電気通信工事業の建設業許可|500万円基準・必要資格・電気工事との違い

電気工事業の建設業許可と電気工事業法の登録・届出の違いを解説するアイキャッチ

オフィスのLAN配線、アクセスポイントの設置、防犯カメラ、インターホン、電話回線、携帯電話基地局。こうした工事を1件税込500万円以上で請け負う場合は、原則として電気通信工事業の建設業許可が必要になります。

混同しやすいのが、電源配線やコンセント増設などの電気工事です。電気工事業と電気通信工事業は、建設業許可上の別業種。電気工事業の許可を持っていても、税込500万円以上の電気通信工事を単独で請け負えるわけではありません。

この記事では、電気通信工事業に含まれる工事、税込500万円基準、電気工事との違い、営業所技術者等に使える資格・実務経験を解説します。

目次

電気通信工事業に含まれる工事

電気通信工事とは、有線・無線の電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備などを設置する工事のことです。

代表的な工事は次のとおりです。

・LANケーブルや光ファイバーの配線 ・電話回線、インターネット回線の配線
・無線LANアクセスポイントの取付け・配線 ・防犯カメラやインターホンの取付け・配線
・テレビ共聴設備、館内放送設備の設置 ・アンテナ、無線設備、携帯電話基地局の設置
・データ通信設備、情報制御設備の設置 ・テレビ電波障害防除設備の設置

実務では「弱電工事」と呼ばれることもありますが、弱電工事は建設業法上の正式な業種名ではありません。設備の名称だけでなく、何を設置し、どのような配線や接続を行うのかによって業種を判断します。

税込500万円以上の工事には許可が必要

電気通信工事は建築一式工事ではないため、1件の請負代金が税込500万円以上になる場合は、原則として建設業許可が必要になります。

税込500万円未満の工事だけを請け負う場合は、建設業法上の軽微な建設工事に当たり、原則として許可は不要です。

金額を判断するときは、次の点にも注意します。

・消費税を含める
・注文者が支給する材料の市場価格と運送費を加える
・正当な理由なく契約を分割した場合は合計額で判断する

たとえば、請負代金が税込480万円でも、注文者から支給される通信機器やケーブルなどの市場価格を加えて500万円以上になれば、許可が必要になります。

電気工事業との違い

電気工事業と電気通信工事業は、設置する設備の役割が異なります。

比較項目電気工事業電気通信工事業
主な対象電気を供給するための設備音声・映像・データなどを伝送する設備
主な工事発変電設備、送配電線、引込線、構内電気設備、照明設備など有線・無線通信設備、ネットワーク設備、データ通信設備、放送設備など
必要な建設業許可電気工事業電気通信工事業

電気工事は、発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備などを設置する工事です。一方、電気通信工事は、有線・無線通信設備、ネットワーク設備、情報設備、放送設備などを設置する工事を指します。

両者は建設業許可上の別業種であり、営業所技術者等に求められる資格や実務経験もそれぞれ異なります。

防犯カメラ工事の区分

防犯カメラ本体の固定や、LANケーブル・同軸ケーブルによる通信配線は、電気通信工事に当たります。

一方、カメラや録画機器を動かすために、分電盤から電源を引く、コンセントを増設するといった作業は電気工事。同じ防犯カメラ工事でも、通信側と電源側で必要な許可業種が分かれることがあります。

電気工事と電気通信工事をまとめて請け負う場合

電気工事と電気通信工事を、それぞれ独立した工事として税込500万円以上で請け負う場合は、原則として両方の許可が必要になります。

一方、主たる工事を完成させるために必要な別業種の工事は、附帯工事として一体で請け負える場合もあります。たとえば、LAN設備の新設が主たる工事で、その施工に伴って小規模な電源配線を行うケースです。

附帯工事かどうかは、主に次の点から判断します。

・主たる工事が明確である
・主たる工事を完成させるために必要である
・主たる工事と一連
・一体で施工される

電源工事が独立した目的を持つ場合や、単独の契約として切り離されている場合は、附帯工事とは扱われません。

また、建設業法上の附帯工事に当たる場合でも、電気工事を実際に施工するには、電気工事士法上の作業資格や電気工事業法上の登録・届出などを別途クリアする必要があります。

建設業許可を持つ事業者が電気工事業を営む場合は、みなし登録電気工事業者などとして届出が求められることもあります。

電気通信工事業の許可要件

電気通信工事業でも、建設業許可に共通する次の要件を満たす必要があります。

・経営業務を適正に管理できる体制 ・営業所技術者等 ・財産的基礎 ・社会保険への適切な加入 ・請負契約に関する誠実性 ・欠格要件に該当しないこと

このうち、申請する業種によって内容が変わるのが営業所技術者等の要件です。

営業所技術者等に使える主な資格

一般建設業の営業所技術者等に使える代表的な資格は、次のとおりです。

資格必要な実務経験
1級電気通信工事施工管理技士なし
2級電気通信工事施工管理技士なし
技術士(電気電子部門または総合技術監理部門〈電気電子〉)なし
電気通信主任技術者資格取得後5年以上
対象となる工事担任者資格取得後3年以上

1級電気通信工事施工管理技士と対象部門の技術士は、一般建設業だけでなく、特定建設業の営業所技術者等や監理技術者の資格にも対応します。2級電気通信工事施工管理技士が対応するのは、一般建設業の営業所技術者等と主任技術者です。

工事担任者は、原則として次のいずれかの資格者証が対象です。

・第一級アナログ通信と第一級デジタル通信の両方
・総合通信

資格取得後、電気通信工事について3年以上の実務経験が必要です。また、原則として令和3年4月1日以降に試験へ合格した者、養成課程を修了した者または総務大臣の認定を受けた者に限られます。旧区分の資格者証を持っている場合は、現在の資格区分への読み替えや取得時期を個別に確認します。

