特車の通行許可が下りると、許可証には通行条件が付きます。条件の内容によっては「誘導車を配置すること」が求められます。この場合、許可どおりに運行するには、誘導車の手配まで済ませておかなければなりません。
誘導車は、特殊車両の前か後ろを走り、周りの車や道路の状況を運転者に伝える車両です。運転に専用の国家資格は不要ですが、所定の講習を受けた人でなければ誘導車を運転できません。台数は2021年3月29日の改正で原則1台となり、条件によって前に付くか後ろに付くかが変わります。
この記事では、誘導車の役割、運転に必要な講習、前後どちらに配置するかの条件、車両への表示、運行前の打合せまで、実際の運行の流れに沿って解説します。
誘導車の役割
誘導車は、周りの車や道路の状況をつかみ、特殊車両の運転者に情報や助言を伝える車両です。橋梁では後ろから来る車、交差点では対向車や曲がった先の様子をとらえます。一般の車に特殊車両が通ることを知らせるのも、誘導車の役目です。
前後をただ一緒に走るのではなく、条件どおりに通れる状態かを両方の運転者で判断しながら進みます。
誘導車の運転者に、警察官のような交通整理の権限はありません。必要なときは周りの車に一時停止などの協力をお願いし、通れる状態になるまで特殊車両が待ちます。
許可条件や国土交通省の資料での表記は「誘導車」です。実務では、前方を走る誘導車を「先導車」と呼ぶこともあります。
誘導車の資格と講習
誘導車を運転するための専用の国家資格はありません。必要なのは、その車に合った運転免許と、所定の講習の受講です。
所定の講習は、国土交通省のオンライン講習か、「国土交通省が定める講習一覧」に載っている団体の講習です。受講修了書の有効期限は受講日から5年間なので、運行のときに受講済みとわかるようにしておいてください。動画を見た経験や別の安全講習の受講歴だけでは、この講習の代わりになりません。
講習を受けていない人の誘導車を前後2台に増やしても、講習の要件を満たしたことにはなりません。講習は「1台に減らすときだけの条件」ではなく、誘導車を運転する人それぞれに求められます。
誘導を外部に頼むときは、運転者の氏名と修了書の写しを事前に受け取るか、本人に修了書を持ってきてもらいます。通行が終わるまで受講を示せる状態を保ち、担当者が代わったときは新しい運転者の修了書も照合してください。
配置は重量なら後方、寸法なら前方
特車の通行条件A〜Dのうち、誘導車の配置がかかわるのは、基本的に重量C・Dと寸法Cです。
| 条件 | 基本の配置 | 主な場所と役割 |
|---|---|---|
| 重量C | 後方1台 | 橋梁などで、同じ車線の同じ径間を他の車と同時に通らないよう補助 |
| 重量D | 後方1台 | 重量Cに加え、隣の車線の車の状況も踏まえて通行を補助 |
| 寸法C | 前方1台 | 交差点・屈曲部・幅の狭い箇所などで、道路と対向車の情報を伝える |
重量Cは後方、寸法Cは前方と、同じC条件でも位置が逆になります。表の「径間」は、橋の支点から支点まで(橋脚と橋脚のあいだなど)の1区間のことです。
A・Bの基本条件には誘導車の配置が含まれませんが、個別に付いた条件にも目を通してください。条件書で対象の橋梁や交差点を特定し、その手前で決められた配置につきます。
重量と寸法の条件が同じ箇所に付くときは、両方を満たす配置が必要です。たとえば寸法C条件と重量D条件が重なる箇所では、前と後ろの両方に誘導車を置きます。

「特殊車両誘導中」の表示と前照灯
誘導車には特殊車両以外の車を使い、周りから誘導中とわかる表示をつけます。表示の方法は「特殊車両の通行に係る誘導等ガイドライン」に示されていて、緑色灯、標識、ステッカーの3通りです。許可条件に書かれている事項は条件に、それ以外はガイドラインに沿って準備してください。
回転灯を必ずつける必要はありません。「特殊車両誘導中」などの標識やステッカーは、隣の車線の対向車や後ろの車から見える位置につけます。
緑色灯を使う場合は、地方運輸局長による保安基準の緩和認定が必要です。標識やステッカーを灯火や反射物として使うときも、保安基準に合っているかを調べておいてください。
