建設業者に産廃収集運搬業許可は必要?元請・下請・自社運搬の違い

工事現場から出た廃材を処分場へ運ぶとき、同じ自社トラックを使っていても、元請か下請かで産廃収集運搬業許可の扱いは変わります。

建設工事では、発注者から直接工事を請け負った元請業者が排出事業者になります。元請が自ら運ぶなら許可は要りません。一方、下請が運ぶときは許可が必要です。ただし、一定の小規模工事には、後述する限定的な特例があります。

建設業許可を持っていることや、工事代金に処分費が含まれていることは、この区分には影響しません。この記事では、東京都知事の積替え保管なしの許可を前提に、実際の工事場面へ当てはめて解説します。

最初に押さえる3つの基準
  • 発注者から直接工事を請け負った会社が元請業者
  • 元請業者が自ら運ぶなら自社運搬
  • 下請業者が運ぶなら、特例を除き産廃収集運搬業許可の対象
目次

建設廃棄物の排出事業者は元請

建設工事が複数の請負関係で行われるときは、発注者から直接工事を請け負った元請業者が、廃棄物処理法上の排出事業者になります。

実際に解体や撤去を担当した会社は、排出事業者ではありません。一次下請や二次下請が現場作業のすべてを受け持っていても、処理責任を負うのは元請業者です。

工事の立場廃棄物処理法上の扱い
発注者から直接受注した会社元請業者・排出事業者
元請業者から受注した会社下請業者
一次下請から受注した会社二次下請業者
工事を発注した施主工事の注文者

工事の規模や業種は問いません。内装会社が店舗オーナーから改修工事を直接受注すれば、その内装会社が元請業者です。

一方、同じ内装会社でも、ゼネコンや工務店から仕事を受けた現場では下請業者になります。会社単位ではなく、工事ごとの契約関係で立場が決まります。

一人親方が直接受注したとき

一人親方であっても、施主から直接工事を請け負えば元請業者です。法人か個人事業主かは、排出事業者の判断に影響しません。

反対に、工務店から内装撤去だけを請け負った一人親方は下請業者です。工事で出た廃材を自分の車で持ち帰れば、元請業者の産業廃棄物を運んでいることになります。

元請業者による自社運搬

元請業者が、その工事から生じた産業廃棄物を自社の車両で処分場へ運ぶのは、自社運搬です。

自ら排出した産業廃棄物を運ぶため、産業廃棄物収集運搬業許可を取る必要はありません。

ただし、免除されるのは許可の取得だけです。飛散や流出を防ぐ措置、車両表示、書類の携行など、産業廃棄物の運搬基準は自社運搬にも適用されます。

自社運搬でも守る運搬基準

  • 廃棄物が飛散・流出しない車両や容器を使う
  • 車両の両側面に所定の表示を行う
  • 排出事業者名や廃棄物の種類などを記した書面を携行する
  • 処分委託契約を結んだ処分業者の施設へ運ぶ
  • 処分を委託する場合は、処分業者への引渡し時にマニフェストを交付する

運搬車両には「産業廃棄物収集運搬車」と事業者名を表示します。自社運搬では収集運搬業の許可番号がないため、許可番号の表示は不要です。

別の会社の現場から運ぶとき

自社の車両を使っていても、積んでいる廃棄物が他社のものであれば自社運搬にはなりません。

「自社のトラックだから許可は要らない」という考え方ではなく、誰が排出事業者なのかを基準にします。

下請業者による運搬

下請業者が、元請業者の工事現場から産業廃棄物を運び出せば、他人の産業廃棄物の運搬に当たります。

そのため、下請業者が運搬を担うには、原則として産業廃棄物収集運搬業許可を取得し、元請業者と書面による運搬委託契約を結ばなければなりません。

関係者主な役割
元請業者排出事業者として処理全体を管理
収集運搬業者委託契約に基づいて運搬
処分業者委託契約に基づいて中間処理・最終処分
下請業者分別など元請の処理方針に従う

