包括申請は複数台の車両を1件の申請にまとめて提出できる制度です。台数が多い運送会社では手数料と手続きの手間を減らせます。
ただし、包括申請ではシステム内部で「合成車両」という架空の車両が作られ、その諸元で審査が行われます。この仕組みを知らないまま申請すると、意図しない通行条件が付いたり、差戻しになったりします。
合成車両とは
合成車両は、包括申請に含まれる複数の車両の諸元を「車軸ごとに最大値で組み合わせた架空の車両」です。
たとえばトラクタAとトラクタBを同じ包括申請に含める場合、前軸重はAとBの重い方、後軸重もAとBの重い方、全長もAとBの長い方……という形で、各項目の最大値を組み合わせた1台の架空のトラクタが作られます。この合成車両の諸元で経路の審査が行われるため、実際には存在しない「最も厳しい条件の車両」として扱われます。
合成車両が通れると判定された経路は、包括申請に含まれるすべての車両に対して許可が下りる仕組みです。
合成車両が通行条件に与える影響
合成車両の諸元が実際の車両より重く・大きくなると、通行条件が厳しくなります。
たとえば実車両はB条件(徐行)で通れる経路でも、合成車両の軸重が重くなったことでC条件(誘導車必要)になることがあります。C条件・D条件が付くと夜間走行や誘導車の配置が義務になり、運行コストに直接影響します。通行条件A〜Dの判定基準も確認しておきます。
個別に申請すれば軽い条件で通れる車両でも、包括申請で重い車両と一緒にまとめると全台に厳しい条件が付きます。通行条件を軽くしたい車両は単独申請の方が有利です。
合成車両として審査された結果、許可証の「総重量」や「積載物重量」が自社の車検証の数値より大きく記載されることがあります。「許可証に30tと書いてあるから30t積んでいい」という判断は誤りです。
合成値は道路を審査するための仮想数値であり、車検証の最大積載量を超えて積むと過積載(道路交通法違反)になります。特車申請と過積載の違いで両者の判定基準の差を確認できます。許可証の記載に関わらず、積載は自車の車検証の範囲内に収めます。
包括申請の5つの条件
包括申請を使うには原則として次の5条件をすべて満たす必要があります。
- 同一の車種(バン型・タンク型など、車種が一致していること)
- 同一の軸種(軸の本数・配置が同じであること)
- 同一の経路(通行する経路が完全に一致していること)
- 同一の貨物(積む荷物の種類が同じであること)
- 同一の許可期間(許可の有効期間が一致していること)
ただし「寸法のみが一般的制限値を超える場合(重量は制限値内)」に限り、軸種が異なる車両でも1件にまとめられる「複数軸種申請」という特例があります。様々な車種を1件にまとめて手数料を節約したい場合は、重量超過の有無を先に確認します。
差戻しになりやすい入力のパターン
包括申請での差戻し原因で多いのは次の点です。
代表車両の諸元ズレ:包括申請では1台目に登録した車両が自動的に「代表車両」に設定されます。申請書表紙の車両諸元は代表車両の車検証の数値と完全に一致している必要があります。複数台の車検証を見ながら入力しているうちに別の車の数値や合成値を表紙に書いてしまい差戻しになるミスが多いです。
ナンバーの打ち間違い・台数の不一致:数十台を入力するうちに「0(数字のゼロ)」と「O(アルファベットのオー)」を打ち間違えて車検証照合エラーになることが多いです。申請書表紙の台数と実際に登録した車両内訳の台数がずれていてもエラーになります。送信前に台数と全ナンバーを照合します。
車種区分の不一致:「タンク型」と「その他」を同じ申請にまとめようとするとエラーになります。システムが車種区分の違いを検出して受理しません。
合成車両の諸元が制限値を超える:個別の車両は制限値内でも、合成車両の諸元が制限値を超えると申請が通りません。特に軸重・隣接軸重は個体差で数十kg変わるため、ギリギリの諸元の車両が混在すると超過しやすいです。
また、すべての車両を入力し終えた後に画面上の「合成車両の表示」ボタンをクリックして確認画面を開かないと、最後の登録ボタンが押せない仕様になっています。「全部入力したのに先に進めない」というエラーの原因はほぼこの押し忘れです。
経路の不一致:往路と復路で別の経路を使う車両が一部だけ含まれている場合、経路が一致しない車両が混在してエラーになります。特車申請の差戻し原因で頻出パターンをまとめています。
包括申請が向いているケース・向いていないケース
向いているケース
- 同型式・同軸種のトラクタを複数台保有している
- 走る経路が固定されている(工場↔物流拠点など)
- 車両間の諸元の個体差が小さい
- 通行条件にこだわらず、許可が下りれば十分
向いていないケース
- 車両ごとに走る経路が異なる
- 通行条件をできるだけ軽くしたい(B条件にとどめたいなど)
- 諸元がギリギリで、合成すると制限値を超える可能性がある
- バラ積み貨物で減トン申請が必要な車両が含まれる
包括申請は台数割引や手続き簡略化のメリットがありますが、通行条件が厳しくなるデメリットもあります。単独申請との使い分けは特車申請の包括申請とはで整理しています。
まとめ
合成車両は「最も厳しい諸元の架空の車両」として審査されます。包括申請は手続きの効率化に有効ですが、通行条件が全台に適用されるため、条件を軽くしたい車両は単独申請を検討します。
差戻しを防ぐには、包括申請に含める車両の車種・軸種・経路・貨物・許可期間が一致していることを送信前に確認します。諸元に個体差がある場合は合成後の軸重が制限値を超えないかも送信前に見ておきます。
申請の組み方の判断や代行については、下記からご相談ください。
特車申請の制度・手続き・車種別対応の全体像は特殊車両通行許可申請ガイドで確認できます。
お問い合わせ方法
- お問い合わせフォーム
- 電話:03-6821-4578(年中無休 9:00〜19:00)
よくある質問
- Q包括申請すると通行条件が厳しくなることがありますか?
- A
あります。合成車両は各車軸の最大値を組み合わせるため、個別申請より重い諸元になります。個別ならB条件で通れる車両が、包括申請でC条件になるケースがあります。通行条件を軽くしたい車両は単独申請の方が有利です。
- Q異なる型式のトラクタを同じ包括申請にまとめられますか?
- A
車種・軸種が一致していればまとめられます。また「重量は制限値内で、寸法のみが超過している車両」であれば、軸種が異なる車両でも「複数軸種申請」として1件にまとめることができます。ただし合成車両の諸元が制限値を超えないかを確認します。
- Q包括申請に含めた車両を途中で1台追加できますか?
- A
変更申請で追加できます。追加する車両の諸元が既存の合成車両の諸元を超えない場合は軽微な変更申請として優先審査の対象になります。諸元が増える場合は通常の変更申請になります。
- Q包括申請と単独申請の手数料はどう違いますか?
- A
包括申請は台数にかかわらず「1申請」として扱われるため、手数料は1台分の計算になります。10台を個別申請すれば10台分かかる手数料が、包括申請なら1台分で済みます。手数料の計算方法は特車申請の手数料で整理しています。

