【Excel準備編③】トラクタ後編:寸法計算と足回りデータの正確な入力

コラム

前回の記事では、車検証をもとにした「基本情報」と「重量・乗員」の入力方法を解説しました。今回は、図面を使って数値を算出する「技術情報」の入力に進みます。

本記事で扱うのは、車両寸法(長さの計算)、足回りデータ(L値・輪数・G値)、そしてシステム入力時の文字ルールです。ここでの入力内容が、交差点の旋回シミュレーションや橋梁の重量計算に使用されるため、正確な数値入力が求められます。

前回と同様、Excelファイルは「下書き(準備資料)」として使用します。複雑な計算をあらかじめExcel上で完了させておくことで、オンラインシステムへの入力時は「表を見て転記するだけ」の作業となり、申請ミスを防ぐことができます。

事前準備:情報の入力に必要な資料

技術情報の入力には、車検証だけでは不足します。以下の資料を手元に用意してください。

必須資料

① 車両外観図(三面図)
メーカーから取り寄せる図面です。以下の数値が記載されています。

  • フロントオーバーハング
  • ホイールベース(軸距)
  • カプラオフセット
  • トレッド(輪距)

② メーカー仕様書
図面に記載がない数値(カプラオフセットなど)が必要な場合があります。

1:車両寸法の入力(幅・高さ)

車両諸元一覧表では、長さ(カプラ前長さ)の計算に入る前に、まず「幅」と「高さ」を入力します。この2つは比較的シンプルですが、単位変換と確認ポイントを押さえておきましょう。

① 幅(cm)の入力

入力元: 車検証の「車両の幅」欄

計算ルール: mm ÷ 10 = cm

入力例:

車検証の表記Excel入力値計算
2,490 mm2492,490 ÷ 10 = 249
2,500 mm2502,500 ÷ 10 = 250
2,480 mm2482,480 ÷ 10 = 248

重要な確認ポイント

ミラーの扱い:
車検証の「車両の幅」は、通常ミラー(バックミラー)を含まない数値です。しかし、特車申請では実際の通行幅を申請する必要があるため、以下を確認してください。

  • 一般的なトラクタの場合: 車検証の幅をそのまま使用できます
  • ワイドミラー装着車の場合: ミラーを含めた実測値が必要な場合があります

② 高さ(cm)の入力

入力元: 車検証の「車両の高さ」欄

計算ルール: mm ÷ 10 = cm

入力例:

車検証の表記Excel入力値計算
2,950 mm2952,950 ÷ 10 = 295
3,080 mm3083,080 ÷ 10 = 308
2,850 mm2852,850 ÷ 10 = 285

重要な確認ポイント

トラクタ単体の高さ:
トラクタの場合、積載物がないため、車検証の高さをそのまま使用できます。

突起物の扱い:
以下のような突起物がある場合、実測が必要なケースがあります。

  • 高いアンテナ
  • ルーフマーカー
  • エアコン室外機(キャビン上部)

入力時の注意点

単位変換を忘れずに:
車検証は「mm」表記ですが、Excelおよび申請システムの入力単位は「cm」です。10で割ることを忘れないでください。

小数点は不要:
幅と高さは、通常は小数点以下が出ない数値です(車検証が10mm単位のため)。もし割り切れない場合は、四捨五入してください。

車両寸法の計算(カプラ前長さの算出)

トラクタの「長さ」入力で最も注意が必要なポイントです。

重要:車検証の全長は使用しません

特車申請で必要な「長さ」は、車両最前部(バンパー)から、連結装置(カプラ)の中心までの距離です。車検証に記載されている「全長」は、バンパーから車両最後端(テールランプなど)までの距離なので使用できません。

車検証の全長を使用した場合のリスク

車検証の全長(例:552cm)をそのまま入力すると、システムは連結全長を実際よりも長く計算します。その結果、本来通行できる交差点が「旋回不能」と判定される可能性があります。

計算に必要な3つの数値

図面の「側面図」から、以下の数値を探してください。

記号名称説明
Aフロントオーバーハングバンパー最前部から前輪中心までの距離
Bホイールベース(軸距)前輪中心から後輪中心までの距離
Cカプラオフセット後輪中心からカプラ中心までの距離

計算ルール

特車申請では、以下の計算式と単位変換ルールを使用します。

計算式:

申請する長さ = (A + B) - C

単位変換:
図面の数値は「mm」ですが、申請システムの入力単位は「cm」です。
計算後、小数点以下は四捨五入します。

入力例(いすゞ車モデル)

項目図面の数値
A:フロントオーバーハング1,400 mm
B:ホイールベース3,710 mm
C:カプラオフセット175 mm

ステップ1:ミリ単位で計算

(1,400 + 3,710) - 175 = 4,935 mm

ステップ2:センチに変換・四捨五入

4,935 mm → 493.5 cm → 494 cm

注意点

  • 車検証の全長(650cmなど)とは大きく異なる数値になります
  • カプラオフセットが図面に記載されていない場合は、メーカーへ問い合わせてください
  • 計算結果は必ずメモを残し、後から確認できるようにしてください

【基礎知識】A軸・B軸・C軸とは?

