古物商とインボイス制度|現役質屋店長が古物商特例・質屋特例を解説

古物商とインボイス制度の関係を示すイメージ コラム

インボイス制度が導入されて、古物商を営む事業者の中には「仕入税額控除はどうなるのか」「適格請求書がない取引はどう処理するのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

実は、古物商と質屋には「古物商特例」「質屋特例」という特別なルールがあり、一定の条件を満たせば適格請求書(インボイス)の保存が免除されます。

この記事では、古物商とインボイス制度の関係、古物商特例と質屋特例の詳細を、買取現場での実務経験をもとに解説します。

インボイス制度とは?

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、消費税の仕入税額控除を受けるために、適格請求書(インボイス)を保存する制度です。

インボイス(適格請求書)に記載が必要な項目:

  • 登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容
  • 適用税率
  • 消費税額等
  • 買手の氏名または名称

制度の基本ルール:

  • 売手: 課税事業者の買手から求められた際、インボイスを交付
  • 買手: 仕入税額控除を受けるため、インボイスを保存

インボイスを発行できるのは、適格請求書発行事業者として登録した課税事業者のみです。

古物商とは?

古物商とは、中古品(古物)を売買・交換する事業のことです。

古物営業法の目的

古物営業法第1条には、次のように規定されています:

この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。

古物商を営む理由:

  • 盗品の流通を防止
  • 犯罪の防止と被害回復
  • 消費者保護

私は現在も質屋の店長として勤務しており(業界歴10年以上)、日々、ブランド品・貴金属・時計の買取・販売を行っています。

古物商許可は、盗品が紛れ込むリスクがある中古品取引において、警察と連携して適正な取引を行うために必要不可欠な制度です。

古物商許可が必要なケース

古物商を営むには、都道府県公安委員会の許可が必要です。

許可が必要な取引:

  • 中古品の買取・販売
  • 中古品の交換
  • 中古品の委託販売(仲介)
  • レンタル・リース(有償)

古物商許可が不要なケース

次のようなケースでは、古物商許可は不要です:

新品のみを販売する場合:

  • 未使用品のみを扱う
  • 自社製品を販売(メーカー・工房)

個人が不用品を売る場合:

  • フリマアプリで自分の物を売る
  • オークションで不用品を処分
  • 無償で譲渡・貸与

その他の不要なケース:

  • 海外からの輸入品販売(国内未使用)
  • 遺品整理業者が遺族へ譲渡(売却でない)
  • 行政機関の公売品(警察の押収品オークションなど)
  • 顧客からの下取り

古物商特例と質屋特例とは?

インボイス制度では、原則として適格請求書(インボイス)を保存しなければ仕入税額控除を受けられません。

しかし、古物商と質屋には特例があり、一定の要件を満たせばインボイスの保存が免除されます。

仕入税額控除とは?

仕入税額控除とは、経費に含まれる消費税のことです。

計算式:

納める消費税 = 売上の消費税額 − 仕入れの税額控除額

仕入税額控除が受けられないと、余分な税金を納めることになります。

古物商特例・質屋特例の効果

古物商特例や質屋特例が適用されると:

  • 適格請求書(インボイス)の保存が不要
  • 一定の事項を記載した帳簿の保存のみでOK
  • 仕入税額控除が受けられる

古物商特例・質屋特例の適用要件

古物商特例・質屋特例を適用するには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。

要件1:古物商または質屋であること

古物商:

  • 古物営業法に基づく営業許可を受けている
  • 都道府県公安委員会から許可を取得

質屋:

  • 質屋営業法に基づく営業許可を受けている
  • 都道府県公安委員会から許可を取得

要件2:適格請求書発行事業者以外からの仕入れであること

重要なポイント:

  • 買取相手が「適格請求書発行事業者でないこと」が条件
  • 相手が適格請求書発行事業者の場合、インボイスを発行してもらう必要がある

実務での対応:

私が買取の現場で実際に行っている対応は、買取時の書類に「適格請求書発行事業者か否かのチェック欄」を設けることです。

例えば、買取申込書に次のような欄を追加します:

□ 適格請求書発行事業者である(登録番号:        )
□ 適格請求書発行事業者ではない

お客様にチェックしてもらうことで、客観的に証明できます。

要件3:仕入れた古物・質物が棚卸資産であること

棚卸資産とは:

  • 販売目的で仕入れた商品
  • 在庫として保管している商品

特例の対象外:

  • 自社で使用するために購入した商品(固定資産)
  • 消耗品(化粧品など)

具体例:

