元請として下請に発注する金額の合計が5,000万円(建築一式は8,000万円)以上になるなら、一般建設業の許可では対応できません。すでに建設業許可を持っていても、このライン以上の下請契約を結ぶには特定建設業の許可が要ります。
取り違えやすいのは、「5,000万円」が元請として受注した工事全体の金額ではない点です。判定するのは、その工事で下請に発注する金額の合計です。受注額が3億円でも、下請に出す合計が5,000万円に届かなければ一般建設業で対応できます。
2025年2月1日の改正で、この基準は4,500万円から5,000万円へ(建築一式は7,000万円から8,000万円へ)引き上げられました。
特定建設業が必要になる金額(2025年2月1日改正後)
| 工事の区分 | 改正前 | 改正後(2025年2月1日〜) |
|---|---|---|
| 建築一式工事以外 | 4,500万円 | 5,000万円以上 |
| 建築一式工事 | 7,000万円 | 8,000万円以上 |
元請として発注者から直接請け負った工事について、下請に出す金額の合計がこのライン以上になれば、特定建設業の許可が必要です。
引き上げの背景は資材価格・人件費の上昇です。同じ内容の工事でも請負金額が上がってきたため、従来のラインのままでは特定建設業を求められる範囲が実態より広がりすぎる、という判断でした。
5,000万円の対象は受注額ではなく下請発注額
特定建設業の判定でいちばん取り違えやすいのが、5,000万円の計算対象です。
元請として受注した金額ではありません。元請として下請に発注する金額の合計です。
- 3億円の工事を受注し、下請に出す合計が3,000万円 → 一般建設業で対応できる
- 1億円の電気工事を元請として受注し、下請に出す合計が5,000万円 → 特定建設業が必要
複数の下請業者に分けて発注しても、1件の工事についての合計で判定します。一社あたりの契約を5,000万円未満に分けても、基準を下回ることにはなりません。金額は消費税込みで計算します。
実務では、見積の段階で下請に出す予定額を積み上げておくと迷いません。注意したいのは、工事の途中で追加発注が重なり、気づけば合計がラインを超えていたという展開です。ラインに近い工事なら、発注のたびに累計を数え直してください。
なお、元請が下請業者に提供する材料等の価格は、下請代金に含めません。下請業者が自ら調達し、請負代金の一部として請求する材料費は下請代金に含まれます。
建築一式工事は8,000万円で判定する
特定建設業の金額基準は、建築一式工事とそれ以外で分かれています。元請として受注した工事が建築一式工事なら8,000万円、電気工事・管工事・内装仕上工事などの専門工事なら5,000万円。どちらのラインで判定するかは、発注者から直接請け負った工事の種類で決まります。
建築一式工事は、新築や増築のように多くの専門工事を取りまとめて施工するため、下請への発注額も膨らみやすい工事です。
建築一式の許可があっても、専門工事の許可をすべて兼ねるわけではありません。判定の入口はあくまで発注者から直接請け負った工事の種類で、そこに紐づくラインに下請発注額の合計を照らします。
発注者から「建築一式で頼みたい」と言われた工事でも、中身が内装だけ、電気だけという契約なら、専門工事として扱われる可能性があります。契約書の工事名だけで決めつけず、請け負った工事の実態から業種を判断してください。
一般建設業で対応できる3つのケース
次のいずれかに該当すれば、一般建設業の許可で対応できます。
- 自社で施工する場合:下請を使わず自社施工なら、受注額にかかわらず一般でよい
- 下請の立場で受ける場合:自分が元請でなければ、金額にかかわらず一般でよい
- ラインに届かない場合:元請でも、下請発注の合計が5,000万円(建築一式は8,000万円)未満なら一般でよい
特定建設業が問題になるのは、元請として下請に発注する金額の合計がライン以上になるときだけです。
現場では、元請から「そちらは特定を持っていますか」と聞かれて不安になる下請の方もいます。特定建設業が求められるのは発注者から直接請け負う元請だけで、一次下請が二次下請にいくら発注しても、特定の許可は要りません。
同一の業種で一般と特定を両方持つことはできません。たとえば内装仕上工事業について一般と特定を同時に保有する扱いはなく、一般から特定へ移るには般特新規申請という独立した手続きが要ります。業種が異なれば、ある業種は一般・別の業種は特定という組み合わせも可能です。
ライン以上の下請契約を一般許可のまま結んだ場合のリスク
一般建設業の許可のまま、元請工事について5,000万円(建築一式は8,000万円)以上となる下請契約を結ぶことはできません。違反すると、3年以下の拘禁刑(旧:懲役)または300万円以下の罰金の対象となり、情状によっては両方が科されます。両罰規定があるため、法人にも1億円以下の罰金が科される可能性があります。
過度に怖がる必要はありません。基準額以上の下請契約は、特定建設業の許可を取得した後に締結する必要があります。申請中はまだ許可がない状態なので、審査期間も見込んで早めに動いてください。
