足場工事や土工事を手がけていても、とび・土工工事業の許可だけで解体工事まで請け負えるとは限りません。解体工事は現在、独立した許可業種として扱われているためです。
2016年の法改正により解体工事業が独立し、旧とび・土工工事業の許可で解体工事業を営むことができた経過措置も、2019年5月31日に終了しました。現在、とび・土工工事業の許可だけで、解体工事として単独で請け負う500万円以上の工事を受注すると無許可営業になります。
この記事では、とび・土工工事業(建設工事の種類は「とび・土工・コンクリート工事」)の工事範囲と取得要件、解体工事業との切り分け、東京都で申請時に詰まりやすい点を解説します。
とび・土工工事業の工事範囲
とび・土工工事業の工事範囲
許可業種名は「とび・土工工事業」です。建設業法別表第一では、建設工事の種類を「とび・土工・コンクリート工事」、対応する許可業種を「とび・土工工事業」と定めています。許可業種の略号は「と」です。
とび・土工工事業は専門工事27業種のひとつで、足場工事から土工事、コンクリート工事まで幅広く対象になります。
主な工事内容は次のとおりです。
- 足場の組立て、重量物の運搬・配置、鉄骨等の組立て
- くい打ち、くい抜き、場所打ぐい工事
- 土砂の掘削、盛上げ、締固め
- コンクリートによって工作物を築造する工事
- 法面処理、地盤改良、グラウト工事などの基礎的・準備的工事
対象範囲が広い反面、他の許可業種との区分には迷いやすいところがあります。たとえば、機械器具や建設資材などの重量物を運搬・配置する工事は、とび・土工・コンクリート工事に当たります。
一方、機械器具の組立てや工作物への取付けを主な目的とする工事は、機械器具設置工事に該当する可能性があります。
業種の区分は工事名だけでは決まりません。工事の主な目的と実際の施工内容をもとに判定し、迷う場合は東京都の建設業許可申請の手引きを参照してください。
解体工事業との切り分け
2016年に解体工事業が独立
かつて工作物の取り壊しは、とび・土工・コンクリート工事に含まれていました。2016年6月1日施行の法改正により、解体工事業が独立し、建設業の許可業種は29業種になっています。
改正前からとび・土工工事業の許可を持っていた業者には、引き続き解体工事業を営める経過措置が設けられていましたが、2019年5月31日に終了しました。
現在の許可・登録の区分
現在の扱いは次のとおりです。
| 工事 | 必要な許可・登録 |
|---|---|
| 解体工事として単独で請け負う500万円以上の工事 | 解体工事業の建設業許可 |
| 500万円未満の解体工事 | 土木工事業・建築工事業・解体工事業の建設業許可がなければ、建設リサイクル法にもとづく解体工事業登録 |
| 500万円以上の足場組立・くい打ち・土工など | とび・土工工事業の建設業許可 |
解体工事業の建設業許可を取得していれば、建設リサイクル法にもとづく解体工事業登録は必要ありません。とび・土工工事業の許可だけでは、解体工事業の許可や登録を兼ねられない点に注意が必要です。
建替えなどを総合的に請け負う建築一式工事は、解体工事を単独で請け負う場合とは別の基準で判定します。建築一式工事では、原則として請負代金が1,500万円以上になると建設業許可が必要です。ただし、延べ面積150㎡未満の木造住宅工事は、請負代金が1,500万円以上でも軽微な建設工事に該当します。
とび・土工工事と解体工事の両方を請け負う会社は、「とび・土工工事業」と「解体工事業」をそれぞれ取得して使い分けます。すでにとび・土工工事業の許可があり、同じ一般・特定の区分で解体工事業を加える場合は、業種追加の手続きです。許可区分が変わる場合は、般・特新規申請が必要になることがあります。
500万円未満の解体工事だけを請け負う場合でも、土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれの建設業許可も持っていなければ、解体工事業登録が必要です。
とび・土工工事業の取得要件
建設業許可の基本的な要件は、どの業種でも共通です。ここでは、とび・土工工事業で特に判断が分かれやすい営業所技術者の要件を中心に説明します。
営業所技術者(旧:専任技術者・専技)
とび・土工工事業の許可を受けるには、営業所ごとに専任の営業所技術者を置かなければなりません。要件を満たす主なルートは、次の4つです。
① 国家資格等
対象となる資格の代表例は、次のとおりです。
- 1級土木施工管理技士
- 2級土木施工管理技士(種別「土木」「薬液注入」)
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士(種別「躯体」)
