500万円以上の電気工事を受けるために、建設業許可を取ろうとしている。そんなときに見落としやすいのが、電気工事業法の手続きです。
電気工事業では、建設業許可とは別に、電気工事業法に基づく登録・届出・通知が必要になることがあります。
建設業法の「電気工事業の許可」と、電気工事業法の「登録・届出・通知」は別の制度です。建設業許可を取っても、電気工事業法側の手続きまで自動的に済むわけではありません。
特に混同しやすいのが、建設業許可の500万円基準と、電気工事業法の登録・届出・通知の要否です。500万円未満の電気工事であっても、電気工事を業として行うなら、電気工事業法の手続きが必要になることがあります。
先に確かめたいのは、この3点です。
・1件の請負代金が税込500万円以上になるか
・一般用電気工作物等を扱うのか、自家用電気工作物のみを扱うのか
・営業所技術者や主任電気工事士になれる人がいるか
この記事では、電気工事業の建設業許可と電気工事業法の登録・届出・通知の違い、両方必要になる場面、主任電気工事士や営業所技術者の注意点を解説します。
電気工事業では3つの制度を分けて考える
電気工事を業として行う場合、主に3つの法律が関係します。
| 法律 | 見ている対象 | 主な手続き・資格 |
|---|---|---|
| 建設業法 | 一定規模以上の建設工事を請け負う事業者 | 建設業許可(電気工事業) |
| 電気工事業法 | 電気工事を業として営む事業者 | 登録・届出・通知 |
| 電気工事士法 | 電気工事に従事する個人 | 第一種・第二種電気工事士など |
建設業法が問うのは、主に「一定規模以上の工事を請け負える事業者かどうか」です。
電気工事業法は、電気工事業者として保安上の体制を整えているかに関わります。電気工事士法は、現場で作業する人に必要な資格を定めた法律です。
1つの許可や資格ですべてを満たせるわけではありません。電気工事業では、建設業許可、電気工事業法の手続き、電気工事士の資格を分けて考えることが大切です。
500万円以上の電気工事には建設業許可が必要
建設業法上の電気工事業は、建設業許可29業種のうちの1つです。
発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備、照明設備などの工事を請け負う場合、電気工事業に該当することがあります。
建設業許可が求められるのは、軽微な建設工事の範囲を超える工事を請け負うときです。電気工事業の場合、1件の請負代金が500万円以上になる工事を請け負うには、電気工事業の建設業許可が必要です。
この500万円は、原則として消費税を含めて判断します。
一方、500万円未満の電気工事だけであれば、建設業許可がなくても建設業法上は施工できます。
ただし、建設業許可が不要でも、電気工事業法の手続きまで不要とは限りません。電気工事を業として行うなら、登録・届出・通知の対象になることがあります。
電気工事業法の手続きは金額だけでは決まらない
電気工事業法は、電気工事の欠陥による事故を防ぐため、電気工事業者に保安上の体制を求める制度です。
建設業許可の要否は、主に工事金額で判断します。これに対して、電気工事業法の手続きは、扱う電気工作物の種類と、建設業許可の有無によって変わります。
区分は、主に以下の4つです。
| 区分 | 扱う工事 | 建設業許可 | 必要な手続き |
|---|---|---|---|
| 登録電気工事業者 | 一般用電気工作物等 | なし | 登録 |
| みなし登録電気工事業者 | 一般用電気工作物等 | あり | 届出 |
| 通知電気工事業者 | 自家用電気工作物のみ | なし | 通知 |
| みなし通知電気工事業者 | 自家用電気工作物のみ | あり | みなし通知 |
一般用電気工作物等は、一般住宅、商店、小規模店舗などの屋内配線設備をイメージすると分かりやすいです。自家用電気工作物は、中小ビルや工場などの受電設備が中心です。
建設業許可を持たない事業者が一般用電気工作物等の工事を業として行う場合は、登録電気工事業者として登録を受けます。
一方、建設業許可を持つ事業者は、登録を受ける代わりに、みなし登録電気工事業者として届出を行う扱いです。
つまり、建設業許可を取っただけで、電気工事業法の手続きが終わるわけではありません。許可とは別に、電気工事業法上の届出が必要になります。
※ 電気工事士法上の軽微な工事や、施工を伴わない設計・検査のみの場合など、個別に扱いが変わることがあります。
一般用を扱う営業所には主任電気工事士が必要
一般用電気工作物等を扱う登録電気工事業者・みなし登録電気工事業者は、営業所ごとに主任電気工事士を置かなければなりません。
主任電気工事士は、電気工事業法上の保安管理者のような役割です。資格の名称ではなく、営業所に置く管理者の役割を指します。
主任電気工事士になれるのは、以下のいずれかです。
- 第一種電気工事士
- 第二種電気工事士で、免状交付後に電気工事の実務経験が3年以上ある人
第二種電気工事士の場合、資格を持っているだけでは足りません。免状交付後3年以上の実務経験が必要です。
また、その経験を証明に使えるかどうかは、勤務先が電気工事業の登録・届出をしていたかにも左右されます。登録や届出のない事業所での経験だと、証明の段階で問題になることがあります。
自家用電気工作物のみを扱う通知・みなし通知の事業者には、主任電気工事士の選任義務はありません。ただし、工事に従事する資格者の要件は別に見なければなりません。
自家用電気工作物の電気工事では、工事内容に応じて第一種電気工事士などの資格が問題になります。
営業所技術者は資格と経験の見方に注意する
建設業許可の要件は、電気工事業でも基本的には他の業種と共通です。
主な要件は5つあります。
- 経営業務の管理責任者等がいること
- 営業所技術者がいること
- 誠実性があること
- 財産的基礎があること
- 欠格要件に該当しないこと
このうち、電気工事業で特に注意したいのが営業所技術者です。
