賃貸マンションで古物商許可を取ろうとして、申請書類のなかに「使用承諾書」が含まれていることに気づくと、大家さんへの連絡前に一度手が止まります。書式に決まりはあるのか、何と伝えれば署名してもらえるのか、断られたらどうするのか。迷うところが多い書類です。
承諾を取らずに営業を始めることは、現実にはできません。無許可で古物営業を行うと古物営業法第31条により3年以下の拘禁刑(旧:懲役)または100万円以下の罰金、もしくはその両方。さらに罰金以上の刑を受けると、その後5年間は古物商許可が取れなくなります(同法第4条)。「バレてから許可を取ればいい」というやり方は、この時点で通用しなくなります。
書式と書き方、大家さんへの依頼の進め方、断られたときの選択肢を順に見ていきます。
古物商の使用承諾書とは|賃貸物件で必要になる理由
古物商許可の申請では、営業所として使う場所について「適法に使用できる権利があること」を書面で示します。自己所有物件であれば登記簿謄本などで足りますが、賃貸物件の場合は、建物の所有者である大家さん(または管理会社)から「この場所を営業所として使うことを承諾する」という書面を取得し、申請に添付します。これが使用承諾書です。
賃貸借契約書を添付するだけでは原則として足りません。多くの賃貸借契約は居住目的に限定されており、営業所として使用する旨が記載されていないからです。警察署は「実際に大家さんが営業利用を認めているか」を別書面で確かめたい、という事情です。
判断のながれは次のとおりです。
- 自己所有の物件:使用承諾書は不要。登記簿謄本などで対応
- 賃貸物件で管理会社が入っていない:大家さんへ直接依頼
- 賃貸物件で管理会社が入っている:管理会社経由で大家さんへ確認
▼ 使用承諾書は必要? かんたん判断フロー
登記簿謄本等で対応
直接依頼
大家さんへ確認
書式は警察署で事前確認を
※管轄警察署によって運用が異なる場合があります。事前確認を推奨します。
書き方|記載する6項目と書式の調べ方
書式に決まった様式はない
使用承諾書には全国共通の決まった様式がありません。各都道府県警察、さらには管轄署ごとに、推奨書式が用意されているケースと任意書式でよいケースに分かれます。
警視庁管内では「任意書式可」と案内されることが多いものの、署によっては独自の雛形を渡してくれる場合もあります。管轄署で書式を確認してから大家さんに依頼するのが、二度手間を避ける最短ルートです。
記載する6項目
書式が任意の場合でも、次の項目はおさえておくと安全です。
- 物件の所在地(部屋番号まで)
- 物件の所有者(大家さん)の氏名・住所
- 借主の氏名・住所
- 「上記物件を古物営業の営業所として使用することを承諾する」旨の文言
- 作成日
- 大家さんの署名(または記名)と捺印
法人所有の物件であれば、法人名・代表者肩書・代表者氏名と社判(または代表者印)を入れます。管理会社が大家さんから委任を受けて署名する場合は、その委任関係がわかるようにしておくと、警察署への説明がスムーズです。
副業として申請する方の場合、勤務先との関係で気になる点があれば、副業で古物商許可を取ると会社にバレる?就業規則の確認から申請までもあわせてご確認ください。
取り方|大家さんへの依頼から提出までの5ステップ
書式が決まっても、署名・捺印をもらう段取りで止まることが多い書類です。順序を間違えると話がこじれやすいので、次のながれで進めるのが無難です。
ステップ1:管轄警察署で書式と運用を確認する
営業所所在地を管轄する警察署の生活安全課(古物担当)に電話で問い合わせ、使用承諾書の書式の有無と必要事項を確認します。雛形がもらえれば、そのあとの交渉が楽になります。
ステップ2:依頼相手を確認する
賃貸借契約書を見て、契約相手が大家さん個人なのか、管理会社経由なのかを確認します。管理会社が入っている場合、いきなり大家さんに直接連絡すると関係が悪くなることもあるので、まず管理会社に窓口として相談するのが基本です。
ステップ3:書面で依頼する
口頭だけの依頼は「また後で」と流されがちです。次の3点を1枚にまとめて書式と一緒に渡すと、社内検討や大家さんへの取次がスムーズになります。
- 何の許可を取りたいのか(古物商許可の簡単な説明)
- 営業所として何をするのか(来客の有無、保管物の量、騒音の有無など)
- 大家さんに金銭的・実務的な負担はないこと
ステップ4:署名・捺印をもらう
書式と説明書面を渡し、署名・捺印をしてもらいます。法人所有物件で社判が必要な場合、社内の決裁に時間がかかることもあるので、申請スケジュールには余裕を持たせます。
ステップ5:申請書一式に添付して警察署へ提出する
使用承諾書は、申請書類の添付書類として警察署に提出します。提出後、補正の指示があれば対応し、問題なければ東京の場合おおむね40日前後で許可が下ります。
許可取得までの全体のながれは転売屋が古物商許可を取る手順にまとめています。
大家さんが渋る3つの理由
すぐ「いいですよ」と言ってもらえるケースもあれば、難色を示されるケースもあります。断られるときは、だいたい次の3つの不安が引っかかっています。
