法人化を考え始めると、「個人で取った許可はそのまま使えるのでは?」と思う方が多いようです。
結論からいうと、個人の古物商許可を法人に引き継ぐことはできません。法人は法律上、個人とは別の存在として扱われるため、法人化後も営業を続けるには法人として新たに申請する必要があります。
なぜ引き継げないのか、具体的にどう進めればいいのかを解説します。
古物商許可は「人」に紐づく許可
古物商許可は、「この人(または法人)が古物営業を行ってよい」という許可です。許可は事業そのものではなく、申請した人に対して発行されます。
個人事業主として取得した許可は、その個人に紐づいています。法人は法律上、個人とは別の「人格」を持つ存在として扱われるため、個人の許可をそのまま法人に移すことは制度上できません。
イメージとしては運転免許に近いです。Aさんの免許をB社が使えないのと同じで、「同じ人が代表を務めているから」という理由で引き継ぎはできません。
大阪府警察の公式Q&Aにも明記されています。「個人で得た許可は、あくまでその方個人のものです。許可を受けた方が法人の代表取締役であっても、個人許可で法人による古物営業はできません。無許可営業違反となってしまいます」

引き継げないことを知らずに起こる問題
法人化の手続きが一段落して、そのまま営業を続けてしまうケースがあります。悪意があるわけではなく、「手続きが終わったから大丈夫」と思ってしまうのが実態です。ただ、法人の許可が下りる前に古物営業を行うと、無許可営業になります。
古物営業法第31条第1号では、無許可で古物営業を行った場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が定められています。「知らなかった」では済まない話なので、法人化を考えている方は許可の切り替えタイミングを早めに把握しておくことをおすすめします。
法人化後の古物商許可、どう進めるか
法人化後の古物商許可は、次の流れで進めます。
ステップ1:法人設立 株式会社・合同会社などを設立します。法人登記が完了してはじめて、古物商許可の申請が可能になります。 (※定款の事業目的の書き方については[古物商の定款とは?会社設立から許可申請まで]をご覧ください)
ステップ2:法人名義で新規申請 個人の許可とは別に、法人として新たに申請します。申請先は法人の主たる営業所を管轄する警察署です。個人のときと所在地が変わった場合は、申請先も変わるので注意してください。
ステップ3:審査期間中は個人の許可で継続営業(約40日) 申請から許可証の交付まで、おおむね40日かかります。この間、個人の許可証はまだ有効です。法人化したからといってすぐ返納する必要はなく、法人の許可が下りてから返納するのが正しい順序です。
ステップ4:個人の許可証を返納 法人の許可証を受け取ったら、速やかに個人の許可証を管轄警察署へ返納します。古物営業法施行規則第7条により、事由発生から10日以内が期限です。
ステップ5:プラットフォームの許可番号を変更 見落としがちですが、メルカリShops・BASE・ヤフオク!・Amazonなどに登録している許可番号も変更が必要です。放置すると規約違反でアカウントが停止されることがあります。売上への影響が出る前に、許可証を受け取ったタイミングで合わせて対応してください。
この間は個人の許可で継続営業可
事由発生から10日以内(施行規則第7条)
メルカリShops・BASE・ヤフオク! 等
申請時に法人特有の注意点
個人申請と比べて、法人では追加で必要な書類があります。警視庁の要件に基づくと、以下のものが必要です。
- 定款(写し)
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 役員全員分の住民票・身分証明書・略歴書
- 役員全員分の誓約書
注意が必要なのは、役員全員分の書類が必要という点です。代表一人だけではなく、取締役全員が対象になります。役員が3人いれば、住民票も誓約書も3人分です。家族経営で役員が複数いるケースなどは、早めに声をかけて準備を進めておくとスムーズです。

法人化でつまずきやすい3つのポイント
1. 審査中の空白期間への対応
法人の許可証が出るまで約40日かかります。この間、個人の許可証はまだ有効です。「法人化したから個人の許可はすぐ返納」と思ってしまう方がいますが、法人の許可が下りてから返納するのが正しい順序です。焦って返納してしまうと、無許可の空白期間が生じてしまいます。
2. 役員の欠格事由の確認
古物営業法では、一定の欠格事由に該当する人は許可を受けられません。個人のときは自分一人だけ確認すればよかったのが、法人では役員全員が対象になります。新たに役員を迎えたタイミングは特に見落としやすいので注意が必要です。
3. 定款の事業目的の書き方
定款の事業目的に「古物営業」が正しく記載されていないと、許可申請の段階で修正を求められることがあります。最近はネットで無料の会社設立ツールを使う方も増えていますが、古物商の許可申請を見越した書き方まではカバーされていないケースがほとんどです。設立後に定款を修正するのは手間がかかるため、最初から確認しておくことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
- Q法人化後、すぐに古物営業を再開できますか?
- A
法人としての古物商許可証が交付されてから営業を開始できます。申請から許可取得まで約40日かかるため、法人設立と並行して早めに申請準備を進めることをおすすめします。
- Q個人の許可証はいつ返納すればよいですか?
- A
法人の許可証を受け取った後に返納します。古物営業法施行規則第7条により、事由発生から10日以内の返納が必要です。許可証を受け取る前に返納してしまうと、無許可の空白期間が生じる可能性がありますのでご注意ください。
- Q法人の役員が複数いる場合、申請は複雑になりますか?
- A
役員全員分の住民票・身分証明書・略歴書・誓約書が必要になるため、人数が多いほど書類収集に時間がかかります。早めに各役員に協力を依頼することが大切です。
- Q営業所の場所が変わった場合、申請先も変わりますか?
- A
はい、古物商許可の申請は主たる営業所を管轄する警察署に行います。法人化にあわせて所在地が変わった場合は、新しい所在地の管轄警察署へ申請してください。
まとめ
- 個人の古物商許可は、法人化しても引き継ぐことができない(大阪府警察 公式Q&A)
- 法人化後は法人名義で新規申請が必要(審査期間:約40日)
- 個人の許可証は法人の許可が下りてから10日以内に返納する
- 役員全員分の書類が必要になるため、早めの準備が大切
- ネット販売をしている場合は、プラットフォームの許可番号変更も忘れずに
法人化のタイミングは、会社設立の手続きと古物商許可の申請が重なり、書類の量が一気に増えます。「何から手をつければいいか分からない」という方は、お気軽にご相談ください。
【参考・引用元データ】
本記事の執筆にあたり、以下の公的機関の情報を参照しています。
・警視庁:古物商許可申請(法人許可申請の必要書類)
・古物営業法 第31条第1号(罰則規定)
・古物営業法施行規則 第7条(許可証の返納)
お困りの際は当事務所へ
古物商許可の取得は、必要書類の準備から警察署への申請まで、手続きが複雑です。また、「メルカリでの転売に許可は必要か」「開業後の届出は何が必要か」など、判断に迷う場面も多いです。
当事務所では、古物買取の現場で10年以上の経験を持つ行政書士が、書類作成から許可取得までサポートいたします。「自分のケースで許可が必要か確認したい」「申請が複雑で困っている」といった場合は、お気軽にご相談ください。
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執筆者プロフィール
手島宏典 行政書士・現役質屋店長
業界歴10年以上。大手買取店FC3年経営。
行政書士手島宏典事務所
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