お客さまの自宅へ出向いて中古品を買い取り、再販売する出張買取は、店舗がなくても古物営業にあたります。開業には古物商許可が必要です。許可証の行商欄(営業所の外で古物を扱うかどうかを示す項目)も「行商する」にしておきます。
一般の消費者から自宅で買い取る取引は、原則として特定商取引法の「訪問購入」の対象です。古物商許可とは別に、消費者を守るための決まりが加わります。
出張買取にも古物商許可がいる
中古のブランド品や時計、貴金属、衣類などを一般の方から買い取って再販売するなら、店舗の有無にかかわらず古物商許可が必要です。まず個人か法人かで営業する名義を決めてから申請しましょう。
来店用の店舗は構えなくてもかまいません。自宅を営業所として申請し、そこを拠点に出張に出る形がとれます。営業所を設けるなら、営業所ごとに管理者を置き、見やすい場所に古物商の標識を掲げます。
賃貸の部屋を営業所にするなら、営業所の要件に加えて、賃貸借契約や管理規約で事業に使えるかも調べておきましょう。警察署から使えることを示す資料を求められたときは、大家さんや管理会社の使用承諾書を用意します。
営業所を置かずに申請する場合、申請先は住所・居所を管轄する警察署です。台帳の置き場所なども含めた進め方は公式の案内に明示がないため、事前に警察署へ相談してください。
行商の手続きと現場のルール
出張買取では、許可証の行商欄、現場で持つ証明書、買い取れる場所に、店頭買取とは違う決まりがあります。
許可証を「行商する」にする
新規申請なら、申請書の行商欄で「行商する」を選びましょう。すでに「行商しない」の許可証を持っているなら、変更届が必要です。変更の日から14日以内に届け出て、許可証の書換え(東京都の手数料は1,500円)を受けます。
「行商しない」の許可証のまま出張に出ることは避け、始める時期も含めて管轄の警察署に相談してから手続きを進めてください。
許可証と行商従業者証を持って出る
古物商本人は許可証を、従業員や代理人は行商従業者証を持って現場に出ます。取引相手から求められたら、その場での提示が必要です。社員証や名刺では代わりになりません。
買い取れる場所は決まっている
古物商以外の人から買い受けるとき、品物を受け取れるのは自分の営業所か、取引相手の住所・居所(単身赴任先のように住民票とは別に実際に住んでいる場所)です。お客さまの希望でも、近くの駐車場で待ち合わせて受け取ると、この範囲から外れます。
催事場などに一定期間ブースを出して買い取るなら、営業日の3日前までに仮設店舗の届出を出すことになります。
本人確認と18歳未満の制限
対面の取引でも、相手方の住所・氏名・職業・年齢を法令の方法に沿って確認し、取引の内容を古物台帳に記録します。対価の総額が1万円未満の取引は、原則として本人確認と記録が免除されます。バイク・原付とその部品(ねじ・ボルトなどの汎用品を除く)、ゲームソフト、CD・DVDなど、書籍、エアコンの室外機、電気温水機器のヒートポンプ、電線、金属製グレーチングは、1万円未満でも対象です。
東京都では、18歳未満からの買取りを青少年健全育成条例が原則として禁じています。例外は、保護者の委託を受けているとき、保護者が同行しているとき、保護者の同意を得ているときの3つです。
許可申請と
出張買取を始めると決めた時点で、新規の許可申請か、今の許可証の変更届のどちらかを選ぶことになります。どちらの手続きになるかの判断も含めて、当事務所へご相談ください。
訪問購入と8日間のクーリングオフ
一般の消費者の自宅を訪ねて物品を買い取る取引は、原則として特定商取引法の「訪問購入」にあたります。古物営業法とは別に、勧誘の仕方や契約書面、クーリングオフの決まりを守ることになります。 <!– 図解候補:受付から転売までの流れ(受付→勧誘→書面交付→8日間→引渡し・転売)と、古物営業法・特定商取引法がかかる場面 –>
対象外になる品物と取引
自動車(二輪車を除く)、持ち運びが難しい家電、家具、書籍、CD・DVD・ゲームソフトなどは、訪問購入の対象外です。家具とブランドバッグを同じ日に買い取るなら、バッグにはこのルールがかかります。
売る側が営業のために売る取引も対象外です。御用聞きや常連との取引、引越しで家を出るときにお客さまから持ちかけられた取引も、勧誘前の名乗りなど一部を除いて規制の多くが外れます。対象外でも、古物営業法の許可や本人確認は省けません。
査定の依頼と買取りの勧誘は違う
勧誘を頼んでいない人への勧誘は禁止されています。査定だけを頼まれた家で売却を勧めることや、衣類の買取りで呼ばれた家で貴金属がないかを尋ねることも、この禁止の対象です。
勧誘の前には事業者名や目的、買い取りたい品物の種類を伝え、相手の意向を先に聞きます。受付の段階で、見てほしい品物と、査定だけか買取りの案内も望むかを把握しておきましょう。
