長尺の鋼材や大型設備、建設機械などを運ぶ現場では、荷台に載せた貨物が車体から大きくはみ出す場面があります。貨物をこれ以上分割できるかどうか、車体からどれだけはみ出すかによって、必要になる許可の種類が変わってきます。
特殊車両通行許可は道路法に基づき、車両の寸法や重量、通行経路を道路管理者が審査する制度です。これに対して制限外積載許可は道路交通法第57条第3項に基づき、出発地を管轄する警察署長が積載物の大きさや積み方を審査する許可です。
特車許可を取得したからといって、貨物をどのようにはみ出して積んでもよいわけではありません。本記事では、制限外積載許可が必要になる場面と特殊車両通行許可との違い、申請先や必要書類、オンライン申請の手順までを扱います。
制限外積載許可とは
制限外積載許可は、分割できない貨物を運ぶ際に、道路交通法が定める積載物の大きさや積み方の制限をやむを得ず超えるときに必要となる許可です。対象になるのは電柱や変圧器、大型設備など、形態上ひとつの物件であり、分割・切断すると貨物そのものの価値や機能を著しく損なうものに限られます。
「1台にまとめたほうが安い」「何度も往復するのは手間がかかる」といった事情だけでは、通常の積載制限を超える理由にはなりません。
申請者となるのは、車両を実際に運転する運転者本人です。長距離輸送などで複数の運転者が交替する場合は、その全員を申請者として扱い、申請書へ連記するか運転者一覧を添付する形をとります。
制限外積載許可と特車申請は別の制度
制限外積載許可と特殊車両通行許可は、関係する場面がよく似ているため混同されがちですが、根拠となる法律も審査の視点も異なる別の制度です。
たとえば平ボディトラックへ長尺物を積み、貨物が車体後方へ大きくはみ出す場合は、道路交通法上の制限外積載許可が問題になります。積載状態の車両全体が幅2.5m、長さ12m、高さ3.8m、総重量20tといった道路法上の制限を超えていれば、特殊車両通行許可も別に判断が必要です。
積載貨物によって特車申請が必要になるかどうかの考え方は、平ボディの特車申請で詳しく扱っています。
制限外積載許可が必要になる長さ・幅・高さの基準
2022年5月13日の道路交通法施行令改正により、自動車の積載物にかかる長さ・幅の制限が緩和されました。大型・中型・準中型・普通貨物自動車など一般的な車両では、通常の積載範囲はおおむね次のとおりです。
| 項目 | 通常の制限 |
|---|---|
| 積載物の長さ | 車両長の1.2倍まで |
| 積載物の幅 | 車両幅の1.2倍まで |
| 前後へのはみ出し | 前後それぞれ車両長の10%まで |
| 左右へのはみ出し | 左右それぞれ車両幅の10%まで |
| 積載時の高さ | 原則として地上3.8mまで |

ここで押さえておきたいのが、貨物そのものの大きさと、車体からどれだけはみ出しているかは別々に判断するという点です。車両長10mのトラックであれば、貨物の長さ自体は12mまでが通常の制限内に収まります。ところが、その12mの貨物を後方へ大きく寄せて積み、車体後端から1mを超えてはみ出せば、後方へのはみ出し制限には抵触します。
「貨物が車両長の1.2倍以内だから許可は不要」と、長さだけで判断することはできません。
前後・左右のはみ出しにも10%の制限がある
2022年の改正後は、積載物の長さと幅だけでなく、積み方そのものまで見きわめる必要があります。前後方向では車体の前端・後端からそれぞれ車両長の10%まで、左右方向では車体の左右からそれぞれ車幅の10%までが、通常認められる範囲です。
車両長12mなら前方・後方それぞれ1.2mまでが一つの目安になり、車幅2.5mなら左右それぞれ0.25mまでとなります。長尺のH鋼や橋桁、コンクリート製品などでは、貨物自体の寸法だけでなく、車両のどの位置へ載せるのかまで決めたうえで制限外積載許可の要否を判断します。
ポールトレーラのように長尺物を運ぶ場面では、特車申請と制限外積載許可の両方が関係しやすくなります。
積載物の寸法は実際に積んだ状態で判断する
制限外積載許可では、貨物のカタログに記載された縦・横・高さの数値をそのまま使うとは限りません。長さと幅は、貨物を実際に車両へ積んだ状態で、車両の前後方向・横方向へ投影して測ります。高さについても、貨物を車両のどの位置に載せるかが関係してきます。
実務上、許可の要否を判断する際は、路面から積載貨物の最高部までの高さが通常3.8m以内に収まるかどうかを捉えておくと分かりやすくなります。低床トレーラに建設機械を積む場合も、重機単体の高さだけでは判断できません。荷台へ載せて公道を走行する状態で、高さや幅を突き合わせます。
重機を積載した状態の諸元については、重機回送の特車申請でも詳しく扱っています。
高さ4.1mの道路は道路法と道路交通法を分けて考える