1.「商売に使う」という言葉へのぼんやりとした警戒
大家さんの多くは古物営業法の知識を持っていません。「許可を取って商売をする」と聞いた瞬間に、不特定多数の来客や近隣トラブルを想像するのが自然な反応です。
2. 賃貸借契約上の用途を変えることへの懸念
居住用として貸した物件を事業用に変えることに抵抗があるからです。実態は自宅の一角でネット出品作業をするだけ、というケースが多いのですが、契約書の用途と食い違いが出ることを気にされる方はそれなりにいます。
3. 管理会社の判断を待つ必要がある
大家さん個人ではその場で答えられず、管理会社や不動産会社の確認を待つケースです。窓口が増えるほど結論が出るまでに時間がかかり、結果として「難しい」と返事が来やすくなります。
断られるときは、依頼者側から「目的」と「営業実態」が大家さんに具体的に伝わっていないことが多いです。次の節で、伝え方のコツを4つ整理します。
承諾してもらう4つのコツ
コツ1:来客と搬出入の実態を具体的に伝える
「古物商の許可を取りたい」だけでは抽象的すぎて、大家さんは判断材料を持てません。次のような情報を添えると、不安はかなり和らぎます。
- メルカリやヤフオクなどネット販売が中心で、来客は基本的にない
- 商品の搬入搬出は宅配便の範囲内
- 看板や事務所表示は出さない
- 大きな設備の設置や改装は行わない
コツ2:書面で依頼する
口頭だけだと、社内検討にも乗せにくく、忘れられがちです。A4で1枚程度の依頼文をつけると、管理会社が大家さんへ取り次ぎやすくなります。
コツ3:警察署で確認した書式を渡す
書式が違って再度署名をお願いするのは、印象としてかなりマイナスです。最初の依頼時点で警察署が認める書式を渡せれば、一度で完結します。
コツ4:管理会社が窓口の場合は順序を守る
管理会社を飛ばして大家さんに直接連絡すると、後の管理関係がぎくしゃくします。管理会社→大家さんの順で進めるのが、長い目で見ても安心です。
断られたときの4つの対処法
ここまで丁寧に進めても、承諾を得られないケースは出てきます。「断られたので諦めるしかないか」という相談はよくありますが、選択肢はいくつかあります。
1. レンタルオフィス・シェアオフィスを営業所にする
古物商許可では、営業所に「実態のある拠点」であることが求められます。住所だけを借りるタイプのバーチャルオフィスは基本的に認められませんが、専用デスクや個室が確保されているレンタルオフィス・シェアオフィスであれば許可が下りるケースがあります。
運用は警察署ごとに差があるので、利用予定の物件の所在地を管轄する警察署に、契約形態を伝えたうえで事前に確かめておいてください。営業所要件全般は営業所要件(賃貸・自宅・バーチャルオフィスの可否)にまとめてあります。
2. 親族所有の物件を使用する
親や兄弟が所有する実家、別宅、空き物件などに営業所を置く方法です。所有者が親族であれば使用承諾書の取得ハードルはぐっと下がります。住民票を移す必要が出てくる場合もあるので、ふだんの生活とあわせて考えてください。
3. 事業利用可の賃貸物件に引っ越す
不動産会社に「古物商の営業所として使う」と伝えたうえで、事業利用可の物件を紹介してもらう方法です。最初から了承をもらったうえで契約できるので、後でトラブルになりにくくなります。
4. 行政書士に交渉サポートを依頼する
個人で説明しても理解を得にくい場合でも、許可制度の建付けや営業実態を法的に整理した説明書面を行政書士が用意することで、承諾を得られるケースがあります。引っ越しや住所変更を考える前に、相談できる先を見つけておくのも一つの方法です。
▼ 断られた場合の選択肢
🏢 選択肢①
レンタルオフィス・シェアオフィスを営業所にする
専用デスクや個室があれば申請可能なケースあり
🏠 選択肢②
親族所有の物件を使用する
所有者の親族に承諾書を書いてもらう
🚚 選択肢③
事業利用可の物件に引っ越す
不動産会社に「事業利用可」で相談
💼 選択肢④(おすすめ)
行政書士に交渉サポートを依頼する
専門家の説明書面で承諾を得られるケースあり
無承諾・無許可で営業するとどうなるか
「大家さんに知られずに、こっそり古物営業を始められないか」という質問もあります。現実的にも法的にも、これはうまくいきません。理由は3つあります。
1. そもそも申請が通らない
使用承諾書を添付せずに古物商許可の申請を行うと、補正指示が入り、最後は不許可になります。承諾書なしで合法的に営業を始めること自体ができません。
2. 無許可営業は刑事罰の対象
許可を取らずに古物営業(中古品の買取・販売)を行うと、古物営業法第31条により3年以下の拘禁刑(旧:懲役)または100万円以下の罰金、もしくはその両方が科されます。さらに罰金以上の刑を受けると、その後5年間は新たな古物商許可が取れない欠格事由になります(同法第4条)。
なお、2022年6月公布の改正刑法により、2025年6月1日以降は「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されました。古物営業法の罰則表記もこれに合わせて読み替えられています。
