特殊車両通行許可申請(以下、特車申請)の実務において、従来の「窓口申請」からインターネットを利用した「オンライン申請」への移行が急速に進んでいます。
「難しそう」「今のままで問題ない」と考えられがちですが、オンライン申請は単なるペーパーレス化にとどまらず、申請業務にかかる「時間」と「コスト」を大幅に削減する強力なツールです。
本記事では、国の公式マニュアルに基づき、オンライン申請の仕組みと、導入によって得られる具体的な「5つのメリット」を分かりやすく解説します。 初めて申請を行う方や、従来の窓口申請からの切り替えを考えている方は、まず本記事で制度の全体像を確認してください。
オンライン申請とは?
オンライン申請とは、インターネットに接続されたパソコンを利用して、オフィスや自宅にいながら申請書の作成・提出・審査状況の確認・許可証の受け取りまでを一貫して行う仕組みです。
これまでは、申請書類や地図を持参して国道の管理事務所(窓口)へ出向く必要がありましたが、オンライン申請では以下の2つのシステムを使用して手続きを完結させます。
オンライン申請支援システム: 申請データ(車両情報や経路情報)を作成するためのシステムです。地図上で経路を選んだり、車両の寸法を入力したりします。
受付システム: 作成したデータを国のサーバーへ送信(提出)し、審査状況を確認したり、許可証をダウンロードしたりするためのシステムです。
対象となる申請
国のオンライン申請システムは、申請する経路に「国が管理する道路(直轄国道)」または「高速自動車国道」が一部でも含まれている場合に利用可能です。
注意点(国道を通らない場合): ルートが県道や市道だけで完結しており、国が管理する道路を全く通らない場合は、国のシステムは使えません。その際は、以下のいずれかの方法になります。
1. 自治体申請システムを利用する 「自治体申請システム」に参加している自治体であれば、オンライン申請が可能です。 ※ただし、すべての自治体が参加しているわけではありません。未参加の自治体の場合は、従来どおり窓口での申請が必要です。
2. 窓口へ行く システム未対応の自治体へは、直接書類を持参する必要があります。
【補足:ETC2.0搭載車ならもっと便利に!】 もし申請車両に「ETC2.0」が搭載されている場合は、許可証よりも手続きが早く、即時に経路確認ができる「特殊車両通行確認制度」を利用できる可能性があります。
窓口申請と比較した5つのメリット
マニュアルや制度案内には多くのメリットが書かれていますが、実務担当者にとって特に利点の大きい5つのポイントを解説します。
① 24時間いつでもどこでも申請可能 わざわざ窓口に行く必要はありません
これまでは「平日の昼間」に役所の窓口へ行かなければなりませんでしたが、オンラインなら24時間365日(メンテナンス時を除く)、いつでも申請可能です。 早朝や深夜、配車業務の空き時間など、自分の都合の良いタイミングで手続きができ、わざわざ役所まで移動する時間もコストもかかりません。
審査が無事に終わるとメールで通知が届き、許可証は「電子許可証(データ)」としてそのままパソコンからダウンロードできます。
そのため、これまでのように許可証を受け取るためだけに、再び窓口へ出向く必要は一切ありません。 これにより、往復のガソリン代などの交通費はもちろん、窓口での長い待ち時間や移動にかかっていた人件費を削除することができます。
② 過去データの「コピー(参照入力)」で、更新作業が数分で終わります
実務で最も助かるのが、この「データの再利用」です。特車申請には2年ごとの「更新」や、トラックの入れ替えに伴う「変更」がつきものです。これまではその都度、膨大な書類を書き直す必要がありましたが、オンラインなら「過去に許可されたデータ」を呼び出してコピー(参照入力)できます。
• 更新申請(期間延長): 前回のデータの日付を変えるだけで、あっという間に完了します。
• 変更申請(車両入替など): 作成が大変な「経路データ」はそのまま使い回し、変わった車両の情報だけを修正すれば大丈夫です。
