遺品整理に古物商許可は必要?片付け料金との相殺と廃棄物の扱い

遺品整理で家具や家電、骨董品などを依頼者から買い取って売るなら、古物商許可が必要です。片付け料金から買取代金を差し引く精算も、品物を買い取る取引にあたります。

一方で、古物商許可は家庭ごみを運べる許可ではありません。家庭から出る廃棄物の収集運搬には、市区町村の許可や委託という別の手続きがあります。

この記事では、許可が必要な取引と廃棄物の扱い、現場での買取と開業前の準備を順に説明します。

目次

許可が必要な取引と不要な取引

許可が必要かどうかは、「遺品整理業」という名称ではなく、実際にどんな取引をするかで決まります。

遺品整理での取引古物商許可
依頼者の品物を買い取り、店頭やネットで販売する必要
品物の販売を委託され、売れた代金を依頼者に精算する必要
仕分けや清掃だけを受け、買取や委託販売はしない不要

買い取った品物を自社の店舗で売らず、古物市場や別の買取業者へ売る場合も、許可が必要になります。中古品を買い取って売る事業にあたるためで、売り先が一般のお客さまでも業者でも同じです。

品物を預かって、売れた分だけ代金を依頼者へ渡す委託販売の形でも、許可が必要です。仕入代金を先に払っていない場合も、扱いは変わりません。契約書には、買取と委託販売のどちらなのかを書いておきましょう。

民間団体が認定する遺品整理士の資格は、古物商許可の代わりにも、廃棄物を運ぶ許可の代わりにもなりません。資格を持っていても、中古品を買い取って売るなら古物商許可が別に必要です。

片付け料金と相殺する買取

片付け料金から買取代金を差し引く精算は、買取として扱います。

片付けの料金が5万円、家具と家電の買取が1万円なら、依頼者の支払いは差額の4万円になります。現金を渡していなくても、1万円で品物を買い取る取引が含まれています。

見積書や精算書には、少なくとも次の内容を書きましょう。

  • 片付けや清掃などの作業内容と料金
  • 買い取る品物と数量
  • 品物ごとの買取代金
  • 差し引き後に依頼者が支払う金額
  • 廃棄する物の処理を誰が担当するか

「部屋一式で○万円」と総額だけを書くと、どの品物を買い取り、どの品物を処分するのかが分かりません。品物の一覧や写真を見積書と対応させておけば、残すつもりだった物を誤って持ち出すミスも防げます。

本人確認や台帳の記録が必要かどうかは、相殺後の差額ではなく、買取代金の合計で判断します。

家庭ごみは古物商許可で運べない

家庭から出る廃棄物を集めて運ぶことは、古物商許可の範囲に入りません。中古品の買取と販売が、この許可の対象です。

家庭ごみの収集運搬は、市区町村の許可を受けた一般廃棄物収集運搬業者か、市区町村から委託を受けた業者が行います。許可なく運ぶと、廃棄物処理法の罰則の対象です。

産業廃棄物収集運搬業の許可を持っていても、家庭ごみは運べません。遺品整理業者が片付けた場合も、家庭から出た廃棄物は産業廃棄物ではなく、一般廃棄物のままです。

提携先の処分業者が許可を持っていても、現場から自社の車で運ぶには、自社にも収集運搬の許可か市区町村の委託が必要です。「処分は提携業者に任せる」と考えて、許可のない自社の車に廃棄物を積み込むことは避けてください。

依頼者から市区町村の許可業者へ直接依頼してもらうなど、自治体の決まりに沿った方法を、契約の前に選ぶことになります。契約を結ぶ人と現場で引き取る人、運ぶ人と最終的に処分する人は、それぞれ違うことがあります。誰が何を担当するのかも、見積りの前に書き出しましょう。

無料回収にあたる場合

買取代金を払わずに、無償か引取料をもらって引き取った品物を売るだけなら、古物商許可は必要ありません。解釈運用基準でも、この形は古物営業の規制から除外されています。

ただし、「無料回収」と名乗っても、家庭から出た物をすべて中古品として持ち帰れるようにはなりません。廃棄物にあたるかどうかは品物の状態と排出された状況、取引価値、持ち主の意思などから総合的に判断されます。

値のつかない家財まで一括で引き取る事業は、その部分が家庭ごみの運搬になります。市区町村に相談し、許可業者との役割分担を決めてください。

買取の開始と許可申請でお困りなら

遺品整理に買取を加えると決めた時点で、許可申請の書類と、見積書や本人確認の流れの準備を並行して始めることになります。買取を無償の引き取りにとどめるかどうかや、法人と個人のどちらの名義で申請するかも含めて、当事務所へご相談ください。

現場で買い取るときの注意

売却の権限

品物を自由に売れる立場かどうかは、遺品整理を頼んだ人の話だけでは分かりません。相続人が複数いて遺品の扱いが決まっていない場合や、故人が人から借りていた物、預かっていた物が混じっている場合があります。

