「古物商許可が取れた。で、次は何をすればいい?」
申請の手続きについてはネット上にたくさんの情報がありますが、許可が下りた後にやるべきことをまとめた情報は少ないです。プレートの準備、台帳の用意、届出の提出。ひとつずつ調べながら進めるのは手間がかかります。
この記事では、許可取得後にやるべきことを「営業開始前」「営業中」「変更時」の3段階に分けて整理しました。各項目の詳しい手順は個別の記事にまとめているので、この記事で全体を把握してから、気になるところを読み進めてもらえればと思います。
許可取得後にやること一覧
許可取得直後(営業開始前)
- 古物商プレートの作成・掲示
- 古物台帳(取引記録帳簿)の準備
- URL届出(ネット販売する場合)
- 管理者の選任確認
営業開始後(日常業務)
- 本人確認の実施
- 古物台帳への取引記録
- 不正品の申告義務
- 未成年からの買取制限の遵守
変更があったとき
- 変更届の提出(住所・役員・品目など)
- 他府県への営業所追加の届出
- 廃業時の許可証返納
それぞれ、順番に見ていきます。
許可取得直後にやること(営業開始前)

許可証を受け取ったら、まずは営業を始める前の準備から。ここで挙げる4つは、どれも営業開始前に終わらせておきたい項目です。
古物商プレートの作成・掲示
古物商は、営業所の見やすい場所にプレート(標識)を掲げなければなりません。許可証と一緒にもらえるわけではなく、自分で手配して用意するものです。
ありがちな失敗が、記載内容を間違えてプレートを作り直すパターン。個人事業主・法人・屋号ありの場合で書く内容が違うので、発注前に古物商プレートの記載ルールと個人・法人・屋号ごとの違いを見ておいてください。発注から届くまで数日〜1週間かかるので、許可証を受け取ったら早めに動くのが吉です。
古物台帳の準備
取引のたびに内容を帳簿(古物台帳)に記録する。これは古物営業法で決められたルールです。営業が始まってから「台帳どうしよう」と慌てるのはよくある話なので、フォーマットは先に決めておいたほうがいいです。
手書きでもExcelでも問題ありません。私の経験上、Excel管理のほうが後から検索しやすくて便利です。記載すべき6項目やダウンロードできるテンプレートは古物台帳(帳簿)の書き方と記載事項・保存期間にまとめています。
一つだけ先にお伝えしておくと、台帳は「後でまとめて書こう」とすると確実にたまってしまします。面倒でも、取引のたびにその場で書く。この習慣を最初からつけておくと後で楽です。
URL届出(ネット販売する場合)
メルカリ・ヤフオク・BASE・自社サイトなど、ネット上で古物を売る予定がある方はURL届出が必要です。届出書の宛先は公安委員会ですが、実際の提出窓口は営業所を管轄する警察署(生活安全課や防犯係)です。店舗販売のみであれば不要ですが、「今はやらないけど、いずれネットでも売るかも」という段階でも、販売を始める前に届出を済ませておくと安心です。
独自ドメインで販売サイトを運営する場合は、Whois情報の疎明資料も準備することになります。取り方に少しコツがあるので、URL届出の手順とWhois疎明資料の取り方を見ながら進めるのがスムーズです。
管理者の選任確認
意外と見落としがちなのが、管理者の確認です。許可申請のときに管理者を届け出ているはずですが、その人が実際に営業所の管理業務を行える体制になっているか、一度チェックしておきましょう。
個人事業主で自分一人の場合は自分が管理者になるだけなので単純ですが、法人で営業所が複数あるケースでは、営業所ごとに管理者が必要になります。代表者との兼任にも条件があるので、該当する方は古物商の「管理者」の役割と代表者との違い・兼任ルールを参考にしてみてください。
営業開始後にやること(日常業務の義務)
ここからは、実際に営業を始めた後の話です。許可を取って終わりではなく、古物商には日々の取引で守るべきルールがいくつかあります。
三大義務を押さえておく
古物商の義務で一番大切なのが「三大義務」と呼ばれる3つのルール。「本人確認」「不正品の申告」「取引の記録」です。