ゼロから入力する必要がないため、手間が激減するのはもちろん、書き写し間違いによる「差し戻し(やり直し)」のリスクも大幅に減らすことができます。
③ 審査期間が短縮されます(主要道路なら「自動審査」でスムーズ)
国のマニュアルには「個別審査がない場合は、期間が短縮される」と書かれています。これは簡単に言うと、「人の手によるチェックが不要なら、すぐに終わる」ということです。
システムに登録されている主要な道路(指定道路など)だけを通るルートであれば、コンピューターが「自動審査」を行うため、非常にスムーズに許可が下ります。 また、複数の道路管理者への確認(協議)が必要な複雑なルートであっても、データ連携によってやり取りされるため、紙の書類で申請するよりも手続きが早くなる傾向にあります。
④ デジタル地図で「通行可否」を事前確認(簡易算定)
申請データを送信する前に、システム上で「簡易算定」というシミュレーション機能を使うことができます。これにより、選んだルートが許可されるかどうかを、地図上の「色」で瞬時に判断できます。
このように、「赤色(通行不可)」が出ていないかを事前にチェックすることで、申請後のトラブルや手戻りを未然に防ぐことができます。あらかじめ「通れるルート」を選定してから申請できるため、運行管理者にとって大きな安心材料となります。
⑤ 書類が減ってペーパーレス(車検証添付なし・タブレット表示OK)
【車検証のコピーがいらなくなります】 オンライン申請では、入力したトラックの情報と国のデータをシステムが自動で突き合わせるため、原則として「車検証の写し(コピー)」を添付する必要がありません。 スキャンしたりFAXしたりする手間が省けるので、申請準備がぐっと楽になります。 ※ただし、納車直後の新車などでシステムにデータがまだない場合は、添付が必要になることもあります。
【許可証は「印刷」しなくてOK】 これまでは分厚い許可証ファイルをトラックに積んでおく必要がありましたが、現在はタブレットやノートPCの画面で許可証を表示できれば、紙に印刷して持ち歩く必要はありません(2019年4月〜)。 ドライバーに大量の紙ファイルを持たせる負担がなくなり、車内もスッキリします。
導入に必要な環境とハードル(概要)
オンライン申請を始めるのに、特別な機材はほとんど必要ありません。最低限必要なのは以下の3点だけです。
① パソコンとインターネット環境 スマホだけでは完結しませんが、普段業務で使っているWindowsパソコンとインターネットがあればOKです。
② 車検証と車両の図面(外観図・三面図) 申請にはトラックの詳しいサイズや重さの情報が必要です。 車検証に加え、メーカーから取り寄せた「外観図(三面図)」や、トレーラの場合は「連結検討書」などを手元に用意しておくと、スムーズに入力作業に入れます。
③ 申請用IDの取得(無料) Amazonや楽天のアカウントを作るような感覚で、国土交通省のサイトから「IDとパスワード」を取得します。費用はかかりません。これさえ取れば、すぐにシステムを利用開始できます。
まとめ:窓口申請とオンライン申請の比較
最後に、これまで解説した「窓口申請(従来)」と「オンライン申請」の違いを比較表で整理しました。 コスト、時間、手間のすべてにおいて、オンライン申請がいかに合理的かをご確認ください。
【結論:コストと手間の削減効果は絶大です】 比較表で見ると、その差は歴然です。 特に「移動コスト(交通費・人件費)の完全削減」と「更新作業の効率化」は、業務を繰り返すほどに大きな利益として返ってきます。
最初はパソコンの環境設定やIDの取得に少しハードルを感じるかもしれませんが、「システムの利用料そのものは無料」です。一度環境を整えてしまえば、その後の申請業務(特に繰り返しの更新申請)は劇的に楽になります。
これまで「なんとなく難しそう」と敬遠されていた方も、ぜひこの機会にオンライン申請への切り替えをご検討ください。