3. 気づかれるきっかけは複数ある
無承諾・無許可営業が知られてしまうきっかけは、自分の側からは止められないものばかりです。
- 近隣住民からの通報(来客や荷物の出入りが増えたことへの苦情)
- 取引相手からの確認(古物商同士の取引や、買取依頼者からの問い合わせ)
- インターネット上の出品ページからの確認(出品者情報、特定商取引法に基づく表示など)
- 警察の巡回や聞き込み
特にネット販売では、特定商取引法の表示や古物商の標識掲示義務との関係で、住所や許可番号を表示しなければならない場面が出てきます。「目立たないようにやる」と決めても、表示義務の段階で外から見える形になっています。気づかれるきっかけの詳細はメルカリで古物商許可なしはバレるかで扱っています。
会社員が副業として始めるときの注意点は副業で古物商許可を取ると会社にバレるかで別途取り上げています。
承諾書の取得は手間ですが、長く営業を続けるなら、最初にきちんと取っておくのが結局は近道です。
まとめ
- 賃貸物件で古物商許可を申請するには、大家さん(または管理会社)からの使用承諾書が必要
- 書式は警察署ごとに運用が異なるため、最初に管轄署で確認するのが最短ルート
- 大家さんが渋るときに多いのは「商売利用への警戒」「用途変更への懸念」「管理会社の判断待ち」の3つ。書面で具体的に説明することで承諾を得やすくなる
- 断られた場合でも、レンタルオフィス・親族所有物件・事業利用可物件・行政書士への依頼など、複数の選択肢がある
- 承諾を取らずに営業する道は、申請段階で止まるか、刑事罰と5年欠格のリスクを抱えるかのどちらかになるので、実際には選びにくいやり方です
使用承諾書の取得は、申請のなかでも人との交渉が絡む難所です。書式の準備や大家さんへの説明文の作成で迷ったときは、相談できる先を見つけておくと進めやすくなります。
お困りの際は当事務所へ
古物商許可の取得は、必要書類の準備から警察署への申請まで、手続きが複雑です。とくに使用承諾書まわりは「書式の確認」「大家さんへの説明」「断られた場合の代替案」と、判断に迷う場面が多くあります。
当事務所では、古物買取の現場で10年以上の経験を持つ行政書士が、書類作成から許可取得までサポートいたします。
申請代行 11,000円〜(税込)/まずはお気軽にご相談ください
- LINE相談(24時間受付・返信最速)
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- 電話:03-6821-4578(年中無休 9:00〜19:00)
よくある質問
- 使用承諾書は必ず必要ですか?
-
賃貸物件を営業所として申請する場合は必要です。自己所有の物件であれば不要で、登記簿謄本などで権利を示します。なお、管轄署によって細部の運用が変わるため、事前に確認しておくのをおすすめします。
- 大家さんに断られた場合、申請を諦めるしかありませんか?
-
いいえ、選択肢は複数あります。レンタルオフィスの活用、親族所有物件の利用、事業利用可の物件への転居、行政書士による交渉サポートなどです。諦める前に別ルートも含めて考えてみてください。
- 使用承諾書に決まった書式はありますか?
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全国共通の決まった様式はありません。任意書式で構わない警察署もあれば、独自の雛形を用意している警察署もあります。営業所所在地を管轄する警察署に、最初に確認してください。
- 管理会社が間に入っている場合、誰の署名をもらえばよいですか?
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原則は建物所有者である大家さんの署名です。管理会社が大家さんから委任を受けている場合は、管理会社名義で対応できることもあります。事前に警察署に確認したうえで進めてください。
- 使用承諾書を一度取得すれば、その後の更新は必要ですか?
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古物商許可自体に有効期限はなく、更新手続きは不要です。ただし、営業所の住所が変わった場合は変更届が必要になります。法人化のあとの手続きは法人化後の古物商許可はどうするかを参照してください。
- 使用承諾書を取らずに古物営業をするとどうなりますか?
-
合法的に営業を始めること自体ができません。無許可で古物営業を行うと古物営業法違反として3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、もしくはその両方の刑事罰の対象になり、罰金以上の刑を受けるとその後5年間は新たに許可を取ることもできなくなります。
執筆者プロフィール
手島宏典 行政書士・現役質屋店長 業界歴10年以上。大手買取店FC3年経営。
行政書士手島宏典事務所 東京都葛飾区亀有3丁目27-30 Tビル1階 TEL:03-6821-4578(年中無休 9:00〜19:00)

