建設・内装工事業者に古物商許可は必要?設備の下取りと廃棄物の違い

建設・内装工事業を営んでいるだけでは、古物商許可は必要になりません。施主や協力会社から中古の設備・備品を買い取り、再販売する事業にするなら、原則として許可が必要です。

下取り代金を工事代金から差し引く形でも、設備を買い取る取引であることに変わりはありません。一方、自社で使っていた工具や設備を売るだけなら、通常は許可なしで売却できます。

現場では、買い取る中古設備と工事で出る廃棄物、銅などの金属くずが同じ場所に並ぶことになります。この記事では、許可が必要な取引の見分け方から現場での記録まで、建設・内装工事業者の実務に沿って解説します。

目次

許可が不要な売却と必要な下取り

設備を引き取る取引は、中身によって3つに分かれます。

取引の内容古物商許可
自社で使っていた工具や設備を売却する売却するだけなら通常は不要
施主などから中古設備を買い取り、再販売する事業にするなら原則として必要
工事で出た廃棄物を搬出・処分する廃棄物の手続きが別に必要で、古物商許可では代用できない

売却だけの場合と、買い取って売る場合

自社で使うために買った電動工具が不要になり、それを売るだけなら、古物営業に入りません。施主や協力会社が使っていた電動工具を買い取って売る場合は、買って売る古物営業にあたり、許可が必要です。

本業が建設業でも、許可が不要になる理由にはなりません。建設業許可は、古物商許可の代わりに使えません。

自社が納めた設備の買い戻し

自社が納めた設備を、その納入先から買い戻すだけの営業は、古物営業から除かれています。除外されるのは買い戻ししかしない場合に限られ、他社が納めた設備も下取りするなら対象です。長い付き合いのある顧客でも、自社が納めていない設備を買い取るなら許可が必要になります。

工事代金との相殺と買取条件

下取り代金と工事代金の相殺

店舗の改装とあわせて、施主が以前買った業務用の棚を2万円で下取りし、その2万円を工事代金から差し引くとします。現金を渡していなくても、中古の棚を2万円で買い取ったことになります。

見積書や請求書に「値引き2万円」とだけ書くと、工事の値引きなのか、設備の下取り代金なのかが読み取れません。下取りでは、書面に次の項目を残しましょう。

  • 工事の内容と料金
  • 買い取る設備と買取金額
  • 工事代金との相殺方法
  • 設備の引渡し条件

再販売する設備の決め方

撤去する設備を「一式」で引き取ると、再販売する物と処分する物の区別がつきません。再販売する物は、1点ずつ次の項目を決めます。

  • 品名、メーカー、型式、数量
  • 使用状況と、傷や故障の有無
  • 買取金額と精算方法
  • 所有権が移る時点と引渡日
  • 取り外したあとに故障や破損が見つかったときの対応

これは買取条件の項目で、古物営業法で求められる記録事項をすべて満たすものではありません。記録の中身は、後ろの章で説明します。

「とりあえず全部持ち帰って、売れそうな物だけ残す」という進め方では、商品として買い取った物と廃棄物が混ざります。

設備の持ち主と受け取る場所

持ち主と売主の本人確認

店舗や事務所の工事でも、発注者が現場の設備をすべて所有しているとは限りません。貸主の設備やテナントが買った設備、リース物件、他社からの借り物が混ざっていることがあります。

貸主の設備やリース物件は、発注者が売却できる設備ではありません。発注者から「全部引き取ってよい」と言われても、持ち主が別にいる設備は買い取れません。テナントの退去や事業所の閉鎖に伴う工事では、持ち主と売却を決められる人を契約前に書面へ残しましょう。契約の相手方と代金の受取名義も、同じ書面に書きます。

本人確認の相手は、実際に取引をしている人です。相手が法人でも、窓口の担当者本人が対象になります。担当者の身分証明書を見せてもらっても、その人が会社の設備を売却できるかどうかは分かりません。

買取の受取場所

古物商が古物商以外の人から買い取る品物を受け取れる場所は、原則として自社の営業所か、相手の住所・居所です。届出をした仮設店舗は例外になります。

施主が個人で、現場が施主の自宅なら、そこが相手の住所にあたります。施主が法人の場合、店舗や事務所の現場が「取引の相手方の住所又は居所」にあたるかどうかは、現場の状況で分かれます。現場で設備を受け取る予定があるなら、事前に管轄の警察署へ相談してください。

施主の自宅で買い取る場合は、出張買取のルールにも気をつけてください。

現場の買取と許可申請でお困りなら

工事とあわせて設備を下取りすると決めた時点で、買取条件の取り決めと古物商許可の準備を並行して始めることになります。設備の持ち主や、現場で買い取れるかどうかの判断も含めて、当事務所へご相談ください。

工事廃棄物と金属くず

使える設備を中古品として買い取る取引と、工事で出た廃棄物を運ぶ作業には、それぞれ関わる制度が違います。現場にある物は、次の3つに分けて考えます。

現場にある物押さえる点
商品として買い取る中古設備売主、買取条件、受取場所、本人確認、古物台帳
工事で出る廃棄物排出事業者、運搬・処分を担当する事業者、委託の方法
金属くずとして売る物材質、状態、金属くずの届出、廃棄物にあたるか

