特車申請の窓口を誤って市役所に持ち込み、受付を断られるケースは珍しくありません。出発地が市道だからといって、市役所が受付窓口になるわけではないのです。
道路には国・県・市といった管理者が存在しますが、申請窓口には法律で定められた受付権限と優先順位があります。間違った窓口に持ち込むと、差戻しや再提出が発生し、審査期間が延びてしまいます。
さらに、2022年からは国道を含まないルート専用の「自治体申請システム」も稼働しており、選択肢が増えた分、判断が複雑になっています。
本記事では、申請窓口の正しい選び方と、新しい自治体申請システムの活用法について解説します。
基本原則:申請は1ヶ所で完結する
特車申請には、複数の道路管理者にまたがる経路(例:国道→県道→市道)であっても、いずれか一つの窓口にまとめて申請できるという制度があります。
これを受け付けた窓口(例えば国)が、他の管理者(県や市)に対して協議を行い、同意を得て許可証を発行してくれます。申請者が複数の役所を回る必要はありません。
ただし、「どこに出してもいい」わけではなく、以下の優先順位に従う必要があります。
窓口選びの優先順位
申請するルートに含まれる道路の種類によって、提出先が決まります。

ルール①:国が管理する国道を含む場合
提出先:国のオンライン申請システム(国道事務所)
申請ルート内に指定区間(国が管理する国道)が1mでも含まれていれば、国が窓口となります。国が県道や市道の分もまとめて審査・協議してくれます。
これが最も一般的で確実な方法です。オンライン申請システムのIDを持っていれば、全国どこへ行くルートでも基本的にこの方法で完結します。
ルール②:県道または政令指定都市の市道を含む場合
提出先:通行する都道府県または政令指定都市の窓口
国道を通らないルートの場合、次に権限が強いのは都道府県や政令市(横浜市、大阪市など)です。
例えば「A県の県道」と「A県内のB市の市道」を通る場合、A県の窓口に申請すれば、B市への協議を代行してくれます。
ルール③:一般の市町村道のみ、または複数の市町村道にまたがる場合
提出先:都道府県の窓口
ここが重要なポイントです。「出発地が市道だから」といって、一般の市役所(政令市以外)に持って行ってはいけません。
法律上、政令市以外の市町村は「複数の管理者にまたがる申請」を受け付ける権限を持っていません。したがって、ルートが「県道+市道」や「A市道+B市道」のようにまたがる場合は、上位の管理者である都道府県に申請する必要があります。
例外: 「〇〇市の市道のみ」を通行し、他の道路に一切出ない(実際にはほぼあり得ないケース)場合のみ、その市役所で申請可能です。
自治体申請システムとは
これまで、国道を通らない申請は、役所の窓口へ紙を持参するか、郵送で行うのが一般的でした。しかし、2022年より「特殊車両通行許可 自治体申請システム」が稼働し、地方道のみの申請もオンライン化が進んでいます。
どんな時に使うシステムか
- 対象: 申請経路に国が管理する道路(直轄国道)が一つも含まれていない場合
- 条件: 申請先の自治体が、このシステムに参加していること
国のシステムとの違い

注意点:システムは別物
国のシステムと自治体申請システムは連携していません。そのため、「国のシステムでアカウントを持っているから、そのまま自治体申請もできる」わけではありません。
自治体申請システムを利用するには、別途ユーザー登録(無料)が必要です。また、申請したい自治体がシステムに参加していない場合は、従来どおり紙での申請が必要になります。
手数料の考慮:窓口選びでコストが変わる
申請手数料(原則200円/経路)にも、窓口選びに関連した重要なルールがあります。
単一の道路管理者なら無料
申請経路が「一つの道路管理者の管轄内」で完結している場合、審査手数料は無料になります。
ケースA: 「A県の県道」のみを通行するルートを、A県の窓口に申請する
→ 無料(自分の管理する道路だけなので、協議経費がかからない)
ケースB: 「A県の県道」のみを通行するルートを、B県の窓口(隣接県など)に申請する
→ 有料(B県がA県に協議するための経費が発生する)
費用を抑えるには
走行ルートが「国道を通らず、A県の県道とA県内の市道だけ」で構成されているなら、A県の窓口(またはA県宛ての自治体申請システム)に申請するのが最適です。
これを間違えて「国の窓口」に出してしまうと(受け付けてはくれますが)、国から県・市への協議が発生するため、手数料がかかってしまいます。

窓口選択の判断基準まとめ
申請窓口を選ぶ際の判断基準を整理すると、以下のようになります。
国道を通る場合
迷わず「国のオンライン申請」を選択してください。 これが最も迅速で確実な方法です。
国道を通らない場合
「都道府県」または「政令市」の窓口に申請します。一般の市町村に直接持ち込まないよう注意が必要です。
オンラインで申請したいが国道がない場合
「自治体申請システム」が使えるか確認してください。申請先の自治体が参加しているかどうかは、特車PRサイトで確認できます。
手数料を抑えたい場合
ルートが単一の道路管理者内で完結しているなら、その管理者に直接申請することで手数料が無料になります。
実務での対応
実務上、少しでも国道をかすめるルートを作成して、使い勝手の良い「国のオンライン申請」で一本化する担当者も多く見られます。
しかし、厳密に地方道しか通らない場合や、手数料を抑えたい場合は、今回のルールに従って正しい窓口(または自治体システム)を選択してください。
正しい窓口を選ぶことで、申請の差戻しを防ぎ、審査期間を短縮できます。
申請窓口の調べ方
全国の国道事務所や自治体の窓口一覧は、特車PRサイトやシステム内のリンクから確認できます。また、自治体申請システムの参加状況も同サイトで公開されています。
不明な点がある場合は、事前に電話で確認することをお勧めします。
参照リンク
1. 全国の申請窓口・システムの総合案内
すべての情報は以下の「特車PRサイト」に集約されています。ここから各一覧表へアクセスするのが確実です。
• 特殊車両通行許可申請におけるオンライン申請の紹介(特車PRサイト)
◦ URL: https://www.tokusya.ktr.mlit.go.jp/PR/,
2. 国の機関(国道事務所など)の申請窓口一覧
国が管理する道路(直轄国道)を含む申請を行う場合の提出先一覧です。
• 申請事務取扱窓口(国の機関)
◦ URL: https://www.ktr.mlit.go.jp/road/sinsei/index00000012.html,
3. 「自治体申請システム」の参加状況
「自治体申請システム」を利用できる地方公共団体は限定されています。以下のリンク(PDF)から、申請予定の自治体がシステムに参加しているかをご確認ください。
• 都道府県(参加一覧): https://www.tokusya.ktr.mlit.go.jp/PR/download/04_jichitai-01.pdf
• 政令指定都市(参加一覧): https://www.tokusya.ktr.mlit.go.jp/PR/download/04_jichitai-02.pdf
• 市区町村(参加一覧): https://www.tokusya.ktr.mlit.go.jp/PR/download/04_jichitai-03.pdf



