宅建業免許証が交付されたら、免許申請の手続はひと区切りです。ただし、免許証を受け取っただけでは、営業体制がすべて整ったとはいえません。
事務所には宅地建物取引業者票と報酬額表を掲示し、宅建業に従事する人には従業者証明書を発行します。従業者名簿と取引に関する帳簿の備付けも、事務所ごとに求められます。
これらは開業時に一度そろえて終わる書類ではなく、従業者の入退社や、役員・事務所・専任宅建士の変更に合わせて更新していくものです。この記事では、東京都知事免許を取得した後に必要となる掲示物、社内書類、保存期間、届出について説明します。
営業開始前に業者票と報酬額表を掲示する
宅建業を営む事務所には、宅地建物取引業者票と報酬額表を掲示します。いずれも事務所の奥にしまい込むのではなく、来店者から見やすい場所に掲げなければなりません。
更新申請や事務所移転に伴う変更届では、事務所内部の写真によって業者票と報酬額表の掲示状況も見られます。最新の内容を掲示した状態で写真を用意します。
業者票は2025年4月に様式、12月にサイズが変わった
宅地建物取引業者票は、一般に「業者票」や「宅建業者票」と呼ばれる標識です。事務所ごとに、免許証番号、免許の有効期間、商号または名称、代表者氏名、主たる事務所の所在地などを記載します。
2025年4月1日に様式が変わり、「この事務所の代表者氏名」が加わりました。また、以前は専任宅建士の氏名を表示していましたが、現在は専任宅建士の人数と宅建業に従事する者の人数を記載します。古い様式をそのまま使い続けず、新しい業者票へ差し替えます。
さらに2025年12月1日からは、業者票の規定サイズが縦25cm以上・横35cm以上に変更され、A3用紙1枚で作成できるようになりました。サイズの縮小だけを理由に、従来の大きな業者票を作り直す必要はありません。
事務所の代表者や専任宅建士の人数などが変わったら、業者票にも変更後の内容を反映させます。業者票に併記する「宅地建物取引業に従事する者の数」は、専任宅建士の人数に変更があった際に書き換える扱いです。
免許行政庁へ変更届を出しても、事務所に掲示している業者票が自動的に書き換わるわけではありません。
案内所やモデルルームにも標識が必要になる
一団の分譲を行う案内所やモデルルームなど、事務所以外の場所で宅建業務を行う際も、その場所に応じた標識を掲げます。
契約を締結したり、契約の申込みを受けたりする案内所については、宅建業法第50条第2項の届出が必要です。届出期限は業務を始める日の10日前までで、東京都へ郵送するなら契約行為を始める日の11日前までに必着とされています。
報酬額表は現在の上限額を掲示する
宅建業者は、国土交通大臣が告示で定めた報酬の額を、事務所ごとに掲示します。自社の仲介手数料を案内するときも、告示による法定の上限額が分かる内容を見やすい場所に掲げる決まりです。
現在使用するのは、2024年7月1日施行の報酬額表です。この改正では、低廉な空き家等の売買や、長期間使用されていない空き家等の賃貸借に関する報酬の特例が変更されました。改正前の表を掲示している事務所は、新しい表へ貼り替えます。
報酬額表に記載されている金額は、当然に請求できる金額ではなく、受領できる上限額です。実際の報酬額は、依頼者との合意によって決まります。
従業者証明書は宅建業に従事する人が携帯する
宅建業者は、従業者証明書を携帯させないまま、その人を宅建業務に従事させてはいけません。取引の関係者から提示を求められたときは、従業者証明書を見せて応じます。
対象となるのは営業担当者や宅建士だけではありません。代表者や役員、宅建業に関係する事務職員、パートや臨時職員も、実際に宅建業務へ従事するなら発行の対象です。宅建士証を持っている人についても、宅建士証とは別に従業者証明書を用意します。
入社時に発行して終わりではなく、退職や配置転換のたびに証明書を回収し、従業者名簿にも反映させます。
従業者名簿は事務所ごとに10年間保存する
従業者名簿には、従業者証明書番号、氏名、従業者となった年月日、退職または異動した年月日、主な職務内容、宅建士であるかどうかを記載します。
2025年4月1日から様式が変更され、性別と生年月日の記載は不要になりました。入社、退職、異動などの記載事由が生じたときは、2週間以内に名簿へ記載します。
従業者名簿は事務所ごとに備え、最終の記載をした日から10年間保存します。取引の関係者から請求があったときは、閲覧させなければなりません。
紙で作成するほか、必要なときに画面表示または印刷できる状態であれば、電子データでの管理も認められます。
取引の帳簿は事業年度終了後5年間保存する
宅建業者は、事務所ごとに取引に関する帳簿を備えます。契約書を保存しているだけでは、宅建業法上の帳簿を備えたことにはなりません。
帳簿には、取引があった都度、取引年月日、物件の所在地と面積、売買・交換・貸借の別、取引当事者、代金や賃料、報酬額などを記載します。複数の事務所を構える業者は、取引を担当した事務所ごとに作成します。