廃棄物の判断と運搬

少額でも買取金額を付ければ中古品として持ち帰れる、とは言えません。廃棄物にあたるかどうかは物の状態や出てきた状況、取引価値、所有者の意思などをもとに判断されます。建設工事で出た廃棄物は、原則として元請業者が排出事業者として責任を負います。下請業者が自分で撤去した設備でも、廃棄物なら自由には持ち帰れません。

下請業者が運ぶなら、原則として産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です。下請業者が運べる例外も設けられています。条件は、工事の種類や請負金額、運搬量や運搬先まで細かく決まっています。「少量だから無許可で運べる」とは判断せず、元請業者と処理の方法を打ち合わせてから運びましょう。

金属くずの届出

電線や金属製品が出る現場では、本来の用途で使える物は古物にあたります。切断などで本来の用途に使えなくなった物のうち、金属くずにあたる物は、古物とは別の制度で扱われます。

2026年6月1日に、金属盗対策法が全面施行されました。銅の重量か価額が半分以上を占める金属くず(特定金属くず)の買取は、営業所ごとの警察署への届出が必要です。同日以降に新しく始めるなら、営業を始める前日までに届け出ます。古物商許可とは別の手続きで、古物と特定金属くずの両方を扱うなら、許可と届出がそれぞれ必要です。

法人名義の申請と営業所

法人名義の許可と書類

会社が施主と契約して買取代金を払い、買い取った設備を会社の在庫として売るなら、古物商許可も法人名義で取得します。社長が個人で許可を持っていても、その許可を会社の買取にそのまま使うことはできません。

法人の申請では、会社の書類に加えて、役員と営業所の管理者に関する書類も出します。定款の事業目的に古物の売買が入っているかも、申請の前に調べておきましょう。

営業所と管理者

営業所は、営業全般の責任がある本拠の場所で、帳簿や商品を保管する事務所や店舗も含まれます。既存の工事事務所や資材置場を営業所にするなら、買取の判断から商品の保管までをその場所で担うことになります。営業所の要件は、申請の前に読んでおきましょう。

管理者は営業所ごとに1人置き、その営業所に常勤して管理の仕事にあたれる状態が条件です。

現場での担当分け

現場担当者が設備を先に持ち帰り、売主の情報をあとで事務所で聞き取る流れでは、本人確認と記録が抜けます。誰が買取を承認し、誰が本人確認と記録を担当するかを、始める前に割り振ってください。

工事書類と古物台帳

工事書類との結びつけ

工事の注文書や見積書、請求書がそろっていても、古物営業法で求められる記録のすべてはそろいません。設備を下取りするなら、「どの工事で、誰から、どの設備を、いくらで買い取ったか」があとから分かる形で残しましょう。工事番号と買取記録、商品の管理番号を結びつけておくと、工事ごとに買い取った設備を追えます。

古物台帳の記録

記録は古物台帳に、取引のたびに書きます。1週間分をまとめて書くような、まとめ書きは認められません。

本人確認と台帳への記録、盗品の疑いがあるときの警察への申告は、古物商の三大義務です。

1万円未満の買取

対価の総額が1万円未満の買取は、本人確認と台帳記録が原則として免除されます。ただし、2025年10月1日から、次の4品目は1万円未満でも本人確認と記録が必要です。

  • エアコンの室外機
  • 電気温水機器のヒートポンプ
  • 電線
  • 金属製グレーチング

電線は素材を問いませんが、LANケーブルや家庭用の延長コード、充電ケーブルは対象外です。1万円の判定は税抜の金額で、一度に引き取る設備の合計額で判断します。

室外機や電線を扱う現場では、最初の取引から記録できるよう、台帳の記載項目と保存方法を調べましょう。

よくある質問

許可を取る前に買い取って販売した設備があります。今から許可を取れば、さかのぼって認められますか?

いいえ。許可は取得した日からの営業を認めるものです。取得前に買取と再販売を事業として続けていた分は、無許可営業になります。心当たりがあれば、申請の前に警察署に相談してください。

従業員だけで、施主の自宅へ買取に行けますか?

はい、行けます。営業所の外で買い取る営業は行商になるため、許可申請書の行商欄で営業所の外でも古物を扱うと示しておきます。従業員には、行商従業者証を持たせてください。

年に数回しか下取りしない場合も、許可は必要ですか?

はい。営利を目的に買取と再販売を繰り返すなら、年に数回でも営業に入ります。副業や内職でも同じ扱いです。

営業所のない他県の施主の自宅で買い取るときは、その県の許可も必要ですか?

いいえ。別の古物商許可を取り直す必要はありません。営業所の外で買い取る行商として、取引相手の住所・居所で受け取ります。

他県に新しく営業所を置く場合も、新規の許可ではなく変更届が対象です。営業所の新設は事前の届出で、変更日の3日前までに出す形になります。新設後は、その営業所の管理者や取り扱う品目も届け出ましょう。

まとめ

建設・内装工事業者が、施主などから中古設備を買い取って再販売するなら、原則として古物商許可が必要です。下取り代金を工事代金から差し引く形でも、買取であることは変わりません。自社で使っていた設備を売るだけなら、許可は不要です。

取引のたびに、設備の持ち主と受け取る場所が関わります。廃棄物との区別や、金属くずの届出も欠かせません。会社として始めるなら、法人名義の許可と営業所、管理者が必要です。本人確認と古物台帳の担当も、始める前に決めましょう。許可の取り方は、古物商許可を自分で申請する手順にまとめています。

参考資料・公式情報

本記事は、以下の公的機関・法令の情報を参考に作成しています。

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