買取の前に依頼者と故人の関係、売ってよい品物、ほかの相続人の了解を聞き取りましょう。その場で判断できない品物は買い取らず、売る権限が分かってから買い取ります。

買取の場所

古物商以外の人から買い取る場所は、自社の営業所か、取引の相手方の住所・居所に限られます。届け出た仮設店舗だけが例外です。

売主になる相続人が故人の自宅に住んでいない場合、品物があるというだけでは、その自宅は売主の住所・居所になりません。故人宅で買い取る予定なら、管轄の警察署に事前に相談してください。

営業所の外で消費者から買い取る出張買取は、特定商取引法の訪問購入にあたることがあります。対象になる取引では、契約内容を書いた書面の交付が必要です。依頼者は、書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフ(契約の解除)ができます。家具、書籍、CD・DVD、ゲームソフト、冷蔵庫のように携行が容易でない家電などは、規制の対象外です。事業者から買い取る取引のように、取引の形で対象外になる場合もあります。

本人確認と古物台帳

売主が顔見知りでも、遺品整理の作業契約を結んでいても、本人確認と古物台帳への記録が必要になります。

買取代金が1万円未満なら、本人確認と記録は不要です。ただし、バイク・原付、ゲームソフト、CD・DVD、書籍は、1万円未満でも本人確認と記録が必要になります。エアコンの室外機、電気温水機器のヒートポンプ、電線、金属製グレーチングも対象です。この1万円は消費税を除いた額で、一度に持ち込まれた品物の合計で判断します。

現場でそのまま買い取るなら、身分証の提示と査定内容の記録を、その場で終えられるようにしておきましょう。

書籍は、同じ人から同時に受け取った分をまとめて書けます。衣類は、個別に査定せず重さだけで買い取る場合に限り、「ズボン○kg」のようにまとめて書けます。CD・DVDは1点ずつ記録しましょう。買い取った美術品や時計・宝飾品を1万円以上で売るときも、買主の住所や氏名などを記録します。

開業前に決めること

取扱品目は、実際に扱う予定の商品に合わせて、13品目の区分から選びます。家具なら道具類、衣類なら衣類、時計なら時計・宝飾品類にあたります。

営業所は、連絡先の住所を登録するだけでは足りません。古物営業の拠点として使える場所が必要で、営業所ごとに管理者も置きます。契約書や取引の記録を管理できる体制も必要です。

法人として買取をするなら、許可を申請するのも法人です。代表者個人が許可を持っていても、法人の営業にそのまま使えません。

依頼者の自宅へ出向いて買い取る予定なら、許可申請書に、営業所の外で古物を取引する「行商」をする旨を書きます。買取を始める予定日から逆算して、許可を取得してから現場に出られるよう、申請を進めましょう。

よくある質問

遺族が自分で相続した家財を売る場合も、古物商許可は必要ですか?

通常は必要ありません。自分が相続した家財を売るだけなら、買取を伴う営業にならないためです。

買取だけ外部の古物商に任せることはできますか?

できます。自社は仕分けや清掃を担当し、買取は依頼者と外部の古物商が直接契約する方法があります。契約上は外部業者に任せていても、自社が実際に買い取ったり販売の委託を受けたりしていれば、自社にも許可が必要です。契約の形と現場の動きを合わせておきましょう。

副業や兼業で遺品整理を請け負う場合も、古物商許可は必要ですか?

買取や委託販売を伴うなら必要です。営利目的で繰り返す取引は、本業でなく副業や内職でも古物営業にあたります。

古物商許可が下りる前に、遺品の買取を始めてもよいですか?

いいえ。許可を受ける前に買取を始めると、無許可で古物営業をすることになります。許可が下りるまでは、買取を伴わない仕分けや清掃の依頼にとどめましょう。

従業員だけで遺品整理の現場に行き、買い取ることはできますか?

できます。従業員や代理人が行商をするときは、行商従業者証を携帯します。古物商本人が行商をする場合は、許可証が必要です。いずれも、依頼者から求められたら提示してください。

まとめ

中古品を買い取って売る遺品整理は、古物商許可が必要です。片付け料金から買取代金を差し引く精算も買取にあたるため、見積書には買い取る品物と金額を分けて書きます。無償や引取料をもらって引き取った品物を売るだけなら、許可は必要ありません。家庭ごみの運搬には、古物商許可とは違う、市区町村の許可か委託が必要です。

現場で買い取るときは、売主に売る権限があるかどうかと、買取の場所を先に調べます。本人確認と台帳の記録を、現場で済ませる流れも欠かせません。許可を取るまでの流れは、古物商許可を自分で申請する手順にまとめています。

参考資料・公式情報

本記事は、以下の公的機関・法令の情報を参考に作成しています。

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