「ナンバーが付いていれば公道を走れる」は大間違い?トラッククレーンなど「構造が特殊」な車両を解説

コラム

1. はじめに:その巨大な車両,許可なしで走っていませんか?

建設現場や大きな物流拠点で見かける、天を突くような巨大なクレーン車や、特殊な形状をしたトレーラ。「これだけ大きいと、運転するだけで一苦労だろうな」と感じたことはありませんか?

実はこれらの車両、単に運転が難しいだけではありません。法律上、「普通のクルマ」とは全く違う特別なルールで管理されているのです。

今回は、特車申請の基本中の基本である「車両の構造が特殊な車両」について、なぜ申請が必要なのか、実務でよく扱う代表例を交えて解説します。


2. そもそも「車両の構造が特殊」とは?

私たちが普段使っている道路には、「このくらいの大きさ・重さなら安全に通れる」という設計上の基準があります。これを「一般的制限値」と呼びます。

【一般的制限値(原則)】

  • :2.5m
  • 長さ:12.0m
  • 高さ:3.8m
  • 総重量:20.0t
  • 最小回転半径:12.0m

普通のトラックは、荷物を積みすぎなければこの範囲に収まります。 しかし、「車両の構造が特殊な車両」とは、積んでいる荷物の有無にかかわらず、車両の構造(ボディサイズ)そのものが特殊なため、一般的制限値を超えてしまう車のことです。

「何も積んでいなくても大きい・重い」わけですから、そのまま走れば道路を壊してしまいます。そのため、道路管理者から許可を得るか、通行可能経路の確認回答を得なければ、公道を走ることはできません。


3. 【実例検証】25tラフタークレーンはなぜ「特殊な車両」なのか?

「構造が特殊」と言われてもピンと来ない方のために、建設現場で最もポピュラーな「25tラフタークレーン(ラフテレーンクレーン)」を例に、実際にどれくらい制限を超えているのか検証してみましょう。

多くのメーカーで採用されている一般的なスペックと、道路の制限値を比較します。

項目 一般的制限値 25tラフター(例) 判定
2.5 m 約 2.62 m × 超過
総重量 20.0 t 約 26.5 t × 超過
長さ 12.0 m 約 11.5 m ○ クリア

いかがでしょうか。 長さはギリギリ収まっていますが、幅は12cmはみ出しており、重量に至っては6.5トンもオーバーしています。

つまり、この車両は「工場から出荷された瞬間から、道路法上の特殊な車両である」ということです。 「今日は荷物を吊らないから」「ただの移動だから」という言い訳は通用しません。公道を1メートルでも走るなら、特車申請が必須なのです。


4. 「構造が特殊」な車両の代表例

さらに詳しく、実務でよく扱う代表的な3つのグループを紹介します。

① 自走式の建設機械(トラッククレーン等)

出典:国土交通省 特殊車両通行許可制度ハンドブック

現場で作業する機械そのものが走るタイプです。

  • トラッククレーン/オールテレーンクレーン 走行用の運転席と、クレーン操作席が分かれている大型タイプです。ブーム(腕)が長く、車体も重いため、特車申請がほぼ確実に必要になります。
  • ホイールクレーン(ラフター等) 先ほど検証した通り、小回りが利くラフターであっても、重量や幅の制限を超えることが大半です。

【重要:一次分解とは?】 これらの車両は、車検証に記載された重量で走行しなければなりません。しかし、あまりに重すぎて橋が耐えられない場合、許可条件として「一次分解(いちじぶんかい)を求められることがあります。 これは、クレーンのブーム(腕)、ジブ、フック、カウンターウェイト(重り)などを取り外し、別のトラックで運ぶことで、車体重量を軽くして走行する方法です。この手間とコストを考慮した運行計画が必要になります。

② 連結車(特例8車種)

トレーラの中には、その特殊な形状から「特例車種」として扱われるものがあります。 これらは「特例8車種」と呼ばれ、一般的なトレーラよりも柔軟な運用が認められています。

出典:国土交通省 特殊車両通行許可制度ハンドブック

【特例5車種】

  1. バン型(箱型の荷台)
  2. タンク型(液体運搬など)
  3. 幌枠型(アコーディオンのような幌)
  4. コンテナ用(海上コンテナ等)
  5. 自動車運搬用(キャリアカー)

出典:国土交通省 特殊車両通行許可制度ハンドブック

【追加3車種】

  • 6. あおり型(強固なあおりを持つ)
  • 7. スタンション型(原木や鋼材を支える柱がある)
  • 8. 船底型(床が低く湾曲している)

【ここがポイント!実務上のメリット】 これらの車種を、適合するトラクタ(2軸の認証トラクタ等)でけん引する場合、通常は10トンまでの駆動軸重(タイヤにかかる重さ)が「11.5トン」まで緩和されるといった特例措置があります。 重い荷物を効率よく運ぶ事業者様にとっては、非常に大きなメリットとなります。

③ 新規格車(増トン車)

高速道路でよく見かける、前面に「20t超」などのワッペンを貼ったトラック。これらも実は「構造が特殊な車両」の一種です。

「高速道路は自由に走れるけれど、降りた瞬間の市道では許可が必要」という特殊な扱いになります。 これについては、別の記事で詳しく解説しています。


5. 最大の落とし穴:「車検」と「特車」は別物!

ここで、多くの事業者様が陥る「最大の罠」について、声を大にしてお伝えします。

「陸運局でナンバーをもらった(車検に通った)んだから、公道を走っていいんでしょ?」

答えは、残念ながら「NO」です。 ここが非常にややこしい点なのですが、法律の管轄が違うのです。

  • 車検(道路運送車両法):「この車は、安全に走れる性能がありますか?」⇒ OKならナンバー交付
  • 特車(道路法):「この車は、道路や橋を壊しませんか?」⇒ OKなら通行許可証交付

つまり、「車検に通った正規ナンバー付きのクレーン車」であっても、特車許可を持たずに公道を走れば、道路法違反(無許可走行)として摘発されます。

特に、新車購入時はディーラーやメーカーが教えてくれることが多いですが、中古車オークションなどで購入した場合、「前の持ち主が申請していたか分からない」まま無許可で走らせてしまうケースが後を絶ちません。


まとめ:特車許可は「オーダーメイドの通行券」

一般的制限値からはみ出してしまう「体の大きな車両(特殊車両)」が、安全に現場までたどり着くためには、「車両ごとのオーダーメイドの通行券(特殊車両通行許可)」が必要です。

  • 「ウチのクレーン、申請出してたっけ?」
  • 「新しく特殊なトレーラを入れる予定だけど、通れる道はあるのかな?」

少しでも不安を感じたら、まずは車検証をご用意の上、当事務所までご相談ください。 車両のスペックと現場のルートを照らし合わせ、最適な申請プランをご提案いたします。