個人事業主の建設業許可|法人との違い・500万円・法人成りの注意点

個人事業主の建設業許可について、確定申告書や通帳などの証明書類を確認する様子

電気工事、内装工事、設備工事などを個人事業主として続けていると、元請から「次の工事は金額が大きいので、建設業許可を取ってください」と言われることがあります。

このとき、不安になりやすいのが「法人でないと建設業許可は取れないのでは」という点です。

結論からいうと、建設業許可は個人事業主のままでも取得できます

一人親方や屋号で営業している方でも、要件を満たし、その内容を資料で示せれば申請の対象になります。

ただし、法人とまったく同じ形で準備できるわけではありません。個人事業主の建設業許可では、要件そのものよりも、その要件を何の資料で示すかが大きなポイントになります。

まず押さえたいのは、次の3つです。

  • 建設業を営んできた経験を資料で示せるか
  • 500万円以上の財産的基礎を示せるか
  • 営業所技術者の資格・経験・常勤性を説明できるか

この記事では、個人事業主が建設業許可を取る前に押さえておきたい点を、法人との違い、屋号、法人成りの注意点まで含めて解説します。を取る前に確認したいこと、法人との違い、屋号や法人成りで注意したい点を順番に見ていきます。

目次

個人事業主でも建設業許可は取得できる

建設業許可は、法人だけの制度ではありません。

個人事業主でも、必要な要件を満たせば許可を受けることができます。屋号で営業している一人親方や、小規模な事業者でも対象になります。

ここで大切なのは、許可を受けるのが「屋号」ではなく、事業主本人だという点です。

たとえば「〇〇電気」「〇〇設備」「〇〇内装」という屋号で営業していても、許可名義そのものは屋号ではありません。申請書に屋号を記載することはありますが、許可を受ける主体は事業主個人です。

そのため、屋号を変える場合と、事業主本人が変わる場合では扱いが異なります。

屋号を変えても、事業主本人が同じであれば、当然に許可が消えるわけではありません。一方で、親族や従業員が事業を引き継ぐ場合は、許可をそのまま使えるとは限りません。

個人事業主の許可は、あくまで事業主本人に紐づくもの。ここを最初に押さえておくと、屋号変更や法人成りを考えるときにも判断しやすくなります。

500万円以上の工事を受ける前に許可の要否を確認する

個人事業主が建設業許可を考えるのは、主に次のような場面です。

  • 元請から許可取得を求められた
  • 500万円以上の工事を受ける予定がある
  • これまでより大きな工事を請けたい
  • 金融機関や取引先から許可の有無を聞かれた
  • 法人化する前に許可を取るべきか迷っている

建築一式工事以外では、税込500万円以上の工事を請け負う場合、原則として建設業許可が必要です。

建築一式工事では、税込1,500万円以上の工事、または延べ面積150㎡以上の木造住宅工事が一つの目安になります。

金額は、消費税を含めて判断します。材料を注文者が支給する場合など、契約書の請負金額だけでは判断しにくいケースもあります。

たとえば、請負金額だけを見ると500万円未満でも、支給材料を含めると基準を超える場合があります。工事の分割、追加工事、材料支給の有無まで含めた判断が必要です。

軽微な建設工事を超える工事を無許可で請け負うと、建設業法上の罰則の対象になります。罰則は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。情状によっては、その両方が科されることもあります。

