建築一式の許可を持つ会社が、500万円以上の内装工事を単独契約で受注するのは、内装仕上工事業の無許可営業にあたります。
建築一式の許可は、専門工事の許可をすべて兼ねるものではありません。「一式」という名前から万能の許可を連想しやすいのですが、内装、電気、管などの専門工事を500万円以上で単独受注するなら、それぞれの業種の許可が別に必要です。
建築一式工事とは、複数の専門工事をまとめて建物全体を完成させる工事です。専門工事だけを単独で受ける場合と、一式工事の内訳として施工する場合では、必要な許可が変わります。
なお、建設業許可の業種名は「建築工事業」です。この記事では、分かりやすさを優先して「建築一式工事の許可」と表記します。
建築一式は建物全体をまとめる工事
建築一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事をいいます。元請として複数の専門工事業者をまとめ、建物全体を完成させる役割と考えると、イメージしやすいでしょう。
建築一式の基本
分かりやすい例が、一戸建て住宅の新築工事です。新築では、基礎、躯体、屋根、電気、給排水、内装と、複数の専門工事が組み合わさります。
これらを全体としてまとめ上げ、一棟の建物に仕上げる。その役割を担うのが建築一式工事です。一部の工事だけを行うのではなく、建物全体を完成させる点に特徴があります。
「一式」は万能の許可ではない
ここで押さえたいのは、「一式」がどんな工事でも自由に請け負えるという意味ではないことです。
建築一式工事は、あくまで建物全体を総合的にまとめる工事です。内装だけ、電気配線だけ、給排水設備だけといった部分的な工事は、それぞれ別の専門工事として扱われます。
たとえば次のような契約です。
- クロス張り替えや床仕上げだけの工事
- 電気配線や照明設備だけの工事
- 給排水設備の入れ替えだけの工事
- 外壁塗装だけの契約
- 防水工事だけの契約
建築一式の許可を持っていても、これらを500万円以上で単独受注するなら、その業種の許可が別に必要です。
建築一式の許可だけでは足りません。
専門工事は契約の形で変わる
建築一式の許可で専門工事をどこまで施工できるか。答えは、工事の受け方によって変わります。
受け方は大きく3つです。
- 専門工事を単独の契約として受ける
- 建築一式工事の内訳として自社施工する
- 主たる工事に付随する附帯工事として施工する
同じ内装工事でも、どの形で受けるかによって扱いが違ってきます。
専門工事を施工できるか
別契約で受ける
その業種の許可が必要
建築一式の許可だけでは足りません。
含まれている
不要なケースあり
単独契約ではなく、建築一式工事の一部として施工します。
付随して必要
施工できるケースあり
附帯工事だけを単独で請け負うことはできません。
その専門工事に対応する専門技術者を現場に置く必要があります。
単独受注は専門工事の許可が必要
建築一式の許可しか持たない事業者は、500万円以上の専門工事を単独契約としては請け負えません。
内装工事だけを受ける場面で考えてみます。建築一式の許可のみで500万円以上の内装仕上工事を単独受注すれば、内装仕上工事業の無許可営業です。
電気工事も同じです。500万円以上の電気工事だけを単独で受けるなら、電気工事業の建設業許可が前提になります。
元請から「建築一式があるなら大丈夫」と言われても、契約の中身が専門工事だけであれば、そのまま受けてよいとは限りません。
一式工事の内訳なら別扱い
一方、建物全体を建築一式工事として請け負い、その内訳として内装工事や電気工事を自社で施工するなら話が変わります。新築工事の中に内装や電気が含まれている場面です。
ここでの専門工事は、単独の契約ではなく、建築一式工事全体の一部として行うものです。この場合、専門工事の許可を別に取らずに済む場合があります。
注意したいのは、契約書や見積書の中身です。名称だけを建築一式にしても、実態として専門工事だけを受けているなら、安全とはいえません。
附帯工事は主たる工事とセット
附帯工事とは、主たる工事に付随して生じる工事です。主たる工事を完成させるために必要な従たる工事、と考えると分かりやすいでしょう。
主たる工事から切り離して、附帯工事だけを単独で受けるものではありません。附帯工事にあたるなら、その業種の許可がなくても施工できる場合があります。
逆に言えば、附帯工事だけを単独で請け負うことはできません。 専門工事を独立した契約として受注したいなら、やはりその専門工事の許可が必要です。
許可不要でも専門技術者は必要
内訳施工や附帯工事では、専門工事の許可を別に取らずに済む場面もあります。それでも、技術者の配置まで不要になるわけではありません。
その専門工事に対応する専門技術者を、現場に置くことが求められます。専門技術者を置けないなら、その業種の許可を持つ業者へ下請に出します。
許可の話と技術者の話は、分けて考えてください。
軽微な工事は1,500万円・150㎡が基準
建設業許可がなくても請け負える工事を、軽微な建設工事といいます。建築一式工事で軽微な建設工事に該当するのは、次のどちらかです。
- 1件の請負代金が1,500万円未満の工事
- 延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
建築一式以外の専門工事では、軽微な建設工事のラインは原則500万円未満です。建築一式だけ、1,500万円未満または150㎡未満の木造住宅という別枠が認められています。
1,500万円は税込で判断
1,500万円の基準は、消費税込みで判断します。税抜き1,490万円の工事でも、消費税を含めれば1,500万円を超え、軽微な建設工事の範囲から外れます。
見落としやすいのが、発注者から材料の支給を受ける場面です。その材料の市場価格や運送費も、請負代金に含めて判断します。