- 1級・2級建設機械施工管理技士
- 建設部門などの技術士
- とび、型枠施工、コンクリート圧送施工などの技能士
技能検定2級については、合格後に一定の実務経験が必要となる資格があります。資格名が似ていても対象業種が異なる場合があるため、申請時には東京都の最新の資格一覧で判定します。
② 施工管理技術検定の第一次検定合格+実務経験
対象となる施工管理技術検定の第一次検定合格者は、一定の実務経験を組み合わせることで営業所技術者の要件を満たせる場合があります。
- 1級第一次検定の合格者:合格後3年以上の実務経験
- 2級第一次検定の合格者:合格後5年以上の実務経験
すべての第一次検定が、とび・土工工事業に使えるわけではありません。検定種目と許可業種の対応を確認する必要があります。
③ 指定学科卒業+実務経験
土木工学や建築学などの指定学科を卒業している場合は、学歴に応じた実務経験によって要件を満たせます。
- 高校・中等教育学校の指定学科卒業後:5年以上
- 大学・高等専門学校などの指定学科卒業後:3年以上
④ 10年以上の実務経験
資格や指定学科の学歴がなくても、とび・土工・コンクリート工事について10年以上の実務経験があれば、営業所技術者の要件を満たせます。
実務経験で申請する場合は、工事請負契約書、注文書、請求書、入金資料などによって経験期間と工事内容を裏付けます。単に建設会社に在籍していた期間ではなく、とび・土工・コンクリート工事に携わった経験を示すことが必要です。
特定建設業の場合――実務経験ルートを利用できる
とび・土工工事業は、指定建設業7業種には含まれません。指定建設業に当たるのは、土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業です。
そのため、とび・土工工事業の特定営業所技術者には、主に次のルートがあります。
- 対象となる1級国家資格者や技術士等
- 一般建設業の営業所技術者要件を満たし、指導監督的実務経験を有する人
指導監督的実務経験のルートでは、発注者から直接請け負った税込4,500万円以上のとび・土工・コンクリート工事について、2年以上、工事の技術面を総合的に指導・監督した経験が必要です。
この4,500万円は、特定営業所技術者になるための実務経験の基準額です。特定建設業の許可が必要になる下請契約額の5,000万円とは、別の基準として扱います。
経管・財産的基礎・社会保険
経営業務の管理責任者等については、建設業に関する5年以上の役員等の経験などが代表的な要件です。とび・土工工事業だけに設けられた特別な経管要件はありません。
一般建設業の財産的基礎は、次のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本が500万円以上ある
- 500万円以上の資金調達能力がある
- 申請直前の過去5年間、建設業許可を受けて継続して営業した実績がある
また、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、加入義務がある事業者は適切に加入していることが許可の要件です。
一般と特定のどちらが必要か
発注者から直接請け負った工事について、下請に出す契約金額の合計が5,000万円以上になる場合は、特定建設業の許可が必要です。5,000万円未満なら一般建設業の許可で対応できます。この基準は2025年2月1日施行の改正で4,500万円から引き上げられました。古い資料には旧基準が残っていることがあるため、最新の5,000万円で判断してください。
なお、1件の請負代金が消費税込みで500万円未満のとび・土工・コンクリート工事は、軽微な建設工事として原則、建設業許可を受けずに請け負えます。
下請として工事を受けるだけなら、金額にかかわらず一般建設業で足ります。
東京都で申請が詰まりやすいケース
解体と一緒に取りたいが要件が揃わない
とび・土工工事業と解体工事業を同時に取るには、それぞれの業種で営業所技術者の要件を満たす人材が要ります。経管はいる。財産要件も満たす。それでも技術者が2業種分そろわなければ、同時取得は前に進みません。
同一人物が2業種を兼ねられることもありますが、資格の組み合わせによって判断が分かれます。資格証明の取り寄せも含め、早めに動いたほうが申請はスムーズです。
主任技術者・監理技術者の配置
許可を取ったあとも、工事現場には主任技術者を配置する義務があります。特定建設業の元請が下請に5,000万円以上を出す工事では、主任技術者に代えて監理技術者を置きます。取得後の現場運用まで見据えて、技術者の確保を計画しておいてください。
よくある質問
- とび・土工工事業の許可で解体工事も請け負えますか?
