特殊車両通行許可(特車申請)の更新作業は、2年おきにやってくる大量の入力作業で、期限管理の負担も大きいものです。
ETC2.0を装着した車両であれば、この更新作業を簡素化できる「特車ゴールド制度」を利用できる可能性があります。
ただし、この制度には「ワンクリック申請ができないケース」や「携行書類が増える」など、実務で注意すべき点も存在します。本記事では、最新の運用ルールに基づき、特車ゴールド制度のメリットと注意点を解説します。
1. 特車ゴールド制度の仕組みと特徴
特車申請の制度は現在、「許可制度(従来型)」と「確認制度(新型)」の2つがありますが、特車ゴールド制度は「許可制度」の中の優遇措置という位置づけです。
制度の定義
特車ゴールド制度とは、「業務支援用ETC2.0車載器」をセットアップ・装着し、登録を行った車両に対して、以下の特例を認める制度です。
- 許可更新手続きの簡素化(ワンクリック申請)
- 大型車誘導区間における経路選択の柔軟化
これまで通り「許可証」を取得する手続きですが、ETC2.0というデジタル機器を活用することで、「手続きの手間」と「走行の自由度」において優遇を受けられる仕組みです。

2. メリット①:更新時の入力作業を省略できる
特車ゴールド制度の最大のメリットは、2年ごとの更新申請が「ワンクリック申請」に近い形で行えるようになる点です。
「変更なし」なら入力不要
特車ゴールド制度に登録された車両・経路において、前回の許可内容(車両諸元、経路、積載貨物など)に変更がない場合、システム上で「更新します」という意思表示をするだけで、申請書の作成から提出までが自動的に完了します。
通常の更新申請では、車両情報や経路情報を毎回入力し直す必要がありますが、この手間を省略できるため、配車担当者の負担が軽減されます。

3. メリット②:大型車誘導区間での経路選択が可能に
もう一つの利点が、走行ルートの柔軟性が高まる点です。通常の許可では、申請した経路以外は原則として走行できません。しかし、特車ゴールド制度を利用すると、「大型車誘導区間内」において、経路選択の自由度が広がります。
渋滞時の迂回が可能に
「大型車誘導区間」とは、高速道路や主要な国道など、大型車が通りやすいように整備された道路ネットワークのことです。
通常許可の場合:
事故渋滞していても、申請した経路(国道A)しか走れない。
ゴールド許可の場合:
国道Aが渋滞していれば、同じ誘導区間内にある並行する道路(国道B)へ迂回できる。
物流の現場において、道路状況に応じたルート選択が可能になることは、配送遅延のリスクを抑える手段となります。

4. 特車ゴールド制度を運用する上での注意点
ここからは、実務上で見落としがちな注意点を3つ解説します。これらを理解していないと、せっかく許可を取っても違反になったり、更新がスムーズにいかなかったりする可能性があります。
注意点①:「ワンクリック申請」ができないケース
以下のケースでは、ゴールド制度登録車であっても、通常の更新申請や変更申請が必要になります。
- 許可期限が切れている場合: 1日でも期限を過ぎると「新規扱い」となり、書類の省略ができなくなります
- 会社名や代表者が変わった場合: 申請者の情報に変更がある場合は「変更申請」が必要です
- 車両や経路に変更がある場合: 車両の入れ替えや経路の追加がある場合も対象外です
注意点②:ドライバーに持たせる書類が増える
ゴールド制度で経路選択が自由になる分、携行書類の義務が厳格です。通常の許可証に加え、以下の書類を必ずドライバーに携行させてください。
- 大型車誘導区間算定結果帳票(システムからダウンロード)
- 大型車誘導区間経路図(通行条件マップ)(特車PRサイト等から最新版を入手)
ルート選択の自由が認められていても、最新の経路図を携行していなければ「条件違反」とみなされる点には注意が必要です。現場のドライバーに対しても、このルールの周知を徹底する必要があります。
注意点③:手数料は変わらない
「手続きが簡素化される=手数料も割引になる」と誤解されがちですが、申請手数料(証紙代など)は通常と同じです。1経路あたり200円等の費用は変わらず発生します。あくまで「事務作業の手間」が減る制度だと認識しておきましょう。