高さについては通常3.8mが基準ですが、一定の道路では4.1mまで認められる仕組みがあります。ここで注意したいのが、道路交通法と道路法の双方に、それぞれ別の4.1mに関する制度がある点です。
道路交通法上は、都道府県公安委員会が道路・交通の状況に支障がないと認めて指定した道路であれば、通行する自動車の積載時車高4.1mまで制限外積載許可なしで通行できます。道路法にも道路管理者が指定する高さ指定道路があり、こちらは高さの基準そのものが3.8mから4.1mへ引き上げられる制度です。
両者は連携して指定される道路もありますが、根拠となる法律と、判断する許可の窓口が異なります。道路法上4.1mまで通行できるからといって、警察の制限外積載許可まで必ず不要になるとは限りません。一つの制度だけで判断しないようにしましょう。
特車申請と制限外積載許可の両方が必要になるケース
大型設備や長尺物の輸送では、二つの制度が同時に関係する場面があります。たとえば低床トレーラへ幅の広い大型設備を積んだ結果、貨物が左右へ大きくはみ出したケースです。
貨物の幅やはみ出し方が道路交通法上の積載制限を超えれば、制限外積載許可を検討します。同時に、貨物を含めた車両全体の幅や高さ、重量が道路法上の一般的制限値を超えていれば、特車申請も別に必要です。
両者の関係を分けると、貨物の大きさ・積み方は制限外積載許可、積載状態の車両寸法・重量と通行道路は特殊車両通行許可が担当する領域です。どちらか一方の許可を取得すれば、もう一方まで満たしたことになるわけではありません。
制限外積載許可の申請先は出発地の警察署
制限外積載許可は、運行経路の出発地を管轄する警察署へ申請します。東京都であれば、出発地を管轄する警察署の交通規制係が窓口です。
東京都から神奈川県、静岡県などへ運ぶ長距離輸送であっても、通過するすべての警察署へ同じ申請を提出する仕組みではありません。ただし、複数の都道府県にまたがる長距離運行や超長大貨物では、警察内部や道路管理者との調整を要します。
特車申請もあわせて必要になる輸送では、運行直前ではなく、車両・貨物・経路が決まった段階で双方の手続きを並行して進めておくほうが安全です。
制限外積載許可に必要な書類
警視庁へ窓口申請する場合は、主に次の資料を準備します。
- 制限外積載等許可申請書
- 車検証など車両諸元が分かる資料
- 貨物を積載した状態とはみ出し寸法が分かる図
- 運行経路図
- 複数の運転者がいる場合の運転者一覧
窓口申請では申請書を2部作成します。車検証や登録事項等証明書といった車両に関する資料は、警視庁への窓口申請では提示で足り、提出自体は不要です。
貨物の寸法が大きい場合や運行経路が長い場合は追加資料を求められることもあるため、特殊な案件では出発地を管轄する警察署へ事前に相談しておくと手続きが進めやすくなります。なお、警視庁の制限外積載許可に手数料はかかりません。
制限外積載許可はe-Govからオンライン申請できる
東京都では、制限外積載許可をe-Govからオンラインで申請できます。申請書の内容を入力し、積載状態を示す図や経路図などを電子データで添付して提出する流れです。
審査中に不備があれば、e-Govを通じて補正や再提出を求められることがあります。審査が終了すると登録したメールアドレスへ連絡が届きますが、東京都では許可証そのものは申請先の警察署窓口で受け取る運用です。
オンライン申請の対応方法は都道府県警察によって異なるため、東京都以外を出発地とする場合は管轄警察の案内に沿って進めます。
制限外積載許可の期間は原則として運行に必要な期間
制限外積載許可は、原則として一つの運転行為を開始してから終了するまでに必要な期間について受けます。ただし、同じ運転者が定型的に同じ輸送を繰り返す場合は、一定の条件を満たせばまとめて許可を受けられます。
基本となるのは、同じ車両を使用し、同一品目の貨物を同じ積載方法で運び、同じ経路を走行するケースです。警察庁の現行取扱要領では、このような反復・継続運行について、原則1年以内の期間で包括して許可できるとされています。
毎回同じ大型設備や資材を同一ルートで輸送する場合は、一回ごとの許可だけでなく、反復運行として扱えるかどうかを申請先へ相談しておくとよいでしょう。
申請すればどの大きさでも運べるわけではない
制限外積載許可は、通常の積載制限を無制限に解除する制度ではありません。警察は、貨物が本当に分割できないのか、車両の構造や積載状態、運行する道路、橋梁・トンネルなどへの支障、交通への影響などを踏まえて許可の可否を判断します。
現行の警察庁取扱要領では、一定の大きさをさらに超える積載について、関係機関との調整を経たうえで慎重に審査する扱いとなっています。超長大・超重量の輸送では、警察、道路管理者、運送事業者などによる調整が必要になることもあります。
許可条件として、通行時間帯や先導車・誘導員による誘導、貨物の固定方法などが指定される場合もあります。
特車申請とどちらを先に進める?