まずは、請ける予定の工事の金額、業種、営業所の場所を書き出しておきましょう。許可が必要かどうかを判断しやすくなります。

営業所が東京都内なら知事許可を検討する

建設業許可には、知事許可と大臣許可があります。

この違いは、工事をする場所ではありません。建設業の営業所をどこに置くかで決まります。東京都内にだけ建設業の営業所を置く場合は、東京都知事許可を検討します。

たとえば、葛飾区に事務所があり、建設業の営業所が東京都内だけであれば、基本的には東京都知事許可です。

一方、東京都と千葉県、東京都と埼玉県のように、複数の都道府県に建設業の営業所を置く場合は、国土交通大臣許可の対象になります。

なお、東京都知事許可を取った場合でも、施工できる場所が東京都内に限られるわけではありません

営業所が東京都内だけであっても、千葉県、埼玉県、神奈川県などで工事を行うことはあります。許可の区分は、工事現場の場所ではなく、営業所の配置で判断します。

法人との違いは証明に使う資料にある

個人事業主と法人の違い
建設業許可で変わるのは「要件」ではなく「何で証明するか」です。
経営経験
法人
登記簿、役員経験、決算書などで確認
個人事業主
確定申告書、契約書、注文書、請求書などで確認
常勤性
法人
健康保険・厚生年金関係の書類などで確認
個人事業主
住民票、国保関係書類、申告書類などで確認
財産的基礎
法人
貸借対照表の純資産などで確認
個人事業主
預金残高証明書などで500万円以上を確認
社会保険
法人
法人としての加入状況を確認
個人事業主
従業員数や雇用状況に応じて確認
個人事業主でも建設業許可は取得できます。 違いは、経営経験・常勤性・財産的基礎などを何の資料で示すかにあります。

建設業許可で審査される主な要件は、法人でも個人事業主でも共通しています。

主な要件は5つあります。

  • 経営業務の管理責任者等がいること
  • 営業所技術者がいること
  • 誠実性があること
  • 財産的基礎があること
  • 欠格要件に該当しないこと

個人事業主だから要件が大幅に軽くなるわけではありません。反対に、個人だから許可が取れないということもありません。

違いが出るのは、各要件を何の資料で示すかです。

法人であれば、登記簿、決算書、社会保険関係の書類で裏づけしやすい場面があります。

一方、個人事業主では、事業主本人の経験や事業実態を、確定申告書、契約書、注文書、請求書などで組み立てて説明する必要があります

つまり、個人事業主の申請では「要件を満たしているか」だけでなく、その要件を示せる資料が手元にあるかが重要になります。

経管は事業主本人の経験で証明することが多い

建設業許可では、建設業の経営経験がある人が必要です。

これが「経営業務の管理責任者等」です。実務では「経管」と呼ばれることが多く、建設業許可で最初につまずきやすい要件の一つです。

経管の5年経験や証明資料について詳しく知りたい方は、経営業務の管理責任者等の要件を解説した記事も参考にしてください。個人事業主の場合、事業主本人が経管になるケースが中心です。

経管として認められるには、建設業の経営業務に関わってきた経験を示す必要があります。一般的には、5年以上の経験が一つの目安になります。

裏づけに使う資料は、たとえばこのようなものです。

  • 確定申告書の控え
  • 請負契約書
  • 注文書
  • 請求書
  • 開業届
  • 入金記録
  • 工事内容が分かる資料

中心になるのは、建設業を営んでいたことが分かる申告書類です。

そこに、実際に工事を請け負っていたことが分かる契約書、注文書、請求書などを重ねて、経験の流れを説明していきます。

見落としやすいのは、開業届だけで十分とは限らない点です。

開業届は、事業を始めたことを示す資料にはなります。ただし、実際に建設工事を請け負っていたことや、継続して建設業を営んでいたことまでは、それだけでは読み取れません。

そのため、申告書類だけでなく、工事の契約書、請求書、入金記録などもあわせて探しておくと準備しやすくなります。

過去の資料が一部抜けている場合でも、すぐに諦める必要はありません。残っている資料でどこまで説明できるか、まずは年ごとに分けて考えることが重要です。

営業所技術者は資格か実務経験で確認する

建設業許可では、営業所ごとに営業所技術者が必要です。

営業所技術者とは、許可を取りたい業種について、一定の資格や実務経験を持つ人のことです。以前は「専任技術者」と呼ばれていました。現在の名称は営業所技術者ですが、実務では今も「専技」と呼ばれることがあります。

