経路図を作成していると、国道だけで完結せず、県道や市道をまたぐ区間が含まれることがあります。国のオンライン申請などでは、複数の道路管理者にまたがる経路をまとめて申請できますが、その後の審査では道路管理者間の協議が必要になる場合があります。
申請を受け付けた道路管理者が、他の道路管理者の管理する区間について個別の判断が必要とした場合、その道路管理者へ協議を行います。これが特車申請の「個別協議」です。
審査に時間がかかっていても、必ずしも車両諸元や申請書類に問題があるとは限りません。協議先の道路管理者からの回答を待っているため、許可まで時間を要しているケースもあります。
この記事では、個別協議が発生する仕組みと個別審査との違い、協議先や進捗の確認方法、審査が長引く理由まで解説します。
特車申請の個別協議とは
特殊車両の通行経路は、国道、都道府県道、市区町村道、有料道路など、複数の道路管理者にまたがることがあります。申請を受け付けた道路管理者が、他の道路管理者の管理する区間について個別の判断が必要とした場合、その道路管理者へ協議を行います。これが個別協議です。
たとえば、国の窓口へオンライン申請した経路に県道や市道が含まれ、その区間について個別の審査が必要になれば、申請を受け付けた側から県や市などの道路管理者へ協議が進められます。
この場合、申請者が同じ申請書を県や市へそれぞれ提出するのではなく、申請を受け付けた道路管理者を通じて必要な協議が行われます。
申請経路に他の道路管理者が管理する区間が含まれ、 個別の判断が必要な場合は、道路管理者間で協議が行われます。
※ 申請者が同じ申請を各道路管理者へ個別に提出する仕組みではありません。
複数の道路管理者を通っても、必ず個別協議になるわけではない
国道・県道・市道を含む経路だからといって、すべての道路管理者との個別協議が毎回発生するわけではありません。道路情報便覧に必要な情報が収録され、システム上で道路構造に対する通行可否を算定できる区間では、個別協議を行わずに審査が進む場合があります。
個別協議が発生しやすいのは、道路情報便覧の情報だけでは通行可否を判断できず、道路管理者による個別の確認が必要になる区間です。そのため、同じ車両でも通行経路が変われば、個別協議の有無や協議先、件数が変わることがあります。
個別協議と個別審査は同じではない
特車申請では、「個別協議」と「個別審査」はにている場面で使われますが、意味は異なります。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 個別協議 | 申請先とは別の道路管理者へ協議し、通行可否や条件について回答を求める手続き |
| 個別審査 | システムによる通常の算定だけでは判断できない車両や道路について、道路管理者が個別に審査すること |
未収録道路が経路に含まれる場合は、その道路を管理する道路管理者への個別協議が必要になることがあります。一方、超寸法・超重量車両や、システム上で個別審査が必要とされる箇所では、道路管理者による個別審査が行われる場合があります。
両方が関係するケースもありますが、個別審査が行われることと、他の道路管理者への個別協議が発生することは同じではありません。
個別協議で審査される内容
協議の内容は、通行させる車両と道路の組み合わせによって変わります。重量の大きい車両では、橋梁など道路構造へ与える影響が審査されます。幅や長さが大きい場合は、道路幅や交差点、屈曲部を安全に通過できるかが論点になりやすい傾向があります。
審査の結果、通行できると判断されても、無条件で許可が出るとは限りません。道路構造や車両諸元に応じて、徐行、誘導車の配置、他車との同時通行を避ける方法、通行時間帯の指定などの条件が付くことになります。具体的な条件については、通行条件A〜Dで取り上げています。
協議先で通行できないと判断された区間があれば、経路変更などの対応を検討することになります。
「協議回答書」とは何か
道路管理者間の協議では、協議先が審査結果を回答するための「協議回答書」が使われます。申請先から協議を受けた道路管理者は、その車両を通行させられるか、どのような通行条件が必要かなどを審査し、結果を返します。
ここで混同しやすいのが、特殊車両通行確認制度で発行される「回答書」です。確認制度の回答書は、登録車両について通行可能経路を確認した利用者へ交付され、実際の運行時にも使う書類になります。個別協議の協議回答書は許可制度における道路管理者間の協議で使われるものなので、同じ「回答書」という名称でも役割が異なると考えたほうが正確です。