5. 2025年3月アップデートで申請作業がさらに効率化
2025年3月のシステム改修により、特車申請の利便性が向上しています。ゴールド制度を利用する事業者にとっても役立つ機能が追加されました。
「往復ルート」作成の手間が半減
これまでは行きと帰りで別々に経路を作成する必要がありましたが、「反転機能」の実装により、往路のデータをワンクリックで反転させて復路を作成できるようになりました。
例えば、東京から大阪への経路を作成した後、そのデータを反転させるだけで大阪から東京への経路が自動生成されます。往復分の申請データ作成にかかる時間が半分になります。
入力ミスを防ぐ「重複チェック機能」
車両登録時に、すでに登録済みのナンバープレートを入力すると警告が出るようになりました。多台数を管理する事業者にとって、二重登録のミスを未然に防ぐ機能です。
高速道路での「44t超」車両の申請が可能に
高速道路を含む経路において、これまで制限があった「車両総重量44tを超える車両」の申請が可能になりました。該当する車両を運用している事業者は、走行可能な経路の選択肢が広がります。
車検証連携によるミス防止
申請データ作成時に、車検証情報との照合機能が強化されています。入力ミスによる「差し戻し」を防ぐため、エラーが出た場合は必ず車検証原本を確認しましょう。
最長4年の許可期間を確保するための要件
ゴールド制度を利用しているということは、あと少しの条件で「許可期間の4年延長」も可能です。
4年許可の条件:
- 業務支援用ETC2.0の装着・登録
- Gマーク(安全性優良事業所)の認定
- 過去2年以内に違反歴がないこと
これらを満たし、申請時に「期間4年」を選択することで、更新頻度が2年から4年に減り、事務負担はさらに軽減されます。

6. 実務担当者からよくある質問(FAQ)
特車ゴールド制度の導入を検討されている方から、よくいただく質問をまとめました。
Q. 今持っているETC2.0車載器が「業務支援用」かどうかわかりません。
A. 車載器の梱包外装や、同梱のセットアップ証明書、取扱説明書等に「業務支援用」の記載があるかご確認ください。不明な場合は、車載器管理番号(20桁)を添えて、取付店(セットアップ店)や車載器メーカーへ問い合わせるのが最も確実な確認方法です。
Q. Gマークを取得していれば、自動的に4年許可になりますか?
A. いいえ。ETC2.0の登録に加え、申請時に「許可期間を4年とする」旨の選択を行い、Gマーク認定証を添付する必要があります。また、過去2年間に車両の通行禁止などの違反がないことが条件となります。
Q. 経路選択が自由になるのは、すべての道路ですか?
A. いいえ。あくまで「大型車誘導区間」として定められた主要な道路ネットワーク内のみです。会社からICまでの市道など、誘導区間以外の末端経路については、申請した通りのルートを走行しなければなりません。
まとめ:特車ゴールド制度で更新業務を効率化
特車ゴールド制度は、更新の手間を減らし、物流の効率化とコンプライアンス強化を実現する制度です。
- 更新の入力作業を省略したい
- 渋滞時に柔軟なルート変更を行いたい
- 法令順守を確実にしたい
これらを目指す運行管理者にとって、特車ゴールド制度への登録は有効な選択肢です。ただし、記事内で解説した「期限切れによる取り直し」や「携行書類の不足」といった注意点には十分気をつけ、計画的な運用を心がけてください。
まだ登録がお済みでない場合は、次回の更新申請に合わせて「ETC2.0情報の登録」から始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
実務における詳細な規定や最新の運用ルールについては、以下の公的機関の資料もあわせてご参照ください。
特車ゴールド制度 リーフレット|国土交通省(PDF) 制度の全体像や導入メリット(走行時間の短縮効果など)が視覚的に分かりやすく整理された、基本概要の紹介資料です。
特車ゴールド(ETC2.0装着車への特殊車両通行許可簡素化制度)に関するQ&A|国土交通省 関東地方整備局(PDF) 制度運用に関する具体的な疑問点や、実務上の細かいルールが網羅的にまとめられた公式のFAQ資料です。
※本記事は、国土交通省「特殊車両通行許可 オンライン申請システム 操作マニュアル(2025年3月版)」および「中部地方整備局ハンドブック(2025年5月版)」等の資料に基づき作成しています。



