スタンション付きのセミトレーラをフラットトレーラ扱いで申請し、本来使えるはずの重量緩和を受けられなかった。この手の申請ミスは珍しくありません。
平成27年(2015年)に追加されたあおり型・スタンション型・船底型の3車種は、従来の特例5車種と合わせて「特例8車種」と呼ばれます。一般的制限値を大きく超えた申請が可能ですが、形状が似ているだけでは特例の対象になりません。「貨物の落下を防止するために十分な強度のあおり等や固縛装置を有している」という構造要件を満たした車両だけが対象です。
特例5車種(バン型・タンク型・幌枠型・コンテナ用・自動車運搬用)については、前編の記事「特例5車種|総重量36〜44t申請ができる連結車の条件と注意点」で解説しています。
平成27年に追加された3車種
平成27年以前、特例車種は5種類でした。ただし現場では、あおり付きトレーラでスクラップを運ぶ、スタンションを立てて鋼材を積む、といった輸送形態がすでに広く行われていました。制度が実態に追いついておらず、これらの車両は特例の対象外でした。
そこで平成27年、国交省は以下の3車種を特例車種に追加しました。
- ① あおり型セミトレーラ
- ② スタンション型セミトレーラ
- ③ 船底型セミトレーラ
3車種はいずれもセミトレーラです。フルトレーラは対象外になります。前編で解説した特例5車種と合わせて「特例8車種」と呼ばれます。

追加3車種の構造と申請時の確認ポイント
① あおり型セミトレーラ
荷台の周囲に、荷物の脱落を防ぐ「あおり(板状の囲い)」を備えたタイプです。ダンプトレーラもこの分類に入ります。主な積載物はスクラップ・石炭・土砂などのバラ積み貨物。
「あおりが付いていれば特例対象」ではありません。国交省の基準では「貨物の落下を防止するために十分な強度のあおり等を有していなければならない」と定められており、以下のケースは特例適用が認められません。
- あおりの高さが不十分
- 走行中に開く恐れがある固定状態
- 腐食・破損による強度不足
これらに該当する場合、通行許可は下りません。申請前にあおりの強度と固定状態を確認します。
② スタンション型セミトレーラ
荷台に支柱(スタンション)を備え、前方に「鳥居(前立・プロテクター)」を設置したタイプです。原木・鋼管・H形鋼・コンクリートパイルなど、長尺物の輸送に使われます。
スタンションがあるだけでは足りません。特例適用には2つの要件があります。
- 固縛装置の装備 — ロープやチェーンで貨物を確実に固定できる装置が必要です
- スタンションの強度 — 積載する貨物の重量に耐えられる構造であることが必要です
固縛装置の不備を見落として申請し、特例対象外と判断されるケースがあります。固縛装置の有無と状態は、車検証の備考欄または車両仕様書で確認してください。
③ 船底型セミトレーラ
荷台の中央部が船底のようにくぼんだ形状のトレーラです。大型コイル・重量のある円筒形機械・工作機械など、背が高く重量のある貨物の輸送に使われます。
通常のフラットトレーラで背の高い貨物を積むと、荷台高さ+貨物高さで3.8mを超えやすくなります。船底型はくぼみに貨物をはめ込む形になるため、全体の高さが下がり、トンネルや高架下を通行できるルートが広がります。
フラットトレーラで申請してから「高さ制限で経路が組めない」と気づくケースがあります。背の高い重量物であれば、まず船底型が使えるかどうかを確認します。
特例8車種の緩和基準一覧
特例8車種として認められると、道路の種類に応じて一般的制限値を超えた数値での走行が可能になります。
| 項目区分・条件 | 特例8車種の限度値 | 一般的制限値 |
|---|---|---|
| 長さ(全長) セミトレーラ連結車 | 17.0m〜18.0m ※1 リアオーバーハングによる | 12.0m |
| 長さ(全長) フルトレーラ連結車 | 21.0m | 12.0m |
| 総重量 高速自動車国道 | 最大 36t ※2 最遠軸距に応じて変動 | 20.0t |
| 総重量 重さ指定道路・未指定の一般道 | 最大 27t ※3 最遠軸距10m以上が条件 | 25.0t |
