全長25mのダブル連結トラック:2025年改正と輸送効率化の展望

コラム

現在、日本の物流業界は「2024年問題」に伴うドライバー不足や、燃料費の高騰によるコスト増という、かつてない局面を迎えています。この課題を解決する具体的な手段として、多くの運送事業者が導入を進めているのが「ダブル連結トラック」です。

全長25m(新幹線1両分に相当)という長大なこの車両は、1名のドライバーで大型トラック2台分の荷物を運べる極めて高い輸送能力を備えています。2025年3月には「特殊車両通行確認制度」の対象に追加されるなど、実務面での利便性も大きく向上しました。

本記事では、特車業務に携わる行政書士の視点から、ダブル連結トラックの概要と2026年現在の最新の規制、そして導入にあたっての留意点を解説します。


1. ダブル連結トラックの定義と緩和要件

ダブル連結トラックとは、1台のトラクターで2台のトレーラーを牽引するフルトレーラ連結車を指します。物流の効率化を目的に、現在は一定の条件を満たすことで最大25.0メートルまでの全長が認められています。

緩和対象となる車両は、主にトラクタおよびトレーラが「バン型」であるものに限定されています。重要物流道路などの特定のルートにおいて、一般的制限値は以下のように大幅に引き上げられます。

一般的制限値の引き上げ(重要物流道路)

原則:高速自動車国道・その他
総重量20t
(重さ指定道路 25t)
車高3.8m
(高さ指定道路 4.1m)
車長12.0m
重要物流道路等
ダブル連結トラック
(21m超車両)
総重量最大 44t
車高4.1m
車長25.0m

※車両長、軸数、軸距等に応じた個別の制限あり

2. 規制緩和の経緯:21メートルの壁を超えて

日本の道路運送車両法および道路法において、長年フルトレーラの長さの上限は事実上21.0メートルまでとされてきました。

それ以上の長大な車両については、交差点での右左折時の軌跡や制動性能など、安全確保の観点から公道での運用が極めて厳しく制限されていた経緯があります。そのため、運送業界の実務レベルでは長らく「21メートル超の走行は現実的に不可能」という認識が一般的でした。

しかし、近年の深刻な労働力不足への対策として、2019年に国はこの上限を25.0メートルへと正式に緩和しました。これは、単に許可が出たわけではなく、高度な安全装置の搭載やドライバーの教育を徹底することを条件に、特例として認められたものです。かつての「21メートルの壁」を技術と制度で乗り越えたのが、現在のダブル連結トラックです。


3. 実務上の転換点:2025年3月からの「確認制度」適用

実務において最も大きな変化は、2025年3月24日からダブル連結トラックが「特殊車両通行確認制度(新制度)」の対象となった点です。

これまでの特殊車両通行許可(特車許可)では、申請から許可交付までに平均で約20日から26日程度の審査期間が必要でした。この待機期間は、高額な投資をして導入した車両が公道を走れず、車庫に留め置かれたまま稼働できないという状況を生んでいました。これが、多くの運送事業者にとって収益化を遅らせる実務上のボトルネックとなっていたのです。

新制度への移行によりオンライン上での即時判定が可能となり、審査待機時間は大幅に短縮されています。この恩恵を享受するためには、以下の6つの要件を確実に満たす必要があります。

25m車走行のための6つの必須条件

① 車両の条件
トラクタ・トレーラ共に「バン型」であり、全長25m以内であること。
② 通行経路の条件
重要物流道路等を主とし、一般道走行を最小限にすること。
③ 車両装置の条件
後述する「16項目の保安要件」をすべて満たすこと。
④ 積荷の条件
危険物、大量の液体、動物の積載は禁止。
⑤ 運転者の条件
大型・けん引免許の経験と特別な訓練修了が必須。
⑥ 通行の条件
追い越し禁止や縦列走行の禁止などを遵守すること。