足回りデータの入力を始める前に、重要な用語を確認しておきます。

車検証と申請システムの「用語の違い」

車検証や図面には「前輪」「後輪」と書かれていますが、申請システムやExcelの入力欄は「A軸」「B軸」「C軸」という名称になっています。これは、車両の先頭から順番に車軸へアルファベットを割り振って管理する方式です。

この対応関係を理解していないと、「どこに何を入力すればいいの?」と迷う原因になります。

一般的な3軸トラクタの場合

軸の名称位置一般的なタイヤ構成輪数G値
A軸最前部の車軸(前輪)シングルタイヤ2コード2
B軸後輪の1つ目(前寄り)ダブルタイヤ4コード1
C軸後輪の2つ目(後ろ寄り)ダブルタイヤ4コード1

Excelとの対応関係

Excelの車両諸元一覧表には、「A軸」「B軸」「C軸」という列があります。ここに、それぞれの軸のデータ(輪数、G値、軸重など)を入力します。

重要なポイント

G値や輪数は、軸によって数値が変わります。
図面の「前輪」の数値をExcelの「A軸」欄に、「後輪」の数値を「B軸」「C軸」欄に入力します。軸の位置を間違えると、旋回計算や重量計算が正しく行われません。

一般的な入力例(3軸トラクタ):

項目A軸(前輪)B軸(後輪前)C軸(後輪後)
輪数244
G値コード2コード1コード1

この基礎知識を踏まえて、次のステップで実際の数値を入力していきます。

2:軸間距離(L値)の入力

橋梁への荷重分散計算に使用される数値です。

L1、L2、L5…とは?

Excelの諸元表には「L1」「L2」といった記号が並んでいます。これらは図面の寸法線と照らし合わせて入力します。

記号名称説明
L1トラクタ軸距最前軸から最後軸までの距離
L2, L5, L6軸間距離隣り合う車軸間の距離

入力ルール

単位: cm(図面の「mm」を「cm」に変換)

計算例:

図面の表記Excel入力値計算
3,710 mm3713,710 ÷ 10 = 371
1,350 mm1351,350 ÷ 10 = 135

注意点

  • 入力ミスで「3710cm(37メートル)」などとしてしまうと、橋梁照査でエラーとなります
  • 3軸車(前1軸・後2軸)の場合、L1とL2の数値が同じになることがありますが、間違いではありません

3:輪数の入力(ダブルタイヤのルール)

トラクタの後輪など「ダブルタイヤ」の入力方法は混乱しやすいポイントです。

結論:ダブルタイヤは「4」と入力

ダブルタイヤの車軸は「4輪」と入力してください。

入力ルール

タイヤの種類物理的な本数Excel入力値
シングルタイヤ(前輪など)左1本 + 右1本2
ダブルタイヤ(後輪など)左2本 + 右2本4

「2」と入力した場合は?

もし「2」と入力すると、システムは「シングルタイヤ(計2本)」として計算します。すると、タイヤ1本あたりの荷重(輪荷重)が倍増して判定され、「重量超過」で不許可になる可能性があります。


4:G値の入力(トレッドの確認)

「G値」とは、左右のタイヤの中心間距離を指し、1〜5のコードで入力します。

よくある間違い:車幅≠G値

大型トラクタの車幅は249cmあります。Gコード表を見ると「226〜250cm」は「コード3」に該当するため、つい「3」を選んでしまいがちです。

しかし、ダブルタイヤの場合、G値の計測点は「2本1組のタイヤの中心」です。車体の端よりもずっと内側に中心点があります。

正しい確認方法

図面の「トレッド(輪距)」を確認してください。多くの大型車で「1,850mm(185cm)」前後となっています。

入力例:

トレッド(図面)G値の範囲Excel入力値
185 cm200cm以下コード1
210 cm201〜225cmコード2

注意点

大型トラクタの後輪は、車幅が広くても「コード1」になるケースが大半です。ここを間違えると、旋回時の計算にズレが生じます。

ここまでで、トラクタの車両諸元一覧表(Excel)への入力は完了です。

次回は、積載物によって寸法が変わるトレーラ(被牽引車)」の入力方法について解説します。トレーラは積載物の種類(重機、鉄骨、コンテナなど)によって、入力すべき寸法や重量が大きく変わるため、トラクタよりも複雑な判断が必要になります。