1つの工事を2つ以上の契約に分けても、原則として合計額で扱われます。契約を分ければ軽微な工事で済む、というわけではありません。
150㎡未満の木造住宅は別枠
建築一式工事には、木造住宅に限った別基準が設けられています。延べ面積150㎡未満の木造住宅工事なら、請負代金が1,500万円以上でも軽微な建設工事に該当します。
もっとも、どの建物にも使える基準ではありません。問われるのは「木造住宅」にあたるかどうかです。
店舗兼住宅などの併用住宅では、居住部分が延べ面積の2分の1以上を占めるかどうかも関係します。判断が分かれそうな案件は、事前に許可行政庁へ相談したほうが確実です。
軽微を超えると無許可営業
軽微な建設工事の範囲を超える建築一式工事を許可なしで請け負えば、無許可営業になります。
無許可営業は刑事罰や行政処分の対象です。罰則は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、あるいはその両方です。
「拘禁刑」は、従来の懲役・禁錮を一本化した現在の表記です。古い解説には「懲役」と書かれていることもありますが、いまは拘禁刑と表記します。
過度に怖がる必要はありません。とはいえ、1,500万円や150㎡のラインに近い工事は、契約前にどちらに入るか詰めておく価値があります。
許可要件は5つに分けて見る
軽微な工事を超える建築一式工事を請け負うなら、建設業許可が必要です。ここからは、その許可を取るための要件を取り上げます。
建設業許可の主な要件は、次の5つです。
- 経営業務の管理責任者等がいること
- 営業所技術者を営業所に置くこと
- 請負契約に関して誠実性があること
- 財産的基礎があること
- 欠格要件に該当しないこと
このうち、建築一式工事で特に早めに見極めたいのが営業所技術者です。
営業所技術者は早めに見る
営業所技術者とは、許可を受ける営業所に常勤で置く技術者をいいます。以前は「専任技術者」や「専技」と呼ばれていました。
建築一式工事では、営業所技術者になれる資格や実務経験が限られます。経管や財産的基礎を満たしていても、営業所技術者がいなければ許可申請は前に進みません。
社内に使える資格者や経験者がいるかどうか。ここを先に確かめます。
資格があれば進めやすい
一般建設業で建築一式工事の許可を取る場合、営業所技術者になれる代表的な資格は次のとおりです。
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士(種別:建築)
- 一級建築士
- 二級建築士
これらの資格があれば、実務経験年数を別に積み上げなくても進められます。
資格がなくても、道が閉ざされるわけではありません。指定学科の卒業と実務経験、または10年以上の実務経験で要件を満たせる可能性があります。
実務経験は資料で示す
実務経験で進めるなら、過去の工事内容を資料で示します。主に見るのは次の点です。
- 元請として建物全体をまとめた経験があるか
- 請け負った工事が建築一式工事といえる内容か
- 契約書や注文書の工事名から、その内容が読み取れるか
建築一式工事は、複数の専門工事を総合的にまとめる工事です。単なる専門工事の経験だけでは、建築一式の実務経験として認められるとは限りません。
契約書、注文書、請求書などを洗い出しながら、証明資料をそろえていきます。資格者がいる場合より資料集めに手間がかかりやすい分野です。
特定建設業は8,000万円と1級資格者がポイント
8,000万円。建築一式工事で特定建設業の許可が必要になるかどうかの分かれ目です。
元請として請け負った1件の工事で、下請契約の合計が8,000万円以上になるなら、一般建設業の許可では足りません。建築一式以外の工事ではこの基準は5,000万円以上で、建築一式だけ8,000万円という別枠になっています。
下請8,000万円以上で特定
特定建設業が必要かどうかは、元請として下請に出す金額で判断します。建築一式工事なら、下請契約の合計が8,000万円以上になるかどうかが分かれ目です。
基準になるのは、自社が直接施工する金額ではなく、下請に出す金額のほうです。
大きな工事を元請で受けるなら、契約前にこのラインを確認します。
指定建設業は実務経験だけでは不可
建築一式工事は、指定建設業の1つです。指定建設業とは、特定建設業の技術者要件が特に厳しくなる業種のことで、次の7業種が該当します。
- 土木一式工事
- 建築一式工事
- 電気工事
- 管工事
- 鋼構造物工事
- 舗装工事
- 造園工事
これらの業種で特定建設業の許可を取るには、特定営業所技術者が1級の国家資格者または国土交通大臣特別認定者であることが求められます。
建築一式工事なら、代表的なのは1級建築施工管理技士や一級建築士です。2級資格者や実務経験のみでは、特定建設業の営業所技術者になれません。
| 項目 | 一般建設業 | 特定建設業 |
|---|---|---|
| 必要になる場面 | 下請に出す合計が8,000万円未満 | 下請に出す合計が8,000万円以上 |
| 営業所技術者 | 1級・2級資格者、指定学科+実務経験、10年実務経験など | 1級国家資格者または国土交通大臣特別認定者 |
| 実務経験のみ | 要件を満たす場合あり | 原則不可 |
| 財産的基礎 | 自己資本500万円以上または資金調達能力など | 資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上など、より重い要件 |
特定建設業は、技術者だけでなく財産的基礎の要件も重くなります。中小事業者が最初から特定を目指すなら、下請金額、資格者、決算内容を早めに検討しておきたいところです。
資格者、経営経験、財産的基礎の資料集めには、申請前の準備期間が別にかかります。
よくある質問
- 建築一式の許可があれば、内装工事だけを請け負えますか?
