建設業許可は、申請書を出せば必ず取得できるものではありません。
経営業務の管理体制、営業所技術者等、財産的基礎、社会保険、誠実性、欠格要件。満たすべき条件は複数にわたります。さらに厄介なのが、経験や常勤性の実態があっても、資料で証明できなければ申請に進めない点です。
東京都知事許可の新規申請手数料は9万円。正式受付後に取り下げても、不許可になっても、納付した手数料は戻ってきません。
申請を急ぐ前に、自社がどの要件で止まりそうか整理しておきましょう。
この記事では、建設業許可が取れない主な原因と、すぐに要件を満たせない場合の対応を解説します。
建設業許可でつまずきやすい7つのポイント
建設業許可は、一部の要件だけを満たしていても取得できません。
申請前に見直したいポイントは主に次の7つです。
- 経営業務の管理体制を満たせない
- 営業所技術者等を置けない
- 財産的基礎を満たせない
- 欠格要件に該当する人がいる
- 社会保険の手続きが済んでいない
- 誠実性に問題がある
- 経験や常勤性を資料で証明できない
重要なのは、「許可が取れない」とひとまとめに考えないことです。
不足している要件によって、必要な対応は変わります。人材を探すのか、証明資料を集めるのか、資金を整えるのか。原因ごとに区分して考えていきましょう。
経営業務の管理体制を満たせない
建設業許可では、建設業の経営業務を適正に管理できる体制が求められます。
一般的なのは、常勤役員等に一定の経営経験があるパターンと、もう一つは、一定の経験を持つ常勤役員等と直接補佐者を組み合わせて要件を満たすパターンです。
この要件で止まりやすいのは、次のような場合です。
・代表者の役員経験が必要年数に届かない
・個人事業主時代の資料が残っていない
・役員経験はあるが、その会社が建設業を営んでいたことを示せない
・社内に候補者がいない
・候補者はいても、申請会社で常勤できない
代表者本人に十分な経験がなくても、道が閉ざされたわけではありません。現在の役員、個人事業主時代の経験、役員に次ぐ立場での経験などを使える場合もあります。
ただし、口頭で経歴を説明するだけでは足りないのが実務です。
登記事項証明書、確定申告書、工事契約書、注文書、請求書。こうした書類で、経験期間と建設業を営んでいた事実を裏づける必要があります。
営業所技術者等を置けない
建設業許可を受けるには、営業所ごとに、取得したい業種に対応する営業所技術者等を置かなければなりません。営業所技術者等になれるかどうかは、資格・学歴・実務経験などから判断します。
たとえば次のような場合に、申請は止まってしまうでしょう。
・対象業種に対応する資格者がいない
・資格はあるが、取得したい業種に対応していない
・実務経験はあるが、必要年数に届かない
・経験年数は足りるが、工事資料を出せない
・営業所に常勤できない
・他社で営業所技術者等や常勤役員等を務めている
資格者がいなくても方法はあります。指定学科卒業後の実務経験、施工管理技術検定の第一次検定合格後の実務経験、10年以上の実務経験など、複数の経路が用意されています。
なお、同じ営業所で双方の要件を満たせば、常勤役員等と営業所技術者等を一人で兼ねることも可能です。
財産的基礎を満たせない
一般建設業の新規申請では、主に次のいずれかで財産的基礎を示します。
・自己資本が500万円以上ある
・500万円以上の資金調達能力がある
法人の場合、自己資本は直前決算の貸借対照表などから判断します。ここで注意したいのが、資本金と自己資本は同じではないという点です。
資本金が500万円未満でも、利益の蓄積によって自己資本が500万円以上あれば、財産的基礎を満たせる場合もあります。反対に、資本金が500万円あっても、累積赤字により自己資本が500万円を下回ってしまうケースもあるのです。
自己資本が不足する場合は、金融機関の残高証明書などで500万円以上の資金調達能力を示す方法を検討しましょう。残高証明書には有効期間があるため、申請時期に合わせた準備が欠かせません。
欠格要件に該当する人がいる