個別協議で審査が止まっているように見えたら
特車申請では、個別協議の発生先や回答状況によって許可までの期間が大きく変わることがあります。 当事務所では、申請経路や現在の審査状況を確認したうえで、 未収録道路・個別協議を含む特殊車両通行許可申請に対応しています。
特車申請サービス →個別協議の進捗は「個別協議状況一覧」で把握できる
国のオンライン申請では、個別協議が発生している申請について「個別協議状況一覧」から進捗を把握できます。一覧では個別協議の発生件数や回答済み件数を確認でき、詳細を開けば協議先や協議開始日、回答状況まで突き合わせられます。
たとえば3か所へ個別協議が発生している場合、2か所は回答済みでも1か所はまだ協議中、という状態になることもあります。申請全体のステータスだけでは審査が止まっている理由をつかみにくいため、許可まで時間がかかっているときは個別協議の発生状況まで押さえておくと、現在地が見えやすくなります。
個別協議があると審査期間が長くなりやすい
特殊車両通行ハンドブックでは、一定の条件を満たす新規・変更申請について、標準処理期間を3週間以内と定めています。ただし、この標準処理期間が適用されるのは、申請経路が道路情報便覧に収録された道路だけで完結し、超寸法・超重量車両ではなく、申請後に経路や車両諸元などを変更していない場合などに限られます。
他の道路管理者への協議が必要になった場合、協議を行って回答を得るまでの期間は、この標準処理期間には含まれません。そのため「3週間を過ぎたから審査が異常に遅れている」とは単純に判断できないことになります。協議先の数だけで期間を見積もることも難しく、同じ1件の個別協議でも、車両や道路構造、必要な資料によって回答までの期間は変わってきます。
審査が長引く理由は、申請内容の不備だけではありません。 道路や車両の条件によって、通常のシステム算定だけでは完結しないことがあります。
※ 他の道路管理者への協議・回答に要する期間などは、標準処理期間とは別に時間を要することがあります。
未収録道路は個別協議が発生しやすい
工場、物流施設、資材置場、建設現場などへの最後の区間には、道路情報便覧へ収録されていない道路が含まれることがあります。こうした未収録道路では、システムに必要な道路情報がないため、道路管理者による確認や個別協議が必要になるケースが出てきます。
経路の大部分が高速道路や国道であっても、目的地直前の数百メートルの市道が未収録であれば、その区間が審査期間に影響することになります。特車申請で「最後の市道が原因で時間がかかる」といわれる背景には、こうした事情があります。申請前に経路を作る段階で、出発地・目的地付近まで道路情報が収録されているかを把握しておきましょう。
超寸法・超重量車両は個別審査にも注意が必要
大型クレーンや重量物運搬車など、通常の許可限度算定の範囲を超える車両では、道路管理者による個別審査が必要になることがあります。超寸法・超重量車両は、そもそも3週間という標準処理期間の対象外です。
この場合、経路がすべて収録道路であっても、車両側の条件によって審査に時間がかかることになります。未収録道路による個別協議と、超寸法・超重量車両による個別審査は、審査が長くなるという結果は似ていても、理由は分けて捉えたほうが正確です。
通行できない区間が見つかったときの対応
協議や審査の結果、申請した車両では通行できない道路や橋梁が見つかることがあります。その場合は、通行できない箇所を避ける別経路を検討します。重量が問題になっているときは、車両や積載状態を見直すことで、別の申請方法を探れるケースもあります。
ただし、申請中の経路を変更できるか、新しい申請として作成し直す必要があるかは、変更内容や申請の進行状況によって異なります。通行不可が出たからといって、すぐに「申請そのものが不許可になった」と決めつけるのではなく、どの区間にどの理由で問題が出たのかを見きわめたうえで対応しましょう。
簡易算定で事前に問題箇所を把握する
オンライン申請では、正式に申請する前に車両と経路を使って算定を行う「簡易算定」という機能が用意されています。簡易算定を使えば、経路上のC・D条件、個別審査箇所、通行不可などを事前に把握できます。
たとえば予定経路に個別審査となる橋梁があると分かれば、申請前に別経路と比較できます。事前に経路を突き合わせておくことで、申請後になって初めて通行上の問題に気づくケースを減らせます。ただし、簡易算定は最終的な許可を保証するものではなく、個別協議や道路管理者による審査の結果によって最終的な条件が決まる、という位置づけです。