下請業者が収集運搬業許可を持っている場合は、下請工事契約とは別に、元請業者との間で産業廃棄物の運搬委託契約を交わします。

処分業者との契約やマニフェストの交付は、排出事業者である元請業者が行います。廃棄物処理を工事代金に含めて下請へ一括して任せても、元請業者の処理責任は移りません。

下請が廃材を持ち帰る行為

「少量だから」「いつも持ち帰っているから」という理由では、無許可運搬を正当化できません。

現場で出た廃材を下請業者の事務所や資材置場へ運ぶのも、産業廃棄物の収集運搬です。持ち帰った後に別の業者へ渡す流れであれば、現場外保管や処理委託の問題も生じます。

元請業者から口頭で「適当に処分しておいて」と頼まれたときも同じです。口頭の指示で、排出事業者の立場が下請業者へ移ることはありません。

下請が許可なく運べる特例

一定の小規模な維持修繕工事などでは、下請業者が収集運搬業許可を持たずに運べる特例があります。

ただし、使える場面は広くありません。次の条件をすべて満たす場合だけです。

条件内容
工事の内容請負代金500万円以下の工事。ただし、新築・増築・解体工事を除く。一定の瑕疵補修工事も対象
運搬量1回当たり1立方メートル以下であることが分かるように区分して運搬する
運搬先元請業者が所有権または使用権原を持つ保管場所または処理施設
運搬地域工事現場と同じ都道府県内または隣接する都道府県内
運搬方法途中で積替えを行わない
廃棄物特別管理産業廃棄物ではない
契約・書面運搬の内容を請負契約書に記載し、所定の書面を携行

いずれか一つでも欠ければ、この特例は使えません。

特に注意したいのが、500万円以下の工事なら無条件で運べるわけではないという点です。新築・増築・解体工事は対象外です。1回の運搬量が1立方メートルを超えるときも当てはまりません。

また、特例で認められるのは運搬だけです。下請業者が排出事業者として処分業者と契約したり、自らマニフェストを交付したりできる制度ではありません。

工事別に見る許可の要否

元請か下請かを軸にすると、解体工事、内装工事、設備工事でも基本的な考え方は共通します。

工事の場面運搬する会社許可の考え方
施主から直接受注した解体工事元請業者自社運搬として許可なしで運べる
解体工事を下請で施工下請業者収集運搬業許可が必要
店舗オーナーから直接受注した内装撤去元請業者自社運搬として許可なしで運べる
工務店から受注した内装撤去下請業者収集運搬業許可が必要
建物所有者から直接受注した設備交換元請業者自社運搬として許可なしで運べる
ゼネコンから受注した配管・電気工事下請業者収集運搬業許可が必要
他社の複数現場から廃材を回収回収業者収集運搬業許可の対象