指定学科と実務経験を使う場合

国家資格がない場合でも、指定学科の卒業後に必要な実務経験を積むことで、一般建設業の営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。

電気通信工事業の指定学科は、電気工学または電気通信工学に関する学科です。

必要な実務経験年数は、次のとおりです。

学歴必要な実務経験
大学・短期大学・高等専門学校の指定学科を卒業卒業後3年以上
高校・中等教育学校の指定学科を卒業卒業後5年以上
専門学校の指定学科を卒業卒業後5年以上
専門学校の指定学科を卒業し、専門士または高度専門士の称号を取得卒業後3年以上

一般建設業では、指定学科を修めた大学卒業者は3年以上、高校卒業者は5年以上の実務経験が必要です。専門学校卒業者は原則5年以上ですが、専門士または高度専門士に該当する場合は3年以上に短縮されます。

申請時には、卒業証明書と実務経験を証明する資料を提出します。学科名だけでは指定学科に該当するか判断できない場合は、履修証明書や成績証明書などの提出を求められることがあります。

資格や指定学科がない場合は10年実務経験

資格や指定学科の学歴がない場合でも、電気通信工事について10年以上の実務経験を証明できれば、一般建設業の営業所技術者等になれる可能性があります。

実務経験は、単に通信会社へ10年間勤務していたことを示すだけでは足りません。どの期間に、どのような電気通信工事へ従事したのかを、次のような資料で証明します。

・工事請負契約書 ・注文書 ・請求書 ・入金記録 ・工事台帳 ・在籍期間を示す資料

機器の販売、設定、点検、保守だけの業務は、電気通信設備を設置する工事の経験として認められないケースも。契約書や請求書の工事名だけでなく、実際の施工内容まで整理しておくことが重要です。

電気工事業の実務経験とは分けて考える

電気通信工事業では、資格がなくても、適法に行われた電気通信工事について10年以上の経験を証明できれば、営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。

電気工事業にも建設業法上の実務経験ルートはありますが、電気工事士法により、資格がなければ従事できない作業があります。そのため、無資格期間中に行った電気工事を実務経験として使えるかは、作業内容と当時の資格状況を踏まえて慎重に判断します。

電気工事と電気通信工事の両方を申請する場合は、それぞれの業種に対応する工事経験を分けて証明することが必要になります。

よくある質問

電気工事業の許可があれば電気通信工事も請け負えますか?

電気工事業と電気通信工事業は別業種です。税込500万円以上の電気通信工事を単独で請け負う場合は、原則として電気通信工事業の許可が必要になります。

LAN配線工事はどの業種ですか?

LANケーブルの配線、ネットワーク機器やアクセスポイントの取付け・配線は、原則として電気通信工事業に区分されます。機器を置いて設定するだけの場合は、建設工事に当たらないことも。

資格がなくても許可を取得できますか?

電気通信工事について10年以上の実務経験を証明できれば、資格がなくても一般建設業の営業所技術者等になれる可能性があります。指定学科を卒業している場合は、3年または5年の実務経験で足りるケースもあります。

保守契約でも建設業許可が必要ですか?

点検や設定だけであれば、建設工事に当たらない場合があります。ただし、保守契約の中で機器交換、配線更新、新たな設備の取付けを行う場合は、実際の作業内容によって電気通信工事に該当。

建設業許可と電気工事業法の手続きはどちらが先ですか?

まだ電気工事業を始めておらず、500万円以上の工事を予定している場合には、建設業許可を先に取得する方法があります。その後にみなし登録・みなし通知の手続きへ進む流れです。

すでに電気工事を業として行っているときは、建設業許可を待たず、現在の状況に応じた登録または通知が求められます。

LAN工事と電源工事をまとめて請け負えますか?

それぞれを独立した工事として税込500万円以上で請け負う場合は、原則として電気通信工事業と電気工事業の両方の許可が必要です。

電源工事がLAN工事に伴う附帯工事に当たる場合でも、電気工事士法上の資格や電気工事業法上の手続きは別に満たす必要があります。

まとめ

電気通信工事業には、LAN、電話回線、防犯カメラ、インターホン、放送設備、無線設備、携帯電話基地局など、音声・映像・データを伝送する設備の設置工事が含まれます。1件の請負代金が税込500万円以上となる場合は、原則として電気通信工事業の建設業許可が必要です。

一方、電源配線やコンセントの増設は、電気工事に区分されます。通信設備と電源設備を一体で請け負う場合は、工事の内容や請負金額に加え、主たる工事に伴う附帯工事に当たるかどうかも含めて、必要な許可業種を判断します。

一般建設業の営業所技術者等の要件は、主に次のいずれかで満たします。

・電気通信工事施工管理技士などの対象資格
・指定学科卒業後の一定期間の実務経験
・電気通信工事に関する10年以上の実務経験

まずは、自社の施工内容、請負金額、保有資格、これまでの工事資料を整理し、電気通信工事業の許可だけで足りるのか、電気工事業の許可も必要なのかを確認しましょう。

お困りの際は当事務所へ

「自社の工事が電気工事と電気通信工事のどちらに当たるか分からない」「資格がなくても実務経験で申請できるか判断できない」。こうした段階でも構いません。

施工内容、請負金額、資格者の状況、過去の工事資料を整理し、必要な許可業種と申請書類をご案内いたします。

当事務所は葛飾区を拠点に、東京都内の建設業許可申請に対応しております。

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