買取明細とは別に法定の書面がいる
契約の申込みを受けたときや契約を結んだときは、法律が定める書面を渡します。品物の種類や特徴、買取価格、支払いと引渡しの時期・方法、クーリングオフと引渡しを拒める権利、事業者と担当者の情報などを書きます。
クーリングオフと引渡し拒絶の説明は赤枠に赤字、文字は8ポイント以上という決まりです。「腕時計 50,000円」とだけ書いた買取明細では足りないため、書式は開業前に用意してください。
8日間は書面を受け取った日から数える
法定の書面を受け取った日から8日以内なら、お客さまはクーリングオフで契約を解除できます。数え始めは契約の日ではなく書面を渡した日で、書面を渡していない、または内容に不備があると期間が始まりません。事実と違う説明や威迫によってお客さまがクーリングオフしなかった場合も、8日を過ぎてから解除を受けることになります。
期間中の引渡しと転売
期間中、お客さまは品物の引渡しを拒めます。その場で品物を受け取るなら、引渡しを拒めることを先に伝えてください。
8日間のうちに品物を第三者へ引き渡すこともでき、そのときは元の売主と引渡し先の両方に通知します。その後クーリングオフされると、引渡し先が事情を知らず落ち度もなかった場合(善意かつ無過失)を除き、効果は引渡し先にも及びます。期間中の品物は通常の在庫と分けて置き、転売したら引渡し先と日付を控えておきましょう。
不用品回収は別の許可になる
値段がつかない品物を、処分代を受け取って引き取るサービスは、古物商許可の範囲に入りません。家庭の不用品を事業として集めるには、廃棄物処理法による市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が関わります。
「100円で買い取ったことにする」と形だけ変えても、廃棄物の規制から外れるとは限りません。買取りと回収の両方を手がけるなら、必要な許可を分けて準備してください。
よくある質問
- 出張先で盗品かもしれないと感じたらどうしますか?
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その場で買取りを進めず、警察へ申告してください。古物営業法は、不正品の疑いがあるときの申告を古物商に義務づけています。
- 一度断られたお客さまから、後日また連絡がありました。訪問できますか?
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改めて依頼があれば、その依頼の範囲で訪問できます。一度断られた契約を、事業者の側から後日あらためて勧誘することは禁止されています。
- 法定の書面は、タブレットやメールで渡せますか?
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紙で渡すのが原則です。お客さまの承諾を得た場合に限って電子データでの提供が認められ、承諾の取り方や表示の方法にも決まりがあります。開業時は紙の書式を用意し、電子での提供は手順を整えてから加えましょう。
- クーリングオフされたら、支払った代金はどうなりますか?
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お客さまは受け取った代金を返し、事業者は品物を自分の負担で返します。代金に利息をつけて返してもらうことはできず、違約金や損害賠償も請求できない決まりです。
- 個人で始めた出張買取を法人にしたら、許可はそのまま使えますか?
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そのままでは使えません。個人の許可は法人に引き継げないため、法人として新たに申請することになります。
まとめ
出張買取は店舗がなくても古物営業にあたり、古物商許可を取ることになります。許可証の行商欄は「行商する」にし、現場では許可証や行商従業者証を携帯しましょう。品物を受け取れる場所の制限に加えて、本人確認と古物台帳への記録、18歳未満からの買取制限も守ります。
自宅での買取りが訪問購入にあたるなら、査定を超えた勧誘の禁止、法定の書面、書面を渡した日から8日間のクーリングオフ、期間中の引渡しと転売のルールまで、開業前の準備に入れておいてください。値段がつかない品物の引取りは廃棄物の制度で判断されるため、買取りとは分けて手続きを考えましょう。
参考資料・公式情報
本記事は、以下の公的機関・法令の情報を参考に作成しています。
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