複数台をまとめて申請できる包括申請の使い方|合成車両と差戻し対策

コラム

保有車両が10台、20台と増えてくると、1台ずつ特車申請を行うのは現実的ではありません。申請データの作成に時間がかかるだけでなく、許可証の管理も煩雑になります。

そこで活用したいのが「包括申請」です。条件さえ合えば、複数の車両を1つの申請書にまとめて提出できます。

ただし、包括申請には「合成車両」という独自の審査方法があります。これを理解していないと、「審査が通らない」「許可証の数値が車検証と違う」といった混乱が生じます。

本記事では、包括申請の基本的な仕組みと、実務担当者が押さえておくべき注意点を解説します。


包括申請とは? 利用条件とメリット

普通申請と包括申請の違い

特車申請には、申請車両の台数によって2つの方式があります。

  • 普通申請: 申請車両台数が1台の申請
  • 包括申請: 申請車両台数が2台以上の申請

包括申請を使えば、例えば「トラクタ5台」と「トレーラ10台」をまとめて1件として申請できます。申請データ作成の手間が減るだけでなく、許可証の管理も一元化できるため、更新時期の管理がしやすくなります。

包括申請ができる4つの条件

ただし、どんな車両でもまとめられるわけではありません。以下の4項目がすべて完全に一致している必要があります。

  1. 車種が同じであること(※最重要)
  2. 通行経路が同じであること
  3. 積載貨物が同じであること
  4. 通行期間が同じであること

例えば、以下のようなケースは包括申請できません。

  • 「A現場に行くトラック」と「B現場に行くトラック」→ 経路が違うためNG
  • 同じ「セミトレーラ」でも、「バン型」と「タンク車」→ 車種が違うためNG
  • 「コンテナ用セミトレーラ」と「平ボディのセミトレーラ」→ 車種区分が違うためNG

車種区分はシステム上で厳密に定義されているため、見た目が似ていても別扱いになることがあります。申請前に、車種区分が完全に一致しているか確認が必要です。


合成車両とは? 包括申請の審査方法

包括申請を理解する上で、最も重要なのが「合成車両」の仕組みです。

普通申請との違い

普通申請(1台)の場合、システムはその車両のスペック(長さ・重量)そのもので道路を通れるか審査します。

しかし、包括申請では複数の車両(サイズや重量が微妙に違う車両たち)をまとめて審査しなければなりません。

そこでシステムは、申請された車両群の中から、「最も条件が厳しくなるスペック」を自動的に抽出し、架空の1台分のデータを作り出します。これを「合成車両」と呼びます。

合成車両の作られ方(具体例)

例えば、以下の2台のトレーラをまとめて申請するとします。

  • トレーラA: 長さ 15m / 重さ 20t
  • トレーラB: 長さ 12m / 重さ 25t

この場合、システム内で生成される「合成車両」のスペックは以下のようになります。

  • 合成車両: 長さ 15m(Aの長さ) / 重さ 25t(Bの重さ)

つまり、「一番長くて、一番重い、最も厳しいスペックを持った架空の車両」として審査が行われます。

この合成車両で許可が下りれば、それより小さい・軽いAもBも、問題なく通れるという判断になります。

許可証に記載されるのは「合成車両」のスペック

許可が下りた後、許可証にはこの「合成車両」の諸元が記載されます。そのため、個別の車検証の数値とは一致しません。

例えば、上記の例では許可証に「総重量25t」と記載されますが、実際にはトレーラAは20tまでしか積めません。

これは間違いではなく、道路審査上の最大値として記載されているためです。許可証の数値と車検証の数値が違っていても、それが正常な状態です。


審査で差戻しになる3つの注意点

包括申請は便利ですが、データの作り方を間違えると、形式審査の段階で差戻し(やり直し)になります。よくある失敗ケースを紹介します。

注意点①:車種の混在

「セミトレーラ」という大きなくくりで考えて、「バン型」「タンク型」「コンテナ用」などを一つの申請に混ぜてしまうケースです。

システム上の「車種区分」が厳密に一致していないと、包括申請は認められません。車種ごとに申請を分ける必要があります。

注意点②:合成結果が制限を超える

個別の車両では許可範囲内でも、合成された結果、重量や寸法が制限を超えてしまい「通行不可」になることがあります。

特に、軸距(タイヤとタイヤの間の距離)が短い車両と、重量が重い車両を組み合わせると、短いのに重い(=橋への負担が最大)という厳しい合成車両ができあがり、審査が通りにくくなることがあります。

注意点③:未登録の車両番号

申請データに入力した車両番号(ナンバープレート)が、システムの車検証データベースに存在しない場合、エラーになります。

新車などでまだデータベースに反映されていない場合は、車検証の写し(PDF)を添付する必要があります。

車両が増えた時のルール:変更か、新規か

運用開始後に車両が増えた場合の手続きにも、包括申請ならではのルールがあります。

トレーラの増車:「変更申請」でOK

既に許可を得ている包括申請に、新しいトレーラを追加する場合は、基本的に「変更申請」で対応できます。

これは手続きが比較的簡単で、手数料もかからないケースが多いです(※諸元が変わらない場合など)。

トラクタの増車:「新規申請」になることが多い

一方で、トラクタ(ヘッド)を追加する場合は注意が必要です。

トラクタが変わると、連結全長や軸重などの「合成車両」のスペックが大きく変わる可能性があるため、原則として変更申請ではなく「新規申請」として扱われるケースが多くなります。

「トラクタが増えたら、新しい申請を作る」と覚えておくと安全です。


コンプライアンスの重要な注意点

最後に、絶対に守らなければならないルールをお伝えします。

前述の通り、包括申請の許可証には「合成車両(一番重い数値)」が記載されます。

例えば、合成結果として「総重量40t」の許可が下りたとします。

しかし、実際にその車両(車検証上の最大積載量)で積める重さが「30t」までなら、当然30tまでしか積めません。

「許可証に40tと書いてあるから、40t積んでもいい」ということには絶対になりません。

あくまで、道路法(道路の強さ)としての許可であり、車両運送法(車の強さ)の制限を超えることは許されません。ここを勘違いすると、過積載で検挙されます。

許可証の数値はあくまで「道路審査上の最大値」であり、実際に積載できる重量は車検証の最大積載量までです。この点は必ず現場に周知してください。


まとめ:包括申請で管理の負担を減らす

包括申請は、仕組みさえ理解してしまえば、申請件数を大幅に減らせる有効な手法です。

押さえておくべきポイント

  1. 同じ車種・同じルートの車両をグループ分けする
  2. 合成車両の仕組みを理解し、許可証の数値と車検証の数値が違うことを把握する
  3. 車検証の制限(最大積載量)は必ず遵守する

包括申請を正しく活用すれば、申請業務の効率化と許可証管理の負担軽減を同時に実現できます。