申請者や役員等が欠格要件に該当する場合、建設業許可は取得できません。
法人では代表者だけでなく、取締役、執行役、一定の相談役や顧問、政令で定める使用人なども対象になり得ます。
主な欠格要件は次のとおりです。
・破産手続開始の決定を受け、復権していない
・不正な手段による許可取消しから5年を経過していない
・拘禁刑以上の刑を受け、一定期間を経過していない
・一定の法令違反による罰金刑から5年を経過していない
・暴力団員等に該当する
・暴力団員等が事業活動を支配している
刑の種類、執行終了日、執行猶予の状況によって、判断は変わってきます。
過去の刑罰や行政処分が気になるなら、申請後ではなく、準備段階で該当の有無を整理しておくのが安全でしょう。
社会保険の手続きが済んでいない
加入義務があるのに社会保険の手続きをしていない場合、建設業許可の要件を満たせません。
対象になるのは主に次の保険となります。
・健康保険
・厚生年金保険
・雇用保険
健康保険・厚生年金保険と雇用保険では、加入義務が生じる基準が異なります。
法人は原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所。個人事業所については、業種や常時使用する従業員数などによって判断が分かれます。
雇用保険は、適用要件を満たす労働者を雇用している場合に手続きが必要となります。
「従業員が少ないから何も加入しなくてよい」とは限りません。事業所ごとに加入義務を判断していきましょう。
誠実性に問題がある
建設業許可では、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが求められます。
不正な行為とは、請負契約の締結や履行に関する詐欺、脅迫、横領などです。
不誠実な行為には、工事内容、工期、天災などによる損害の負担について、契約に反する行為をすることが含まれます。通常の意見の食い違いや、単発の取引トラブルがあっただけで、直ちに許可が取れなくなるわけではありません。
ただし、過去の処分歴や契約上の問題から、不正・不誠実な行為をするおそれが明らかと判断される事情がある場合には注意が要ります。
経験や常勤性を資料で証明できない
実務上、特につまずきやすいのが証明資料の壁です。
要件そのものを満たしていても、それを客観的な書類で示せなければ、申請には使えません。
たとえば次のようなケースです。
・経営経験はあるが、過去の確定申告書が残っていない
・役員期間は分かるが、その会社の建設業実績を示せない
・実務経験は10年以上あるが、工事内容が分かる資料がない
・請求書はあるが、入金記録につながらない
・常勤しているが、申請会社との関係を示す資料が足りない
・前職の会社から証明を受けられない
申請書を作る前に、候補者ごとに次の内容を整理しておきましょう。
- どの会社に在籍していたか
- どのような立場だったか
- どの業務や工事を担当したか
- 何年間の経験があるか
- どの資料で証明できるか
資料がない場合には、別の書類で代替できるか、別の経験期間を使えるかを検討します。
内容が不足しているからといって、実態と異なる資料を作成してはいけません。虚偽申請は、罰則や許可取消しにつながるおそれのある行為です。
すぐに許可を取れない場合の対応
要件が不足していても、原因が分かれば今後の方針は立てられます。
許可が不要な工事に限って営業する
建築一式工事以外では、1件の請負代金が税込500万円未満の工事は、軽微な建設工事として原則許可は不要です。
建築一式工事の場合、対象となるのは税込1,500万円未満の工事、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事です。
ただし、1つの工事を契約上だけ分割して、基準未満に見せることはできません。
また、建設業許可が不要でも、電気工事業登録や解体工事業登録など、別の手続きが必要になる場合もあります。
要件を満たす人材を確保する
常勤役員等や営業所技術者等の候補者がいない場合、方法は二つです。社内の経歴を見直すか、要件を満たす人を採用するかです。