なお、罰則の呼び方は2025年6月施行の改正刑法で懲役から拘禁刑に変わりました。古い資料では「3年以下の懲役」と書かれていることがあります。
同時に引き上げられた現場技術者の配置基準(混同注意)
2025年2月の改正では、下請金額のラインと同時に、現場技術者の配置・専任に関する金額基準も動きました。紛らわしいので、別の数字として区別してください。
| 基準 | 改正前 | 改正後(2025年2月1日〜) |
|---|---|---|
| 監理技術者の配置が必要な下請金額 | 4,500万円(建築一式7,000万円) | 5,000万円(建築一式8,000万円) |
| 現場専任が必要な請負金額(主任・監理) | 4,000万円(建築一式8,000万円) | 4,500万円(建築一式9,000万円) |
監理技術者の配置基準は、特定建設業のラインと連動して動きます(5,000万円/8,000万円)。
一方、現場専任の基準は、元請・下請を問わず、その工事1件の請負金額で判定します。公共性のある施設や多数の者が利用する施設などに関する重要な建設工事では、請負金額が4,500万円(建築一式は9,000万円)以上になると、原則として主任技術者または監理技術者を専任で置きます。個人住宅を除くと、ほとんどの工事がこの対象です。
前段の対象工事であれば、一般建設業のままの会社でも、請負金額が4,500万円以上になると現場専任が必要です。特定建設業かどうかとは別に動く基準なので、案件ごとにそれぞれ判定してください。
営業所技術者(旧:専任技術者・専技)は各営業所に置く人で、現場の主任技術者・監理技術者とは別です。営業所の話か現場の話かで、参照する金額が変わります。
特定営業所技術者の「指導監督的実務経験」は4,500万円のまま
ここは特定建設業の許可を取るときの技術者要件の話です。下請契約の5,000万円ラインとは別の数字として読んでください。
特定建設業の許可で特定営業所技術者(旧:特定専任技術者)になるには、1級国家資格が原則です。指定建設業7業種以外なら、指導監督的実務経験でも認められます。この基準は「元請として4,500万円以上の工事を2年以上指導・監督した経験」で、2025年2月改正後も4,500万円のまま据え置かれています。
下請金額のライン(5,000万円)とは別系統の数字です。改正前は偶然どちらも4,500万円でしたが、いまは離れています。取り違えないようにしてください。
よくある質問
- 元請として3億円の工事を受注しました。特定建設業の許可はいりますか?
-
受注額だけでは決まりません。下請に出す金額の合計で判定します。下請への発注合計が5,000万円(建築一式は8,000万円)に届かなければ、一般建設業の許可で対応できます。自社施工なら特定建設業の許可は不要です。
- 下請として5,000万円以上の工事を受ける場合、特定建設業の許可がいりますか?
-
いいえ、いりません。特定建設業で問われるのは、元請として下請に発注する金額です。下請の立場で受けるだけなら、金額にかかわらず一般建設業の許可で足ります。
- 複数の下請業者に分けて発注すれば、ラインを下回りますか?
-
下回りません。契約を分割しても、1件の工事についての下請発注合計で判定されます。消費税込みの合計で数えてください。
- 5,000万円への改正はいつからですか?さかのぼって特定が必要になりますか?
-
2025年2月1日から適用されています。さかのぼっての適用はなく、改正はむしろ一般建設業で対応できる範囲を広げる方向です。これから5,000万円以上の下請契約を結ぶ予定があるなら、契約前までに般特新規申請を行い、特定建設業の許可を取得しておく必要があります。
- 般特新規申請の審査中に、5,000万円以上の下請契約を結んでもいいですか?
-
結べません。契約を締結する時点で、特定建設業の許可を受けていることが求められます。申請中はまだ一般建設業のままです。工期が迫っている場合も、契約日を許可取得後にずらせないか、発注者と相談してみてください。
まとめ
特定建設業の許可が必要になるのは、元請として下請に出す金額の合計が5,000万円(建築一式は8,000万円)以上になるときです。2025年2月1日の改正で、4,500万円・7,000万円から引き上げられました。
判定の対象は受注額ではなく、下請発注額の合計(消費税込み)。8,000万円ラインで判定するかどうかは、発注者から直接請け負った工事が建築一式かどうかで決まります。下請を使わない場合や下請の立場で受ける場合は、金額にかかわらず一般建設業で対応できます。現場技術者の配置・専任の基準も同時に動いているため、営業所の話か現場の話かで参照する数字を切り分けてください。
迷ったら、判断の順番はこうです。まず、発注者から直接請け負う元請の工事かどうか。次に、その工事が建築一式か専門工事か。最後に、下請へ発注する合計(税込)が5,000万円または8,000万円以上になるか。この順に当てはめれば、特定建設業の要否はぶれません。
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