解体工事

施主から解体工事を直接請け負った会社は、元請業者として排出事業者になります。廃材を自ら処分場まで運ぶのであれば、自社運搬に当たります。

下請解体業者が運ぶときは、許可が必須です。前章の特例からも、解体工事は除かれています。

内装工事

床材、壁材、石膏ボード、木くず、金属くずなどが生じる内装工事も、契約関係によって扱いが分かれます。

店舗オーナーから直接受注した内装業者は元請です。元請業者から撤去作業だけを受注した内装業者は下請となり、同じ廃材を運ぶにも許可の要否が変わります。

設備・電気工事

給排水設備、空調設備、電気設備の交換でも、撤去した配管、機器、ケーブルなどが廃棄物になれば、同じ基準を用います。

機器に金属としての価値があっても、それだけで有価物と扱えるとは限りません。取引価格、運搬費、保管状況、取引実態などから、廃棄物に当たるかを見極めます。

建設業許可と産廃許可は別制度

建設業許可は、建設工事を請け負うための制度です。一方の産業廃棄物収集運搬業許可は、他人から委託を受けて産業廃棄物を運ぶために設けられています。

目的が異なるため、建設業許可を持っていても、他人の産業廃棄物を運ぶ権限までは付いてきません。

反対に、500万円未満の軽微な工事で建設業許可が不要であっても、下請として他人の産業廃棄物を運ぶなら、収集運搬業許可の問題は残ります。

建設業許可が不要な工事だから、産廃許可も不要になるわけではありません。

工事の請負金額だけで結論を出さず、元請と下請のどちらなのか、誰の廃棄物を運ぶのかまで確かめたうえで判断します。

許可を取る地域

産業廃棄物収集運搬業許可は、原則として、廃棄物を積み込む場所と荷下ろしする場所を管轄する都道府県ごとに取得します。

現場がある都道府県から、別の都道府県にある処分場へ運ぶなら、両方の許可が要ります。単に通過するだけの地域では、通常、許可を求められません。

下請業者がすでに許可を持っていても、積込み地や荷下ろし地の許可が欠けていれば、その運搬には使えません。許可証に記載された産業廃棄物の種類も、運ぶ品目と一致していなければなりません。

運搬前にそろえる資料

自社運搬か、許可を取って受託運搬するかを決めるときは、以下の資料を手元に用意します。

  • 発注者との工事請負契約書
  • 元請・下請間の工事請負契約書
  • 現場で生じる廃棄物の種類と予定量
  • 運搬する会社と使用する車両
  • 積込み場所と処分場の所在地
  • 処分業者の許可証
  • 収集運搬を委託する場合は運搬業者の許可証

まず工事契約から、発注者と元請業者をはっきりさせます。次に、誰がどの車両で、どの処分場まで運ぶのかを当てはめます。

この順番で見ていけば、自社運搬なのか、収集運搬業許可の要る運搬なのかを判断しやすくなります。

よくある質問

元請業者なら産廃許可なしで処分場まで運べますか?

自社が排出事業者となる工事の廃棄物を、自社の車両で運ぶなら、収集運搬業許可は要りません。ただし、車両表示、書類の携行、飛散・流出防止などの運搬基準は守らなければなりません。

下請業者が廃材を自社へ持ち帰ることはできますか?

持ち帰りも運搬に含まれるため、産業廃棄物収集運搬業許可が要ります。行き先が下請業者の事務所や資材置場でも変わりません。無許可で運べる特例はあるものの、工事内容、金額、運搬量、運搬先まで条件が細かく決まっています。

500万円以下の工事なら下請も許可なしで運べますか?

工事金額だけでは決まりません。維持修繕工事などであること、新築・増築・解体工事ではないこと、1回当たり1立方メートル以下であること、書面を携行することなど、複数の条件をすべて満たす必要があります。

建設業許可があれば産廃を運べますか?

建設業許可だけでは、他人の産業廃棄物を受託して運ぶことはできません。建設業許可と産業廃棄物収集運搬業許可は目的の異なる制度です。下請として運搬を請け負うなら、収集運搬業許可の取得が前提になります。

一人親方でも元請なら自社運搬になりますか?

施主から直接工事を請け負っていれば、一人親方でも元請業者です。その工事から生じた産業廃棄物を自ら運べば、自社運搬に当たります。別の建設会社から受注した工事では下請業者です。

マニフェストは下請業者が発行しますか?

排出事業者である元請業者が交付します。下請業者が収集運搬業許可を持って運搬するときも、元請業者との委託契約に基づいて廃棄物を受け取り、マニフェストの交付を受けます。

まとめ

建設業者が産廃収集運搬業許可を取るべきか迷ったときは、会社の業種ではなく、工事ごとの立場から考えます。

最初に見る資料は、工事請負契約書です。施主から直接受注していれば元請、他の建設会社から受注していれば下請となります。

そのうえで、運搬する会社、車両、廃棄物の種類、処分場の所在地を洗い出します。下請業者が運ぶなら、許可の対象地域と品目を見ることも欠かせません。

「自社の車だから」「少量だから」「500万円以下だから」という理由だけでは、許可不要とはいえません。実際の契約関係と運搬経路をもとに進め方を決めることが大切です。

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