営業所技術者の要件を満たすルートは、主に3つあります。

  • 許可業種に対応する国家資格を持っている
  • 指定学科を卒業し、一定年数の実務経験がある
  • 許可を取りたい業種について10年以上の実務経験がある

個人事業主では、事業主本人が経管と営業所技術者を兼ねることもあります。

たとえば、事業主本人に建設業の経営経験があり、さらに許可業種に対応する資格や実務経験がある場合、経管と営業所技術者の両方を本人で満たせる可能性があります

注意したいのは、営業所技術者の常勤性です。

法人の役員や従業員であれば、健康保険・厚生年金関係の書類で常勤性を示しやすい場面があります。

一方、個人事業主本人の場合は、勤務先名入りの健康保険証がないことも多く、示し方が法人と異なります。

住民票、確定申告書、国民健康保険関係の書類などを組み合わせて、営業所に常勤している実態を説明していく形になります。

資格で要件を満たせる場合は、実務経験を10年分たどるよりも準備の負担を抑えられることがあります。まずは、取りたい業種に対応する資格があるかを調べておくと、進め方を決めやすくなります。

財産的基礎は残高証明書で示すことが多い

一般建設業の新規申請では、財産的基礎も確認されます。

主な考え方は、次のどちらかです。

  • 自己資本が500万円以上ある
  • 500万円以上の資金調達能力がある

法人の場合は、貸借対照表の純資産で確認することが一般的です。

一方、個人事業主では、貸借対照表を作成していないケースもあります。白色申告の場合や、青色申告でも貸借対照表を添付していない場合は、別の方法で財産的基礎を示す必要があります。

そのような場合、預金残高証明書で500万円以上を示す方法がよく使われます。

注意したいのは、残高証明書の名義と発行時期です。

個人事業主の申請では、事業主本人の資金調達能力を示す資料として使えるかを確認します。また、早く取りすぎると申請時点の資料として使いにくくなることがあります。

残高証明書を使う場合は、申請予定日から逆算して取得しましょう。

なお、500万円を許可取得後もずっと口座に置き続けなければならない、という意味ではありません。申請時点で資金調達能力を示せるかがポイントです。

社会保険は従業員を雇っているかで確認が変わる

建設業許可では、必要な社会保険に加入しているかも審査されます。

個人事業主本人は、国民健康保険・国民年金のままで問題ないケースがあります。ただし、従業員を雇っている場合は話が変わります。

常時5人以上の従業員を雇っている個人事業所では、従業員について健康保険・厚生年金の加入義務が生じる場合があります。また、従業員を雇っている場合は、雇用保険の加入状況も見られます。

外注、一人親方、アルバイト、常用雇用が混在している場合は、実態に沿って雇用形態を分けておく必要があります

「外注として扱っているが、実態は従業員に近い」という場合は、社会保険や雇用保険の扱いで問題になることがあります。許可申請の前に、人の使い方と保険関係を一度切り分けておくと安心です。

法人化するなら許可の扱いを先に決める

個人事業主が建設業許可を考えるとき、「このまま個人で取るべきか」「法人化してから取るべきか」で迷うケースがあります。

どちらがよいかは、事業の状況によって変わります。

すぐに500万円以上の工事を請ける必要があるなら、個人のまま取る選択が有力になります。

一方、近いうちに法人化する予定がはっきりしているなら、法人設立と許可申請の順番を慎重に考える必要があります。

個人のまま先に取る場合 法人化してから取る場合
早めに許可が必要なときに検討 法人化の予定が近いときに検討
事業主本人の経験を使いやすい 法人として要件を満たす必要がある
後で承継や新規申請の検討が必要 法人設立後の資料準備が必要
元請との契約時期に合わせやすい 法人名義で最初から整えやすい

個人で許可を取ったあとに法人化すると、許可の承継や新法人での手続きが問題になります。

一定の手続きを取れば、法人成りに伴って許可の承継を検討できる場合もあります。ただし、何もしなくても自動で新法人に許可が移るわけではありません。

法人化の予定が近い場合は、個人で先に許可を取るのか、法人化に合わせて申請するのかを先に決めておきましょう。

個人事業主は確認資料を先に集める

東京都知事許可の新規申請では、申請書のほかに、経管・営業所技術者・財産的基礎などを確認する資料が必要になります。

個人事業主の場合、特に重要になるのは次の資料です。

個人事業主が先に確認したい資料
手元資料と申請前に取得する資料を分けると、準備の順番が見えやすくなります。
まず手元にあるか確認する資料
確定申告書の控え
請負契約書・注文書・請求書など
資格証や実務経験を示す資料
申請前に取得する資料
預金残高証明書または融資証明書
住民票
身分証明書
登記されていないことの証明書
確定申告書・工事資料・資格資料 は、まず手元にあるか確認しましょう。
残高証明書や各種証明書 は、取得時期に注意が必要です。

