個人事業で建設業許可を持っている場合、法人を作ればその許可もそのまま使えると思われがちです。
しかし、個人の許可が自動的に法人へ移るわけではありません。何も考えずに廃業届を出してしまうと、許可が失効し、法人で新規申請からやり直すことになります。
承継認可の対象になるのは、建設業に関する事業の全部を譲渡・合併・分割する場合です。許可業種の一部だけを選んで承継することはできません。承継しない業種がある場合は、承継前に一部廃業の手続きが必要になります。
一方で、建設業を完全にやめる場合や、一部の業種だけを返す場合は、廃業届が必要です。提出期限は、廃業事由が発生してから30日以内。届出をする人や必要資料は、廃業の理由によって変わります。
廃業届を出す前に、承継で許可を残せるか検討する
建設業許可を返す場面では、最初に廃業なのか、承継なのかを分けて考えます。
建設業をやめるだけなら廃業届です。
一方で、法人成り・事業譲渡・合併・分割・相続などで事業を続ける相手がいるなら、承継の認可申請を使える可能性があります。
| 承継の認可申請 | 廃業届 | |
|---|---|---|
| 使う場面 | 法人成り・事業譲渡・合併・分割・相続で事業を続ける | 建設業をやめる/一部の業種だけ返す |
| 許可の扱い | 許可を引き継げる可能性がある | 全部廃業では許可が失効する |
| 許可番号 | 原則として残せる可能性がある | 全部廃業では消滅する |
| 空白期間 | 認可されれば避けやすい | 全部廃業後に取り直す場合は空白が生じる |
| 主な根拠 | 建設業法第17条の2・第17条の3 | 建設業法第12条 |
| 行政手数料 | 無料 | 無料 |
次に当てはまる場合は、廃業届を出す前に、承継で進められないか検討します。
- 個人事業から法人へ切り替える
- 建設業の事業を別会社へ譲渡する
- 会社の合併や分割で建設業を引き継ぐ
- 個人事業主が亡くなり、家族や後継者が事業を続ける
承継制度が使えない場合や、承継先が許可要件を満たせない場合は、廃業届へ進むことになります。
大切なのは、許可を返す前に、残せる選択肢がないかを検討することです。
廃業届が必要になる5つのケース
建設業許可の廃業届が必要になるのは、主に次の5つです。
- 個人事業主が死亡したとき
- 法人が合併により消滅したとき
- 法人が破産手続開始の決定により解散したとき
- 法人が合併・破産以外の理由で解散したとき
- 許可を受けた建設業を廃止したとき
5つ目の「建設業を廃止したとき」には、すべての業種をやめる場合だけでなく、一部の業種だけを返す場合も含まれます。
たとえば、とび・土工工事業と内装仕上工事業の許可を持っていて、内装仕上工事業だけをやめる場合です。この場合は、内装仕上工事業について一部廃業の届出をします。
なお、個人事業主の死亡や法人の合併消滅でも、必ず廃業届になるとは限りません。相続や合併による承継認可を使える場合は、廃業届ではなく承継の手続きで進めます。
廃業届を出す人は、廃業の理由で変わる
廃業届は、許可を持っていた本人だけが出すとは限りません。
廃業の理由によって、届出をする人が変わります。
| 廃業の理由 | 届出をする人 |
|---|---|
| 個人事業主が死亡したとき | 相続人 |
| 法人が合併により消滅したとき | 消滅した法人の役員であった人 |
| 法人が破産手続開始の決定により解散したとき | 原則として破産管財人 |
| 法人が合併・破産以外の理由で解散したとき | 清算人 |
| 建設業を廃止したとき | 個人事業主本人、または法人の代表者・役員 |
個人事業主が亡くなった場合は、相続人が届出をします。相続人が複数いる場合は、そのうちの一人が代表して進めることが一般的です。
法人が破産した場合は、原則として破産管財人が届出をします。すでに破産手続きが終わっている場合などは、扱いが変わることもあります。提出前に、管財人や提出先と進め方を確認しておきます。
全部廃業と一部廃業では、許可の残り方が違う
廃業届には、全部廃業と一部廃業があります。
返す範囲によって、許可番号や残る業種の扱いが変わります。
全部廃業は、許可そのものが失効する
全部廃業は、許可を受けている建設業をすべてやめる場合です。
この届出をすると、建設業許可そのものが失効します。許可番号も残りません。将来また500万円以上の工事を請けたい場合は、新規申請からやり直すことになります。
一部廃業は、返す業種だけが失効する
一部廃業は、複数ある許可業種のうち、一部だけを返す場合です。
たとえば、次のようなケースです。
- とび・土工工事業は続ける
- 内装仕上工事業だけやめる
