基準緩和認定と特車申請の違い|両方必要になるケースと手続きの進め方

国道を走行する海上コンテナ車の後方写真。車両後面に基準緩和認定の緩和標章(▽マーク)が表示されている

重量物運搬用セミトレーラや大型の特殊車両では、「基準緩和認定」と「特殊車両通行許可」の両方が関係することがあります。

基準緩和認定は、通常の保安基準では扱いにくい車両について、構造や使用方法に応じて基準の適用を緩和する手続きのことです。特殊車両通行許可は、その車両が実際の道路を通行できるかを、寸法・重量や経路から審査する手続きです。

そのため、すでに基準緩和認定を受けている車両でも、運行する際には別に特車申請が必要になることがあります。

基準緩和認定を受けて車両を登録できても、それだけで道路を自由に通行できるわけではありません。反対に、特車許可を取得したからといって、車両側で必要な基準緩和認定を省略できるものでもありません。

この記事では、2つの制度の違い、両方が必要になる車両、判断の考え方、手続きを進める際の注意点をまとめます。

目次

基準緩和認定とは

基準緩和認定とは、道路運送車両の保安基準第55条に基づく制度のことです。車両の構造や使用方法が特殊で、通常の保安基準をそのまま適用することが難しい場合に、安全性や公害防止の面で支障がないと認められれば、条件や制限を付して基準の一部を緩和できます。

長大・超重量貨物を運搬する重量物運搬用セミトレーラは、基準緩和認定が関係する代表的な車両です。

基準緩和認定では、主に車両の構造や装置、使用方法をもとに、保安基準上どのように扱うかを審査します。重量物運搬用セミトレーラなどでは、主な運行経路や道路構造への影響が審査される場合もあります。

認定を受けた車両は、その内容や付された条件を前提として検査・登録などの手続きを進めます。

特殊車両通行許可とは

特殊車両通行許可は、道路法に基づく制度です。道路には幅・長さ・高さ・総重量・軸重などについて一般的制限値が定められており、これを超える車両が通行する場合は、車両の構造や積載する貨物が特殊であることなどを前提に道路管理者から通行許可を受けます。

審査の対象になるのは車両諸元だけではありません。橋梁、交差点、道路幅員、高さ制限など、実際に使用する経路の道路条件も審査の対象です。

基準緩和認定が車両そのものに関する手続きであるのに対し、特殊車両通行許可はその車両が特定の道路を通行するための手続きと位置づけると分かりやすくなります。

基準緩和認定と特車申請の違い

項目基準緩和認定特殊車両通行許可
根拠道路運送車両の保安基準道路法・車両制限令
主な申請先地方運輸局道路管理者
対象車両の構造・装置・使用方法車両の寸法・重量と通行経路
主な役割保安基準の適用を緩和する一般的制限値等を超える車両の通行を認める
審査の中心車両側道路側
条件認定内容に応じた条件・制限徐行・誘導車・通行時間帯など
基準緩和認定と特車申請の違い

2つの制度は大型・重量車両で同時に関係することがありますが、中心となる役割が異なります。 基準緩和認定は車両側、特車申請は道路側と整理すると分かりやすくなります。

基準緩和認定

対象: 車両の構造・装置・使用方法

根拠: 道路運送車両の保安基準

申請先: 地方運輸局

主な役割: 保安基準の一部について適用を緩和する

ポイント: 車両をどのような条件で登録・使用するか

特殊車両通行許可

対象: 積載状態の寸法・重量と通行経路

根拠: 道路法・車両制限令

申請先: 道路管理者

主な役割: 制限値を超える車両の通行を審査する

ポイント: その車両がその経路を通行できるか

基準緩和認定を受けていても、特車申請が別に必要になる場合があります。 反対に、特車許可を取得しても、車両側で必要な基準緩和認定を省略できるものではありません。

※ 基準緩和認定でも、車両によって主な運行経路や道路構造への影響などが審査される場合があります。

基準緩和認定は車両側、特殊車両通行許可は道路側の手続きという点が、この2つを分ける最大のポイントです。

基準緩和認定を受けていることを理由に特車許可が不要になるわけではなく、特車許可を取得していることを理由に基準緩和認定が不要になるわけでもありません。

「総重量20tを超えたら基準緩和」ではない

基準緩和認定と特車申請を考えるときに混同しやすいのが「20t」という数字です。道路法では一般的制限値として総重量20tが基本となりますが、高速自動車国道や重さ指定道路などでは別の重量基準が適用される場合があります。

この20tは、道路を通行する車両を道路法上どう扱うかを判断するための基準と考えてください。

一方、基準緩和認定は、道路運送車両の保安基準に照らして判断します。保安基準上認められる車両総重量は、車両の種類や軸距、軸数などによって異なるため、総重量が20tを超えたことだけを理由に基準緩和認定が必要になるわけではありません。

20tという数値は、道路法上の一般的制限値として使われる基準です。基準緩和認定が必要かどうかは車両の構造や諸元を保安基準に照らして判断し、特車申請が必要かどうかは、実際の寸法・重量と通行する道路の条件から判断します。

