賃貸マンションやアパートの自宅でも、古物営業の拠点として実際に使う部屋なら、営業所として古物商許可を申請できます。東京都で申請するなら、賃貸だからといって大家さんの使用承諾書を警察署に出す必要もありません。
ただ、警察署への申請と大家さんとの賃貸借契約は別の手続きです。契約で事業での利用が制限されていれば、許可が下りても、契約上の制限は残ります。
この記事では、契約書で読む箇所から大家さんへの伝え方、承諾書の書き方、断られたときの対処まで、順に説明します。
賃貸の自宅も営業所にできる
賃貸の自宅でも、古物営業の拠点として使っていれば営業所になり、持ち家か賃貸かは許可の条件に入っていません。
せどりのようにネット販売が中心でも、自宅で次の作業をするなら、その部屋が営業の拠点です。
- 仕入れや販売をパソコンで管理する
- 古物台帳など取引の記録を保管する
- 商品を置いておく
- 梱包して発送する
- 来客を迎えたり、持ち込みの買取をしたりする
反対に、住所だけを借りて作業をしない場所は営業所になりません。在庫を外部の倉庫に置くなら、自宅でどの作業をするのかを申請前に書き出しておきましょう。
使用承諾書は申請に必要?
東京都で申請する場合、賃貸の部屋を営業所にしても、使用承諾書や賃貸借契約書を警察署に出す決まりはありません。警視庁の「古物商許可申請」の案内では、個人申請の添付書類は略歴書、本籍の載った住民票の写し、誓約書、身分証明書の4つです。申請者と管理者それぞれの分が必要で、申請者が管理者を兼ねる場合も、誓約書は本人用と管理者用の2枚を出します。ホームページで取引するなら、これにURLを使う権限を示す資料が加わります。
「賃貸なら大家さんの使用承諾書が必要」とする解説も見かけますが、東京都の添付書類の一覧には載っていません。東京都以外で申請するときは、申請先の警察署の案内に従ってください。
| 場面 | 考え方 |
|---|---|
| 警察署に出す書類 | 東京都では、使用承諾書・賃貸借契約書は一律の添付書類に入らない |
| 大家さんとの契約 | 事業での利用に承諾が必要な契約なら、申請とは別に承諾を得る |
| 使用承諾書を取っていないとき | それだけで無許可営業にはならない |
| 大家さんの承諾だけを得たとき | 古物営業は、公安委員会の許可を受けてから始める |
古物営業法は盗品の流通を防ぐための法律で、貸主と借主の約束までは扱っていません。そのため、警察署に出す書類がそろっても、契約上の問題は残ったままです。
契約書と管理規約の制限を調べる
申請の準備に入る前に、賃貸借契約書の使用目的と特約の欄を読んでおきましょう。「居住用に限る」「事務所としての使用を禁止する」といった条項があれば、貸主や管理会社との話し合いが欠かせません。
来客のないネット販売でも、契約上の事業利用にあたるかどうかは物件ごとに違います。当事務所では、契約書に使用目的の定めがあれば、来客がなくても貸主へ事前に伝えるようご案内しています。
住まいの形ごとに、目を通す書類は次のとおりです。
| 住まいの形 | 目を通す書類 |
|---|---|
| 持ち家の戸建て | 貸主との契約はないため、承諾の手続きは不要 |
| 分譲マンション(自分で所有) | 管理規約 |
| 賃貸アパート・賃貸マンション | 賃貸借契約書(使用目的・特約) |
| 分譲マンションの一室を借りている | 賃貸借契約書と管理規約の両方 |
マンションの管理規約は、持ち主だけでなく部屋を借りている人も従う決まりです。部屋の用途を住宅に限る定めがあれば、持ち主でも管理組合との話し合いが必要です。商品の搬入・搬出や来客、共用部分の使い方、表札や看板の表示についての制限も、契約書とあわせて調べてください。
大家さんには部屋の使い方を伝える
貸主や管理会社に相談するとき、「古物商の許可を取りたい」の一言では足りません。部屋をどう使うのかを、次の項目に沿って具体的に伝えてください。
- 扱う商品の種類
- 部屋に置く在庫の量
- 来客や持ち込みの買取があるか
- 宅配便の発送・受け取りの頻度
- 部屋でする作業
- 看板や表札などの表示
ネット販売だけで来客がなく、小さな商品を宅配便で送るなら、ありのままを伝えれば問題ありません。出張買取の拠点にする、お客様が品物を持ち込む、在庫を多く置くといった予定があれば、それも最初の相談で伝えましょう。
実際と違う説明で承諾を得ると、あとで契約違反を問われるおそれがあります。承諾の範囲を超える使い方を始めるときも、そのつど貸主に相談してください。
古物
賃貸の自宅を営業所にすると決めた時点で、大家さんへの相談と申請書類の準備を並行して始めることになります。部屋の使い方をどこまで伝えるかも含めて、当事務所へご相談ください。
