スタッフを出張買取に出し始めるとき、「何を携帯させればいいか」は意外と見落としやすいところです。社員証・名刺・身分証明書では代わりにならず、法律が求める専用の書類を古物商自身が作って渡す必要があります。
「とりあえず現場に出してから後で準備しよう」はできません。行商従業者証を携帯させずに従業員を出張買取に使った時点で古物営業法違反です。不携帯は10万円以下の罰金の対象で、罰金刑は前科になります。さらに許可業者には行政処分(営業停止など)が重なることもあります。
作り方・記載事項・誰が携帯するのか・退職時の対応を順に見ていきます。
行商従業者証とは
行商従業者証とは、古物商が従業員に行商をさせる際に携帯させなければならない証明書です。様式は別記様式第12号で指定されています。
「行商」とは、営業所以外の場所で古物の買取・販売・交換を行う営業活動のことです。出張買取のほか、外での買取業務全般が対象になります。
なぜ社員証では代替できないのか

社員証は会社が自由に作れるものなので、許可番号や公安委員会の名称など、法律が求める項目が入っていることはまずありません。「この人は許可を受けた古物商のスタッフです」と証明するには、それ専用の書類が必要です。
出張買取にまつわる書面交付義務やクーリングオフについては、出張買取と古物営業法・特定商取引法で取り上げています。
行商従業者証の記載事項
別記様式第12号で定められた記載事項と規格は以下のとおりです。
表(おもて面)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | 行商をさせる従業員の氏名 |
| 生年月日 | 同従業員の生年月日 |
| 顔写真 | 縦2.5cm以上・横2cm以上 |
裏面
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 古物商の氏名又は名称 | 許可を受けた古物商の氏名・屋号・法人名 |
| 古物商の住所又は居所 | 許可証に記載された住所(法人は法人住所。営業所の住所ではない) |
| 許可番号 | 公安委員会名(例:東京都公安委員会)と許可番号 |
| 主として取り扱う古物の区分 | 届け出ている主品目(例:時計・宝飾品) |
規格
- サイズ:縦5.5cm・横8.5cm(クレジットカードより一回り小さいサイズ)
- 材質:プラスチック、またはこれと同程度の耐久性を持つもの
法人が作る場合の注意点
法人の場合、「古物商の氏名又は名称」欄には法人の正式名称を記載します。「住所又は居所」欄も営業所の住所ではなく法人住所(登記上の住所)です。ここを間違えている業者は少なくないので、許可証と見比べながら確認してください。
様式は各都道府県警察のウェブサイトに掲載されています。東京都の場合は警視庁のページに載っています。
行商従業者証の記載内容(別記様式第12号)
縦2.5cm
横2cm
以上
※法人は法人住所
📋 根拠:古物営業法第11条第2項・古物営業法施行規則第10条・別記様式第12号
誰が携帯するのか
行商従業者証が必要かどうかの判断フロー
まず古物商許可の取得が必要
「行商する」に変更届を提出してから
行商従業者証は不要
1人1枚・様式第12号で作成
従業員が行商する場合 → 行商従業者証
古物商(許可証の名義人)に雇用されている従業員が行商をする場合は、行商従業者証の携帯が必要です。名義人本人が現場に出ない場合でも、従業員1人ひとりに1枚ずつ作成します。
古物商本人が行商する場合 → 許可証
許可証の名義人が自分で行商する場合は、古物商許可証を携帯します。行商従業者証は不要です。
個人事業主が1人でやっている場合
個人事業主が1人で出張買取をするケースでは、許可証の名義人と実際に動く人が同じなので、行商従業者証ではなく許可証の携帯になります。スタッフを雇い始めたタイミングで行商従業者証が必要になります。
行商の届出を先に確認する
行商従業者証を作る前に、自分の許可が「行商をする」で取れているかを確認してください。「行商をしない」で取得している場合は、出張買取を始める前に変更届が必要です。変更届の手続き(14日以内)に手順をまとめています。
変更届を出す前に従業員を現場に出すと、行商従業者証を用意していても許可の要件を満たしていないことになります。
行商従業者証の作成手続き