多くの専門工事では、資格がなくても10年以上の実務経験を証明できれば、営業所技術者になれる場合があります。
しかし、電気工事業では、無資格のまま積んだ実務経験だけで進めるのは危険です。電気工事士法により、電気工事は原則として電気工事士でなければ従事できないためです。
一般建設業の電気工事業で営業所技術者になれる主な資格には、以下のようなものがあります。
- 第一種電気工事士
- 第二種電気工事士
- 1級電気工事施工管理技士
- 2級電気工事施工管理技士
- 電気主任技術者
- 技術士(電気電子部門など)
ただし、資格によっては実務経験の上乗せが必要です。
第二種電気工事士は、免状交付後3年以上の実務経験が必要になります。電気主任技術者についても、免状交付後5年以上の実務経験が求められます。
資格名だけで判断せず、免状交付日、実務経験の期間、勤務先の登録・届出状況まで見ておきましょう。
特定建設業を取る場合は要件が厳しくなる
電気工事業は、指定建設業の1つです。
指定建設業とは、特定建設業許可を取るときに、営業所技術者の要件がより厳しくなる業種をいいます。電気工事業のほか、土木一式、建築一式、管、鋼構造物、舗装、造園などが該当します。
電気工事業で特定建設業許可を取る場合、特定営業所技術者には、1級国家資格者または国土交通大臣特別認定者が必要です。
たとえば、以下のような資格が候補になります。
- 1級電気工事施工管理技士
- 技術士(電気電子部門など)
第二種電気工事士に実務経験を加える形では、特定建設業の要件は満たせません。
特定建設業が必要になるのは、元請として受けた1件の工事について、下請に出す契約金額の合計が5,000万円以上になる場合です。建築一式工事では8,000万円以上が基準になります。
大きな元請工事を見据えている場合は、一般建設業で足りるのか、特定建設業まで必要になるのかを早めに分けておきましょう。
営業所技術者・主任電気工事士・電気工事士の違い
電気工事業では、「技術者」「工事士」といった似た言葉が出てきます。役割を分けると、以下のようになります。
| 名称 | 根拠 | 役割 |
| 営業所技術者 | 建設業法 | 建設業許可の営業所に置く技術者 |
| 主任電気工事士 | 電気工事業法 | 一般用電気工事の作業を管理する人 |
| 電気工事士 | 電気工事士法 | 現場で電気工事に従事する資格者 |
1人が複数の役割を兼ねること自体は珍しくありません。たとえば、第一種電気工事士の人が、建設業許可の営業所技術者になり、電気工事業法の主任電気工事士も兼ねる形です。
ただし、制度としては別々です。資格者が1人いるからといって、建設業許可も電気工事業法の届出も自動で済むわけではありません。
両方必要なら建設業許可を先に進める
500万円以上の電気工事を見据えているなら、基本的には以下の順序で進めると手続きが重複しにくくなります。
- まず、電気工事業の建設業許可を取得する
- その後、建設業許可を前提に、みなし登録またはみなし通知の届出を行う
建設業許可を先に取ったうえでみなし登録の届出をすれば、通常の登録電気工事業者として新規登録するより、手続きが軽く済みます。
反対に、先に登録電気工事業者として登録を受け、その後に建設業許可を取ると、その登録は効力を失います。その場合、あらためてみなし登録の届出が必要です。
ただし、500万円未満の電気工事を業として先に始める場合は話が別です。建設業許可を取る前であっても、電気工事業法の登録や通知が必要になることがあります。
これから500万円以上の工事を狙うのか。すでに小規模な電気工事を業として行っているのか。この違いで、先に進める手続きが変わります。
みなし登録では登録証が出ない点に注意する
5登録電気工事業者には、登録証が交付されます。
一方、建設業許可を持つ事業者が行うみなし登録・みなし通知では、通常の登録証は交付されません。所管庁によっては、開始届出の受理通知書や受理証が交付されることがあります。
元請から「電気工事業の登録証を出してください」と言われても、みなし登録の事業者には登録証そのものがない場合があります。
そのときは、建設業許可通知書、みなし登録の届出書控え、受理通知書など、どの書類で代替できるかを相手に伝える必要があります。
無許可・無登録・無届出には罰則がある
電気工事に関わる罰則は、どの法律に違反したかで変わります。
| 違反の内容 | 根拠 | 罰則の例 |
| 無許可で500万円以上の建設工事を請け負う | 建設業法 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金など |
| 登録を受けずに電気工事業を営む | 電気工事業法第36条 | 1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金など |
| みなし登録の届出をせず、または虚偽の届出をする | 電気工事業法第40条 | 2万円以下の罰金 |
| 通知が必要なのに通知をしない | 電気工事業法第40条 | 2万円以下の罰金 |
| 一定の届出漏れ・標識掲示義務違反・帳簿保存義務違反など | 電気工事業法第42条 | 1万円以下の過料 |
建設業許可も登録もないまま一般用電気工作物等の工事を業として行うと、無登録営業として罰則の対象になります。
一方、建設業許可を持つ事業者がみなし登録の届出を忘れた場合は、第40条の届出漏れとして扱われます。登録を受けていない事業者と同じ扱いではありませんが、届出漏れも法令違反です。
無登録・無届出のまま電気工事を続けると、元請の審査や契約上のチェックで支障が出かねません。
なお、現在は「懲役」「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されています。古い資料では「懲役」と書かれていることがありますが、現在の表記では拘禁刑として扱います。
よくある質問
- 電気工事業の建設業許可を取れば、電気工事業法の登録は不要ですか?
