中古楽器の買取・販売に古物商許可は必要?修理・委託販売との違い

中古のギターや管楽器を買い取って売る営業には、古物商許可が必要です。他人の楽器を預かり、手数料を受け取って代わりに売る委託販売も、営業として行うなら原則として許可の対象に入ります。

お客さまから預かった楽器を修理・調整して本人に返すだけなら、その修理の仕事に許可は不要です。修理工房や音楽教室が中古楽器の売買を始めるときは、修理と販売で法律上の扱いが違う点を把握しておきましょう。

この記事では許可が必要な取引に加えて、申請する品目や買取時の本人確認、委託販売と出張買取の注意点まで説明します。

目次

許可が必要な取引・不要な取引

仕入れや販売の代行など、中古楽器の売買に関わる仕事が加わると、許可が必要になります。

行う業務古物商許可
中古楽器を買い取り、そのまま売る営業として行うなら必要
中古楽器を買い取り、修理・調整して売る必要
他人の楽器を預かり、代わりに売って手数料を得る営業として行うなら原則必要
お客さまの楽器を修理し、同じお客さまに返す通常、その修理の仕事だけなら不要
自分で使っていた楽器を手放すために売る通常は不要

これまで修理・調整だけをしてきた工房でも、中古楽器の買取と販売を加えるなら、その時点で許可を取ることになります。中古パーツも、修理用として預かるのか、中古品として仕入れて加工・販売するのかで答えが変わります。

音楽教室が生徒同士の楽器の売買に関わるときは、教室がどこまで引き受けるかで扱いが変わります。教室が楽器を預かり、手数料を受け取って販売まで引き受けるなら委託販売にあたり、許可の対象です。生徒同士を紹介するだけなら、売り手と買い手をつなぐ斡旋にとどまり、委託販売にはあたりません。解釈運用基準でも、委託と単なる斡旋は区別されています。

申請する品目は「道具類」が基本

楽器本体は「道具類」で申請し、楽器と一緒に扱う商品があれば、その商品にあたる区分を加えます。

扱う予定の商品申請する区分
ギター、ベース、バイオリン、管楽器など道具類
中古の楽譜集、教則本書籍
アンプ、ミキサー、録音機器など商品ごとに13品目の区分を選ぶ
複数の機器を組み合わせたセットセットの内訳ごとに区分を選ぶ

屋号が「〇〇楽器店」でも、区分は実際に扱う商品ごとに選びます。アンプやマイクのような音響機器には、楽器本体とは別の区分にあたる商品もあります。開業時に扱う商品をすべて書き出し、古物商許可の13品目にあてはめて申請しましょう。

中古の楽譜集や教則本は書籍にあたるので、買取額が1万円未満でも本人確認と記録が必要です。楽器本体の少額の買取と同じ感覚で受け付けると記録が漏れるため、楽譜は金額にかかわらず記録する手順にしてください。

買取時の本人確認と売る権限

一般の方から楽器を買い取るときは、買取額が税抜1万円以上なら、相手の本人確認と古物台帳への記録を行います。金額は1本ずつでなく、一度に持ち込まれた品物の合計です。

店頭では、運転免許証などの身分証明書で相手の住所・氏名・年齢を本人確認し、職業は本人から聞き取ります。郵送や宅配の買取では、身分証明書のコピーを受け取るだけでは足りません。非対面の本人確認の方法は、受付を始める前に決めておいてください。

中古楽器の買取では、売りに来た人にその楽器を売る権限があるかどうかも尋ねます。家族名義や部活動・バンドの共有の楽器、リース・レンタル中の機材は、本人の物でないことがあります。身分証明書を見ただけでは、そこまでは分かりません。

本人の私物か、委任状を持った代理の売却かを聞き、説明に不自然な点があれば買取や代金の支払いに進まず手を止めましょう。盗品などの疑いがあるときは、警察官への申告が義務になっています。

買取の受付と許可申請でお困りなら

店頭や宅配で中古楽器の買取を始める時点で、許可申請と本人確認の受付手順の準備を並行して始めることになります。楽譜や音響機器も扱うときの品目の選び方や、家族名義・共有の楽器を持ち込まれたときの対応も含めて、当事務所へご相談ください。

製造番号と修理歴の記録

仕入れた楽器は、製造番号に加えて修理歴や交換部品まで控えておくと、1本ずつ見分けられます。同じ型番でも、修理や部品の交換、調整の具合で1本ごとの状態が大きく違うためです。控える項目の例は次のとおりです。

  • メーカー、モデル名、製造番号、数量
  • ハードケースやマウスピースなど、付属品の内訳
  • 打痕、塗装のはがれ、ネックの反り、管体のへこみ
  • 過去の修理・調整の内容と、分かる範囲での時期
  • ピックアップやペグなど、交換されている部品
  • 音出しやトラスロッドの余裕など、動作を試した範囲

製造番号が刻印された楽器は、現物と買取伝票・商品管理表で番号を取り違えないように書き写します。ヴィンテージ楽器などで番号が読めないときは推測で埋めず、外観の特徴や年式の目安を書いておけば、あとで個体を特定できます。

こうした商品のメモとは別に、税抜1万円以上の買取では、古物台帳への記録を取引のたびに行ってください。楽譜集のように、金額にかかわらず記録が必要な品物もあります。台帳には、取引の年月日、品目と数量、品物の特徴、相手の住所・氏名・職業・年齢、本人確認の方法を書きます。