個別協議中でも差戻しが発生することがある
個別協議が進んでいる間に、申請内容について修正を求められる場合があります。車両諸元の入力、通行経路、未収録道路の資料などに不足や誤りがあれば、内容を直して再提出することになります。差戻しが入れば、その対応にかかる時間も許可取得までの期間に影響します。
道路管理者から修正を求められたときは、まず差戻しの理由を押さえ、必要な部分だけを直すことが欠かせません。
工事案件は個別協議を見込んで早めに申請する
建設工事や設備搬入では、現場へラフタークレーンや重機回送の車両、重量物運搬用セミトレーラなどを入れる日が先に決まっていることがあります。こうした案件では、申請書を出す日ではなく、実際に特殊車両を公道へ通す日から逆算して準備することが求められます。
予定経路に未収録道路や個別審査箇所があれば、通常の標準処理期間だけを前提にスケジュールを組むと、許可が間に合わない可能性も出てきます。現場直前の市道などは、車両と目的地が決まった段階で早めに把握しておいてください。
よくある質問
- 特車申請の個別協議とは何ですか?
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申請した経路について、申請先とは別の道路管理者による審査が必要な場合に行われる、道路管理者間の手続きです。協議先では、その特殊車両が管理道路を通行できるか、どのような条件が必要かなどを審査します。
- 複数の道路管理者を通ると必ず個別協議になりますか?
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必ずではありません。道路情報便覧に必要な道路情報が収録され、システムで算定できる区間では、個別協議を行わずに処理できる場合があります。
- 個別協議と個別審査は同じですか?
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同じではありません。個別協議は別の道路管理者へ審査を求める手続きで、個別審査はシステムの通常算定だけでは判断できない箇所などを個別に審査することです。
- 個別協議があると必ず3週間を超えますか?
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一律には決まりません。他の道路管理者への協議と回答にかかる期間は、通常の新規・変更申請の標準処理期間には含まれないためです。
- 協議先へ申請者が直接連絡するのですか?
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基本的には道路管理者間で協議が進みます。申請者は申請先の窓口へ申請し、必要な他の道路管理者への協議は申請先を通じて進められます。
- 協議で通行できないと判断されたらどうなりますか?
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問題となった区間を避ける経路への変更などを検討します。補正で対応できるか、新しい申請が必要になるかは、変更内容や申請状況によって異なります。
まとめ
特車申請の個別協議は、申請した経路について申請先とは別の道路管理者による審査が必要な場合に行われる手続きです。複数の道路管理者が含まれる経路でも、道路情報便覧の情報でシステム算定できれば、必ず個別協議になるわけではありません。未収録道路など、道路管理者の判断が必要な区間で協議が生じることになります。
個別協議にかかる期間は、新規・変更申請の標準処理期間である3週間以内には含まれません。審査が長引いているときは、オンライン申請の個別協議状況一覧で協議先や回答状況を押さえておくと、現在の進み具合をつかみやすくなります。個別協議と個別審査は同じ手続きではなく、未収録道路、超寸法・超重量車両、個別審査箇所など、それぞれ審査が長くなる理由を分けて捉えることが欠かせません。
特車申請の制度・手続き・車種別対応は、特殊車両通行許可申請ガイドにまとめています。
個別協議を含む特車申請でお困りならご相談ください
個別協議が生じる経路では、通常の審査期間だけでは許可時期を見通しにくくなります。未収録道路や個別審査箇所が含まれている場合は、申請前の経路確認も欠かせません。
当事務所では、車両諸元と予定通行経路を照らし合わせたうえで、個別協議を含む特殊車両通行許可の申請代行まで対応しています。