この場合、内装仕上工事業の許可だけが失効します。残る業種の許可番号と有効期間は、原則としてそのまま続きます。
ただし、一部廃業では、廃業届だけで終わらないことがあります。廃業する業種に紐づいていた営業所技術者の削除や、許可業種の変更を反映する届出が必要になる場合があります。
どの業種を残すのか、どの技術者がどの業種に紐づいているのかを先に分けておくと、提出後の差し戻しを防ぎやすくなります。
東京都知事許可で廃業届を出すときの必要書類
東京都知事許可の場合、基本になる書類は廃業届(様式第二十二号の四)です。
あわせて、廃業の理由に応じた資料を用意します。
必要になる資料は、廃業の理由や届出をする人によって変わります。
| 廃業の理由 | 主な資料の例 |
|---|---|
| 個人事業主の死亡 | 戸籍謄本など、死亡と相続人であることが分かる資料 |
| 法人の合併消滅 | 解散登記後の登記事項証明書など |
| 法人の破産解散 | 破産管財人の資格証明書、破産管財人の印鑑証明書など |
| 法人のその他の解散 | 清算人であることが分かる登記事項証明書、清算人の印鑑証明書など |
| 建設業の廃止 | 個人は本人確認資料または印鑑証明書、法人は登記事項証明書や代表印の印鑑証明書など |
以前の許可通知書の写しを求められる場面もありますが、東京都の廃業届で常に必須と断定するのは避けたほうが安全です。
まずは廃業届と、廃業理由に応じた資料を中心に用意します。
提出先は、東京都知事許可であれば東京都都市整備局です。
大臣許可の場合は、主たる営業所を管轄する地方整備局等が提出先になります。
廃業届の提出に、行政手数料はかかりません。
廃業届の期限は30日以内
廃業届は、廃業の理由が発生した日から30日以内に提出します。
たとえば、次のような日が起算点になります。
- 個人事業主が死亡した日
- 法人が合併により消滅した日
- 破産手続開始の決定により解散した日
- 会社が解散した日
- 許可を受けていた建設業を廃止した日
経管や営業所技術者が退任した場合は、まず変更届の問題になります。後任を置けるなら、変更後2週間以内の届出で対応します。
一方で、後任を置けず、許可を受けていた建設業を続けないと決めた場合は、廃業届の対象になります。この場合は、要件を欠いた日や建設業を廃止した日をもとに、廃業年月日を記載する扱いになることがあります。
期限を過ぎてしまった場合でも、放置せずに提出します。
廃業届を出し忘れた場合は、10万円以下の過料の対象です。これは秩序罰であり、拘禁刑や罰金のような刑事罰ではありません。
ネット上では、「廃業届を出さないと拘禁刑や罰金」と説明されていることがあります。しかし、これは無許可営業や虚偽記載などの罰則と混同している可能性があります。
廃業届の不提出そのものは、建設業法第55条の過料です。ただし、過料が軽いからといって放置してよいわけではありません。実体のない許可が残ったままになると、将来の再申請や承継手続きで余計な手間が増えることがあります。
廃業ではなく承継で許可を残せる場面
建設業をやめるのではなく、別の人や会社が事業を続けるなら、承継の認可申請を検討します。
承継が問題になるのは、主に次の場面です。
| 承継の場面 | 認可申請のタイミング | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 事業譲渡 | 効力発生日の前に事前認可 | 建設業法第17条の2 |
| 合併 | 効力発生日の前に事前認可 | 建設業法第17条の2 |
| 分割 | 効力発生日の前に事前認可 | 建設業法第17条の2 |
| 相続 | 死亡後30日以内に認可申請 | 建設業法第17条の3 |
承継の認可を受ければ、新規許可を取り直さずに、建設業者としての地位を引き継げる場合があります。許可の空白期間を避けやすく、元請との取引や進行中の工事にも影響を出しにくくなります。
ただし、承継先が無条件で許可を引き継げるわけではありません。
承継先にも、経管、営業所技術者、財産的基礎、欠格要件など、通常の許可要件が求められます。
特に注意したいのは、次のようなケースです。
- 法人成りするが、法人側で経管の常勤性を示せない
- 後継者はいるが、営業所技術者の資格や経験が足りない
- 相続人が複数いて、全員の同意を取るのに時間がかかる
- 事業譲渡の予定日は近いが、契約書や承継資料がそろっていない
事業譲渡・合併・分割は、原則として事前認可です。
相続は死亡後30日以内に認可申請が必要です。
承継を使えるかどうかは、要件と資料の両方で決まります。廃業届を出す前に、承継できる体制を組めるか検討しておくことが大切です。
よくある質問
- 建設業許可の廃業届は、いつまでに出す必要がありますか?
