商から買取キットや査定書などの書類を「本人限定受取郵便」で送付する
- お客様が郵便局の窓口または郵便局員から受け取る際に、身分証を提示する
- 郵便局が本人確認を代行し、到達を確認できる
メリット:
- 郵便局が本人確認を代行してくれるため確実性が高い
- 古物商側の手続きが比較的シンプル
デメリット:
- お客様が郵便局の窓口または在宅で受け取る必要がある
- 配達に数日〜1週間かかる場合がある
②身分証コピー + 転送不要の簡易書留(第5号)
手順:
- お客様から荷物と一緒に「身分証のコピー」を送ってもらう
- 身分証に記載された住所へ、古物商から「転送不要の簡易書留」で書類(査定結果・ログインパスワード等)を送付する
- 郵便物がお客様に届いたこと(到達)を追跡番号等で確認する
- 身分証と同じ名義の銀行口座へ買取代金を振り込む
メリット:
- お客様が郵便局の窓口に行く手間がない
- ①より手数料が安い
デメリット:
- 書留の送付と到達確認が必要なため、振込まで数日かかる
③eKYC(電子本人確認)(第1号・第3号等)
手順:
- お客様がスマホで身分証を撮影・送信する
- 本人の顔写真もあわせて撮影・送信する
- eKYCシステムが身分証と顔を自動照合し、本人確認が完了する
メリット:
- 即日で本人確認が完了する
- お客様・古物商双方の手間が最小限
デメリット:
- TRUSTDOCKやLiquidなどのシステム導入費用がかかる
3つの方法の比較
| 確認方法 | 精度 | スピード | コスト | お客様の手間 |
|---|---|---|---|---|
| ①本人限定受取郵便 | ◎ | △ 数日〜1週間 | △ 500〜1,000円 | △ 受取必須 |
| ②コピー + 書留 | ○ | △ 2〜5日 | ○ 比較的安い | ○ 自宅受取可 |
| ③eKYC | ◎ | ◎ 即日 | △ 導入費用あり | ◎ スマホ完結 |
実務から見た注意点

私は現在も質屋の店長として勤務しており(業界歴10年以上)、日々、ブランド品・貴金属・時計の買取・販売を行っています。だからこそ、書類上の知識だけでなく、現場で使える実践的な情報をお伝えできます。
実務で特に重要だと感じる注意点を3つ挙げます。
1. 振込口座名義と身分証名義の一致確認 買取代金の振込先の名義が、身分証に記載された名義と一致しているか必ず確認します。一致していない場合は、追加の確認が必要です。
2. 金・プラチナ等の高額買取時のマイナンバー対応 非対面取引に限らず、インゴット(金・プラチナ)や金貨などの買取金額が200万円を超える場合、古物営業法の本人確認とは別に、税務上の理由からマイナンバー(個人番号)の取得が必要です。参考:支払調書制度(国税庁)
3. 取引記録の保存期間 非対面取引の本人確認記録は、取引が終了してから3年間の保存が義務付けられています。帳簿の書き方・保存方法については下記の記事もご参照ください。
→ 古物台帳(帳簿)の書き方|記載事項・Excelテンプレート・保存期間まで解説
よくある質問(FAQ)
- Q身分証のコピーを送ってもらうだけでは本当にダメですか?
- A
はい、それだけでは法律上の本人確認を満たしません。身分証コピーの送付は、②の方法における「転送不要の簡易書留による到達確認」とセットで初めて有効になります(古物営業法施行規則 第15条第3項第5号)。コピー単体では古物営業法違反となります。
- Qすでに身分証コピーのみで宅配買取をしていた場合、どうすればよいですか?
- A
今後の取引から、法定の3つの方法のいずれかに切り替えてください。過去の取引については、専門家への相談をお勧めします。違反が続いていると、警察の調査対象になる可能性があります。
- Q小規模な個人事業主でも現実的に対応できますか?
- A
はい。取引量が少ない段階では、①本人限定受取郵便か②身分証コピー+転送不要書留が現実的です。取引量が増えてきたらeKYCへの移行を検討するとよいでしょう。古物商許可を個人で取得する際の注意点については下記も参考になります。→ 古物商許可の個人事業主での開業について
- Q本人限定受取郵便の手数料はいくらですか?
- A
郵便物の重量や種類によって異なりますが、通常郵便料金+500円前後が目安です。詳しくは日本郵便の公式サイトでご確認ください。
- Q非対面取引の本人確認を怠った場合、どのような罰則がありますか?
- A
古物営業法違反として、古物商許可の停止(最大6か月)または取り消し処分の対象となります。また悪質な場合は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります(古物営業法 第36条)
まとめ
非対面取引(宅配買取)で法律が認める本人確認の方法は3つです。
まず、本人限定受取郵便は郵便局が代行してくれる確実性の高い方法です。次に、身分証コピー+転送不要の簡易書留は身分証コピーの受取・住所への書留送付・到達確認・同名義口座への振込をセットで行う方法で、小規模事業者に向いています。そして、eKYC(電子本人確認)はスマホで即日完結する最も効率的な方法ですが、システム導入費用がかかります。
身分証コピーの送付だけでは法律上の本人確認を満たしません。宅配買取を始める前に、いずれかの方法を整備しておいてください。
古物商許可の取得や申請手続きについては、こちらも参考にしてください。
お困りの際は当事務所へ
古物商許可の取得や、宅配買取を始める際の法的手続きは、確認すべき項目が多く複雑です。「自分のケースでどの方法が適切か」「許可申請の書類はどうすれば良いか」といった疑問は、お気軽にご相談ください。
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執筆者プロフィール
手島宏典 行政書士・現役質屋店長 業界歴10年以上。大手買取店FC3年経営。
行政書士手島宏典事務所 東京都葛飾区亀有3丁目27-30 Tビル1階 TEL:03-6821-4578(年中無休 9:00〜19:00)

