古物商許可を持つ人が、無許可のほかの人に自分の名義を貸して古物営業をさせる行為を「名義貸し」といいます。
これは古物営業法で禁止されており、許可を貸した側・借りた側の双方が処罰対象となります。
「頼まれただけ」「軽い気持ちで」では済まないのが、この違反の怖いところです。
名義貸しとは?
名義貸しとは、古物商許可を持つ者(許可名義人)が、許可を持たない第三者に対して、自分の許可証や屋号を使わせて古物営業を行わせることを指します。
古物営業法では、古物商許可はあくまで「許可を受けた本人(または法人)」に対して与えられるものです。許可証は他人に譲渡したり貸し出したりすることができません。名義だけ借りて営業することは、制度の抜け穴を使う行為として厳しく規制されています。
なぜ名義貸しが問題なのか
古物商許可は、盗品の流通を防ぐための仕組みです。許可を受けた人間が責任を持って取引し、記録を残すことで、警察が「いつ・誰が・何を売ったか」を追えるようになっています。
私は現在も質屋の店長として勤務しており(業界歴10年以上)、警察からの盗品照会に協力することが実際にあります。「この品物、うちで買い取ってないか確認してほしい」という連絡です。記録があるから答えられる、というのが現場の実感です。
名義貸しが横行すると、この仕組みが機能しなくなります。実際に営業しているのが誰かわからなくなるので、盗品が持ち込まれても追いようがなくなるからです。
古物営業法の規定
古物営業法第31条に罰則が定められており、名義を貸した側には「3年以下の拘禁刑(旧:懲役刑)または100万円以下の罰金」が科されます。名義を借りて営業した側も、無許可営業として同じ罰則の対象です。貸した側だけが罰せられるわけではありません。
刑事罰に加えて、名義を貸した者は許可の取り消し処分を受ける可能性があります。取り消されると5年間は再申請できないので、実質的に廃業です。
なお、条文中の「拘禁刑」は、刑法改正によって令和7年(2025年)6月1日から「懲役」と「禁錮」が一本化された新しい名称です。馴染みのない言葉ですが、内容としては従来の懲役刑にあたります。
名義貸しに該当する典型パターン
名義貸しと疑われやすいケースには、いくつか共通した形があります。
① 古物取引の実務を行っているのは誰か?
許可証の名義人本人
→ 問題なし
別の第三者
→ ②へ
② その第三者は、許可名義人の従業員・使用人か?
はい(正規の雇用関係あり)
→ 問題なし
いいえ(独立した第三者)
→ ③へ
③ 売上・利益は誰が管理しているか?
実務を行う第三者が管理
→ 名義貸しの可能性が高い
名義人が管理(手数料を渡す)
→ 実態を確認する必要あり
⚠️ 名義貸しと認定された場合:双方が古物営業法違反(3年以下の懲役または100万円以下の罰金)
パターン①:フリマ・ネット販売の代行
「自分の古物商許可を使っていいから、代わりにネットで売ってほしい」というケースです。許可証の名義人が実務を行わず、別の人間が出品・販売・入金管理をすべて担う場合は名義貸しに該当します。
パターン②:店舗の「間借り」営業
許可を持つ店舗の一角を、無許可の第三者が使って独立した形で買取・販売を行うケースです。「テナントとして入っているだけ」という言い訳は通りません。実態として古物営業を行っているかどうかが判断基準です。
パターン③:法人許可を個人に使わせる
法人として取得した古物商許可を、従業員でも役員でもない知人や親族に使わせるケースです。法人の許可はあくまでその法人の営業のためのものです。
パターン④:「手数料」を受け取る形での貸し出し
「名義を貸す代わりに月〇万円もらう」という契約です。お金が動いていると、「故意にやった」とみなされやすく、悪質なケースとして扱われます。
注意点
「頼まれたから」は通じない
気心の知れた相手に頼まれると断りにくいのはわかります。ただ、依頼を受けて名義を貸した時点で、理由に関係なく違法行為になります。
「ネット販売だからバレない」は危険
警察は古物市場や盗品情報から不審な取引をさかのぼって調査します。オンライン取引だからといって追跡されないわけではありません。
取り消されたら5年間は再申請できない
許可が取り消されると、5年間は再申請できません。長年かけて築いた事業が一瞬で終わります。どんな事情があっても、名義を貸すことだけは避けてください。
よくある質問(FAQ)
- Q友人に古物商許可証を「見せるだけ」なら問題ありませんか?
- A
許可証を見せること自体は問題ありませんが、その友人が許可証を使って実際に古物営業を行えば名義貸しになります。見せた側も「知っていた」と判断されれば処罰対象となる可能性があります。
- Q家族(配偶者・子ども)に名義を使わせることはできますか?
- A
家族であっても、正規の雇用関係や役員関係がなければ名義貸しに該当します。家族が古物営業を行う場合は、家族自身が許可を取得するか、法人を設立して法人として許可を取得することが正しい方法です。
- Q複数の店舗を持ちたい場合はどうすればいいですか?
- A
同じ許可名義人(法人または個人)が複数の営業所を運営する場合は、各営業所を届け出ることで対応できます。別の人間に営業させる必要はありません。詳しくは管轄の警察署または行政書士にご相談ください。
- QEC(ネット販売)の運営代行を外部委託したら名義貸しになりますか?
- A
単純な「出品作業の代行」であれば問題ありません。ただし、買取判断・価格設定・入金管理など、営業の実質的な部分を外部が担っている場合は名義貸しと判断されるリスクがあります。「どこまで任せているか」を一度整理してみてください。グレーゾーンだと感じたら、早めに確認しておくことをお勧めします。
まとめ
名義貸しは、貸した側・借りた側の両方が古物営業法違反となります。「頼まれたから」「家族だから」「バレないだろう」では済まされません。
発覚すれば許可取り消し、5年間の再申請禁止という結果が待っています。これは事実上の廃業です。
古物商許可は「名義だけ取ればOK」というものではなく、許可を受けた本人が責任を持って営業することが大前提です。
お困りの際は当事務所へ
古物商許可の取得は、必要書類の準備から警察署への申請まで、手続きが複雑です。また、「メルカリでの転売に許可は必要か」「開業後の届出は何が必要か」など、判断に迷う場面も多いです。
当事務所では、古物買取の現場で10年以上の経験を持つ行政書士が、書類作成から許可取得までサポートいたします。「自分のケースで許可が必要か確認したい」「申請が複雑で困っている」といった場合は、お気軽にご相談ください。
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執筆者プロフィール
手島宏典 行政書士・現役質屋店長
業界歴10年以上。大手買取店FC3年経営。行政書士手島宏典事務所
東京都葛飾区亀有3丁目27-30 Tビル1階
TEL:03-6821-4578(平日 9:00〜19:00)