帳簿は各事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後5年間保存します。ただし、宅建業者が自ら売主となって販売した新築住宅に関する帳簿は、保存期間が10年間です。
帳簿についても、法令上の事項が記録され、必要に応じて明確に表示・印刷できるのであれば、電子データで管理できます。
役員や事務所の変更は30日以内に届け出る
免許取得後に、商号、代表者、役員、政令使用人、事務所、専任宅建士などが変わったときは、原則として変更日から30日以内に変更届を提出します。
専任宅建士が不足したときの補充期限は2週間以内です。変更届の30日という期限とは別に動くため、混同しないよう注意してください。
変更届を提出した後は、業者票、従業者証明書、従業者名簿、社内の契約書式なども変更後の内容に合わせます。
宅建業免許の有効期間は5年間です。引き続き営業するには、満了日の90日前から30日前までに更新申請を行います。
毎年の業務報告書はすべての宅建業者に必要ではない
通常の宅建業者に対して、毎事業年度終了後に一律の業務報告書を提出させる制度はありません。帳簿を備えていても、その内容を毎年東京都へ提出する仕組みにはなっていません。
ただし、過去5年間に宅建業の取引実績がない状態で免許を更新すると、免許に条件が付くケースがあります。この条件が付いた業者は、更新後1年の事業年度における取引状況を、事業年度終了後3か月以内に報告するよう求められます。
新築住宅を自ら販売した業者には別の届出がある
宅建業者が自ら売主となり、新築住宅を宅建業者ではない買主へ引き渡した業者には、住宅瑕疵担保履行法に基づく資力確保措置と届出が課されます。
基準日は毎年3月31日で、対象となる業者は原則として4月1日から21日までに、引渡戸数や保険・供託の状況を東京都へ届け出ます。過去10年間に新築住宅の引渡実績がある業者は、その年の引渡しが0戸でも届出の対象となり得ます。販売代理や媒介だけを行った業者は対象外です。
備付けや掲示を怠ると行政処分の対象になる
業者票や報酬額表を掲示していない、従業者証明書を携帯させていない、従業者名簿や帳簿を備えていない。こうした状態は、いずれも宅建業法違反です。
東京都の監督処分基準では、違反内容に応じて指示処分や業務停止処分の対象となります。免許更新の直前だけ書類をそろえるのではなく、日頃から入退社や取引の都度、記録を更新する仕組みを作っておきましょう。
よくある質問
- 宅建業免許証を事務所に掲示する必要はありますか?
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免許証そのものを掲示する義務はありません。事務所に掲げるのは、所定の様式による宅地建物取引業者票と報酬額表です。
- 従業者が代表者1人だけでも従業者証明書は必要ですか?
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必要です。代表者本人が宅建業務に従事する以上、従業者証明書を作成して携帯します。宅建士であっても、宅建士証だけでの代用は認められません
- 従業者名簿と免許申請書の従事者名簿は同じですか?
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別の書類です。免許申請書に添付する「宅地建物取引業に従事する者の名簿」は申請時点の状況を記載する書類ですが、従業者名簿は免許取得後も事務所に備え、入退社などに合わせて更新します。
- 取引が一件もない年も帳簿は必要ですか?
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事務所ごとに帳簿を備える点は変わりません。記載する取引がなくても、取引が発生したときに遅れず記録できる状態を保ちます。
- 宅建業の実績を毎年東京都へ報告しますか?
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一律の報告制度はありません。ただし、免許に取引状況の報告条件が付いている業者や、自ら売主として新築住宅を引き渡した業者などは、所定の報告や届出を行います。
宅建業免許を取得した後は、営業を始める前に業者票と報酬額表を掲示し、従業者証明書、従業者名簿、取引帳簿を整えます。2025年4月から業者票と従業者名簿の様式が変わっているため、現在の様式を使用します。
従業者名簿は最終記載日から10年間、帳簿は事業年度終了後5年間の保存です。自ら売主となって販売した新築住宅の帳簿だけは、10年間に延びます。役員や専任宅建士、事務所などが変わったときは、変更届だけでなく、事務所の掲示物や社内書類も書き換えます。
当事務所では、東京都知事の宅建業免許申請に加えて、免許取得後の変更届、更新申請、事務所に備える書類についてもご案内しています。宅建業免許のご相談・お見積もりは無料です。