ケース棚卸資産か特例の対象か
中古時計を仕入れて販売⭕ はい⭕ 対象
中古の棚を購入して陳列棚として使用❌ いいえ(固定資産)❌ 対象外
化粧品を仕入れて販売❌ いいえ(消耗品)❌ 対象外

要件4:帳簿の保存

古物商特例・質屋特例を適用するには、次の5つを記載した帳簿を保存する必要があります。

帳簿に記載すべき5つの項目:

  1. 取引先の氏名(名称)や住所(所在地)
  2. 取引年月日
  3. 取引内容
  4. 支払対価の額
  5. 古物商特例または質屋特例の対象となること

記載例:

取引先:山田太郎(東京都葛飾区青戸1-1-1)
取引日:2026年1月14日
内容:ロレックス デイトナ 
支払額:2,500,000円
備考:古物商特例適用(適格請求書発行事業者以外)

古物商特例を適用する際の注意点

注意点1:相手が適格請求書発行事業者の場合は対象外

買取相手が適格請求書発行事業者の場合、古物商特例は適用できません。

この場合、相手にインボイスを発行してもらう必要があります。

注意点2:棚卸資産以外は対象外

販売目的でない商品(固定資産や消耗品)は、古物商特例の対象外です。

注意点3:帳簿の保存は必須

帳簿を保存していないと、仕入税額控除が受けられません。

実務経験から見た古物商特例のポイント

私が古物の店舗で10年以上働いてきた中で、インボイス制度への対応で最も重要だと感じているのは、買取時の確認体制です。

ポイント1:買取申込書にチェック欄を追加

買取時に「適格請求書発行事業者か否か」を必ず確認します。

チェック欄を設けることで、後から税務調査があった際にも客観的に証明できます。

ポイント2:帳簿は電子化が便利

手書きの帳簿でも問題ありませんが、電子化すると検索や集計が簡単になります。

勤務先では、買取管理システムを導入して、帳簿を自動生成しています。

ポイント3:適格請求書発行事業者との取引は別管理

適格請求書発行事業者から仕入れた場合は、インボイスを保存する必要があります。

古物商特例の対象と対象外を明確に分けて管理することが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q
個人からの買取はすべて古物商特例の対象ですか?
A

個人事業主や法人が適格請求書発行事業者として登録している場合は、対象外です。買取時に必ず確認してください。

Q
帳簿はどのくらいの期間保存すればよいですか?
A

法人は7年、個人事業主は5年の保存が義務付けられています。ただし、欠損金がある場合は10年間の保存が必要です。

Q
古物商許可を取得していない場合、古物商特例は使えますか?
A

使えません。古物商特例の適用には、古物営業法に基づく営業許可が必要です。

Q
質屋特例と古物商特例の違いは何ですか?
A

基本的な内容は同じですが、質屋特例は質屋営業法に基づく質屋が対象です。質物(質に入れられた品物)の買取に適用されます。

Q
インボイス制度に対応していない取引先とは取引できませんか?
A

古物商特例・質屋特例が適用できるため、適格請求書発行事業者以外からの買取も問題なく行えます。ただし、帳簿の記載と保存は必須です。

まとめ

古物商とインボイス制度について、重要なポイントをまとめます:

古物商特例・質屋特例の要件:

  1. 古物商または質屋の営業許可を取得している
  2. 適格請求書発行事業者以外からの仕入れである
  3. 仕入れた古物・質物が棚卸資産である
  4. 帳簿に必要事項を記載し保存する

実務での注意点:

  • 買取時に相手が適格請求書発行事業者か必ず確認
  • 帳簿には5つの項目を漏れなく記載
  • 適格請求書発行事業者との取引は別管理

古物商特例の効果:

  • 適格請求書の保存が不要
  • 仕入税額控除が受けられる
  • 個人からの買取も安心して行える

お困りの際は当事務所へ

古物商許可の取得は、必要書類の準備から警察署への申請まで、手続きが複雑です。また、「インボイス制度への対応は大丈夫か」「帳簿の記載方法は正しいか」など、判断に迷う場面も多いです。

当事務所では、古物買取の現場で10年以上の経験を持つ行政書士が、書類作成から許可取得までサポートいたします。「自分のケースで古物商特例が適用できるか確認したい」「申請が複雑で困っている」といった場合は、お気軽にご相談ください。

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  • 電話:03-6821-4578(年中無休 9:00〜19:00)

行政書士手島宏典事務所
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執筆者プロフィール

手島宏典 行政書士・現役質屋店長
業界歴10年以上。大手買取店FC3年経営。

行政書士手島宏典事務所
東京都葛飾区亀有3丁目27-30 Tビル1階
TEL:03-6821-4578(年中無休 9:00〜19:00)