前照灯は、昼夜を問わず点灯します。出発前に、表示が隠れていないか、灯火がつくかを点検しましょう。
特車申請は、車両や経路の情報をそろえるだけでなく、誘導車が必要になる条件箇所の把握にも手間がかかります。当事務所では、車両・経路の確認から、申請書類の作成・申請後の補正対応まで代行します。
運行前の打合せで決めること
誘導車と特殊車両の運転者は、通行前に対面・電話・メールなどで打合せをします。配車担当者から資料を渡すだけでなく、双方で経路と条件を共有してください。
| 対象箇所 | 重量C・Dの橋梁、寸法Cの交差点など |
|---|---|
| 配置 | 合流・離脱地点、前後の入替え場所 |
| 通行方法 | 徐行、車間距離、進入前に待機する位置 |
| 連絡手段 | 無線などの使い方、連絡が途切れた場合の対応 |
| 時間・休憩 | 夜間指定箇所の通過予定時刻、休憩・待機場所 |
| 車両と貨物 | 積載時の寸法、張り出し、固縛などの留意事項 |
連絡には無線や携帯電話などを使えますが、運転中の手持ち通話など道路交通法に反する使い方はできません。通話の方法と機器の動作は、出発前に試しておきましょう。
夜間や迂回時も条件は変わらない
夜間通行の条件が付いていても、誘導車、徐行、車間距離などの条件はそのまま残ります。夜で車が少ないという理由だけで、誘導車を省くことはできません。
重量Dの時間帯緩和を使う場合も、対象箇所と時間帯を許可書類で照らし合わせてください。誘導車との合流時刻は、営業所を出る時刻ではなく、最初の条件箇所に着く時刻から逆算して決めます。
事故や工事で予定の経路を通れないときは、迂回先が許可などの対象に入っているかを先に調べてください。誘導車が先導しても、手続きをしていない経路を通れるようにはなりません。
よくある質問
- 誘導車の運転に資格は必要ですか?
-
専用の国家資格はありません。運転する車に合った免許に加え、所定の講習の修了が必要です。講習はオンラインでも受けられます。
- 誘導車が必要なのはどの条件ですか?
-
基本は重量C・D条件と寸法C条件です。重量C・Dでは後方1台、寸法Cでは前方1台が基本の配置で、同じC条件でも前後が逆になります。
- D条件の誘導車は何台必要ですか?
-
基本は後方1台です。以前のように前後2台を一律に置く仕組みは、2021年3月の改正でなくなりました。寸法C条件が同じ箇所に付く場合は、前方にも1台が必要です。
- 「特殊車両誘導中」の表示や回転灯は必要ですか?
-
回転灯は必須ではありません。緑色灯、「特殊車両誘導中」などの標識、ステッカーのいずれかで、誘導中であることを示します。緑色灯を使う場合は保安基準の緩和認定が必要です。
- 誘導車が一般車を止めてもよいのですか?
-
誘導車に警察官のような交通整理の権限はありません。周りへの注意の呼びかけ、道路状況の把握、運転者への情報提供で、安全な通行を支える立場です。
- D条件なら経路全体を夜間に走る必要がありますか?
-
経路全体が夜間限定になるとは限りません。夜間条件が付く区間や時間帯は、許可証やC・D条件箇所一覧に書かれています。
まとめ
誘導車は、条件箇所で道路や周りの車の状況を伝え、特殊車両の通行を支える車両です。専用の資格はなく、運転者ごとに所定の講習の修了が求められます。配置は重量C・Dなら後方、寸法Cなら前方で、条件が重なる箇所では前後の配置が必要になることもあります。
運行前には、表示と連絡手段を整え、条件箇所や入替え場所、通過時刻まで双方の運転者で共有してください。夜間条件や迂回があっても、誘導車の条件は変わりません。
特車申請の制度・手続き・車種別対応は、特殊車両通行許可申請ガイドにまとめています。
特車申請のことでお困りならご相談ください
誘導車の条件は、条件書で対象の橋梁や交差点を特定してはじめて、配置や入替え場所を決められるものです。当事務所では、誘導車が必要になる通行条件や対象箇所も踏まえて、申請経路と書類の作成をお引き受けしています。誘導車が必要な条件の読み方に迷ったときも、お気軽にお問い合わせください。