-
いいえ。500万円以上の内装工事だけを単独で請け負うには、内装仕上工事業の許可が必要です。建築一式の許可は、内装仕上工事の許可を兼ねません。
一方で、建築一式工事として建物全体を請け負い、その内訳として内装工事を自社施工するなら、一式工事の一部として施工できる場合があります。
- リフォーム工事は建築一式にあたりますか?
-
工事内容によります。
建物全体の大規模な増改築で、複数の専門工事を総合的にまとめる工事なら、建築一式工事にあたる可能性があります。一方、クロス張り替えだけ、設備交換だけ、塗装だけといった部分的な工事は、それぞれ専門工事として判断するのが基本です。
リフォームという言葉だけでは決まりません。契約内容と工事の範囲をもとに判断します。
- 木造住宅130㎡・1,800万円の場合、許可は必要ですか?
-
延べ面積150㎡未満の木造住宅工事なら、請負代金にかかわらず軽微な建設工事にあたります。木造2階建て住宅で延べ面積130㎡であれば、1,800万円でも許可不要と考えられます。
検討が残るのは、その建物が本当に木造住宅にあたるかという点です。店舗兼住宅などでは、居住部分が延べ面積の2分の1以上を占めるかどうかも関係します。
- 建築一式の営業所技術者には、どの資格が使えますか?
-
一般建設業なら、代表的には次の資格が使えます。
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士(建築)
- 一級建築士
- 二級建築士
資格がなくても、指定学科の卒業と実務経験、または10年以上の実務経験で満たせる可能性があります。
特定建設業を目指すなら、1級建築施工管理技士や一級建築士など、1級資格者が前提です。2級資格や実務経験のみでは、特定建設業の営業所技術者になれません。
2級資格や実務経験のみでは、特定建設業の営業所技術者になれません。 - 建築一式と専門工事の両方を取れますか?
-
要件を満たせば可能です。
建築一式工事に加えて、内装仕上工事、管工事、電気工事などを単独で受注したいなら、それぞれの業種について許可を取ることを検討します。
ただし、業種ごとに営業所技術者の要件を満たさなければなりません。
建築一式の技術者だけで、すべての専門工事の要件をカバーできるとは限りません。 - 元請から「建築一式を取ってほしい」と言われたら、そのまま申請してよいですか?
-
まず、自社が実際に請け負う工事の中身を調べます。
建築一式は、建物全体をまとめる工事の許可です。内装工事や管工事などを単独で受けることが多いなら、専門工事の許可を優先したほうがよい場合もあります。
元請の指定だけで決めず、建築一式でよいのか、専門工事も必要かを申請前に分けておきましょう。
まとめ
建築一式工事は、建物全体を総合的にまとめる工事です。「一式」という名前でも、専門工事を何でも単独で請け負える許可ではありません。
500万円以上の内装工事、電気工事、管工事などを単独で受けるなら、それぞれの専門工事の許可が必要です。
一方、建築一式工事の内訳として専門工事を自社施工する場合や、附帯工事として施工する場合は、別途許可が不要になる場合があります。その場合でも、技術者の配置は省けません。
軽微な工事の基準は、1,500万円未満または150㎡未満の木造住宅工事です。特定建設業では、下請契約の合計8,000万円以上というラインと、1級資格者の確保が鍵になります。
まず自社の工事が建築一式か専門工事かを分け、そのうえで一般建設業で足りるのか特定建設業まで必要なのかを判断する。この順番なら、許可業種の選び方を間違えにくくなります。
建築一式の許可で迷ったときは
建築一式工事の許可は、専門工事との切り分け、営業所技術者の資格、一般・特定の区分と、最初に見るべき点が多い分野です。
当事務所では、葛飾区を拠点に、東京都全域および周辺地域の建設業許可申請を扱っています。
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