-
いいえ、できません。500万円以上の解体工事を請け負うには、別途、解体工事業の許可が必要です。解体は2016年に独立した業種で、旧許可で営業できた経過措置も2019年5月31日に終わっています。500万円未満でも、土木・建築・解体の建設業許可がなければ解体工事業登録が要ります。
- 足場の組立だけなら500万円未満は許可不要ですか?
-
はい。1件の請負代金が消費税込みで500万円未満なら、軽微な建設工事として原則、許可を受けずに請け負えます。ただし、注文者から材料の提供を受ける場合は、その市場価格や運送費を請負代金に加えて判定します。合計が500万円以上になれば、とび・土工工事業の許可が必要です。
- 特定建設業の許可を取るのに1級資格は必須ですか?
-
いいえ、必須とは限りません。とび・土工工事業は指定建設業ではないためです。一般の営業所技術者の要件(資格または実務経験)を満たす人が、元請として税込4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的実務経験を積んでいれば、特定営業所技術者の要件を満たせる場合があります。
- とび・土工と解体の両方を取るにはどうすればいいですか?
-
「とび・土工工事業」と「解体工事業」の2業種をそれぞれ取得します。すでにとび・土工工事業の許可があれば、解体は業種追加の手続きで増やせます。
- とび・土工工事業と解体工事業は、同じ営業所技術者が担当できますか?
-
同じ人が両方を担当できる場合があります。ただし、保有資格や実務経験が、とび・土工工事業と解体工事業のそれぞれの要件を満たしていることが必要です。
一方の業種にしか使えない資格もあるため、同じ営業所技術者で申請できるとは限りません。2業種を同時に取得したり、解体工事業を追加したりする場合は、資格証明書や実務経験の内容を業種ごとに判定します。
- 機械器具の据付けはとび・土工工事業ですか、機械器具設置工事業ですか?
-
機械器具や建設資材などの重量物を運搬・配置することが工事の中心なら、とび・土工・コンクリート工事に当たります。一方、機械器具を組み立てて工作物を建設したり、工作物に機械器具を取り付けたりすることが中心なら、機械器具設置工事です。
まとめ
とび・土工工事業(とび・土工・コンクリート工事)は、足場・くい・土工・コンクリートなど幅広い工事を受け持つ専門工事です。範囲が広いぶん、解体や機械器具設置との切り分けを間違えやすい。
500万円以上の解体は2016年以降、別途、解体工事業の許可が必要です。とび・土工工事業の許可だけでは解体を受けられないため、両方を手がける会社は2業種を取得します。取得要件では、指定建設業に含まれず、特定建設業でも実務経験ルートが使える点が、管工事や舗装工事との大きな違いです。
お困りの際は当事務所へ
とび・土工工事業は工事範囲が広く、解体との業種追加や他業種との切り分けで判断に迷いやすい業種です。要件の確認から書類の準備まで、まとめてご依頼いただけます。
当事務所では、葛飾区を拠点に東京都全域(および周辺地域)の建設業許可申請を専門的にサポートいたします。
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