ただし、名前だけを借りることは認められません。申請会社で実際に勤務し、常勤役員等または営業所技術者等として職務を行う体制が必要となります。
採用前に、経験、資格、他社での勤務状況、証明資料まで見ておきましょう。
経験や資格を積み上げる
現時点で必要な経験年数に届いていないなら、将来の許可取得に向けて経験を積む道もあります。
代表者や従業員が対象資格を取得することも選択肢の一つ。すぐに申請できる方法ではありませんが、経験期間や職務内容を記録し、契約書や工事資料を残しておくことで、将来の申請に備えられます。
資金を整えて申請時期を見直す
財産的基礎を満たせない場合、利益の積み上げ、増資、借入れなどを含めて資金計画を見直します。
決算内容によって自己資本の判定が変わるため、次回の決算後に申請した方が進めやすい場面もあるでしょう。
無理に申請を急ぐのではなく、許可を取りたい時期から逆算して準備を進めてください。
受付後は申請手数料が返還されない
東京都知事許可の新規申請手数料は9万円。東京都では、申請書類の窓口審査を経て、手数料を納付した後に正式受付となります。
正式受付後に申請を取り下げた場合や、審査の結果、不許可になった場合でも、納付した手数料は戻ってきません。
再申請する場合には、不足していた要件を整えたうえで、改めて申請手数料を納付することになります。
申請前に、次の項目を一通り見直しておきましょう。
・経営業務の管理体制
・営業所技術者等
・財産的基礎
・社会保険
・誠実性
・欠格要件
・経験と常勤性の証明資料
よくある質問
- 建設業許可が取れない原因で多いものは何ですか?
-
経営業務の管理体制、営業所技術者等、財産的基礎、証明資料。この4つで止まるケースが多く見られます。
特に、経験はあるものの、それを資料で示せない場合には準備に時間がかかります。
- 代表者に5年の役員経験がなければ申請できませんか?
-
直ちに申請できないとは限りません。
個人事業主時代の経験、現在のほかの役員、役員に次ぐ立場での経験、直接補佐者を置く体制など、活用できる選択肢はいくつかあります。
- 資格者がいなくても営業所技術者等を置けますか?
-
資格がなくても、指定学科卒業後の実務経験や、10年以上の実務経験などで要件を満たせる場合があります。
ただし、取得したい業種に対応する経験を、資料で証明することが前提となります。
- 自己資本が500万円未満でも申請できますか?
-
500万円以上の資金調達能力を示せれば、申請できる可能性があります。
代表的な方法は、金融機関が発行する残高証明書。申請時期に合わせて用意してください。
- 不許可になった場合、手数料は返ってきますか?
-
正式受付後に不許可となった場合、納付した申請手数料は返還されません。
再申請の際は、改めて申請手数料が必要となります。
- 書類が足りない場合は申請できませんか?
-
別の資料で代替できる場合や、別の経験期間を使える場合もあります。
ただし、実態と異なる内容を申請書や証明書に記載することはできません。まずは手元の資料を整理し、どの期間を証明できるか見直しましょう。
まとめ
建設業許可が取れない原因は、経営業務の管理体制、営業所技術者等、財産的基礎、欠格要件、社会保険、誠実性、証明資料など多岐にわたります。
申請前にどの要件が不足しているかを整理すれば、必要な対応が見えてきます。人材を確保するのか、経験を積むのか、資格を取るのか、資金を整えるのか。方向性を決めるにはまず現状把握です。
東京都知事許可の新規申請手数料は、正式受付後に取り下げや不許可となっても返還されません。要件と証明資料を整理したうえで、申請に進みましょう。
お困りの際は当事務所へ
「自社が建設業許可を取れる状態か分からない」「どの要件が不足しているか判断できない」。そんな段階でも構いません。
現在の経験、資格、決算内容、手元の資料を確認し、申請の見込みと必要な準備をご案内いたします。
当事務所は葛飾区を拠点に、東京都内の建設業許可申請に対応しております。