両方必要になる代表例は重量物運搬用セミトレーラ

基準緩和認定と特車申請の両方が関係しやすい代表例が、重量物運搬用セミトレーラです。重セミは発電機、変圧器、建設機械、プラント設備など、分割が難しい重量物の輸送に使われ、車両の構造や使用方法によっては基準緩和認定を受けて使用します。さらに、実際に貨物を積載した状態で道路法上の一般的制限値などを超えて通行する場合は、特殊車両通行許可も必要です。

同じ重セミでも、車両構造、総重量、軸重、積載する貨物、通行経路によって必要な手続きは変わります。

重セミの特車申請では、重量物運搬用セミトレーラの車種や特車申請時の考え方を解説しています。

2つの制度は「車両側」と「道路側」に分けて判断する

必要な手続きを把握するときは、基準緩和認定と特車申請を一度に判断しようとせず、車両側と道路側に分けて考えるのがポイントです。

車両側では、その車両が道路運送車両の保安基準に適合しているかを見きわめます。構造や使用方法が特殊で通常の基準のままでは使用できない場合、基準緩和認定の要否がここでの判断点です。道路側では、貨物を積載した実際の通行状態で幅・長さ・高さ・総重量・軸重などが道路法上の基準を超えていないかを判断し、超える場合は特殊車両通行許可などの手続きが関わります。

このように分けて考えると、基準緩和認定だけが必要なケース、特車申請だけが必要なケース、両方必要なケース、どちらも不要なケースという違いを把握しやすくなります。

どちらの手続きが必要?

車両側の保安基準道路側の通行基準を分けて確認すると、 必要な手続きを整理しやすくなります。

車両側・道路側とも基準内

車両側: 保安基準内

道路側: 道路法上の基準内

手続き: 原則としてどちらも不要

車両側だけ基準緩和が必要

車両側: 基準緩和が必要

道路側: 道路法上の基準内

手続き: 基準緩和認定

道路側だけ基準を超える

車両側: 保安基準内

道路側: 道路法上の基準を超える

手続き: 特殊車両通行許可

車両側・道路側の両方で手続きが必要

車両側: 基準緩和が必要

道路側: 道路法上の基準を超える

手続き: 基準緩和認定 + 特殊車両通行許可

※ 実際の要否は、車両の構造・使用方法、積載状態、寸法・重量、通行経路などをもとに個別に判断します。

基準緩和認定を受けても特車申請が必要なことがある

基準緩和認定を受けた車両でも、道路法上の制限を超えて道路を通行する場合は、別に特殊車両通行許可が必要です。たとえば基準緩和認定を受けた重セミであっても、貨物を積載した状態の総重量や軸重、車両寸法が通行する道路の基準を超えていれば、基準緩和認定だけで運行することはできません。

特車申請では、実際に走行する状態の車両諸元と経路をもとに、橋梁や交差点などについて審査を受けます。「基準緩和車として登録されているから、道路もそのまま走れる」とは判断しないことが重要です。

基準緩和車両の特車申請で迷ったら

重量物運搬用セミトレーラなどは、基準緩和認定の内容だけでなく、 実際の車両諸元や積載状態、通行経路まで整理して特車申請の要否を判断する必要があります。 当事務所では、基準緩和車両を含む特殊車両通行許可申請に対応しています。

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基準緩和認定がなくても特車申請が必要になることがある

反対に、通常の保安基準に適合している車両でも、特殊車両通行許可が必要になるケースがあります。一般的なトラックやトレーラであっても、分割できない大型貨物を積載したことで、走行状態の幅・長さ・高さなどが道路法上の一般的制限値を超える場合です。

この場合、車両そのものには基準緩和認定が必要なくても、積載状態では特殊車両として道路を通行するための手続きが必要になります。車両ではなく貨物によって特殊車両となるケースは、平ボディでも特車申請が必要になるケースでも取り上げています。

両方必要な場合は、まず車両諸元を固める

基準緩和認定と特車申請の両方が必要になる場合、最初に重要なのは申請順序を決めることより、実際に使用する車両諸元を固めることが前提です。車両の幅・高さ・長さ、車両重量、車両総重量、軸重、軸距、連結状態などが決まらなければ、どちらの手続きも正確に進められません。

新しく重量物運搬用トレーラを導入する場合は、車両メーカーの図面や諸元表などをもとに車両仕様を固め、その内容から基準緩和認定で必要になる資料と特車申請で使用する車両諸元を準備していきます。案件によっては車両の登録前から道路管理者への相談や経路の検討を進めることもあり、「必ず基準緩和認定を終えてから特車申請」「必ず特車申請を先に行う」という一律の順番ではありません。

新規車両や特殊な重量物輸送では、車両の仕様と実際の運行計画を早めに固めておきましょう。

基準緩和車を特車申請するときは認定後の諸元を使う

基準緩和認定を受けた車両を特車申請するときは、実際に登録された車両情報と一致する諸元を使用します。特に押さえておきたいのは、車両総重量、軸重、隣接軸重、車両寸法、軸距、連結状態などです。