| 総重量 条件付き(2025年3月〜) | 最大 44t ※4 国際海上コンテナ車等の要件を満たす場合 | 20.0t |
| 高さ 高さ指定道路 | 4.1m | 3.8m |
| 軸重 原則(全軸) | 10.0t | 10.0t |
| 軸重 2軸駆動軸(認証トラクタ) | 11.5t ※5 3軸トラクタ・トレーラ側の軸は10.0tのまま | 10.0t |
※2 最遠軸距が長いほど上限が高くなる(最大36t)
※3 重さ指定道路に指定されていない一般道でも最大27tまで申請可能
※4 国際海上コンテナ車等の特定条件を満たす場合のみ。追加3車種すべてに適用されるわけではない
※5 2軸トラクタの駆動軸のみ対象。3軸トラクタの駆動軸およびトレーラ側の全軸は10.0t
総重量の緩和は道路区分によって上限が変わる
総重量の緩和は、通行する道路の種類で上限が異なります。
- 高速自動車国道:最遠軸距に応じて最大36tまで
- 重さ指定道路:最遠軸距10m以上で最大27tまで(一般車両の25tとは別枠)
- その他の道路(未指定の一般道):最遠軸距10m以上で最大27tまで申請可能
- 条件付き(2025年3月〜):国際海上コンテナ車等の要件を満たす場合は最大44tまで
見落とされやすいのが3つ目です。特例8車種は、重さ指定道路に指定されていない一般道であっても、最遠軸距が10m以上あれば最大27tまで申請できます。
高速や重さ指定道路を経由しないラストワンマイルでも、積載量を落とさずに対応できる点がこの制度の実質的な強みです。
「特例車種なら44tまでOK」と解釈して申請すると、道路管理者から差し戻しになります。44tは国際海上コンテナ車等に限定された条件付きの緩和で、追加3車種すべてに適用されるわけではありません。また、重さ指定道路でも27t緩和が適用されないケースがあるため、道路区分と条件は申請前に確認します。
高さの緩和は高さ指定道路が前提
一般的制限値は3.8mですが、道路管理者が指定した「高さ指定道路」では4.1mまでの通行が許可されます。コンテナ輸送や船底型による重量物輸送では、この30cmの差が経路選択を左右します。申請前に通行予定の道路が高さ指定道路かどうかを確認します。
駆動軸重11.5tへの緩和は「2軸トラクタ」限定
特例8車種を2軸トラクタで牽引する場合、一定の要件を満たすと駆動軸重が10tから11.5tに緩和されます。軸重・輪荷重・隣接軸重の各制限は総重量とは独立しているため、総重量が範囲内でも軸重でエラーになるケースがあります。
この緩和の対象は2軸トラクタの駆動軸のみです。「3軸トラクタ(ツーデフ)なら牽引力があるからもっと積めるはず」と思われがちですが、3軸トラクタの駆動軸はこの緩和の対象外です。
トレーラ側の各軸も通常通り10t以下のままで、11.5tの数値を入力するとシステムでエラーになります。認証トラクタの軸数と構造を確認したうえで数値を入力します。
全長を決める「リアオーバーハング」の測り方
・3.2m以上3.8m未満 → 全長17.5mまで許可
・3.8m以上4.2m以下 → 全長18.0mまで許可
※3.2m未満の場合、全長の上限は17.0mになります。現車で計測してから諸元表を作成してください。
緩和基準に出てくる「17.0m〜18.0m」という全長の幅は、車両のリアオーバーハング(後輪中心から車両後端までの距離)によって決まります。セミトレーラの場合、この距離が長いほど全長の緩和も大きくなります。
- 3.2m以上3.8m未満:全長17.5mまで許可
- 3.8m以上4.2m以下:全長18.0mまで許可
あおり型・スタンション型・船底型の申請では、このリアオーバーハングの数値を諸元表に正確に記載することで、より長い貨物に対応できる全長の許可を得られます。なおキャリアカーでは積載物のはみ出しを含めた計算が必要になるなど、車種ごとにルールが異なります。現車で計測してから諸元表を作成します。
申請前のチェックリスト
追加3車種として特例適用を受けるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