委託販売は預かった時点から管理する

委託品は、楽器を預かった時点から委託者の情報と結びつけて管理しましょう。古物営業法では委託を受けて古物を売買する営業も許可の対象で、本人確認と台帳への記録も買取と同じ金額の基準でかかります。記録が必要な取引なら、売れるのを待たずに預かった時点で書き込むことになります。

預かる段階では売値が決まっていないことも多いため、当事務所では金額にかかわらず本人確認をするようご案内しています。自店で仕入れた在庫と委託品は、混ざらないように分けて管理してください。

項目決めておく内容の例
販売価格最初の販売価格、値下げする条件と連絡の手順
手数料・費用販売手数料の割合、弦交換や調整費用の負担者
保管・修理店頭に並べている間の管理、預かり中に調整する基準
販売期間委託期間の目安、売れ残ったときの返却手順
精算売れたあとの代金の振込期日、購入者から返品があったときの対応

委託者とのもめごとを防ぐため、売れ残ったときの返送料や保管中の傷の責任まで、書面で取り交わしましょう。

自宅での営業と出張買取

自宅を営業所にして中古楽器をネットで売ることはできます。申請の前に、建物を事業に使ってよいかどうかと、古物の管理をどう行うかを決めておきましょう。

賃貸なら賃貸借契約書、分譲マンションなら管理規約に、事業での使用を禁じる定めがないかを読んでください。店舗を持たないネット販売でも、自宅で試奏を受け付けるなら、防音や近隣への音の配慮が欠かせません。

お客さまの自宅に出向いて楽器を買い取る取引は、古物営業法では行商(営業所の外で古物を取引すること)にあたります。許可申請書の行商欄で「する」を選んで申請しましょう。

このうち個人のお客さまからの買取は、特定商取引法の訪問購入にも原則としてあたります。法律で決められた書面を渡し、お客さまがその書面を受け取った日から8日以内のクーリング・オフに対応することになります。期間中はお客さまが楽器の引き渡しを拒めるほか、その間に楽器を第三者へ引き渡したときは、お客さまへの通知も求められます。

訪問購入では、お客さまが求めていない勧誘も禁じられています。出張買取の受付では、買い取ってほしい品物をあらかじめ聞いておきましょう。

出張買取(訪問購入)のクーリング・オフ

  1. 1

    買取の契約

    法律で決められた書面をお客さまに渡す

  2. 書面を受け取った日から
    8日以内
    2

    クーリング・オフ期間

    お客さまは契約を解除できる

    お客さまは楽器の引き渡しを拒める

  3. 3

    期間中に第三者へ引き渡したとき

    お客さまへの通知が必要

  4. 4

    8日が過ぎたあと

    クーリング・オフの期間が終わる

※ 個人のお客さまの自宅で買い取る取引は、原則として特定商取引法の訪問購入にあたります。

よくある質問

新品の楽器を売るときに下取りをする場合も、許可が必要ですか?

下取りする楽器の状態や型番で金額を変えるなら、買取にあたり、許可の対象になります。新品の売価から一定額を差し引くだけの下取りなら、古物営業にあたらない値引きとして扱われます。ただし、個々の楽器の市場価格を考えない場合に限られ、年式や傷の有無で値引き額に差をつければ買取になります。

無料で引き取った楽器や、レンタルに使っていた楽器を売るだけでも許可は必要ですか?

古物を売るだけで買取をしない営業なら、許可は不要です。処分を頼まれて無料で引き取った楽器を修理して売る形や、新品で仕入れたレンタル用の楽器を売る形がこれにあたります。中古楽器の買取を一緒に始めると、その時点で許可が必要になります。

自社のホームページで中古楽器を売るとき、許可のほかに必要な手続きはありますか?

はい、そのホームページのURLを許可申請書に書いて届け出ます。許可を受けたあとに新しいサイトで売り始めたときは、変更の届出で追加してください。サイトには、氏名(法人は名称)、許可をした公安委員会の名称、12桁の許可証番号を、取り扱う品物の情報とあわせて表示します。

出張買取にスタッフを行かせるとき、持たせるものはありますか?

スタッフには行商従業者証を持たせます。古物商本人が出向くときは許可証を携帯し、取引の相手から求められたら提示できるようにしてください。

許可の申請中に、楽器の買取の受付を始めてもよいですか?

いいえ、許可が出るまでは古物の買取も委託の受付もできません。許可前に始めると無許可営業になります。申請中に店舗の準備や、本人確認と台帳記録の手順づくりを進めておけば、許可が出た日から受付を始められます。

まとめ

中古楽器の買取・販売と委託販売は、営業として行うなら古物商許可の対象です。持ち主の楽器を修理して返すだけなら許可は不要ですが、中古品の仕入れや販売の代行を加えた時点で許可を取ることになります。申請する品目は楽器本体の「道具類」が中心で、楽譜は「書籍」、音響機器は商品に合う区分を加えましょう。

買取では、税抜1万円以上の取引で本人確認と台帳への記録を行い、売る権限があるかも尋ねます。製造番号や修理歴は1本ずつ控え、委託品は預かった時点から管理しましょう。自宅での営業なら建物の使用条件、出張買取なら訪問購入の決まりも、開業前に調べてください。申請の流れは、古物商許可を自分で申請する手順にまとめています。

参考資料・公式情報

本記事は、以下の公的機関・法令の情報を参考に作成しています。

古物商許可の申請でお困りならご相談ください

「修理の仕事に中古楽器の販売を加えるとき、許可が必要か」と迷った段階で、ご相談ください。判断だけのご相談でも受け付けています。

古物商許可が必要な場合は、申請書類の作成から警察署への提出まで、リユース業界で10年以上、買取の実務に携わってきた行政書士がサポートします。

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