-
不要にはなりません。
建設業許可を持つ事業者は、電気工事業法上は「みなし登録電気工事業者」または「みなし通知電気工事業者」として扱われます。
ただし、これは建設業許可だけで手続きが完了するという意味ではありません。建設業許可とは別に、電気工事業法の届出が必要です。
- 500万円未満の電気工事だけなら、手続きは不要ですか?
-
建設業許可は不要です。
ただし、電気工事を業として行うなら、電気工事業法の登録または通知が必要になることがあります。
建設業許可の500万円ラインと、電気工事業法の登録・通知が必要になるラインは別物です。
- 第二種電気工事士でも営業所技術者になれますか?
-
なれる可能性があります。
ただし、第二種電気工事士の場合は、免状交付後の実務経験が必要です。その経験が、電気工事業の登録や届出をしている事業所での経験かどうかも重要になります。
第一種電気工事士や電気工事施工管理技士など、実務経験の上乗せが不要な資格もあります。自社の資格者がどのルートに当てはまるかを見ておきましょう。
- 電気工事の経験が10年以上あれば、無資格でも営業所技術者になれますか?
-
電気工事業では、無資格の実務経験だけで営業所技術者になれると考えるのは危険です。
電気工事は、原則として電気工事士でなければ従事できません。そのため、単に「10年以上経験がある」というだけでは足りず、資格の有無、免状交付日、実務経験の内容を見られます。
- 建設業許可と電気工事業法の登録はどちらを先に進めればよいですか?
-
500万円以上の電気工事を見据えて両方そろえるなら、建設業許可を先に取り、その後にみなし登録の届出を行う流れが進めやすいです。
先に登録電気工事業者として登録を受けてから建設業許可を取ると、その登録が効力を失い、みなし登録の届出をやり直すことになります。
ただし、建設業許可を取る前に電気工事を業として始める場合は、先に登録や通知が必要になることがあります。
- 建設業許可を更新した後も、電気工事業法の手続きは必要ですか?
-
必要です。建設業許可を更新すると、許可年月日や許可番号が変わります。みなし登録・みなし通知の届出内容にも関係するため、電気工事業法側で変更届が必要になります。
建設業許可の更新だけで終わらせないよう、更新時は電気工事業法の変更届もセットで見ておきましょう。
まとめ
電気工事業では、建設業法、電気工事業法、電気工事士法の3つを分けて考える必要があります。
建設業法の電気工事業許可は、500万円以上の電気工事を請け負うための許可です。一方、電気工事業法の登録・届出・通知は、電気工事を業として営むための手続きです。
500万円未満の工事だけであっても、電気工事業法の手続きが必要になることがあります。
また、電気工事業では、主任電気工事士や営業所技術者の要件も重要です。第二種電気工事士の実務経験、電気主任技術者の実務経験、登録・届出のある事業所での経験、特定建設業に必要な1級資格者など、他の業種より細かく見るべき点があります。
電気工事業の建設業許可を取る場合は、許可申請だけでなく、電気工事業法の届出や更新後の変更届まで含めて進めましょう。
お困りの際は当事務所へ
電気工事業の建設業許可は、建設業許可の5要件に加えて、電気工事業法の登録・届出・通知も関係します。
特に、以下のような場合は早めに状況を洗い出しておくと進めやすくなります。
- 元請から建設業許可や登録証の提出を求められた
- 500万円以上の電気工事を請け負う予定がある
- 第二種電気工事士の実務経験を使えるか分からない
- 建設業許可とみなし登録の順番で迷っている
- 建設業許可の更新後に、電気工事業法の変更届が必要か知りたい
当事務所では、葛飾区を拠点に、東京都全域および周辺地域の建設業許可申請をサポートしています。
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