重量物運搬用セミトレーラでは、同じ型式でも仕様や軸配置によって入力内容が変わります。基準緩和を受けているという情報だけでは申請データを作成できないため、車検証、メーカーの諸元表、外観図などとの照合が欠かせません。オンライン申請での車両諸元の入力手順については、車両諸元の入力手順を参考にしてください。

基準緩和認定では車両に応じた資料が必要になる

基準緩和認定で提出する資料は、どの保安基準について緩和を受けるか、車両がどのような構造になっているかによって変わります。重量物運搬用セミトレーラなどでは、車両を特定する資料、車両諸元、外観図、構造を示す図面、強度などを裏付ける資料、使用方法を説明する資料などが必要になる場合があります。

車両メーカーが保有する図面や計算資料が必要になるケースもあるため、新しい車両を導入するときは、後から資料を集めるのではなく、車両仕様を決める段階から必要資料を把握しておきましょう。すべての基準緩和車に同じ資料が必要になるわけではなく、実際に緩和を受ける項目に応じて提出資料をそろえます。

基準緩和認定の条件と特車許可の通行条件は別々に管理する

基準緩和認定には、認定内容に応じて車両の使用方法などについて条件や制限が付される場合があります。特殊車両通行許可にも、車両と道路の組み合わせに応じて通行条件が付くことがあり、代表的なのは徐行、誘導車の配置、他車との同時通行を避ける条件、通行時間帯などです。

両方の手続きを受けている車両は、基準緩和認定の条件と特車許可の通行条件の両方を守っての運行が前提です。基準緩和認定書や車検証だけに目を通して特車の条件を見落としたり、特車許可証だけで基準緩和側の条件を見落としたりしないよう、運行前に必要な書類をそろえておきましょう。特車側の条件は、通行条件A〜Dにまとめていますので、あわせて参考にしてください。

重量物運搬用トレーラの基準緩和認定には有効期間がある

長大・超重量貨物を輸送するトレーラについては、基準緩和認定に期限が設けられています。新規認定の期限は原則2年、継続認定は2022年4月の制度改正により通常4年となっています。

安全性優良事業所認定、いわゆるGマークを受けた事業所に使用の本拠を置く車両では、一定の要件を満たす場合に継続認定の期限を設けない取扱いになります。ただし、Gマークを取得していれば自動的に無期限になるわけではなく、前回の認定から継続申請までの間に重大事故や基準緩和自動車に関する行政処分等がないことなど、所定の要件を満たすことが条件です。

基準緩和認定と特車許可では有効期間の考え方も異なるため、それぞれ別に期限を管理しておくことが欠かせません。

よくある質問

基準緩和認定を受ければ特車申請は不要ですか?

不要になるとは限りません。基準緩和認定は車両側の保安基準に関する手続きで、貨物を積載した実際の通行状態で道路法上の制限を超える場合は、別に特殊車両通行許可などの手続きが必要になります。

特車許可を取れば基準緩和認定は不要ですか?

特車許可は基準緩和認定の代わりにはなりません。車両の構造や使用方法について保安基準の緩和が必要な場合は、特車申請とは別に基準緩和認定を受ける必要があります。

重セミは基準緩和認定と特車申請の両方が必要ですか?

両方が必要になる代表的な車両ですが、車両ごとに判断します。重セミの構造や仕様によって基準緩和認定が関わり、さらに実際の走行状態で道路法上の制限を超える場合は特殊車両通行許可も必要です。

基準緩和認定と特車申請はどちらを先に進めますか?

一律の順序で決まるものではありません。まず使用する車両の仕様を固め、基準緩和認定と特車申請のそれぞれで必要になる手続きを把握します。新規車両では、認定・登録の準備と並行して経路の検討を進める場合もあります。

総重量20tを超えたら基準緩和認定が必要ですか?

20tという数字だけでは判断できません。20tは道路法上の一般的制限値として使われる重量基準で、基準緩和認定が必要かどうかは道路運送車両の保安基準に照らして別に判断します。

基準緩和認定の有効期間はどのくらいですか?

長大・超重量貨物を輸送するトレーラでは、新規認定は原則2年、通常の継続認定は4年です。一定の要件を満たすGマーク認定事業所の車両では、継続認定の期限を設けない取扱いを受けられる場合があります。

まとめ

基準緩和認定と特殊車両通行許可は、同じ大型車両に関係することがあっても目的の異なる制度です。基準緩和認定は道路運送車両の保安基準に照らして車両の構造や使用方法を扱う車両側の手続きで、特殊車両通行許可は車両の寸法・重量と実際に使用する道路をもとに通行可否を審査する道路側の手続きです。

重量物運搬用セミトレーラなどでは両方が必要になる場合があります。まず車両仕様を固め、基準緩和認定と特車申請の要否をそれぞれ分けて把握しましょう。

特車申請の制度・手続き・車種別対応は、特殊車両通行許可申請ガイドにまとめています。

基準緩和車両の特車申請でお困りならご相談ください

基準緩和認定を受けた重量物運搬用セミトレーラなどについて、車両諸元や予定通行経路を把握したうえで、特殊車両通行許可の申請代行を行っています。基準緩和認定と特車申請の両方が必要か判断しにくい場合や、重セミなどの特車申請でお困りの場合もご相談ください。

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