メルカリやラクマで中古品を仕入れて転売している方から、こんな相談をよく受けます。「匿名配送だと相手の名前も住所もわからないけど、それって法律的に大丈夫なの?」
実はこれ、古物商許可を持っている人にとっても、これから取得しようとしている人にとっても、無視できない問題です。
この記事では、フリマアプリで仕入れる際の本人確認義務と、匿名配送が引き起こすグレーゾーン、そして現場での対処法を、質屋での実務経験をもとに解説します。
古物商には「本人確認義務」がある
古物商許可を持って中古品の買取や仕入れを行う場合、古物営業法第15条に基づき、売り主の本人確認を行う義務があります。
対面取引では、運転免許証などの身分証を提示してもらい、以下の情報を帳簿(古物台帳)に記録します。
- 氏名
- 住所
- 職業
- 年齢(または生年月日)
これは質屋でも、リサイクルショップでも、買取業者でも同じです。盗品の流通を防ぐための重要な仕組みであり、守らなければ行政指導や営業停止の対象になる場合があります。
私は現在も質屋の店長として勤務しており(業界歴10年以上)、日々、ブランド品・貴金属・時計の買取を行っています。盗品被害品が持ち込まれることもあり、本人確認の記録が捜査に役立った経験も複数あります。本人確認の記録は、手間に見えて、実は自分自身を守る仕組みでもあります。

フリマアプリの「匿名配送」がなぜ問題になるのか
メルカリやラクマには、送り主・受け取り側双方の個人情報を非公開にする「匿名配送」の仕組みがあります。ユーザー同士が住所や氏名を教え合わずに取引できる、便利な機能です。
便利な反面、古物商として仕入れに使う場合は注意が必要な点があります。
匿名配送では、仕入れ時に取得できる情報が次のとおりです。
- プラットフォーム上のユーザー名(ニックネーム)
- 取引ID・商品ID
- プロフィールに記載されている情報(任意記入)
ただし匿名配送では、法律上必要な氏名・住所・職業の確認ができません。
警察庁の通達と「非対面取引」のルール
この問題に対応するため、警察庁は非対面取引(インターネット取引を含む)における本人確認方法について通達を出しています。詳細は警視庁の公式ページ(非対面取引における本人確認方法)でも確認できます。
方法①:身分証コピーの送付+「転送不要の簡易書留」の到達確認
相手に身分証(運転免許証など)の写しを送ってもらうだけでは、法律上の本人確認として認められません。
古物営業法施行規則では、身分証コピーの受取に加えて、そこに記載された住所宛てに転送不要の簡易書留(配達記録郵便物等)を送付し、相手が受け取ったことを確認するという手続きまでが義務付けられています。
【匿名配送の最大の壁】 フリマアプリの匿名配送では相手の住所が分かりません。そのため「簡易書留を送る」という手続きができず、この方法での適法な本人確認は実質的に不可能になります。これが、ネット転売における最大の法的落とし穴です。
方法②:電子認証・オンライン本人確認(eKYC)を活用する
本人確認サービスを介して認証を完了させる方法。
方法③:取引プラットフォームの記録を活用する
プラットフォームが本人確認を実施しているサービス(Mercari Shopsなど)では、プラットフォーム側の本人確認記録を補完的に利用できる場合があります。ただし、これが単独で法定要件を満たすかどうかは、管轄警察署に確認することを強くすすめます。
【例外】1万円未満の仕入れなら匿名配送でもOK?
古物営業法では、「対価の総額が1万円未満」の仕入れであれば、原則として本人確認義務が免除されます。つまり、1万円未満の安い中古品であれば、匿名配送で仕入れても原則として違法にはなりません。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
「書籍(マンガ等)」「ゲームソフト」「CD・DVD」「バイクの部品」などの品目は、万引きや盗難が多いため、たとえ1万円未満(数百円)であっても、本人確認が義務付けられていると法律で例外指定されています(古物営業法施行規則第17条)。
本やゲームのせどりを匿名配送でおこなっている方は、少額であっても本人確認義務が免除されないため、注意が必要です。「安いから大丈夫」という判断が誤りになるケースがあります。
判断フローチャート:仕入れは問題ないか?
