建設機械・プラント設備・鉄道車両など、分割できない重量物を運ぶセミトレーラを「重セミ(重量物運搬用セミトレーラ)」と呼びます。バン型やタンク型とは制度の扱いが異なり、特例8車種向けの申請手順はそのまま流用できません。
申請前に押さえておくのは3点。車両タイプの選定、許可証に付くC・D条件の義務、オンライン申請での入力上の注意点です。
重セミとは
重セミは「貨物が特殊な車両」のグループに分類されます。ポールトレーラと同じグループで、一般的制限値を超える分割不可能な重量物を運ぶことが申請の前提です。
道路運送車両法の保安基準緩和を受けている点も重セミの特徴で、緩和内容は車検証の備考欄に記載されています。
海上コンテナ用トレーラは分割不可能な貨物を運ぶ点では共通しますが、「特例8車種(構造が特殊な車両)」にも該当するため、適用される緩和ルールが異なります。重セミは特定の形状を指す名称ではなく、保安基準の緩和を受けて分割不可能な重量物を運ぶセミトレーラの総称です。
特例8車種との違い
バン型・タンク型・コンテナ用などの特例8車種は、車両の構造が一般的制限値を超えるグループです。空車状態でも制限値を超えることがあり、構造の特殊性が許可の理由になります。空車での申請が通るため、貨物情報の入力は不要です。
重セミが申請を必要とする理由は構造ではなく、運ぶ貨物が分割できないことです。申請時には貨物の品名・寸法・重量の入力に加え、分割不可能な理由の説明を求められます。
車検証備考欄に軸重・隣接軸重の緩和数値が入るのも重セミ固有の要素です。特例8車種には緩和の適用がありません。
| 項目 | 重セミ | 特例8車種 |
|---|---|---|
| 申請が必要な理由 | 分割できない重量物を運ぶから | 車両の構造が特殊だから |
| 空荷での申請 | できない | できる |
| 保安基準緩和 | あり(車検証備考欄に記載) | なし |
| 貨物情報の入力 | 必須(品名・寸法・重量) | 不要 |
| 主な例 | 建設機械・プラント設備・鉄道車両 | バン型・タンク型・コンテナ用など |
貨物を運ぶ車両
建設機械、プラント、鉄道車両
バン、タンク、コンテナ用など
5つの車両タイプ:荷物の形と重さで選ぶ
重セミは運搬する貨物の形状・重量によって主に5タイプに分かれます。荷台高さが積載物の高さ制限に直結するため、重量だけでなく高さもタイプ選定の基準です。

①低床セミトレーラ
荷台を極限まで下げた構造で、高さのある建設機械に最も向きます。3軸タイプでは最大積載量20〜35tに達する車両も一般的。ショベルカーやブルドーザーの回送で最もよく使われます。
②中低床セミトレーラ
低床とフラットの中間の荷台高さで、タイヤ径を大きく取れます。高速走行時の耐久性と安定性に優れ、工作機械・旋盤・大型パレット貨物の輸送向き。
③フラットセミトレーラ
荷台に段差がない平坦な構造。フォークリフトでの荷役がしやすいため、鋼材(H鋼・鋼板)やコンクリート製品の輸送で使われます。
④伸縮式セミトレーラ
荷台が前後にスライドして伸びる構造で、ステアリング機能付きの車両も多く旋回性能を確保します。橋桁・風力発電ブレード・電柱など、長さが突出した貨物の輸送向き。
⑤多軸セミトレーラ
多数の車軸で総重量を分散させ、1軸あたりの橋梁負荷を下げます。プラント設備・大型変圧器・鉄道車両など、とりわけ重い貨物で選ばれる車両です。
C条件・D条件でやること
特車許可証には、道路への負荷に応じてA〜Dの通行条件が付されます。重セミは総重量が大きくなるため、C条件またはD条件が付く場面が多くなります。
重量C条件
橋梁への負荷が高い区間で付く条件です。義務は3点。
重量D条件
橋梁の設計荷重に対して最も厳しい制限が求められる区間で付く条件です。C条件の義務に加えて、次の交通統制が加わります。
- 橋全体を自車1台で渡り切る。対向車線を含む隣接車線の全車両を停止させた状態での通行が前提
- 前方・後方の両方に誘導車を配置し、橋の両端で交通統制を行う
- 通行は原則として夜間(21:00〜翌6:00)のみ
