出張買取をするなら知っておきたい、古物営業法と特定商取引法

出張買取の担当者が玄関先で書類を持つイラスト 古物商許可コラム

出張買取(訪問買取)は、店舗を持たなくても始められるビジネスとして、ここ数年で参入者が増えています。初期費用が少ない分、「とりあえずやってみよう」と動き出す方も多い印象です。

ただ、出張買取には守らなければならないルールが思った以上にたくさんあります。しかも「知らなかった」では済まない種類のルールです。2013年の特定商取引法改正で訪問買取のルールが厳格化されて以降、「許可を取ったのに、なぜ違反になるのか」と困惑する業者の話は、業界内では珍しくありません。

この記事では、出張買取を始める前に整えておくべき法律上の準備をまとめました。

訪問買取が規制されるようになった理由

2013年以前、訪問買取を直接規制する法律はありませんでした。その空白を突いて横行したのが、「押し買い」と呼ばれる悪質な業者です。

典型的な手口はこうです。「不用品を無料で査定します」と言って自宅を訪問し、そのまま居座る。「今日だけ」「このままだと損ですよ」と心理的に追い詰め、相場の数分の一で品物を持ち去る。クーリングオフも教えないため、消費者は泣き寝入りするしかありません。

特に高齢者を狙った被害が急増し、社会問題として広く認知されるようになりました。これを受けて2013年に特定商取引法が改正され、訪問買取が新たな規制対象に加わりました。

それ以来、義務の内容は細かく、罰則も重くなっています。「昔からこうやっている」という感覚のまま続けていると、今の法律に対応できていないことが少なくありません。

規制後も被害は続いています。国民生活センターに寄せられる訪問購入の相談は年間7,000〜8,000件規模で推移しており、相談者の半数以上が70歳以上の高齢者です。悪質な業者がいなくならない以上、正規業者として「うちは違う」と示せることが、お客様から選ばれる理由になります。

参考:国民生活センター「訪問購入」相談状況

悪質な業者と正規業者、何が違うのか

法律を守っている業者とそうでない業者は、現場での具体的な行動で区別できます。

場面悪質な業者のやり方正規業者のやり方
訪問のきっかけ飛び込みで突然訪問依頼があってから訪問
買取の場所喫茶店・駐車場・路上相手の自宅か自社営業所のみ
契約のとき口頭のみ・書面なしその場で書面を交付
クーリングオフ教えない・妨害する自分から説明する
断られたとき食い下がる・後日また連絡すぐ引く・再勧誘しない
身分証明曖昧にする許可証と従業者証を提示

表の右側は、理想ではなく義務です。知らずにやってしまっても、違反は違反です。

守らないといけない法律は2つ

出張買取に関係する法律は、古物営業法と特定商取引法の2つです。

法律管轄主な内容
古物営業法都道府県警察許可・行商の届出・買取場所・従業者証
特定商取引法消費者庁書面交付・クーリングオフ・不招請勧誘禁止

古物商許可を取っただけでは、出張買取はできません。古物営業法には、行商に関するルールが別途定められているためです。

古物営業法:出張買取で見落としやすい3つのルール

1. 「行商をする」で許可を取る

古物商の許可申請書には「行商をする・しない」という選択欄があります。出張買取は「行商」にあたるため、「する」で許可を取っていないと、無許可で行商をしていることになります。

すでに許可を持っている方も要確認です。「行商しない」で取得した許可のまま出張買取を始めると違反になります。この場合は変更届が必要です。

2. 買取できる場所は2か所だけ

古物営業法では、買取を行ってよい場所は以下の2か所のみです。

  • 相手方の自宅(住所・居所)
  • 自社の営業所

押し買い業者がよくやる「近くの喫茶店やファミレスに持ってきてもらう」という方法は、特定商取引法以前に古物営業法違反です。路上や駐車場も同様です。「場所を変えればクーリングオフが適用されない」と考える業者もいますが、そもそも買取自体が違法になります。

3. 従業員には「行商従業者証」が必要

従業員を出張買取に向かわせる場合、社員証や名刺ではなく、国家公安委員会規則で定められた形式の「行商従業者証」を携帯させる義務があります。

特定商取引法:出張買取に課される5つの義務

義務1. 氏名・目的の明示

訪問時は、勧誘を始める前に業者名・担当者名・訪問の目的を告げなければなりません。「近くに来たので寄りました」「ちょっと見るだけです」という形での勧誘開始は違法です。

義務2. 不招請勧誘の禁止

消費者から事前に依頼がない場合、訪問して買取を勧誘することは原則禁止です。チラシへの問い合わせや電話予約など、消費者側からのアクションがあってはじめて訪問できます。飛び込み訪問での勧誘は、それ自体が違法行為です。

義務3. 書面の交付

買取契約を締結したときは、以下の内容を記載した書面をその場で渡さなければなりません。

記載必須事項
事業者の氏名・住所・電話番号
契約年月日
商品名・数量・買取金額
クーリングオフに関する事項(赤枠・赤字で記載)