どれかひとつでも怠れば、最悪の場合は営業停止や許可取消です。古物商の三大義務と違反時の罰則で具体的なペナルティもまとめているので、営業を始める前に把握しておいてください。
本人確認の実施
古物を買い取るときは、相手の身元を確認しなければなりません。ただ、対面・宅配・フリマアプリ経由と、取引の形態ごとにやり方が違います。ここがわかりにくいと感じる方は多いです。
特に多い誤解が、宅配買取での本人確認。「身分証のコピーを送ってもらえばOKでしょ?」と思っている方がいますが、それだけでは足りません。法律で認められた方法は3つあり、それぞれ手順が違います。宅配買取の本人確認で認められた3つの方法で自分の業態に合うものを選んでみてください。
メルカリやラクマで商品を仕入れて転売するケースでは、また別の考え方が必要です。フリマアプリ仕入れ時の本人確認ルールでケースごとに整理しているので、せどり・転売をやる方は仕入れを始める前に確認しておくのが無難です。
古物台帳への記録
買取や販売をするたびに、古物台帳へ記録を残します。記録する項目は品目・数量・特徴・相手方の住所氏名・確認方法・取引日の6つ。前のセクションでも書きましたが、「その場で書く」を徹底するのがコツです。
具体的な書き方のルールは古物台帳の書き方とExcelテンプレートでまとめています。
未成年からの買取制限
18歳未満から古物を買い取ることは、原則として禁止されています。
「保護者の同意書があれば大丈夫でしょ?」と思いがちですが、そう単純ではありません。都道府県の条例で、同意の有無にかかわらず買取そのものを禁止しているケースがあります。保護者同伴でも年齢確認を怠って条例違反になった事例は実際にあるので、未成年客の買取対応と年齢確認のルールを参考に、自店舗の対応方針を先に決めておいてください。
盗品への対応
盗品と知らずに買い取ってしまった場合でも、古物商は被害者に無償で返さなければならないことがあります。「知らなかった」では済まないのが古物営業法のルールです。
買取の現場では、「この品物、出所が怪しいな」と感じる場面に出会うことはよくあります。こういうケースでは、いくら利益が出そうでも仕入れを見送る判断が必要です。
警察から「品触れ」と呼ばれる盗品照会が届くこともあり、その場合は速やかに回答しなければなりません。仕入れ時にどこを見ればいいかは盗品を買い取った場合のリスクと対策でまとめているので、日頃の仕入れ判断に役立ててもらえればと思います。
変更があったときの届出

許可を取って終わりではなく、届出内容に変更が出たらその都度届出が必要です。「後で届出すればいいか」と放置して行政処分を受けるケースは珍しくないので、ここは意識しておいてほしい部分です。
変更届
引っ越して住所が変わった、役員が変わった、取扱品目を追加したい。こうした変更があったときは、変更届を出します。
ポイントは、届出期限が変更の種類によって違うこと。「事前届出(3日前まで)」「14日以内」「20日以内」の3パターンがあり、どれに該当するか間違えると期限切れになりかねません。古物商の変更届の種類・届出期限・提出先に一覧でまとめているので、変更が発生したタイミングで確認してみてください。
他府県への営業所追加
事業が順調に伸びて、別の都道府県にも営業所を出したくなった場合の話です。
以前は他府県に営業所を出すには許可の取り直しが必要でしたが、2020年4月の法改正で届出だけで済むようになりました。主たる営業所の管轄公安委員会に届出すれば、他の都道府県にも営業所を設置できます。届出の流れや必要書類は他府県に営業所を追加するときの届出方法を参考にしてください。
廃業・法人化時の許可証返納
古物商をやめるときは、10日以内に許可証を返納します。
注意したいのが法人化するケースです。個人事業主から法人になる場合、「許可もそのまま引き継げる」と思っている方がたまにいます。残念ながら引き継ぎはできません。個人の許可を返納して、法人として新規に許可を取り直す流れです。返納届の書き方や流れは古物商許可証の返納手続きガイドにまとめています。
知っておくべき注意点
ここまでの義務や届出とは少し毛色が違いますが、古物商として営業するなら知っておいたほうがいい2つのテーマです。
名義貸しの禁止