4. 車両装置の条件:特例走行に必須となる16項目の保安要件

新幹線1両分もの巨体を公道で安全に運用するため、車両には最新の安全装置の装着が厳格に義務付けられています。これらは緩和を受けるための必須要件であり、一つでも欠けると走行は認められません。

具体的には、以下の16項目をすべて装備している必要があります。

車両装置の条件:特例走行に必須となる16項目の保安要件

  • (1)アンチロックブレーキシステム
  • (2)衝突被害軽減ブレーキ又は自動間距離制御装置
  • (3)車両安定性制御システム
  • (4)車線逸脱警報装置
  • (5)後部視界を確保するためのカメラシステム及びモニター
  • (6)デジタルタコグラフ
  • (7)自動軸重計測装置(OBW)等
  • (8)エアサスペンション
  • (9)ディスクまたはドラムブレーキ
  • (10)リターダ(補助ブレーキ)
  • (11)デフロックまたはトラクションコントロール
  • (12)間接視界確保装置
  • (13)被けん引車のバックライト
  • (14)反射材を用いた車体輪郭のマーキング
  • (15)車長・「追越注意」表示プレート
  • (16)業務支援用ETC2.0車載器

※緩和を受けるためにはこれらすべての装備が必須となります。

特に「ETC2.0」や「バックカメラ&モニター」は、走行中の安全確保だけでなく、国のシステムによる通行管理においても重要な役割を担っています。これらの装備を整えることは、単なる法令遵守にとどまらず、プロとしての安全意識の証明でもあります。

5. 運転者にも求められる要件

ダブル連結トラックの運転には、大型・けん引免許に加え、実務経験に基づいた厳格な条件が課されています。

要件は大きく2つのパターンに分かれています。一つは「経験重視」のパターンで、大型運転業務に直近5年以上従事し、けん引免許を5年以上保有している熟練者です。もう一つは「訓練重視」のパターンです。大型運転3年・けん引1年以上の経験があれば、「最低12時間以上の特別な実技訓練」を修了し、かつ直近3年間無事故・無違反であれば、この巨大車両を運転する資格が得られます。

項目 条件1(経験重視) 条件2(訓練重視)
業務経験 大型運転業務に直近5年以上従事 大型運転業務に直近3年以上従事
免許 けん引免許5年以上保有 けん引免許1年以上保有
安全教育 最低2時間の訓練 最低12時間の訓練
その他 直近3年間無事故・無違反

6. ダブル連結トラックを支える、日本のトップランナーたち

現在、この「物流の切り札」を実際に運用し、物流網の再編をリードしているのは、先進的な取り組みを行う大手企業やメーカー各社です。

  • 物流各社による「共同輸送」:ヤマト運輸、佐川急便、日本通運、西濃運輸、日本郵便の5社は、ライバルの垣根を超えて25m車両をシェアし、幹線輸送の効率化を進めています。
  • メーカー同士の連携:サントリーやアサヒなどの飲料メーカー、亀田製菓やブルボンといった菓子メーカーは、共同配送によって積載効率を最大化させています。
  • 小売業の安定供給:イオン九州などの小売大手も、拠点間の大量輸送に導入し、店舗への安定供給とドライバーの負荷軽減を実現しています。

福山通運などの大手運送会社でも25mダブル連結トラックの導入が進んでおり、共同配送などの効率化に役立てられています(写真は国土交通省資料より引用)。」

7. まとめ:法令遵守がもたらす「持続可能な物流」

2026年現在、ダブル連結トラックは「即時回答で即出発」できる、実用性の高い手段へと進化しました。

しかし、その自由度と引き換えに、「通行確認回答書の備え付け」や「通行記録の1年間保存」といった、より厳格なコンプライアンス管理が義務付けられている点に注意が必要です。正しい知識を味方につけ、機動的な輸送を安心して続けるために、まずは自社の運行計画が最新のルールに沿っているかを確認することから始めてみてください。


出典リンク(参考資料)