口頭で説明しただけでは義務を果たしたことになりません。書面を渡してはじめてカウントが始まります。

義務4. クーリングオフへの対応(8日間)

訪問買取には8日間のクーリングオフが適用されます。書面を受け取った日から8日以内であれば、消費者は理由を問わず契約を解除できます。行使された場合、品物の返却・返送費用はすべて業者負担です。

書面を渡していない場合、8日間のカウントが始まりません。消費者がいつまでもキャンセルできる状態が続くことになります。

義務5. 再勧誘の禁止

「いりません」「帰ってください」と断られた場合、その場での継続勧誘も、日を改めての再訪問も禁止されています。

参考:消費者庁「訪問購入|特定商取引法ガイド

実際に出張買取に出て、気づいたこと

私自身、業務の一環で出張買取に出ることがあります。現場で実際に気をつけていることをいくつか挙げます。

電話の段階で「何を・どう買取するか」を明確に伝える

「査定だけしに行く」という形での訪問はできません。電話の時点で「査定後、お値段が合えば買取させていただきますがよろしいでしょうか」と目的を明確に伝えます。対象となる商品も必ず確認します。この一手間を省くと、訪問前の段階で法律に違反することになります。

書面はその場で渡す・渡したことを必ず確認する

書面交付は「渡した日」が起算点になります。「後でまとめて」「置いてきた」は通用しません。私は毎回、お客様に受け取っていただいたことを確認してから次の話に進むようにしています。契約書は2部必要で、1部をお客様に、1部を自社で保管します。ノーカーボンの複写用紙を使った契約書を事前に準備しておくと、現場での手間が省けます。

クーリングオフは「使っていい権利」として伝える

義務として説明するだけでなく、「8日以内であれば理由を問わずキャンセルできます」とはっきり伝えるようにしています。押し買いのイメージが残る業界だからこそ、こちらから積極的に話すことが信頼につながります。「ちゃんと説明してくれた」という安心感が、紹介や口コミに結びつくことも実際にあります。

商品を受け取っても、すぐには販売できない

商品の引き渡し日と代金の受渡し日は、お客様が決める権利を持っています。「今日持ち帰っていいですよ」と言われても、こちらの都合で急かすことはできません。

また、当日に商品を受け取った場合でも、クーリングオフ期間中は販売・移動が禁止されています。注意が必要なのは、クーリングオフの通知は「投函日(消印日)」が基準になる点です。8日目に投函された通知が手元に届くのは10日目以降になることもあるため、実務上は受け取りから10日間は動かさないよう管理しています。

よくある質問(FAQ)

Q
すでに古物商許可を持っています。出張買取を始めるにはどうすればよいですか?
A

許可申請時に「行商をしない」を選んでいた場合は変更届が必要です。「行商をする」に変更してから出張買取を始めてください。変更届なしに行うと古物営業法違反になります。

Q
クーリングオフの8日間は、いつから数えますか?
A

買取契約の書面を受け取った日が1日目です。書面を渡していない場合は起算日が始まらないため、消費者はいつでもクーリングオフを使える状態が続きます。

Q
喫茶店で買取をしてはいけないのですか?
A

古物営業法上、買取できる場所は相手の自宅か自社営業所のみです。喫茶店・駐車場・路上での買取は古物営業法違反になります。

Q
従業員を出張買取に行かせる場合、何が必要ですか?
A

国家公安委員会規則で定められた形式の「行商従業者証」の携帯が義務です。社員証や名刺では代わりになりません。

Q
違反した場合の罰則はどのくらいですか?
A

違反の内容によって異なります。行政処分では最大1年間の業務停止命令が出ることがあります。刑事罰については、虚偽の説明や威迫行為は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、書面交付義務違反は6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。法人には別途罰金が科されます。

まとめ

出張買取を合法的に始めるために、開業前に確認すべきことは3点です。

まず、古物商許可を「行商をする」で取得すること。すでに許可を持っている場合は変更届が必要です。次に、特定商取引法が定める書面交付・クーリングオフ対応・不招請勧誘禁止を正確に理解すること。そして、買取場所の制限と行商従業者証の準備を開業前に済ませておくことです。

許可を取ること自体はゴールではありません。取った後に何をしなければならないかを知っておくことが、現場では重要です。

お困りの際は当事務所へ

古物商許可の取得は、必要書類の準備から警察署への申請まで、手続きが煩雑です。「行商の要件をきちんと満たしているか確認したい」「開業後に必要な届出は何か」など、判断に迷う場面も少なくありません。

当事務所では、買取の現場で10年以上の経験を持つ行政書士が、書類作成から許可取得までサポートしています。「自分のケースで許可が必要か確認したい」「申請の手続きがよくわからない」といったご相談も、お気軽にどうぞ。

問い合わせ方法:

古物商許可申請の専門サポート 詳しくはこちら →

執筆者プロフィール

手島宏典 行政書士・現役質屋店長
業界歴10年以上。大手買取店FC3年経営。

行政書士手島宏典事務所
東京都葛飾区亀有3丁目27-30 Tビル1階
TEL:03-6821-4578(年中無休 9:00〜19:00)

💬 LINEで無料相談する