D条件の誘導車は「前後の護衛」ではなく、橋の両端で全車両を止めるための配置です。この交通統制が運行計画の出発点になります。
令和6年4月からは、一定の要件を満たす区間で夜間通行時間が20:00〜翌7:00に拡大される試行が始まっています。
オンライン申請の留意点
貨物情報の入力
バン型等の特例8車種と異なり、貨物の品名・寸法・重量の入力が必須です。積載貨物が分割できない理由の記載も求められます。
個別審査の期間
重量や経路によっては個別審査となり、許可まで2〜3か月かかります。工期が決まっている建設案件では、着工予定から逆算した早めの申請が前提です。
最大積載量の超過
システムの算定をクリアしても、車検証に記載された最大積載量を超える積載は禁止です。現場での過積載取り締まりの対象になります。
添付書類の精度
超寸法・超重量に該当する場合は、旋回軌跡図・運行計画書・理由書の添付が必要です。多軸車両や伸縮式車両では図面の精度が不十分だと差し戻しになります。
車検証備考欄の「保安基準緩和」数値
重セミの車検証備考欄には「保安基準緩和 軸重○○t、隣接軸重○○t」の数値が入っています。オンライン申請システムへの入力で1kgでも誤ると、車検証自動チェック機能で差し戻しになります。特例8車種の申請に慣れた担当者が見落としやすい箇所で、申請前に確認が必要です。
まとめ
重セミの申請で判断が求められるのは、C・D条件の違いとオンライン申請固有の入力事項の2点です。D条件が付く経路では誘導車2台の配置と夜間通行(21:00〜翌6:00)が前提になり、令和6年4月から始まった時間外労働上限規制(年960時間)との兼ね合いも運行計画に織り込みます。
オンライン申請では車検証備考欄の保安基準緩和の数値を正確に転記することが差し戻し防止の基本です。初めて重セミを担当する場合は、特例8車種とは入力項目が異なる点を事前に確認しておきます。
特車申請の制度・手続き・車種別対応の全体像は特殊車両通行許可申請ガイドにまとめています。
よくあるご質問
- 重セミと特例8車種(バン型など)の違いは何ですか?
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許可が必要になる理由が異なります。特例8車種は車両の構造が特殊なため、空車状態でも申請が通ります。重セミは運ぶ貨物が分割できない重量物であるため申請が必要で、貨物の品名・寸法・重量の入力が必須です。同じセミトレーラでも、何が特殊かで制度の扱いが変わります。
- 重量D条件が付いた場合、誘導車は何台必要ですか?
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前方と後方の2台です。D条件は橋梁を自車1台で渡り切るために、橋の両端で対向車を含む全車両を停止させる交通統制を行う条件です。誘導車はその統制のために配置します。
- 重セミで確認制度を使える条件は何ですか?
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セミトレーラ連結車の場合、総重量143.6t以下・長さ20m以下・幅3.5m以下・高さ4.3m以下・最小回転半径12m以下が対象範囲です。この範囲内であればWeb上で即時に通行可能経路を確認できます。
- 重セミのオンライン申請で特例8車種と違う点はどこですか?
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貨物情報の入力が必要な点と、車検証備考欄の保安基準緩和数値を転記する点です。緩和数値は1kgでも誤入力すると差し戻しになるため、入力前に車検証備考欄を確認します。
- 令和6年4月から変わったことはありますか?
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2点あります。一つは一部区間でD条件の夜間通行時間が20:00〜翌7:00に広がる試行措置が始まったこと。もう一つは自動車運転業務の時間外労働上限規制(年960時間)が適用されたことです。D条件の運行計画では、夜間通行の時間枠と労働時間の両方を同時に満たす計画が必要になります。