申請前に必ずチェック 実務チェックリスト
以下の条件をすべて満たす必要があります
あおり型セミトレーラ
- あおりに十分な強度があるか(腐食・破損がないか)
- あおりの高さは荷物の落下防止に十分か
- あおりは確実に固定できる構造か
- 固縛装置を備えているか
スタンション型セミトレーラ
- スタンションに十分な強度があるか
- 前方に鳥居(プロテクター)を備えているか
- 固縛装置(ロープ・チェーン等)を備えているか
- 長尺物を確実に固定できる構造か
船底型セミトレーラ
- 荷台中央部がくぼんでいる構造か
- くぼみの深さは積載物に対して十分か
- 荷物を確実に固定できる装置があるか
- 高さ指定道路を通行ルートに含めているか
すべての車種共通
- 車両の諸元表は最新のものか
- リアオーバーハングは正確に測定されているか
- 最遠軸距は正確に計算されているか
- 通行ルートは高さ指定道路・重さ指定道路を確認しているか
無許可で制限値を超えて走行した場合は、過積載ではなく特車違反として処理されます。100万円以下の罰金が原則ですが、2025年6月の法改正により悪質な違反には6箇月以下の拘禁刑(または30万円以下の罰金)が新設されました。法人にも同額が科される両罰規定があります。
まとめ
追加3車種(あおり型・スタンション型・船底型)は、平成27年に実務の実態に合わせて追加された特例車種です。前編の特例5車種と合わせて「特例8車種」と呼ばれ、総重量・高さ・駆動軸重・全長に緩和が適用されます。
車両の構造要件(十分な強度のあおり・固縛装置)を満たしていること、道路区分に応じた緩和上限(高速36t・重さ指定道路および未指定の一般道27t・条件付き最大44t)を把握していること。この2点が申請の前提条件です。総重量27tの緩和は未指定の一般道にも使え、駆動軸重の11.5t緩和は2軸トラクタの駆動軸に限られ、リアオーバーハングの計測値次第で全長の上限も変わります。
通行条件A〜Dは車両諸元と経路の組み合わせで決まるため、申請後に誘導車が必要になるケースもあります。申請前に諸元と経路を照らし合わせて確認します。
よくあるご質問(FAQ)
- Qあおり型として特例申請するために、あおりはどの程度の強度が必要ですか?
- A
国交省は「貨物の落下を防止するために十分な強度のあおり等を有していること」と定めていますが、具体的な数値基準は車両ごとの用途・積載貨物によって判断されます。腐食・破損・固定不良があると特例対象外と判断されます。申請前に車両の現状を確認し、必要に応じて整備してから申請します。
- Qスタンション型の「固縛装置」とは、具体的に何が必要ですか?
- A
ロープやチェーンなど、積載貨物を荷台に確実に固定できる装置が必要です。スタンションで横ずれを防ぐだけでは不十分で、縦方向・上方向への動きを防ぐ固縛機能が求められます。固縛装置の有無は審査の確認対象になるため、車検証の備考欄や車両仕様書で確認します。
- Q未指定の一般道でも特例8車種の重量緩和は使えますか?
- A
使えます。特例8車種は、重さ指定道路に指定されていない一般道でも、最遠軸距が10m以上あれば最大27tまで申請できます。高速道路・重さ指定道路だけで経路を組んでいる場合は見直しの余地があります。
- Q3軸トラクタで特例8車種を牽引する場合、駆動軸重の緩和は受けられますか?
- A
受けられません。駆動軸重10tから11.5tへの緩和は、認証を受けた2軸トラクタの駆動軸のみが対象です。3軸トラクタの駆動軸、およびトレーラ側の全軸は通常通り10t以下が適用されます。
- Qリアオーバーハングはどこから測りますか?
- A
後軸(最後尾の車軸)の中心から車両の後端までの水平距離です。3.2m以上3.8m未満であれば全長17.5mまで、3.8m以上4.2m以下であれば全長18.0mまで許可されます。計測値が変わると全長の上限も変わるため、諸元表への記載前に現車で正確に測ります。
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