まずは、事業主本人の経営経験を示す資料、営業所技術者の資格や経験を示す資料、500万円以上の財産的基礎を示す資料から確認しましょう。

身分証明書や登記されていないことの証明書は、発行から一定期間内のものが求められることがあります。残高証明書も、早く取りすぎると使えない場合があります。

早めに探しておく資料と、申請直前に取得する資料を分けて考えると準備しやすくなります。

費用と期間の目安

東京都知事許可の新規申請では、申請手数料9万円がかかります。

このほかに、住民票、身分証明書、登記されていないことの証明書、残高証明書などの取得費用が必要です。

行政書士に依頼する場合は、東京都に支払う申請手数料とは別に、行政書士報酬がかかります。

期間については、書類がそろって申請したあと、審査に一定の日数がかかります。実務上は、審査期間だけでなく、資料集めの時間も見ておく必要があります。

特に個人事業主の場合、過去の申告書類、工事資料、技術者関係の確認に時間がかかることがあります。

元請から期限を決められている場合は、全体で2〜3か月ほど見ておくと、予定を組みやすくなります。

よくある質問

屋号で建設業許可を取れますか?

屋号を申請書に記載することはできます。

ただし、許可を受けるのは屋号ではなく、事業主本人です。許可番号も事業主個人に紐づきます。

個人事業主でも東京都知事許可を取れますか?

取得できます。

東京都内にだけ建設業の営業所を置く場合は、東京都知事許可を検討します。個人事業主であることだけを理由に、許可が取れないわけではありません。

確定申告書は何年分必要ですか?

経営業務の管理責任者等の経験を示すため、過去5年分以上を確認することが多いです。

建設業を営んでいたことが分かる申告書類を、早めに探しておくと準備の見通しが立ちます。

開業届があれば経管の経験を証明できますか?

開業届は、事業を始めたことを示す資料にはなります。

ただし、それだけで建設業の経営経験をすべて証明できるとは限りません。確定申告書、契約書、請求書、入金記録などもあわせて確認することが多くなります。

事業主本人が経管と営業所技術者を兼ねられますか?

同じ営業所に常勤していて、それぞれの要件を満たすなら、事業主本人が兼ねる形で申請できることがあります。

個人事業主の建設業許可では、よく検討される形です。

個人のまま取るか、法人化してから取るか迷っています。

法人化の予定が近い場合は、先に方針を決めたほうが安全です。

個人事業主の許可は、新法人へ自動で移るわけではありません。個人のまま取るか、法人化とあわせて進めるかで、手続きとスケジュールが変わります。

まとめ

個人事業主でも、建設業許可は取得できます。

法人と比べて大きく違うのは、許可の要件そのものではありません。違いが出るのは、経営経験、財産的基礎、営業所技術者を何の資料で示すかです。

個人事業主の申請では、過去の申告書類、工事資料、財産的基礎の資料、常勤性の裏づけに時間がかかることがあります。

元請から許可を求められている場合は、まず手元の資料を書き出しましょう。書類がそろっているかどうかで、申請までの予定は大きく変わります。

また、法人成りを予定している場合は、個人のまま許可を取るか、法人化とあわせて進めるかを先に決めておく必要があります。

許可を急ぐときほど、最初に全体の方針を固めておくことが大切です。

お困りの際はご相談ください

個人事業主の建設業許可では、個人のまま進めるか、法人成りとあわせて考えるかで判断が分かれます。

また、経営経験、財産的基礎、営業所技術者、社会保険の確認など、申請前に整理しておきたい点があります。

元請から許可取得を求められている場合や、500万円以上の工事を受ける予定がある場合は、早めに全体像を確認しておくと、契約時期に合わせやすくなります。

当事務所では、葛飾区を拠点に、東京都全域および周辺地域の建設業許可申請をサポートしています。

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