重さ指定道路なら25トンまでOK?配車担当者が知っておきたい「指定道路」の罠

コラム

「このルートは重さ指定道路(国道)だから、25tまでなら許可なしで走れる」

実務の現場でよく耳にする判断ですが、実はここに特車申請において最も陥りやすい「」が潜んでいます。「指定道路=無条件に緩和される」という思い込みは、知らず知らずのうちに法令違反を招き、行政処分や荷主からの信頼失墜という重大なリスクを孕んでいます。

本コラムでは、2024年問題や将来の自動運転時代を見据えたコンプライアンス強化の一環として、指定道路における制限値緩和の仕組みと、実務家が絶対に見落としてはいけない「3つの罠」について深掘りします。


1. 特車判定の物差し「一般的制限値」の再確認

まず大前提として、日本の道路は一定の構造基準により造られています。道路法および車両制限令に基づき、原則として以下の「一般的制限値」を一つでも超える車両は「特殊な車両」として扱われます。

【一般的制限値一覧】

区分 項目 一般的制限値
寸法 高さ 3.8m
重量 総重量 20.0t

原則はあくまで「20トン・3.8メートル」です。これを踏まえた上で、例外としての「指定道路」を見ていきましょう。


2. 指定道路:なぜ制限が緩和されるのか

「指定道路」とは、道路管理者が道路構造の保全および交通の危険防止上、支障がないと認めて指定した路線のことです。物流の効率化を支える動脈として、以下の2種類が整備されています。

① 重さ指定道路(最大25tまで緩和)

この道路では、総重量の一般的制限値が最大25.0tまで引き上げられます。主に高速自動車国道や主要な国道が該当します。ただし、緩和されるのは「総重量」のみであり、幅や軸重などの制限値は一般的制限値のままである点に注意が必要です。

② 高さ指定道路(4.1mまで緩和)

トンネルや高架下など、高さに余裕がある道路として指定された路線では、高さ制限が4.1mまで引き上げられます。背高国際海上コンテナ(9ft6in)などの通行には不可欠なネットワークです。


3. 実務担当者がハマる「指定道路」3つの罠

ここからが本題です。「指定道路を通るから大丈夫」という判断には、ベテランの配車担当者でも見落としがちな3つの「実務的な罠」が隠されています。

罠①:25tの緩和は「車両諸元」に左右される

「重さ指定道路を走れば、どんな車でも25tまでOK」

これは大きな間違いです。緩和される総重量は、道路のスペックだけでなく、車両の最遠軸距(最前軸から最後軸までの距離)によって厳密にランク分けされています。

【最遠軸距と最大総重量の関係】

最遠軸距(d) 緩和される重量
5.5m 未満 20t(緩和なし)
5.5m 以上 〜 7.0m 未満 22t
7.0m 以上 25t

※車長が短い場合、さらに制限がかかる場合があります。

例えば、ダンプやミキサー車のようなホイールベースが短い車両は、たとえ立派な重さ指定道路上であっても、橋梁への負荷集中を避けるために「20tまで(緩和なし)」という制限を受けることがあります。

「増トン車だから大丈夫」と過信せず、自社の車検証に記載された「最遠軸距」を正確に把握することが、配車ミスを防ぐ第一歩です。

罠②:看板(標識)がない指定道路の存在

指定道路を識別する際、道路上の案内標識(「25」や「4.1」と書かれた青い円形標識)を確認するのが一般的です。

しかし、これらは「特に必要となる箇所」に設置されるものであり、標識がなくても官報等で公示されている指定道路は多数存在します。

「看板がないから一般的制限値だ(20tまでしか積めない)」と過剰に恐れたり、逆に「指定道路のはずなのに看板がないから通っていいのか迷う」といった現場の混乱を避けるためには、最新の「道路情報便覧」で正確なデータを確認する習慣をつけるべきです。

罠③:ルートの「連続性」という最大の壁

これが実務上、最も重大な罠です。

出発地から目的地までの経路のうち99%が「重さ指定道路」であったとしても、出発地の倉庫から大通りに出るまでの数百メートル、あるいは目的地の現場へ入る交差点の一角が「指定外の道路(一般的制限値の道)」であれば、どうなるでしょうか?

答えは、「その運行全体がアウト(要申請)」となります。

経路にわずか一区間でも指定外の道路が含まれる場合、その区間を通行するためには「特車許可」を取得しなければなりません。積荷を下ろしていない状態で指定外道路に入った瞬間、それは「無許可走行」となります。

「ラストワンマイル」にこそ、最大の落とし穴があるのです。


4. なぜ「罠」を避けることが重要なのか

なぜこれほどまでに細かいルールを守らなければならないのでしょうか。それは、日本の道路インフラを守るためです。

国土交通省のデータによれば、全交通のわずか0.3%にすぎない重量違反車両が、道路橋の劣化原因の約9割(90%)を占めているという衝撃的な事実があります。

道路へのダメージは「重量の12乗」に比例するため、わずかな超過や、不適合な車両での通行が、橋梁の寿命を劇的に縮めてしまうのです。

そのため、悪質な重量超過違反(一般的制限値の2倍以上など)が確認されれば、即座に告発や社名公表の対象となります。

コンプライアンスがもたらす「実利」

一方で、法令を遵守することには大きな経営的メリットもあります。

2025年以降の運用ルールでは、ETC2.0を搭載し、違反履歴のないGマーク認定事業所などの優良事業者に対しては、許可の有効期間が最大4年間に延長される優遇措置が取られています。

適正な許可取得は、ドライバーの安全を守るだけでなく、荷主企業からの信頼を勝ち取り、ビジネスの持続可能性を高めるための「最強の武器」となるのです。


5. まとめ:明日からの実務に活かすために

「重さ指定道路なら25tまでOK」という言葉には、以下の重要な前提条件がつきます。

「車両のサイズ(軸距)が基準を満たし、かつ経路のすべてが指定道路であれば」

最後に、この仕組みを分かりやすく例えてみましょう。

指定道路を活用することは、「規格外の巨漢(重量車)が、特別に床を補強した廊下(指定道路)を通らせてもらうこと」に似ています。

  • 廊下がどれだけ丈夫であっても、本人の足のサイズ(軸距)が補強の仕様に合っていなければ床を一点集中で踏み抜いてしまいます。(罠①)
  • 補強された廊下に辿り着くまでの「普通の床(指定外道路)」をそのまま歩けば、あっという間に底が抜けてしまいます。(罠③)

目的地まで安全に荷物を届けるためには、自分のサイズと地面の強度を、出発前に地図でよく確認する必要があります。

実務においては、以下の3点を徹底してください。

  1. 車検証から自社車両の「最遠軸距」を確認する。
  2. 標識の有無だけで判断せず、道路情報便覧を活用する。
  3. 経路が途切れなく指定道路で繋がっているかをチェックする。

複雑な経路確認や、自社車両が緩和を受けられるかどうかの判定に迷われた際は、特車申請の専門家である行政書士までお気軽にご相談ください。