→ 古物商許可が必要(無許可は罰則あり)
→ 個人の不用品処分なら不要な場合が多い
→ 早急に許可申請を。無許可営業は3年以下の懲役または100万円以下の罰金
→ Q3へ
→ 匿名配送のみでは要件未充足の可能性。本人確認方法を管轄署に相談を
→ 古物台帳に記録し、適切に保管する
Mercari Shopsと古物商許可の関係
メルカリの法人・事業者向けサービス「Mercari Shops」では、出店時に古物商許可証の提出が求められます(中古品を扱う場合)。これはメルカリが自社プラットフォームの健全性を保つために設けているルールです。
メルカリの公式ガイドでも、「お客様が営利目的で中古品(古物)の取引を行っていると認められる場合には、古物営業に該当する可能性がございます。メルカリでは事業者による利用を想定していないため、個人としてご利用いただきますようお願いいたします」と明確に注意喚起されています。
個人アカウントで継続的な転売を続けている方は、無許可営業(3年以下の拘禁刑(旧:懲役刑)または100万円以下の罰金)のリスクがあるだけでなく、アカウント停止の対象にもなります。事業として行うなら、許可を取得して「Mercari Shops」などの事業者向けサービスを利用するのが鉄則です。

実務経験から見た注意点
古物の現場で10年以上働いてきた中で感じるのは、「記録は手間ではなく、自分を守る道具だ」ということです。
警察からの照会があった際、古物台帳の記録がきちんとしていれば対応はスムーズです。一方、記録が不十分だと、盗難被害とは無関係であっても説明に時間がかかります。
フリマアプリ経由の仕入れについては、法定の本人確認要件(身分証コピー+転送不要郵便の到達確認、またはeKYC)をクリアできる仕入れ先・方法を選ぶことが、リスク管理の第一歩です。
なお、これは私個人の判断ではなく、管轄の警察署に直接確認することを強くおすすめします。窓口によって案内の内容が変わることがあるため、直接聞いてしまうのがいちばん確実です。
よくある質問(FAQ)
- Qメルカリで買った中古品を転売する場合、必ず古物商許可が必要です
- A
営利目的で継続的に中古品を仕入れ・販売している場合は、古物商許可が必要です。自分の不用品を処分するだけであれば不要ですが、「せどり」「転売」として繰り返し行う場合は許可の取得が必要とされています。判断が難しい場合は、管轄の警察署または行政書士に相談することをおすすめします。
- Q匿名配送で仕入れた場合、どのように本人確認を記録すればよいです
- A
結論からいうと、匿名配送のまま古物営業法施行規則で定められた非対面取引の本人確認要件を完全にクリアすることは極めて困難です。
単にメッセージで身分証の写真を送ってもらうだけでは違法とみなされるリスクがあります。法定の方法では「身分証コピー+転送不要の簡易書留で住所確認」が必要ですが、匿名配送では相手の住所が分からず、この手続き自体が成立しません。
仕入れとして利用する場合は匿名配送を解除して住所・氏名を取得した上で法定手続きを踏むか、eKYCに対応した手段を選ぶ必要があります。判断に迷う場合は、事前に管轄の警察署へ相談してください。
- Qラクマはメルカリと本人確認の扱いが異なりますか?
- A
古物商としての本人確認義務は、どのプラットフォームを使っても変わりません。ラクマも匿名配送機能があるため、同様の問題が生じます。プラットフォームごとの利用規約とあわせて、古物営業法上の要件を別途満たす必要があります。
- Q個人アカウントのまま転売を続けていると何か問題がありますか?
- A
事業として中古品の仕入れ・販売を行っている場合、個人アカウントでの取引でも古物商許可が必要です。無許可での古物営業は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になります。また、メルカリの利用規約上も、事業者は事業者用アカウントの利用が求められています。
- Q古物台帳(仕入れ台帳)はフリマアプリの取引にも必要ですか?
- A
必要です。取引の相手方情報、取引日時、商品情報を記録する義務があります。相手の本人確認情報が取得できている場合はそれを記録し、取得が難しい場合は管轄署の指示に従った方法で記録・保管してください。
まとめ
フリマアプリでの仕入れと古物商の本人確認義務についてまとめると、次のとおりです。
営利目的で継続的にメルカリ・ラクマで中古品を仕入れ・転売している場合は、古物商許可が必要です。そして、古物商は仕入れのたびに相手の本人確認情報を記録する義務があります。匿名配送では情報が取得しにくく、法定要件を満たせないケースが生じる点に注意が必要です。また、1万円未満の仕入れは原則として本人確認が免除されますが、書籍・ゲームソフト・CD・DVDなどの品目は少額でも例外なく本人確認が必要です。具体的な対応方法は管轄の警察署に相談することで、運用ルールを確認できます。
「自分のケースはどうなのか」と思われた方は、まず許可の要否確認から始めてみてください。
お困りの際は当事務所へ
古物商許可の取得は、必要書類の準備から警察署への申請まで、手続きが複雑です。また、「メルカリでの転売に許可は必要か」「開業後の届出は何が必要か」など、判断に迷う場面も多いです。
当事務所では、古物買取の現場で10年以上の経験を持つ行政書士が、書類作成から許可取得までサポートいたします。「自分のケースで許可が必要か確認したい」「申請が複雑で困っている」といった場合は、お気軽にご相談ください。
お問い合わせ方法:
- LINE相談(24時間受付・返信最速)
- お問い合わせフォーム
- 電話:0368214578(年中無休 9:00〜19:00)
古物商許可申請の専門サポート 詳しくはこちら →
執筆者プロフィール
手島宏典 行政書士・現役質屋店長
業界歴10年以上。大手買取店FC3年経営。
行政書士手島宏典事務所
東京都葛飾区亀有3丁目27-30 Tビル1階
TEL:03-6821-4578(平日 9:00〜19:00)