行商従業者証は、申請して発行してもらうものではありません。古物商(雇用主)が自分で作成するものです。警察署への届出は不要ですが、従業員ごとに1枚ずつ必要です。
作成時に気をつけるのは2点です。
- 別記様式第12号の規格(サイズ・材質)に合わせること
- 許可証番号と公安委員会名を正確に書くこと
従業員の氏名も住民票と一致するよう確認してください。現場で確認されたときに「これ、本人?」となると、取引が止まる原因になります。
提示のタイミング
行商従業者証は、取引の相手方から請求があったときに提示しなければなりません。
実際には、訪問時に名前と所属先を名乗るタイミングで一緒に見せることが多いです。法律上は「請求があったとき」で足りますが、最初から出すほうが相手に安心してもらえます。押し買い業者との違いを示す意味でも差別化になるので、習慣にしておくといいでしょう。
従業員の変更・退職時の対応
退職した場合
退職した従業員が持っていた行商従業者証は、その場で回収して廃棄します。名前と許可番号が入った書類をそのまま持ち帰られると、悪用される可能性があります。退職手続きのチェックリストに「行商従業者証の回収」を入れておくと、抜けを防げます。
氏名・住所が変わった場合
氏名が変わった場合(結婚による改姓など)は、旧姓で作成した行商従業者証は正確でなくなるため、新しい氏名で作り直します。
許可番号が変わった場合
営業所の変更などで古物商許可証が新しくなり、許可番号が変わった場合も、行商従業者証を全員分作り直す必要があります。番号が古いままだと、現場で確認されたときに説明がつきません。
まとめ
行商従業者証は警察から発行されるものではなく、古物商自身が別記様式第12号に従って作るものです。本人が現場に出るなら許可証だけで足りますが、スタッフを送り出すなら1人1枚必ず用意します。
退職・改姓・許可番号の変更があればそのつど作り直しが必要です。書類があればいいのではなく、中身が今の状態と一致しているかどうかが大事です。
古物商許可の取得からその後の義務まで全体の流れは、取得後にやること全体像にまとめています。
お困りの際は当事務所へ
古物商許可の取得は、必要書類の準備から警察署への申請まで、手続きが複雑です。
当事務所では、古物買取の現場で10年以上の経験を持つ行政書士が、書類作成から許可取得までサポートいたします。
申請代行 11,000円〜(税込)/まずはお気軽にご相談ください
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よくある質問
- 行商従業者証は購入するものですか、自分で作るものですか?
-
自分で作るものです。別記様式第12号に従って古物商(雇用主)が作成します。警察から発行されるものではありません。東京都の場合は警視庁のウェブサイトで様式を確認できます。他の都道府県の方は管轄警察署のウェブサイトを確認してください。
- 複数の従業員を出張買取に使う場合、1枚で兼用できますか?
-
できません。行商従業者証は従業員1人ひとりに1枚ずつ作成します。氏名が記載されているため、他の人が使い回すことはできません。
- アルバイトや業務委託の人を出張買取に使う場合も必要ですか?
-
雇用形態にかかわらず、その古物商のもとで行商をさせる場合は行商従業者証が必要です。アルバイトや業務委託であっても例外はありません。ただし業務委託については実態が「従業員」かどうかの判断が難しいケースもあるため、不明な場合は管轄の警察署に確認してください。
- 行商従業者証を携帯していなかった場合の罰則は?
-
10万円以下の罰金の対象です。罰金刑は前科になるため、行政処分とは性質が異なります。悪質と判断された場合は許可業者への行政処分(営業停止など)が重なることもあります。「知らなかった」が通る余地はほとんどないため、採用・現場投入の段階で必ず準備してください。
- 許可証を持っている本人が出張買取に行く場合、行商従業者証は必要ですか?
-
不要です。古物商本人が行商する場合は、古物商許可証の携帯が義務です。行商従業者証が必要になるのは、許可証の名義人以外の人(従業員)を現場に出す場合です。
執筆者プロフィール
手島宏典 行政書士・現役質屋店長
業界歴10年以上。大手買取店FC3年経営。
行政書士手島宏典事務所
東京都葛飾区亀有3丁目27-30 Tビル1階
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