制限外積載許可と特殊車両通行許可の両方が必要な場合でも、全国一律に「必ず片方を先に取得する」という順番が決まっているわけではありません。ただし、同じ車両・貨物・経路を前提に双方の審査が進むため、申請前に輸送条件を固めておく必要があります。
実務では、車両と積載物、出発地、目的地、予定経路が決まった段階で、次の点をそれぞれ分けて判断します。
- 特車申請が必要か
- 制限外積載許可が必要か
- 通行禁止道路通行許可など、ほかの警察手続きが必要か
特殊車両通行許可申請の流れもあわせて確認しておくと、双方の手続きを整理しやすくなります。
許可後は許可証の条件に従って運行する
制限外積載許可を取得したら、許可された積載状態・経路・期間と、付された条件に従って運行します。時間帯や誘導方法、貨物の固定方法などが条件として指定されている場合は、運転者へ事前に共有しておく必要があります。
特殊車両通行許可もあわせて必要な輸送であれば、道路法上の許可証・条件書についても別に把握しておきます。一つの輸送に二つの許可が関係するからこそ、警察の許可条件と道路管理者の通行条件を混同せずに扱うことが重要です。
よくある質問
- 特車許可があれば制限外積載許可は不要ですか?
-
不要になるとは限りません。特車申請は道路法、制限外積載許可は道路交通法に基づく別の手続きです。貨物の大きさやはみ出し方が道路交通法上の制限を超える場合は、警察の許可も必要になります。
- 長さは車両の何倍まで許可なしで積載できますか?
-
一般的な貨物自動車では、積載物の長さは車両長の1.2倍までです。ただし前方・後方へのはみ出しには、それぞれ車両長の10%までという別の制限があります。
- 荷物は車体の左右から何cmまで出せますか?
-
割合で決まります。積載物の幅は車幅の1.2倍まで、左右へのはみ出しはそれぞれ車幅の10%までです。車幅2.5mであれば、左右それぞれ0.25mが通常の範囲になります。
- 高さが3.8mを超えたら必ず制限外積載許可が必要ですか?
-
一律ではありません。公安委員会が指定した道路では、条件を満たせば積載時の車高4.1mまで制限外積載許可なしで通行できる場合があります。道路法上の高さ指定道路とは別の制度なので、それぞれの許可の要否を分けて判断します。
- 制限外積載許可に手数料はかかりますか?
-
警視庁では手数料はかかりません。東京都以外については、申請先の都道府県警察の案内に沿ってください。
- 県外まで運ぶ場合は各県の警察署へ申請しますか?
-
申請先は出発地を管轄する警察署です。複数の都道府県にまたがる長距離輸送では、警察側で関係機関との調整が行われます。
まとめ
制限外積載許可は、分割できない大型貨物などについて、積載物の長さ・幅・高さや車体からのはみ出し方が道路交通法上の制限を超える場合に、出発地を管轄する警察署へ申請する手続きです。
一般的な貨物自動車では、積載物の長さ・幅は車両寸法の1.2倍まで、前後・左右へのはみ出しはそれぞれ車両寸法の10%までが通常の範囲です。長尺物や幅広貨物では、貨物そのものの寸法だけでなく、実際にどの位置へ積むのかまで押さえておく必要があります。
また、制限外積載許可と特殊車両通行許可は別制度です。大型設備、重機、橋桁などの輸送では両方が必要になることもあるため、車両・積載物・経路が決まった段階でそれぞれの手続きを進めておきましょう。
特車申請の制度・手続き・車種別対応は、特殊車両通行許可申請ガイドにまとめています。
大型貨物の特車申請でお困りならご相談ください
当事務所では、車両諸元や積載貨物の寸法・重量、予定通行経路を照らし合わせたうえで、特殊車両通行許可の申請代行を行っています。長尺物や幅広貨物について特車申請が必要かどうか判断しにくい場合や、制限外積載許可とあわせて手続きを進めたい場合もご相談ください。