-
廃業事由が発生した日から30日以内に提出します。個人事業主の死亡、法人の解散、建設業の廃止など、理由によって起算日が変わります。期限を過ぎた場合でも、放置せずに提出します。
- 廃業届を出し忘れると罰則はありますか?
-
廃業届を出し忘れた場合は、10万円以下の過料の対象です。拘禁刑や罰金のような刑事罰ではありません。ただし、実体のない許可が残ると、将来の再申請や承継手続きで説明が必要になることがあります。
- 法人成りする場合、個人の許可は廃業して取り直すしかありませんか?
-
必ず取り直しになるわけではありません。条件を満たせば、個人の建設業者としての地位を法人へ承継できる可能性があります。承継が認められれば、許可の空白期間を避けやすくなります。
- 一部の業種だけ廃業することはできますか?
-
できます。複数の業種許可を持っている場合、使わない業種だけを一部廃業できます。残る業種の許可番号と有効期間は、原則としてそのまま続きます。ただし、営業所技術者の変更届などが必要になる場合があります。
- 個人事業主が亡くなった場合、必ず廃業届になりますか?
-
必ず廃業届になるわけではありません。建設業を続けない場合は、相続人が廃業届を出します。一方で、相続人が事業を続ける場合は、相続による承継認可申請を使える可能性があります。どちらも死亡後30日以内の対応が必要です。
- 廃業届と承継認可のどちらを選ぶべきですか?
-
建設業を完全にやめるなら廃業届です。法人成り、事業譲渡、合併、分割、相続などで事業を続ける相手がいるなら、まず承継認可を検討します。分かれ目は、承継先が経管・営業所技術者・財産的基礎などの許可要件を満たせるかどうかです。
まとめ
建設業許可の廃業届は、廃業の理由が発生してから30日以内に提出します。届出をする人は、死亡・合併消滅・破産・解散・建設業の廃止など、理由によって変わります。
廃業届を出し忘れた場合は、10万円以下の過料の対象です。刑事罰ではありませんが、放置すると将来の再申請や承継手続きで手間が増えることがあります。
特に注意したいのは、法人成り・事業譲渡・合併・分割・相続です。
このような場面では、廃業届で許可を返す前に、承継で許可を残せないかを検討しておきましょう。
お困りの際は当事務所へ
建設業許可の廃業届は、提出期限が30日以内と短く、廃業理由によって届出者や必要資料が変わります。
また、法人成り・事業譲渡・相続を伴う場合は、廃業届ではなく承継の認可申請で許可を残せることもあります。
当事務所では、葛飾区を拠点に、東京都全域および周辺地域の建設業許可申請、廃業届、承継認可申請をサポートしています。
新規申請は9.9万円〜(税込)。
廃業届・承継認可は手続きの内容によって報酬が変わるため、個別にお見積りします。行政への手数料は、廃業届・承継認可とも無料です。
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