自分の古物商許可を他人に使わせる「名義貸し」は、古物営業法第9条違反です。罰則は3年以下の拘禁刑(旧:懲役刑)または100万円以下の罰金。無許可営業と並ぶ、古物営業法で最も重い刑事罰にあたります。許可を貸した側だけでなく、借りた側も無許可営業として同じ罰則の対象です。
「わざとやる人なんていないでしょ」と思うかもしれませんが、悪気なく違反になるパターンが意外とあります。家族に頼まれて許可証を貸す、法人の許可を退職した元社員が使い続けるなど。名義貸しの典型パターンと法的リスクで具体例を挙げているので、「自分は関係ない」と思っている方ほど一度確認してみてください。
インボイス制度への対応
2023年10月に始まったインボイス制度は、古物商の仕入れにも影響があります。
ただ、古物商には「古物商特例」、質屋には「質屋特例」という制度があり、これを使えばインボイスを発行できない個人からの仕入れでも仕入税額控除が受けられます。個人からの仕入れが多い古物商にとっては、かなり助かる制度です。
ただし、帳簿への書き方に細かいルールがあるので、使い方を間違えると特例が適用されません。古物商・質屋のインボイス特例の仕組みと帳簿記載の注意点を確認しておくと、確定申告のときに困らずに済みます。
よくある質問
- Q許可証を受け取ったらすぐに営業を始められますか?
- A
法律上は、許可が下りた時点で営業できます。ただ、プレートの掲示や台帳の準備を済ませてから始めたほうが無難です。プレートは発注から届くまで数日〜1週間かかるので、許可証を受け取ったらすぐ手配するのがおすすめです。
- Q古物商プレートはどこで作れますか?
- A
防犯協会で購入するか、ネットの看板業者に発注するかの2択が一般的です。ネット発注のほうが安く済むことが多いですが、サイズ(縦8cm×横16cm)と記載事項は古物営業法施行規則で決まっているので、規格を満たしているか確認してから注文してください。
- Qネット販売のURL届出を忘れていました。後から届出できますか?
- A
届出は後からでもできます。ただし、届出をしないままネット販売を続けていた期間は古物営業法違反にあたります。気づいた時点で、営業所を管轄する警察署の生活安全課へ届出してください。
- Q変更届を出し忘れるとどうなりますか?
- A
行政処分(指示・営業停止)の対象になる可能性があります。悪質と判断された場合は10万円以下の罰金が科されることもあるので、変更が発生したら早めに届出を出してください。
- Q取得後の届出や義務について相談できますか?
- A
当事務所ではLINEでご相談を受け付けています。「この届出が必要かわからない」「変更届の書き方を教えてほしい」といったご質問も対応しているので、お気軽にご連絡下さい。
まとめ
許可を取った直後にまずやるのは、「プレートの掲示」「古物台帳の準備」「URL届出(ネット販売する場合)」の3つ。ここを先に済ませてから営業を始めてください。
営業開始後は、本人確認・不正品の申告・取引記録の「三大義務」が日常業務のベースになります。毎日の取引のなかで当たり前にできるよう、早い段階で業務フローに組み込んでおくと楽です。
住所変更や役員変更があった場合は、届出期限内に対応を。後回しにすると行政処分のリスクがあるので、変更が発生したら早めに動いてください。
お困りの際は当事務所へ
古物商許可の取得は、必要書類の準備から警察署への申請まで、手続きが複雑です。また、「メルカリでの転売に許可は必要か」「開業後の届出は何が必要か」など、判断に迷う場面も多いです。
当事務所では、古物買取の現場で10年以上の経験を持つ行政書士が、書類作成から許可取得までサポートいたします。「自分のケースで許可が必要か確認したい」「申請が複雑で困っている」といった場合は、お気軽にご相談ください。
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執筆者プロフィール
手島宏典 行政書士・現役質屋店長
業界歴10年以上。大手買取店FC3年経営。
行政書士手島宏典事務所
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