承諾書には用途と条件を書く
承諾を書面に残すなら、誰が、どの部屋を、何のために使うことを認めたのかが分かる内容にしましょう。古物商許可のための全国共通の書式はないので、次の項目を入れて作ります。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 対象の物件 | 所在地、建物名、部屋番号 |
| 使う人 | 申請者の氏名、または法人名 |
| 使う目的 | 古物営業の営業所として使うこと |
| 使うときの条件 | 来客の有無、使う範囲など、話し合って決めた内容 |
| 承諾した日 | 実際に承諾した日付 |
| 承諾する人 | 貸主など、承諾できる立場の人の氏名・名称 |
文面は「〇〇所在の〇〇号室を、〇〇が古物営業の営業所として使用することを承諾します。」の一文を中心に、話し合った条件を書き足してください。管理会社が貸主に代わって署名するなら、その会社に承諾する権限があるかを事前に尋ねておきましょう。
断られたら営業所を移す
契約上承諾が必要なのに認めてもらえないときは、無断で営業を始めず、営業所の場所を考え直します。候補は、事業での利用が認められた別の賃貸物件、実際に作業ができるレンタルオフィス、親族が持っている物件などです。
レンタルオフィスなら、帳簿の保管や在庫の置き場所として使えるかを契約前に運営会社へ聞いてください。住所を借りるだけで作業ができないバーチャルオフィスは、営業の拠点という条件を満たしません。個別の物件が営業所として認められるかは審査で判断されるため、契約の前に申請先の警察署へ相談しましょう。
新しく申請するときの窓口は主たる営業所の場所で決まるため、営業所を移せば申請先の警察署も変わることがあります。候補の部屋が見つかったら、古物営業に使える契約かを調べたうえで、申請の準備に入りましょう。
よくある質問
- 家族の名義で借りている部屋を、自分の営業所にできますか?
-
営業所として使うこと自体はできます。契約者と申請者が違うため、事業での利用に承諾がいる契約なら、契約者から貸主へ話を通してもらう形です。承諾書にも、実際に営業する人の名前を書き入れます。
- 代表者個人で借りている部屋を、会社の営業所にできますか?
-
会社の営業所として申請することは可能です。借主が個人でも、実際に使うのは会社なので、貸主へは法人の事業に使う点まで伝えましょう。個人で取った許可は会社に引き継げないため、法人化したときは会社名義で申請し直すことになります。
- 許可を取ったあとに引っ越すときは、何が必要ですか?
-
営業所の場所を変えるときは、変更日の3日前までに警察署へ変更届を出すことになります。引っ越したあとの届出では間に合いません。新しい部屋も賃貸なら、契約書の使用目的の欄を読み、承諾がいる契約なら貸主の了解を得てから移転日を決めてください。
- 使用承諾書に決まった書式はありますか?
-
古物商許可について、全国共通の使用承諾書の法定様式があるわけではありません。貸主との承諾を書面にする場合は、対象物件、使用する人、古物営業の営業所として使うこと、承諾者などが分かる内容にしておきます。
- 審査の途中で、警察署から部屋の使い方を聞かれることはありますか?
-
添付書類には入っていなくても、営業所の状況によっては、営業のしかたや在庫の置き場所を電話や訪問で聞かれることがあります。どこまで聞かれるかは公式の案内に明示がないため、申請先の警察署との事前相談で確認します。
まとめ
賃貸マンションやアパートでも、古物営業の拠点として実際に使う部屋なら、営業所として申請できます。東京都では使用承諾書や賃貸借契約書は一律の添付書類ではなく、警察に出す書類と大家さんとの契約は分けて考えます。使用承諾書を取っていないことが、それだけで無許可営業になることもありません。
申請の前に、契約書と管理規約で事業利用の制限を調べ、承諾がいるなら部屋の使い方を具体的に伝えて書面に残しましょう。承諾が得られないときは、実際に作業ができる別の場所へ営業所を移し、そのうえで申請書類をそろえる流れとなります。
参考資料・公式情報
本記事は、以下の公的機関・法令の情報を参考に作成しています。
古物商許可でお困りならご相談ください
「賃貸の自宅を営業所にしてよいのか、大家さんに何を伝えればよいのか」と迷った段階で、ご相談ください。判断だけのご相談でも受け付けています。
古物商許可が必要な場合は、営業所の使い方の聞き取りから申請書類の作成、警察署への提出まで、リユース業界で10年以上、買取の実務に携わってきた行政書士がサポートします。

